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アテンション指標をいかに活用すべきか―日本市場独自データを保有するGumGum Japanに聞く[インタビュー]

(写真左から)オズボーン氏、セリー氏、セルビー氏

 

マーケターの頭を悩まし続けてきたブランディング広告の効果測定手法として、アテンション計測がにわかに注目を集めている。日本市場ではまだなじみの薄いこの新たな方法論は具体的にはいかに活用し得るのか。日本市場に専用窓口を開設し、自社の広告プラットフォームを飛び出して、様々な媒体のアテンション計測に乗り出したGumGum社と同社傘下のPlayground XYZ社に話を聞いた。

(Sponsored by GumGum Japan)

 

GumGum Japan | AIP | The Art and Science of Maximizing Attention

 

事業成果と相関性が高い数値をリアルタイム計測

 

―自己紹介をお願いします。

 

セリー氏:広告に対するユーザーアテンションの測定と最適化に特化した広告テクノロジーを提供するPlayground XYZ社のジェイク・セリーと申します。アジア太平洋地域の営業責任者を務めています。

 

オズボーン氏:同じくPlayground XYZにて、日本及びアジア太平洋地域のメディア責任者を務めるソレル・オズボーンと申します。

 

セルビー氏:2023年9月よりGumGum Japanのマネージング・ディレクターとして着任したセルビー健三です。

 

―事業紹介をお願いします。

 

セリー氏:Playground XYZは、アテンション測定及び最適化プラットフォームであるAttention Intelligence Platformの開発と運営を行う企業です。2021年12月にコンテクスチュアル広告プラットフォームであるGumGumの傘下に入りましたが、以後もプラットフォームとしては引き続き独立して事業を営んでいます。よって、GumGumが運営するアドネットワークへの広告配信の有無に関わらず、ありとあらゆる広告プラットフォームにおけるアテンション計測及び最適化機能を提供しています。

 

―アテンション指標の概要について改めてお聞かせください。

 

セリー氏:ユーザーが広告を実際に視聴した秒数を「アテンションタイム」として計測することで、それぞれの広告に対してどれだけの関心が示されたか把握するための指標として活用されています。

 

動画広告を始めとするいわゆるブランディング目的の広告の効果測定においては、これまでビューアビリティやタイムインビュー、エンゲージメント率、クリックスルーレートなどの指標が活用されてきました。しかしながら、これらの指標は様々な課題を抱えていたことも事実です。

 

まずビューアビリティやタイムインビューは、あくまでもユーザーの目で捉えられる位置に広告が表示されたかどうかを判断するための基準であり、実際にユーザーがその広告を目にしたかどうかまでは把握できません。ユーザーが見る可能性すらない無駄な広告を排除するという目的においては有効ですが、ブランドリフトやコンバージョンといった具体的な成果を高めるために必要なデータは提供してくれません。

 

一方で事業成果とより直接的に結びついたクリック率やコンバージョン率などは、一般的には極端に低い数値に留まります。仮にコンバージョン率が0.2%だとして、残り99.8%の広告はすべて無駄なのかと言えば、そうではない。とりわけブランディングキャンペーンに従事した経験を持つマーケターであれば、残り99.8%の広告の効果も分析対象としてきたはずです。

 

 

そこで多くのマーケターは、ブランディング広告の効果を測る指標として、アンケートを通じたブランドリフト調査を実施してきました。しかしながら、この手法は、調査を実施してから結果が出るまでに数週間を要します。その間は広告の最適化に向けたPDCAを回すことができません。

 

これらの課題を解決する手法として注目を集めているのが、アテンション計測です。ユーザーが実際に広告を目にした時間をリアルタイムで計測し、事業成果とも密接な相関性がある指標として既に活用され始めています。

 

―広告を目にしたからといって必ずしもすぐに購入することがない長期検討商材や日用消費財などのブランディング広告向けの中間指標としての位置づけですね。

 

セリー氏:これまでのデジタル広告においては、取得できるデータで何とかブランディング広告の効果を測ろうとしていただけで、適切な中間指標がなかったと言っていいでしょう。またYouTubeはビュースルーレート、Facebookはコンバージョンレートなど、広告プラットフォームがそれぞれ異なるKPIを設定しているので、広告会社はどの媒体が最も有効かを統合的に判断するのに大変な苦労を強いられてきました。アテンション指標であれば横並びで比較することができます。

 

またアテンションはCookieを始めとする個人情報を使わずに計測できる点も特徴的です。プライバシー保護が今後さらに厳格化されても活用できます。

 

正確なデータをいかに広範囲に取得するか

 

―ユーザーが実際に広告を目にしたかどうかをどのように計測するのですか。

 

セリー氏:計測手法は主に二つあります。まずはカメラを通じてユーザーの視線が広告に向けられているかどうかを確認するアイトラッキング測定です。非常に精緻かつ正確である一方で、被験者や計測システムを用意する必要があり、データ収集の手間そして費用がかかるので自ずとデータ量は限定的になります。

 

もう一つはビューアビリティ、タイムインビュー、エンゲージメント率といったその他の指標を組み合わせることで、「これだけの条件がそろえばユーザーが広告を目にしたのは間違いない」との判断を下す手法です。アイトラッキング測定の手間をかけずに大量のデータを取得しやすいという利点があるものの、あくまでも推定なのでユーザーが本当に広告を目にしたかどうかを100%保証することができません。

 

―貴社はいずれの手法を用いているのですか。

 

セリー氏:当社は正確でかつ大規模なデータを取得するために、アイトラッキング測定と代替データを組み合せた手法を用いています。

 

まず前者については、アプリストアからインストールできるアプリを通じて被験者を募集し、オプトインユーザーに対してそのアプリ上で数十分程度のアイトラッキングを実施しています。その際、同時に日時、場所、利用端末といった環境データに加えて、ビューアビリティ、タイムインビュー、動画視聴時間などの行動データを取得します。すると「これらの条件がそろった際には、YouTube上で5秒間の動画広告視聴が行われた」といったことが把握できるようになります。さらに、これらの条件を再度アイトラッキング被験者に適用してデータ検証を行います。この仕組みを通じて、95%の正確性を以て大規模にアテンション計測を実施できるようになりました。

 

―アテンションタイムが長ければ長いほど良いのでしょうか。

 

セリー氏:広告媒体の特性に応じて、例えばYouTubeでは6秒、Facebookでは4秒、TikTokでは2秒といったようなベンチマークを設定します。その上で、仮にスキッパブル広告はバンパー広告よりもアテンションタイムが長いことが把握できれば、そちらに広告予算をより多く割くなどの判断ができるようになるでしょう。

 

 

また、大手ブランドなら企業ロゴを表示するだけで十分だが、スタートアップ企業であればより多くの説明を要するためにより長いアテンションタイムを必要とするかもしれません。

 

だから広告主は、まずはアテンションタイムと事業成果の相関性を見つけ出す必要があります。例えば過去3カ月間のブランドリフト調査結果や売上推移とアテンション測定データを機械的に連携させることで、必要とするアテンションタイムを把握するのです。仮に6秒だとしたら、6秒に達していない広告は効果が出ていないといった判断を行うことができるようになります。

 

―ビューアビリティ指標は、媒体社側が実態と乖離した操作ができるために形骸化してしまったとの声を耳にします。アテンション指標に対しても、いずれ媒体社が水増しする手法が編み出されてしまうのではないでしょうか。

 

セリー氏:アテンションは配信面だけでなく、クリエイティブも計測対象としています。そしてクリエイティブはバイサイドのみが管理できる要素です。クリエイティブに関して媒体社が何らかの水増しを行うことはまず無理でしょう。

 

―日本市場においては、アテンション指標はまだなじみが薄い概念ではないでしょうか。

 

セリー氏:アジア太平洋地域においてはやはりグローバル企業による取り組みが先行している状況です。また大手広告代理店もアテンション指標の活用を大手取引先に対して推奨し始めている段階であると理解しています。

 

オズボーン氏:アテンション指標の活用については欧州・中東・アフリカ地域の意識がとりわけ高く、次に北米地域が続きます。当社と同じくアテンション計測を行うLumen Research社が拠点を置く英国はとりわけ先進的であるとの印象を受けています。

 

 

ただし、私たちがわずか数日ほど日本に出張しただけで、アテンション計測に高い関心を示す日本の広告主とのコミュニケーションを取ることができました。日本市場においても既に機運は高まりつつあるのではないでしょうか。

 

セリー氏:アテンション指標とは単なる新機能ではなく、新しい概念です。日本市場に浸透するには若干の時間が必要となるでしょう。例えば300×250のバナー広告を同じ広告配信枠に表示すれば、どんな広告クリエイティブを用いてもビューアビリティスコアは同じです。しかしながら、アテンションタイムは広告クリエイティブによって異なります。このデータを有効活用するには、新たな知見が必要となります。

 

セルビー氏:GumGum上の広告配信については、2023年4月からアテンション計測を開始し、既に日本市場のアイトラッキングデータを蓄積しています。現段階で日本市場に特化した大規模なアイトラッキングデータを保持しているのは当社のみです。つまり当社であれば、日本市場において、アテンションに基づく精緻な広告配信の最適化を直ちに開始できることを意味します。

 

セリー氏:日本市場での最適化に活用できるデータが既に揃っていることは当社の大きな強みです。またアテンションという新たな概念と仕組みの導入に際しては、伴走者が必要です。当社が設置した日本市場専用のサポート窓口を大いに活用いただけたらと願っています。

 

セルビー氏:既に述べたように、当社はGumGum以外の広告配信プラットフォームに対しても、アテンション計測機能を提供していく予定です。多くの広告主様は、これまで各媒体の広告視聴1回あたりのコストを換算した上でExcelやスプレッドシートにまとめて広告投資に関する判断を行ってきたと思いますが、アテンション計測を通じてこうした作業はデータドリブンな自動最適化が可能です。2024年の後半ごろには、日本市場においてもアテンション最適化が普及し出していると見込んでいます。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。