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TeadsのグローバルCMOが説く今年注目すべきアドテクのトレンド[インタビュー]

世界30カ国に拠点を構える広告プラットフォームであるTeadsが、世界的なアドテク動向をまとめた報告書を発表した。日本の市場関係者は、同報告書をいかに読み解くべきなのか。同社のグローバルCMOに話を聞いた。

 

独自の調査結果を発表

 

―自己紹介をお願いします。

 

Teadsで最高マーケティング責任者(CMO)を務めるナタリー・バスティアンです。広報とマーケティング、リード獲得、イベント運営、ブランディングなどに関わる業務を統括しています。直近では、当社のオムニチャネル戦略においてとりわけ重要な位置を占めるコネクテッドテレビに対する取り組みについての周知活動を強化している最中です。

 

―貴社が年明けに発表したTech Themes 2025の概要についてお聞かせください。

 

Tech Themes 2025は「オムニチャネル」「プライバシー」「プレミアムな広告在庫」「モーメント」「卓越したクリエイティブ」といった、2025年の広告及びマーケティング業界において注目すべき重要な要素を解説した報告書です。

 

北米、欧州、南米、アジア太平洋を始めとする33カ国を網羅したグローバル最新動向を反映すべく、当社独自のアンケート調査やコンテンツ消費傾向の解析ツールであるTeads Media Barometerまたは調査会社を始めとする第三者機関が提供する業界データに基づきながら、ロレアル、トヨタ自動車、ヒルトンといった大手広告主、広告代理店、メディア関係者の見解を踏まえて作成しました。

 

日本市場特有の傾向とは

 

―グローバル動向と日本市場の間には若干の乖離があるのではないでしょうか。

 

もちろん国によって異なる傾向が見られる場合はあるものの、共通項も多くあります。例えば、地上波テレビの役割が比較的大きいとされている日本市場においても、スマートフォンの爆発的普及とコネクテッドテレビの利用拡大を受けて、他国と同じく動画広告におけるオムニチャネル戦略がより重視されるようになってきています。

 

出典:Teads Tech Themes 2025

 

より具体的には、コネクテッドテレビならではの「リラックスして視聴する瞬間」とスマートフォン特有の「積極的に操作する瞬間」の両方で視聴者を引き付け、関連性を高め、記憶に残る体験を提供するような動画広告キャンペーンの実現が求められているのです。

 

―その他に日本市場特有の注目すべき動向はありますか。

 

日本のユーザーはプライバシーを尊重するプレミアムな広告配信環境と、ブランドセーフティが担保された上でさらに日々の生活に密着したコンテンツを求めています。つまり、プレミアムな広告在庫と独自のコンテキストターゲティング技術を有する当社にとっては大きな可能性を持つ市場であると言えます。

 

―Tech Themes 2025のデータ参照元の一つとなっている「Teads Media Barometer」についてお聞かせください。

 

ユーザーのプライバシーを保護しながらコンテキストターゲティングを効果的に行う上で有用となる情報を提供するツールです。コンテキストターゲティング広告の最新動向を紹介すると同時に、どのような文脈においてどのような広告を表示すればユーザーのエンゲージメントやブランド想起または購入意向を高めることができるかについての分析を提供します。

 

本ツールを通じて、Cookieに依拠せず、プライバシーを保護しながら、日本の消費者の需要や好みに応じた広告を関連性の高い配信面へと配信するために有用な情報を得ることができるはずです。また日本の消費者に特徴的なオンライン行動や文脈をリアルタイムで把握することで、広告効果を最大限に高めることができます。

 

2025年における「オムニチャネル」の意味合い

 

―Tech Themes 2025が取り上げた「オムニチャネル」「プライバシー」「プレミアムな広告在庫」「モーメント」「卓越したクリエイティブ」といった要素は、オンライン広告市場においては長年にわたり重視されてきた要素なのではないでしょうか。

 

仰る通り、これらの要素はずっと注目され続けてきました。しかしながら、例えばアテンション計測を始めとする新たな技術が実現した2025年という特有の時代環境においてはそれらの要素はこれまでとは異なる意味合いを持ち得ます。

 

 

「オムニチャネル」について言えば、AI活用を通じてコネクテッドテレビ広告在庫とモバイル広告在庫を統合する上での課題は最近になって顕在化されてきました。また「プライバシー」も広告配信に携わる上で遵守すべき基本的な概念ではあるものの、Cookieレスなターゲティング手法が本格的に検討されるようになったのはごく最近のことです。

 

「プレミアムな広告在庫」については、ブランドセーフティが担保され、かつコンテキストターゲティング技術を通じてユーザーと関連性のある状況を構築することが求められています。また「モーメント」に関して、当社は様々な文脈やイベントに応じてリアルタイムで柔軟に最適化を図ることで最大の広告効果を発揮する広告プラットフォームを構築してきました。そして「卓越したクリエイティブ」については、パーソナライズされたAIボイスオーバーによる多言語・多コンテキスト対応広告や、Alexaを活用した音声対応型インタラクションが可能なActionable CTVなどの仕組みをご用意しています。

 

―2025年全体を通してその他に今後どのようなトレンドが見られると思いますか。

 

テクノロジー動向、消費者意識、プライバシー関連規制の進展などを鑑みると、今後はAIを活用したパーソナライゼーション、アテンション指標、ファーストパーティデータへの注目が一層高まるでしょう。AIを活用することでプライバシーを保護しながらパーソナライズされたユーザー体験の実現を求める声が高まっています。またCookieレス環境下でも広告の費用対効果を最大限にすることを目的としたファーストパーティデータやアテンション指標の活用も進んでいくはずです。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。