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【LIVE BOARD調査】2025年のデジタルサイネージ広告市場規模は1,110億円の見通し、2030年には1,647億円と予測

株式会社 LIVE BOARDは、株式会社デジタルインファクトと共同で、株式会社CARTA HOLDINGSの監修のもと、デジタルサイネージ広告市場に関する調査を実施した。

 

デジタルサイネージ広告市場は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出及び移動規制などの逆風を乗り越え、現在も市場全体の成長が続いている。また、街中や店内などリアルな時間・場所で視聴者に接触し、臨場感のあるクリエイティブを届けられるデジタルサイネージ広告への需要も高まっており、市場の成長を後押ししている。

 

渋谷、原宿、新宿といった人気エリアのビルや駅構内に設置されているデジタルサイネージ広告の需要は引き続き高まっている。また、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開催に合わせて、大阪・関西エリアでのデジタルサイネージの整備が加速し、プロモーションを強化していきたいと考えていた多くの広告主からの需要にも応えている。

 

注目市場の一つとされてきたリテールメディアでは、先行してデジタルサイネージの設置が続けられて来た総合スーパー(GMS)やスーパーマーケット(SM)、ドラッグストアだけでなく、大手コンビニエンスストアチェーンが全国10,000店舗以上にサイネージを導入するなど、広告配信面数の拡大が一気に進んだ。また、異なる事業者間同士の連携やデータ活用の検討や実証が進むなど、今後の市場成長に大きな期待が寄せられている。

 

大手鉄道事業者が新たにデジタルOOH広告(OOH: Out-of-Home)のデータドリブンな広告運用を可能とするマーケットプレイスを立ち上げるなど、プログラマティック広告取引への関心も引き続き高まっている。DSP/SSPとの接続が増えていくことにより、海外の広告代理店やウェブ広告代理店など、新たな販路が拡大されていくと共に、デジタルサイネージの稼働率が上がるものと見られている。

 

2025年9月にはOOH広告の効果測定と指標の共通化を推進するため、広告主・広告会社・媒体事業社など広告業界全体を対象とした業界横断組織として「一般社団法人 日本OOHメジャメント協会(JOAA)」が設立された。本協会は、OOH広告の価値を可視化するための業界共通指標の開発・提供を通じて、広告主が安心してOOH広告を活用できる環境を整備することを目的としている。海外市場ではメジャメント指標の導入による広告効果の可視化で市場成長が後押しされており、同様の効果が日本市場にももたらされることに期待を示す声も挙がっている。

 

市場関係者の間では、デジタルサイネージ広告市場全体が今後も安定成長を続けていくという共通認識が生まれている。本調査ではこうした見解に基づき、2030年のデジタルサイネージ広告市場規模は2025年比148%増の1,647億円に達すると予測する。

 

セグメント別の動向は以下の通り。

 

■交通
鉄道車両や駅施設、タクシー、バス、空港、航空機などが含まれる。
駅施設ではインパクトのある表現やイマーシブな空間演出に長けている媒体への需要が高まっている。デジタルサイネージ端末の設置や商品開発も継続して進んでいくものと見られるが、今後は高い広告需要が見込めるエリアに絞ったうえでの投資が進められていくものと見られる。
首都圏での媒体取り付けがほぼ完了したとされるタクシー広告では、認知効果を高めるためにタブレットで放映される独自の番組コンテンツの開発に取り組むととともに、広告主をスポンサーとした番組タイアップ企画にも積極的に取り組むなど、新たな広告商品の提供も進んでいる。
空港においては訪日外国人旅行者数が急増しており、その需要に応える形で国際線のデジタルサイネージでの満稿が続いてきた。また、国内線で周遊する訪日外国人旅行者も増えており、地方空港でもインバウンドによる一定の効果が表れた。

 

■商業施設・店舗
スーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストア、薬局をはじめとする小売店やショッピングモール、美容室、飲食店などが含まれる。
デジタルサイネージ端末の設置が進む一方で、データ連携や活用、効果測定が引き続きの課題として残されており、様々な事業者が参入している。また、これまでは店頭に置いてある商品の販売を促進させていくために広告が出稿されてきましたが、大規模なデジタルサイネージ端末の設置が進んだことにより、車など店舗への非配荷の商品の広告出稿がなされるなど、一部では認知メディアとしての活用も進んでいる。今後も様々なビジネスモデルが確立されていくなかで、特定商品の購入を対象とした販促費だけではなく、マーケティング費や広告宣伝費といった新たな広告主予算からの投資がされていくことに、媒体事業者からは大きな期待が寄せられている。

 

■屋外(大型ビジョン)
様々な屋外空間に取り付けられるデジタルサイネージでは、渋谷や原宿といった人気地区の駅前屋外大型ビジョンが引き続き好調であり、加えて大阪・関西万博に合わせたデジタルサイネージの設置も進み、大阪・梅田といった関西地域でのデジタルサイネージの人気も上がってきた。屋外ビジョンではSNSでの話題化など数値だけでは図ることができない、デジタルサイネージならではのインパクトのある表現や媒体特性が高く評価されてきたが、その一方で、人気エリアのデジタルサイネージであっても、必ずしも高い評価を得られるわけではないとの声も挙がっており、広告主ニーズを満たすことの出来る広告商品企画・開発がより求められる市場環境になっている。

メジャメントの導入により新たな広告指標が導入されることで、海外の広告代理店やウェブ広告代理店などを通じて、今までデジタルサイネージ広告に出稿をしていなかった新たな広告主の増加が見込まれ、市場の成長を後押しすると考えられる。また、新たな業界共通の広告指標が導入されたデジタルOOHが、視聴率やクリック率などの比較可能な指標で取引が進められてきたテレビ広告やデジタル広告でのプロモーションに組み込みやすくなることで、より多くのプロモーションに活用されていくことに期待する声も上がった。

 

■その他
地方自治体の建物内や、商業ビル及び居住用マンションのエレベーター、映画館(シネアド)などが含まれる。
映画館では、ハリウッドでのストライキにより公開延期とされていた大型作品が放映されたほか、人気アニメの新作が劇場公開され、市場にも大きな影響を与えた。そのほか、ゴルフカートやヘリコプター、公衆トイレ、喫煙所、銭湯・サウナなど、生活者の様々なモーメントを捉えることが出来る場所で、デジタルサイネージの新規媒体設置が着実に進み、広告配信が実施されている。

 

 

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 副編集長

日本大学芸術学部文芸学科卒業。 在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。