リテールメディア市場成長のキーワード「ノンエンデミック広告」 EC事業拡大を後押しする新たな付帯収益獲得
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on 2025年4月30日 in
EコマーステクノロジーのリーディングカンパニーであるRoktが2024年11月21日に開催した『The Future of Ecommerce Summit』(通称:Rokt FES)にて、Rokt ビジネス開発 ディレクター 大野皓平氏とExchangeWireJAPAN副編集長で株式会社デジタルインファクトの執行役員 長野雅俊が登壇した。
本記事では、登壇において発表された、Roktと株式会社デジタルインファクトが共同で行った、国内初のノンエンデミック広告市場に関する調査報告の様子をレポートする。
(Sponsored by Rokt)
リテールメディアの新潮流『ノンエンデミック広告』とは?
まず、本セッションにおけるエンデミック広告とノンエンデミック広告の定義を解説する。
エンデミック広告とは、リテールメディア広告の一形態であり、媒体となるメディアやプラットフォームの主要なテーマやコンテンツに関連する内容を表示するものである。一例として、ファッションサイトに掲載される靴やバッグの広告や、ショッピングサイトのスポンサードプロダクト広告が該当する。
ノンエンデミック広告もまた、リテールメディア広告の一形態であり、特定のECサイトやアプリ上で商品やサービスを販売していない企業が、そのECサイトやアプリ上に出稿する広告である。一例として、ファッション/航空券/チケット/デリバリーサービスなどの販売を行うサイトやアプリ上に、ヘルスケアECサイトや音楽配信サイトなどの広告が掲出される事例が該当する。
長野はノンエンデミック広告に関して「日本ではまだ馴染みの薄い言葉ですが、米国市場では既にノンエンデミック広告市場が形成されつつあり、今後日本でも大きく発展する可能性が高い領域です」と報告。
そして、調査レポートでは、2023年の日本国内でのノンエンデミック広告市場は424億円で、この数字が5年後には約4倍の1693億円にまで成長すると予測している。
長野はこの予測について、10年ほど前から成長してきた動画広告市場およびインフィード広告市場の動向と、ノンエンデミック広告の類似性を指摘し、
「10年前、顧客体験の悪化が懸念された動画広告や、意味の説明から始まったインフィード広告が、日本国内で1000億円を超える市場規模に成長しました。ノンエンデミック広告も同様の成長を遂げる可能性が高いと考えられ、レポートで予測された2028年の1693億円という数値は現実的であると認識しています」と述べた。
また、長野が「ノンエンデミック広告に相当する広告を多数取り扱っているRoktとして、2028年の1693億円という数字をどう認識しているか」と質問したのに対し、Roktの大野氏は、Roktが取り扱う広告の増加や引き合いの多さ、エンデミック広告を行うEC事業者からのノンエンデミック広告に関する相談の増加なども理由に挙げ、ノンエンデミック広告に関するニーズが増加しているという見解を示した。
「そして何より、2023年のRokt FES参加者が40名弱だったのに対し2024年は2倍以上の方に参加いただきました。これは、ノンエンデミック広告の注目度が高まっている理由ではないでしょうか?」と笑顔で答えた。
続いて長野は本調査において、ノンエンデミック広告の年間平均成長率を300%と予測したことを紹介し、その理由として市場に大きな伸びしろがある点を挙げた。
現状、大手ECモールや一部の先進的な独立系EC事業者を除き、多くの事業者はまだノンエンデミック広告に取り組んでいない。今後、先進的な独立系EC事業者が成果を上げれば追随する企業が必ず現れ、市場が大きく成長していくと強調した。
ECサイトと広告主、双方にメリットをもたらす
ノンエンデミック広告の可能性
上記でノンエンデミック広告市場の伸びしろについて言及したが、長野はさらに3つの理由で、ノンエンデミック広告市場が成長する理由を紹介した。
1つ目は利益率である。
ノンエンデミック広告は基本的に広告取引コストのみが発生するため、規模が小さくても、利益率を考慮すれば事業者にとって見逃せない付帯収益となる。
2つ目は商流への非依存性である。
エンデミック広告の場合、ファッションECサイトであればファッション関連の広告が配信されるため、取引先との関係性などを考慮する必要がある。一方、ノンエンデミック広告はECサイトとの関連性が低い広告を配信できるため、商流に影響を与えることがない。
3つ目は、高額な広告費を持つ事業者の広告を配信できる可能性である。
2つ目と重複する部分もあるが、ノンエンデミック広告であれば関連性の低い広告を配信できるため、例えばファッションECサイトであっても、広告費の大きい自動車、金融商品、不動産、世界規模の動画プラットフォームなどの広告を配信することが可能となる。
さらに広告主側から見たノンエンデミック広告の魅力についても解説した。
ECサイトの購買データは、広告主にとって極めて価値の高い情報である。ノンエンデミック広告を通じて、自社で販売している商品と直接関係のないECサイトの購買データを取得できれば、マーケティング戦略の精度を大幅に向上させることができる。
加えて、リテールメディアの進化も見逃せない。従来のカスタマージャーニーでは、消費者はGoogleなどで商品の口コミを確認し、購買を検討する時間が大半を占め、実際に商品を購入するECサイトに滞在する時間はごくわずかだった。しかし、各ECサイトがリテールメディアに注力することで、サイト内で商品の口コミを確認し、購入を検討し、そのまま購入に至る流れが確立されつつある。この変化により、ECサイトへの滞在時間が延び、広告出稿のメリットも一層高まっている。
そのうえで長野は、ノンエンデミック広告のネガティブな側面についても言及した。
「ノンエンデミック広告を推進する際には、以下の点に注意が必要です。第一に、自社プラットフォームで取り扱いのない商品を宣伝することになるため、広告のターゲティング精度が重要となる。第二に、ECサイトによってはブランドイメージを重視する傾向があるため、広告クリエイティブや掲載商品の選定には十分な注意が必要です」
大野氏もノンエンデミック広告市場拡大において配慮するべきこととしてユーザー目線の重要性を指摘した。
「ECサイトで興味のない商品や広告が表示されると、ユーザーの購買体験を損ね、ブランド毀損につながる可能性があります。また、広告が原因で離脱されるという本末転倒な結果を招く恐れもあります。Roktは、EC事業者、ユーザー、広告主にとって三方良しのソリューションを提供することで、こうした課題に対応していきます」
ノンエンデミック広告が
リテールメディアの新時代を切り拓く
最後に大野氏から「ノンエンデミック広告が発展していくうえで重要なキーワードは?」という質問に対し長野は3つのキーワードを紹介した。
1つ目は、本業とのシナジーである。
ECサイトのメイン事業は販売事業であり、それを妨げるような広告事業はあってはならない。ノンエンデミック広告を展開するとしても、そこで得た広告収入は、ユーザーへの還元やサービス向上に充てるという意識が重要である。
2つ目は、Scalability(拡張性)である。
個々のECサイトが単独で広告主の要求を満たすのは困難な場合が多いため、ECサイト同士が連携し、拡張性の高いネットワークを構築することで、広告主の多様な需要や要望に応えられるようにする必要がある。
3つ目がレレバンシー(興味・関心)である。
ECサイト上で販売していない商品の広告を無差別に表示するだけでは、ユーザー体験を損ない、サイトからの離脱を招きかねない。そのため、ユーザーのニーズに寄り添い、受け入れられやすい、関連性の高い広告をいかに配信できるかが、ノンエンデミック広告成功の鍵となる。
ノンエンデミック広告は、高い収益性や柔軟性、大手広告主との連携など、大きな強みを備えており、日本市場での急成長が期待される新領域だ。
ノンエンデミック広告に興味のある方は、Roktが公開している、「ノンエンデミック広告がリテールメディアの新時代を切り拓く」と、ExchangeWireJAPANの記事をぜひご拝読していただきたい。
ABOUT 町田貢輝

ExchangeWireJAPAN 編集担当 日本大学法学部法律学科卒業。編集プロダクション、出版社でエンタメ、健康、IT関連の雑誌と書籍の編集・進行管理に従事。2024年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。DX領域のメディア運営全般ならびに、調査研究を担当する。