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AIで変わるファッション広告の未来-ザ・ゴール×GumGum対談 [インタビュー]

独自で一貫性のある世界観の構築を目指すファッションブランドにとって、標準化と自動最適化が推し進められたデジタル広告は諸刃の剣となり得る。この課題にいかに取り組むべきかについて、ファッション業界のオンライン広告に関して共通した課題意識を持つ2社の対談をお届けする

(Sponsored by GumGum Japan)

ファッション広告特有の課題とは

 

―自己紹介をお願いします。

 

髙島氏 国内電通グループ(dentsu Japan)に属する日本最大規模のファッション・ラグジュアリー・ライフスタイル専門広告会社である株式会社ザ・ゴールの髙島翔平と申します。デジタルソリューション部のマネージャーとして、主に外資系のファッション、コスメ、ジュエリー業界に属する顧客様に対し、広告の戦略立案から実行まで幅広く対応しています

 

鈴木瑞季氏 同じくザ・ゴールにてデジタルソリューション部のシニアリーダーを務める鈴木瑞季です。

 

 

 

 

鈴木陽葉氏 同じくザ・ゴールにてデジタルソリューション部のリーダーを務める鈴木陽葉と申します。

 

 

 

 

菅原氏 GumGum Japan株式会社のシニアセールスマネージャーを務める菅原忍です。当社は米カリフォルニアに本社を置くコンテキスト解析を強みとするアドテク企業です。直近ではアドネットワークに加え、アテンションタイム計測サービスやMindset Graphというコンテクスチュアルデータを内包するプラットフォームを提供しています。

 

Yewon氏 同じくGumGum Japanにてアカウントマネージャーを務めるチャン・イェウォンと申します。私の役割は、広告主の課題を理解し、コンテクスチュアルデータを分析・活用することで、広告主の事業成長に貢献します。現在は、主に多数のファッションブランドや外資系企業のクライアントを担当しています。

 

―ファッションブランドのデジタル広告運用についてどのような課題を感じていますか。

 

髙島氏:一般的に、デジタル広告では多様な広告プラットフォームそれぞれに適した戦略の立案と実行が求められます。一方で、ファッションブランドの多くがその世界観を統一したいという思いを持っています。つまり「個別最適化」と「世界観の統一」という相矛盾した観点を両立させながら、ブランド価値の向上を実現しなければなりません。

 

 

鈴木陽葉氏:加えて、近年ではユーザーの広告視聴時間が短くなっていることを踏まえて、ブランドの価値観やストーリーをただ一方的に押し付けるのではなく、ユーザーに寄り添うような広告が求められるようになりました。またプライバシー意識の高まりを受けて、データの透明性を確保しつつ、パーソナライズされた体験を提供するという課題も顕在化しています。

 

菅原氏:デジタル広告を通じてブランドの世界観を統一するためには、その世界観に相応しいコンテキストを選別しなくてはなりません。GumGumの強みであるコンテキスト解析は、独自のコンテキスト解析AIが一つひとつのウェブページを読み込むので、ブランドの世界観とそぐわないコンテキストを適切に排除することができます。

 

また、ユーザーに広告忌避感を与えてしまう一例が、過去の行動履歴を参照したがゆえに現在の状況とは脈絡のない広告を表示してしまうオーディエンス / ビヘイビアベースのターゲティングです。ユーザーを追いかけまわすような手法もあり、プライバシー侵害と感じられてしまう場合もあるでしょう。

 

一方のコンテキスト広告は、ユーザーが今まさに閲覧しているコンテンツと関連性のある広告が掲載されるため、コンテンツに注いでいる関心を持続したまま自然な広告体験へと誘引できます。ユーザーの感情に寄り添うことができる広告であると言えるでしょう。

 

 

Yewon氏:一例を挙げると、コンテキスト広告は「新生活のギフトで何か特別なものを買いたい」と思いながら、オンラインコンテンツを読んでいるユーザーを正確に捉えることができます。このモーメントを従来のCookieベースのターゲティングでは捉えることができません。

 

鈴木瑞季氏:コンテキスト広告は、ブランドの世界観と消費者の興味関心が自然に交差する場面で効果を発揮すると考えています。消費者の関心に応じてブランドと接点を持たせることができるため、広告が最も響く瞬間を見極めることができます。特にファッション業界はターゲットが明確なので、そうした狙うべき層に確実に訴求できる点が魅力です。また、関心の薄いユーザーへの過剰な広告配信を避けることで、ブランド毀損や広告に対する嫌悪感を抑制できる点も評価しています。

 

髙島氏:ファッション業界ではSNS広告の需要が多いです。もちろんSNS広告ならではの利点はたくさんあるのですが、ファッション高感度層にピンポイントでアプローチするという点においては、少なからず取りこぼしが発生している可能性はあるのではないかと考えます。対照的に、コンテキスト広告は普段からファッションに関心を持つ人だけでなく、「新生活のギフト」といった季節的な要因で一時的に関心が高まった人に接触する手段としても有効です。

 

AIとデータが切り拓く未来像

 

―AI技術が進展すれば、ファッションブランドのデジタル広告運用に関する課題は解決し得ると思いますか。

 

鈴木陽葉氏:これまで外資系ファッションブランドにおいては、海外本社が制作した広告クリエイティブを日本市場でも展開することでブランドの世界観の統一を図るということが行われてきました。しかしながら、消費者の広告離れに対する反省から、クリエイティブ制作作業をローカライズすることで消費者のアテンションを獲得する動きが活発になってきています。

 

こうしたローカライズ作業にAIを有効活用できるはずです。我々のような専門事業者が持つ知見に加えて、人間がどれだけ努力しても理解できないような潜在的な顧客心理の分析にAIが貢献できると思います。AI活用によって実現した新たな広告クリエイティブの創出によって、広告パフォーマンスの改善はもちろんのこと、ブランド全体にとっての発見や学びを得られるようになると期待しています。

 

 

鈴木瑞季氏:AIに任せきりというのは難しいかもしれませんが、ブランドが発信したい世界観にAIが融合する「パーソナライズド・ストーリーテリング」は実現できるかもしれません。ユーザーの興味・嗜好に応じたストーリーをリアルタイムで生成して配信していくという形態が考えられます。

 

―より効果的なオンライン広告を配信するためにはどのようなデータが求められているのでしょうか。

 

菅原氏:従来の広告プラットフォームでは、ユーザーに何らかの識別子を付与してターゲティングすることが主流であったと思いますが、当社は創業当初からCookieを含めたパーソナルデータを一切保有しないというポリシーがあります。代わって当社が蓄積しているのが、インターネット上のコンテンツを、当社AIが隈なく渉猟して取得したコンテキストベースのデータです。

 

当社では、このコンテキストデータを集積したデータプラットフォームであるMindset Graphを有しています。生活者が、特定のブランド名やそのブランドの世界観または関連する概念といったものを、どういった文脈や状況で想起するのか、あるいは反対に、どういった文脈や状況において特定のブランド名や商品を生活者に想起させたいのか。ブランドマネージャーの方々はこういった類のことを考え続けていると思います。Mindset Graphは、こうした疑問に応えるためのデータプラットフォームです。

 

 

Yewon氏:Mindset Graphでは、オープンウェブ上で特定のブランド名が言及されやすい文脈を順位ごとにグラフ表示できるツールです。例えば、ある高級シャンパンブランドは「1位:公園」「2位:セーリング」といった結果が出てきます。このブランドが、公園でのピクニックや船上パーティーなどで提供される飲み物として、世の中の生活者に認知されていることがコンテクスチュアルビッグデータより一瞬で把握することができます。

 

現在は、プランニング時のゼロ次分析的な用途で活用されることが多いですが、規定のキーワードとMindset Graphが示したキーワードを並べてA/Bテストを行うことも可能です。

 

このツールを活用すれば、オープンウェブ上にある膨大な記事を分析することができ、「ブランドの現在地」を正確に把握できます。「コンテクスチュアルデータドリブンマーケティング」を推進していくことで、「理想のブランド」へ近づく後押しを実現します。

 

髙島氏:このようなデータプラットフォームやテクノロジーを活用することでこれまで感性を大切にしていたファッション業界の広告コミュニケーションは更に精密に研ぎ澄まされたメッセージへと昇華していくのではないでしょうか。

 

 

菅原氏:感性と理性は対立軸とされやすいですが、決して矛盾しないと思います。自由に表現するためにも、立脚すべきエビデンスは必要です。

 

なお、当社は広告プラットフォームとしては珍しく、アテンションタイムを計測することができますが、このアテンション計測の技術を応用した「クリエイティブ・アテンション・トラッカー」という機能を全キャンペーンにおいて開放しております。

 

これは何かというと、ユーザーにインプレッションされたクリエイティブの中で、どの部分・要素がアテンションを集めているか可視化することができます。つまり、「どこが注目されているのか」「どの要素が効果的なのか」が明確になり、そこから得られる示唆をクリエイティブの改善に活かすことができます。ストーリーテリングの設計やPDCAの精度向上にも貢献する機能です。

 

これら一連の仕組みを活用すれば、ブランドの世界観やその広告がデジタル上でどのように受容されているかを可視化できるようになり、ブランドと消費者とのより良い関係が構築できます。

 

鈴木陽葉氏:広告が最も響く瞬間を捉えることに加えて、その瞬間にアプローチする広告表現も重要です。ブランド主体のメッセージがユーザーに響きにくくなってきました。ユーザー視点に立ち、インタラクティブな広告体験を付加価値として提供することで、ブランド好意度を高めてユーザーをナーチャリングしていきたいです。

 

Yewon氏:当社には4つの強みがあります。①世界最先端のコンテキスト技術、②ブランドの世界感を表現できるリッチクリエイティブ、③クリエイティブの注目時間を計測できるアテンション技術、④カテゴリごとのデータ分析を可能にするMindset Graphが揃っています。データとテクノロジーの両面からファッションブランドを支援していきます。

 

人間とAIによる共創へ

 

―ファッションブランドのデジタル広告は今後どのように進化していくと思いますか。

 

鈴木瑞季氏:よりパーソナライズされたコンテンツや体験を提供することで、ユーザーとの関係を深める試みが重視されていくと考えています。また持続可能性やエシカルな製品に対する消費者の関心が高まっていることから、関連するブランドの取り組みを積極的に伝えようとする動きも出始めています。こうした新たな訴求にも対応しつつ、ユーザーにとってより魅力的なデジタル広告が展開されることを期待しています。

 

Yewon氏:GumGumは、ファッションやラグジュアリー商品の世界観を表現できるインタラクティブな広告フォーマットの新規開発にも取り組んでいく予定です。将来的にはAR体験なども視野に入れたいです。

 

 

髙島氏:インタラクティブな要素を取り入れることで、消費者とブランドがつながる機会を創出していく必要があります。VRやARなどの技術を活用し、広告に体験価値を取り入れ、ユーザーが能動的にブランドに関与できる広告へと進化させる仕組みには興味を持っています。

 

いずれにせよ、ブランドの世界観を崩さないユーザーファーストなコミュニケーション形成と最先端のソリューションは常に掛け合わせて考えていくことが重要です。

 

菅原氏:デジタル広告の世界では、広告プラットフォームの管理画面上で手軽にユーザーをセグメントできるため、それによってブランドのメッセージが正しく届けられているという考えが根付いているように感じます。 しかし、いつの間にか私たちは、リアルな消費者をオンライン上の"ユーザー"として捉え、特定の属性を持つグループとしてターゲティングすることに慣れすぎてしまったのかもしれません。

 

本来であれば、それだけでなく、メッセージを受け取る消費者の感情や多面的な側面にまで想像をめぐらせることが、より良いブランド体験の実現には欠かせません。

 

とりわけザ・ゴール様が取引されているのは、至高の購買体験を実現するために、銀座や表参道といった一等地に出店する一流ファッションブランドばかりです。オンライン上でも至高の広告体験を提供しなければなりません。当社であれば、そのお手伝いができると信じています。

 

 

鈴木瑞季氏:消費者の共感を得ることが何よりも重要です。現在、ファッションブランドのブランディングでは、顧客やクリエイターといった第三者と共に作り上げる共創的なアプローチが重視されています。AIも言わば第三者です。人的資源かテクノロジーであるかを問わず、様々な情報やデータを駆使して共創的なアプローチをとると同時に、その効果をアテンション指標などを通じて精査していくことで、ファッションブランドと消費者をつなぐデジタル広告を実現できるのではないかと思います。

 

鈴木陽葉氏:どのユーザーに何を届けるのかを明確にし、リッチな広告と透明性を確保したデータを掛け合わせることで、セキュアな環境でユーザーをナーチャリングする仕組みを構築できれば、デジタル広告においても、消費者の信頼を損なうことなく、最適なタイミングでプロモーション展開ができるはずです。

 

<本件に関するお問い合わせ先>

GumGum Japan株式会社 (https://ja.gumgum.com)
マーケティング部 E-mail: japan-marketing@gumgum.com

株式会社ザ・ゴール(https://thegoalinc.co.jp/
デジタルソリューション部 E-mail: info@goal.dentsu.co.jp

 

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。