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アテンションを活用した革新的キャンペーン事例 電通デジタル×Teadsが切り拓く新時代の広告戦略[インタビュー]

デジタル広告の進化に伴い、従来の広告表示回数やクリック率といった指標に加え、ユーザーが実際に広告を目にしたかどうかを示すアテンション指標の重要性が増している。ただ日本国内ではまだ一部の先進的な広告主のみが導入している状況にあるため、その利用実態は見えづらい。そこで電通デジタルとTeadsが共同で実施した国内企業ブランド向けキャンペーンを通じて、アテンション指標がいかに活用されているかを探った。

 

国内標準がまだない新指標

 

-自己紹介をお願いします。

 

高塚氏:電通デジタル第3アカウントプランニング部門第2事業部の高塚健太郎と申します。クライアント企業が抱える様々な事業課題の解決に向けて、メディアプランニングを含めたご提案をしています。

 

金澤氏:Teads Japanでアカウントエグゼクティブを務める、金澤史帆と申します。電通デジタル様をはじめとする大手広告代理店企業とのお取引を担当しています。

 

-両社がアテンション計測を実施したキャンペーンの概要についてお聞かせください。

 

高塚氏:商品のブランド認知拡大に注力するクライアント企業からのご要望を受けて、ユーザーにしっかりと視認される広告の配信方法を改めて精査していた際に、Teads様よりアテンション計測とその結果に基づく広告クリエイティブの改善策をご提示いただけるとのご提案を受けました。

 

Teads様から、アテンション計測の事例をご紹介いただいており、その中でアテンション指標とブランドリフトが連動するということを伺っておりました。
今回のキャンペーンでもアテンション指標の向上に努めることで、最終的にはブランド認知拡大につなげることができると考えました。

 

金澤氏:タッチポイントの増加などを受けて、ユーザーが一つ一つの広告に接触する時間は減少傾向にあります。つまり、きちんと見られていない広告が増えているのです。こうした環境下においては、「広告が見られている可能性がある」ことを示すに過ぎないビューアビリティや広告視聴時間といった従来の指標だけでは不十分です。そこでTeadsでは、広告がしっかりと見られたことを示すアテンション指標を開発したLumen Research社と提携することで、アテンション計測が可能な環境を整備しました。

 

現在はTeadsのネットワークにつながるすべての配信面でアテンション計測が可能です。インプレッションやクリック測定と同じようにアテンションを計測できる機能が初期設定として搭載されています。

 

-アテンション計測の実施に対して広告主はどのような反応を示しましたか。

 

高塚氏: そのクライアント企業は以前からブランドセーフティやアドベリフィケーションに高い関心を持ち、とりわけビューアビリティは注視していたので、アテンション計測に対しても前向きに取り組んでいただきました。

 

当社よりご提案した時点では、アテンション計測という言葉自体にはあまりなじみがなかったようです。しかしながら、概要を説明すると、これまで抱えていた課題に取り組む上で、アテンション計測が一助になるとご判断いただきました。

 

-その広告主にとっては初めてとなるアテンション計測を実施する上でどのような準備や整理を行いましたか。

 

高塚氏:先ほど金澤さんが仰ったように、Teadsのネットワーク上であれば計測自体は特に準備することなく実施可能なのですが、アテンション指標になじみのない企業としては、「良い/悪い結果でした」という報告とともに数値だけを示されても判断に困ります。初めての試みなので、そもそも比較対象となるベンチマークがなく、評価ができないからです。

 

 

そこで、まずはアテンション指標の基本的な概念から説明することに加えて、Teads様には「広告のどの部分にユーザーの視線が集まっているのか」という分析結果を提供してもらいました。広告クリエイティブのどのような要素が最もユーザーの注目を集めるのかという点はこれまで推測するしかなかったのですが、アテンション計測を通じて可視化されたことで、クライアント企業からは大変参考になったとの声をいただきました。

 

-その広告主にとっては初めての試みだったとしても、アテンション指標の業界標準的なベンチマークはあるのではないでしょうか。

 

金澤氏:アテンションは新しい指標なので、国内の業界標準がまだ出来上がっていません。米国や欧州といった先進的な市場はデータを蓄積しつつありますが、日本と欧米ではアテンションスコアが大きく異なるケースも多く、日本のクライアント企業にとってはあまり参考になりません。

 

 

 

昨年より本格的に国内にてアテンション計測をローンチいたしましたが、日本国内のベンチマークを設定できるよう、現在データの収集・整備を進めております。業界ごとの、ベンチマークを算出するという点においては、今後も継続したデータの収集が必要と言えます。

 

アテンションスコアをいかに分析・活用するのか

 

-今回実施したキャンペーンにおけるアテンション計測の結果を教えていただけますか。

 

金澤氏:新商品の訴求を目的として、同じ構成でテキストのみ異なるクリエイティブを3種類ご用意頂きました。その中で、特定の1つだけ目立ってアテンションスコアが高いものがありました。

 

また、本キャンペーンではブランドリフト調査も実施したのですが、そこでも同じクリエイティブが最も高いブランドリフト効果を示していました。ブランディングキャンペーンにおいては、ブランド認知は向上したけれども、購入意向が上がるまでには至らない場合もあるのですが、今回は購入意向も上昇しています。

 

 

 

さらに今回はキャンペーン実施前に、表示された広告に対するユーザーの目線の位置をAI分析機能を通じて推定したところ、すべてのクリエイティブで、ほぼ同様にテキスト部分に目線が合っていました。つまりテキストないしはコピーが違いを生み出したということになります。

 

高塚氏:その点は非常に興味深く感じました。特定のクリエイティブだけ突出して認知から購入意向まで向上することは珍しいのではないかと個人的には思います。

 

-アテンション計測の結果はどの段階で把握できるのでしょうか。

 

金澤氏:インプレッションなどと同時にTeads Ad Manager上(広告管理画面)でご確認いただけます。従って、キャンペーン実施期間中にアテンションスコアを確認しながら、クリエイティブを変更していくことが仕組み上は可能です。

 

しかし、現時点ではアテンション指標とブランドリフト効果の相関性を証明するためのデータについては蓄積中の段階であるため、今後両者の相関性が確認できたタイミングでアテンション指標に基づく最適化をご案内できたらと考えております。

高塚氏:アテンション指標については我々のような立場でもまだまだ理解を深めていく余地が残っていると感じています。ただし、今回のようにブランド認知とブランドセーフティを重視されるクライアント企業には、アテンション指標は非常に相性が良いとの印象が強まりました。

 

 

-アテンション計測全般において課題に感じることはありますか。

 

金澤氏:業種ごとにアテンション指標の平均値は異なることが想定され、例えばエンターテインメント商材とB to B商材ではスコアが大きく異なる可能性があります。

今後、日本で業界別やキャンペーンの種類別にアテンションとブランドリフトとの相関性を見出すことができれば、広告最適化を行う上で重要なデータになると考えています。

高塚氏:ここまで広告プラットフォームとクライアント企業の視点からお話してきましたが、その先にいるのは生活者ないしユーザーです。アテンションスコアが高い広告がユーザー体験を毀損してしまう可能性については十分に留意すべきだと思っています。今後はユーザー目線でのアテンションスコアの精査も行っていきたいです。

 

日本市場への普及の見通し

 

-日本国内におけるアテンション指標の導入状況はいかがですか。

 

金澤氏:既に申し上げた通り、Teadsのネットワーク上ではすべてのクライアント企業及び広告代理店様がアテンションスコアを確認いただけます。しかしながら、全キャンペーンでアテンション指標が重視されているわけではないと思います。

 

高塚氏:先行している米国や欧州市場に倣い、日本でもアテンション計測を積極的に導入している外資系のクライアント企業はいらっしゃいます。国内の企業に対しては、まずはアテンションという概念の説明から必要とされる場合が多い印象です。

 

ただし、ブランドセーフティという概念も、国内で話題を集め始めてから浸透するまでのスピードは非常に速かったと記憶しています。アテンションも同様の広がり方をするのではないかと想像しています。

 

―アテンション指標に対する期待をお聞かせください。

 

高塚氏:アテンションスコアをただ示すのではなくて、「商品の認知にどのようにつながったのか」「特定の媒体におけるこのような施策はアテンションが高い」といった分析や知見とともにクライアント企業にお伝えできるようになることを目指しています。アテンションスコアとブランドリフト効果の相関性が確認できたとしても慢心せず、アテンション指標に基づくと、どういったセグメントのユーザーに対してどのようなクリエイティブ手法があるかなどを継続的に検討できたらと思います。

 

金澤氏:当社のような広告プラットフォームは、絶え間ない環境変化に応じて、最適な機能を提供し続ける必要があります。Teadsは、その一環としてのアテンション指標の推進を含めて、常に最適なソリューションをお届けできるプラットフォームでありたいと思います。

 

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。