デジタル時代のCMOが語る、その役割と資質〜マリンソフトウェアのマット・アックリー氏にインタビュー

CMO Mr.Matt Ackley

10月下旬、マリンソフトウェアの日本オフィス開設一周年を記念するイベント「デジタル広告の進化とCMOの役割』が開催された。講演のため来日した同社CMOであるマット・アックリー(Matt Ackley)氏に、米国におけるCMOのトレンドや、デジタル時代に求められる資質について伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan編集長 大山忍)

 

 

 

米国企業に広まるCMOの新設

 

 

まず、マットさんの経歴を教えてください。

 

マット:オンラインマーケティング業界に踏み込んだのは2005年です。eBayに5年間在籍し、最終的にはオンラインマーケティンググループを統括していました。その後、2年間、GoogleでDoubleClick、Google Analytics、YouTube、Google Display Networkを担当し、その後マリンに入りました。

 

 

マリンにおけるCMOの役割を教えてください。

 

マット:プロスペクトやクライアントに対するマーケティング活動がメインです。それに加えて、マリン全体のコーポレートディベロップメントや製品戦略も見ています。

 

 

 テクノロジー企業における新しい役割としてCRO(Chief Revenue Officer)はよく耳にしますが、CMOはあまり聞きません。今回、マリンがCMOを新設した背景は?

 

マット:米国では、CMOはポピュラーなタイトルになりつつあります。新たにCMOというポジションを設ける企業では、”Voice of the customer”、顧客の声を聞く役割が与えられています。

 

マリンの場合はBtoBカンパニーですので、実際にカスタマー企業を訪問し、彼らの言葉にきちんと耳を傾けます。彼らが求めるプロダクトや、業界の動きをどう予測しているかをヒヤリングし、我が社の製品戦略に反映させています。今回の来日も、日本市場を理解しカスタマーの声を聞くことが主な目的です。

 

 

今回の一周年記念イベントの主題に、CMOを選んだ理由を教えてください。

 

マット: CMOやマーケティング統括のヴァイスプレジデント(VP)などが、今後テクノロジーへの投資を増やしていくと読んでいるからです。イベントでも数字をご覧いただきましたが、CIOよりCMOのテクノロジー関連の予算が増えると思っています。

 

その流れ、トレンドの重要性を皆さんに認知してもらいたいと考えました。会社の予算の中で、これまでマーケティングは最適化や効率化が実施できない分野でした。これからは、CMOがテクノロジーを駆使して最適化や効率化を実現していく必要があります。

 

 

 

米国でCMOに求められる役割とは?

 

今、米国で一般的に求められるCMOの役割は?

 

CMO_Mr.MattAckleyマット:主な役割は、顧客の声をしっかり拾うことです。そして、自社にとってのベストカスタマーを特定し、そこからもたらされる価値、また彼らが求めているものを理解していきます。カスタマーから見た効果や満足度、会社やサービスとして約束したことをきちんと提供できているかを測定します。

 

コミュニケーションも大事な役割のひとつで、今後はテクノロジーを使ってそれをどうドライブしていくかもポイントになります。広告がオンラインに移行するにあたって、新しい形のメディアアウトレット(メディアの販売経路)にどう移り、新しい形の広告にどう対応していくかが非常に重要です。

 

 

米国のCMOのキャリアパスを教えてください。従来型マーケティングからデジタル領域にも幅を広げるのでしょうか?

 

マット:米国は今、環境が大きく変わっている最中です。トレンドがテクノロジーにシフトし、新しいメディアへの移行が加速化している。CMOにテクノロジーのバックグラウンドや分析能力などを期待する傾向が強まっていて、それは今後も続くでしょう。企業は、マーケティングのプロセスを効率化し、生産性向上の課題を抱えています。実際、CMOの時間は、システムとシステムをつなげる仕事やデータベースの構築、分析、アナリティクスといった分野に費やされます。

 

マリンでのCMOの役割はどうですか?

 

マリンでは、ウェブのさまざまな場所からデータを取得し、今後どの企業がペイドサーチに大きく投資していくかを予測しています。これを分析することで、自社が提供するソリューションと相性がいいベストマッチな企業が特定できます。

 

見込みのあるプロスペクトカスタマーと話をするときは、その会社を理解した上で対応方法をカスタマイズします。その後、発注に至るまでの各ステージでもアウトリーチの仕方はさまざまです。このプロセスは自動化されており、実際にはセールスチームにデータを渡して、彼らがリードする形で営業活動をしています。

 

 

 

日本でCMOを目指すマーケッターへのアドバイス

 

 

日本にはCMOがまだ少ない。これからCMOを目指す人が持つべき資質、その役割を果たすチームに求められることを教えてください。

 

マット:まず大事なのは、カスタマーやプロダクトをきちんと理解できるかどうか。ただ、それを直感に頼るのではなくデータを基に行うこと。2つ目は、会社内の他部門などと横断的に仕事ができる能力。また、CMOには、会社やブランドに対する情熱やビジョンを発信できる力が求められるでしょう。

 

繰り返しになりますが、デジタル時代のCMOには、テクノロジーについての理解と、統計学や分析の能力がどちらも必要です。「CMOだからクリエイティブでなければならない」という偏見をよく耳にしますが、私はそうは思いません。

 

 

アドテクノロジーの分野はカオスマップと言われるほどトレンドが早く、次々に新しいテクノロジーが登場します。CMOやエグゼクティブレベルの人員にはどれだけ深い知識が求められますか。

 

マット: CMOの仕事は、全ての技術を細かいところまで理解することではなく、組織を作ることです。その組織を構成するのは当然、人です。ビジネスを理解する人、テクノロジーを理解する人、分析能力に長けた人、それを数値化できる人、さまざまなプレーヤーが集まったフレキシブルな組織を作るべきでしょう。

 

 

データドリブンなマーケティングを推進していく上での失敗談、あるいは米国のCMOが苦労している点は?

 

マット: eBayでは、データを使って短期的な業績を見ていました。しかし、バイヤーは長期間にわたってeBayを利用します。購入時のエクスペリエンスが好ましくない状況が続くと、バイヤーはある日突然逃げてeBayを離れてしまう。こういったバイヤーの経験の資質は、短期的な業績測定には反映されません。広告マーケティングのシステムが、長期間訪問、利用してくださるお客様に最適化されておらず、吸い上げられなかったことが課題でした。

 

 

最後に、未来のCMOを目指す日本のデジタルマーケッターに向けてメッセージをお願いします。

 

CMO_Mr.Matt Ackleyマット:私が職務の中で理解してきたことは、やはり組織とチームに立ち戻ることの大切さです。テクノロジーの知識、会社の製品、今まで培ってきたマーケティングのノウハウ、これらを関連付けられる素養や能力がCMOには必要だと思います。

 

CMOの役割は、グループを結びつけることです。各ファンクションを結びつけ、チームスピリットを育んで、よりフレキシブルな組織を目指して先導すること。そうしなければ、次々と新しい技術が生まれ変化がめまぐるしい世の中に適応することは困難です。

 

その下地を作ってあげる、人を結びつける部分が鍵でしょう。特に日本は、まだテクノロジーに弱い側面があるので、そこを強化した組織作りがCMOに求められると思います。

(編集:三橋 ゆか里)

 

 

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大山 忍

ExchangeWire Japan 編集長 米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。 2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。