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「GumGumらしさ」を体現するブランディングを目指して-GumGum Japan 吉田 梨南氏

デジタル広告業界で働く広報・マーケティング担当者は、専門性が高く難解な業界用語と向き合いながら、形として見えにくい自社プロダクトやサービスを、日々顧客をはじめとする様々なステイクホルダーに、ストーリー性をもって分かりやすく伝え、自社のブランド価値を高めていくことが求められる。

 

そんなミッションをもつ広報・マーケティング担当者は日々何を考え、どんなことに向き合っているのだろうか。デジタル広告業界の広報・マーケティングのプロフェッショナルにインタビューを行い、彼らのリアルに迫る。第5回は、GumGum Japan株式会社の吉田 梨南氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 角田 知香)

 

 

【インタビュー対象者】

吉田 梨南氏

GumGum Japan株式会社 マーケティングマネージャー

人材業界でのリクルーティング業務を経て、ベルギー発のアプリマーケティングSaaSプラットフォーム「AppTweak」に3人目のメンバーとして入社。グアムで10年を過ごした経験から培った日英バイリンガルの強みを活かし、日本市場のマーケティング立ち上げやローカリゼーションを担当した。2024年9月よりGumGumに参画し、マーケティングマネージャーとして、国内におけるブランディングや認知拡大をイベントやコンテンツを通じて推進している。

 

【インタビュー対象企業】

GumGum Japan株式会社

コンテクスチュアル技術を核に広告ソリューションを提供する、アメリカ発の広告テクノロジー企業GumGum Inc.の日本法人。個人データに依存せず、ユーザーのマインドセット (心理状況) を捉え、関心や意図に沿った広告を提供することを強みとする。コンテキスト、アテンション、クリエイティブを柱に、ユーザーの関心を惹き、記憶に残る広告体験を届けることで、ブランドとユーザーを結びつける。

 

 

-現在ご担当されている業務領域を教えてください。

マーケティング全般を担当しており、note記事やプレスリリースの作成、メルマガやSNSでの情報発信、メディア取材の調整や対応、イベントの企画・運営、アワード応募や新プロダクトの市場向けメッセージ開発などに取り組んでいます。

イベントにおいては、コンセプト設計から集客・当日の運営まで幅広く携わり、進行管理やコンテンツ制作も含めて全体を統括しています。日本チームで唯一の専任マーケターとして、グローバルの戦略を日本市場にローカライズする“翻訳者”的な役割を担いながら、営業チームとも連携し、コンテンツと体験を掛け合わせたブランド発信を推進しています。

 

 

「GumGumらしさ」を体現するイベント企画

 

-イベントではどのような企画を目指していますか。

私たちがイベントで目指しているのは、堅苦しいプレゼンにとどまらず、参加者の記憶に残る体験そのものを通じ、GumGumが考える広告のあり方を体現することです。単に情報を伝えるのではなく、「人の心に残る瞬間」をつくることを意識した仕掛けづくりにこだわっています。

直近の自社開催イベント「Summer of Moments」では、グローバル共通の“レトロ”というテーマをベースに、日本独自の解釈として“昭和レトロ”と“シティポップ”を組み合わせ、懐かしさと新しさが交差する空間をデザインしました。

 

中でも「キャプチャ・ザ・モーメント」フォトコンテストは、弊社の“モーメントを捉える広告配信”という理念にちなんだ企画です。自社の主要プロダクト ― Context、Attention、Creative ― を3つの部門に設定し、Context賞は世界観の表現、Attention賞はインパクト、Creative賞は遊び心ある構図やアイデアを評価軸としました。製品の特長を審査基準にすることで、来場者が楽しみながら自然にGumGumの価値を理解できる仕掛けとしています。

また、新たにローンチしたメディアプランニングツール「Mindset Graph」に関しては、その価値を“説明する”のではなく“言葉で体感してもらう”ためにキャッチコピーコンテストを開催。広告代理店の方々から実際にコピーを募集し、当日に発表することで、機能理解だけでなく魅力を自分の言葉で表現していただく場としました。

さらに、アドテクプラットフォームでありながらも、独自の世界観をもったブランドとして見せていきたいという意向があり、デザインやクリエイティブには細部まで強くこだわっています。 会場演出やノベルティ、スタッフTシャツに至るまで一貫したトーンで作り込み、世界観を体験として届けることを大切にしています。

私たちは、「広告は単に表示されるものではなく、興味を引き、価値を感じられる体験であるべきだ」という理念を大切にしています。イベントはその思想を体現する場であり、広告そのものを“人の心に残る瞬間”として描き出す試みなのです。

 

-会社全体の雰囲気はいかがですか。
会社全体の雰囲気は、”ガムガム”らしく、まさにガムボールマシンのように色とりどりの個性が集まっています。 平均年齢は30代前半と比較的若く、多国籍でバックグラウンドもさまざまなメンバーが在籍しており、オフィスでは英語のさまざまなアクセントから韓国語、中国語、関西弁まで飛び交う独特な環境です。お互いを尊重し合える関係を目指していて、DEIB (Diversity, Equity, Inclusion, and Belonging) 研修を外部講師を招いて実施したり、性格診断を活用したVR探偵ゲーム形式のチームビルディングなど、ユニークな取り組みも行っています。

また、楽しいことに貪欲なメンバーが多く、定期的にオフサイトや社内イベントも開催されています。個性豊かでさまざまなパーソナリティが集まっているからこそ、時には意見がぶつかることもありますが、それも「もっと良くしたい」という前向きな熱意の表れだと感じています。

いわゆる一人マーケという立場で、普段はMD以外と業務で関わることはあまり多くありませんが、ランチや業務外での交流を通じて自然に仲間とつながることができています。外資らしい合理性と程よいウェットさが共存しており、オフィスに行けば必ず誰かがいるので、出社日は決まっていなくても私はほぼ毎日出社しています。

 

 

-どのような業務に時間を割くことが多いですか。

時期によって異なりますが、主にコンテンツ作成とイベントの企画・運営に時間を割いています。加えて、MDと一緒に「プロダクトの魅力をどう伝えるか」「どう市場に浸透させるか」といったブランディングやストーリーテリングについてブレインストーミングをしながら模索することも多いです。

特に、インビデオ広告のような革新的なフォーマットや、近年注目が高まっているアテンション指標、そして弊社の基盤であるコンテクスチュアル広告そのものも含め、まだまだ啓蒙活動が必要な領域が多いため、PRコンテンツに加えて市場や業界に示唆を与える記事やコンテンツづくりを意識しています。自社サイトは主にグローバル向けに設計されており、日本市場に最適化された情報発信の場が限られるため、日本市場に適した形で情報を発信する拠点としてnoteを立ち上げたのもその一環です。

 
 

ブランドとして目指すストーリーテリング

 

-ローカライゼーションにおいて心がけていることはありますか。

私は大学で言語学を専攻し、特に異文化間コミュニケーションや翻訳の授業を通じて、単なる直訳ではなく文化や背景を踏まえて「どう表現すれば伝わるのか」を考える分野に強く興味を持ってきました。その視点は今の仕事にも活きており、日常のコミュニケーションやコンテンツ制作において常に意識しています。

多くの外資系企業では翻訳会社に依頼したり、最近ではAIツールを活用したりと翻訳自体は容易になっていますが、それが必ずしも「伝わる」こととイコールではありません。前職では翻訳業務が中心でしたが、「これで十分だろうか」と感じることも多くありました。

現在は、グローバルのコンテンツをそのまま訳すのではなく、あくまで情報としてインプットした上で「日本のオーディエンスにどう伝えるのが最も響くのか」を再構築することを大切にしています。単なるローカライズにとどまらず、「GumGum Japanとして、会社のコンセプトをどう表現するか」というストーリーテリングの視点を重視し、人間味のあるコンテンツづくりを心がけています。

 

-業務で注力していることは何ですか。
業務では特に、自社のブランディングとストーリーテリングに力を入れています。GumGumは「ブランディングを躍動させる広告プラットフォーム」を掲げているので、まずは日本で自社のブランドをしっかり根付かせることが大事です。そのうえで、ただ情報を出すだけでなく「どうすれば心に響くか」を常に意識しています。

常識にとらわれず新しいことに挑戦することも大切にしています。グローバルマーケティングチームからは当初「まずはグローバルのやり方に沿ってほしい」という意向がありましたが、日本独自のクリエイティビティを積み重ねることで「ジャパンチームは本当にクリエイティブだね」と評価されるようになりました。今では、毎回どんなアウトプットを出すのか楽しみにされるほど、自由に取り組める環境になりました。

もちろん迷走しないように一貫性は意識しつつ、遊び心を加えることも忘れません。イベントでも「どう工夫すれば楽しんでもらえるか」「体験として印象に残るか」を大切にし、常に新しい仕掛けを模索しています。まだまだ発展途上ですが、勢いが出てきた今だからこそ、ワクワクを原動力にコンテンツやイベントを発信し続けていきたいと考えています。

 

-いま最もPRしたいことを教えてください。

今年は2つのプロダクトをローンチしました。ひとつは、映像コンテンツに自然に溶け込み、視聴体験を阻害しない革新的なCTV広告フォーマットの「インビデオ」。もうひとつは「Mindset Graph (マインドセット・グラフ) 」で、ブランドに最も関連性の高い文脈を特定し、高いアテンションが見込める潜在オーディエンスを発見するメディアプランニングツールです。夏のイベントで行ったキャッチコピーコンテストの最優秀賞『あなたの知らない“あなた”を掴まえる』という言葉は、このツールの本質を言い表しています。

いずれも「広告は単に表示されるものではなく、人に響き、価値ある体験であるべき」というGumGumの理念を体現するものです。今後もプロダクトはもちろんマーケティング面でも新たなことにチャレンジしてまいりますので、ぜひご注目ください!

 

▼ インビデオ広告について:国内初 (※) !GumGum、無料映像配信サービス「FASTチャンネル」にて新CTV広告フォーマット「インビデオ広告」の提供を開始

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000064.000041130.html

▼ Mindset Graphについて:"広告が空気を読めば、広告ブロッカーなんていらない" ── GumGum CEOが目指す、デジタル広告の未来

https://note.com/gumgum_japan/n/n574db1c5b88b

 

ABOUT 角田 知香

角田 知香

ExchangeWireJAPAN 編集担当。イギリス・キングストン大学院にて音楽学の分野で修士号を取得。学校・自治体文化講座等にてアート講座講師として活動後、2024年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。