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価値ある乗車体験の追求―Tokyo PrimeのIRISが目指すタクシーサイネージの更なる一手[インタビュー]

株式会社IRISが提供するタクシーサイネージ「Tokyo Prime」はサービス開始から6年を迎えようとしている。当初はコンプレックス商材の広告イメージが強く定着していたタクシー車内にサイネージを設置し、「プライベート空間で意思決定権のあるビジネス層・富裕層にメッセージを届ける媒体」として、新たな広告イメージ・ブランドを作り上げていった。

 

IRIS代表取締役社長の眞井卓弥氏(写真右)と代表取締役副社長の宇木大介氏(写真左)にTokyo Primeのこれまでの歩みと今後の展望について話を聞いた。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 柏海)

 

全国で6万台、月間延べリーチ数3,000万人に成長

―自己紹介をお願いします。

眞井氏:前職のヤフーではEコマースの新規事業開発や、全社の経営企画およびM&Aの推進、デジタルコンテンツ部門の事業企画責任者などを担当していました。

 

2019年の秋にJapanTaxi(現・Mobility Technologies)にジョインし、2020年の5月からはIRISの社長を務めています。タクシー配車アプリ「GO」などを提供するMobility Technologiesでは執行役員を務めており、モビリティデータの利活用や自動運転など、新規事業の立ち上げを担当しています。

 

宇木氏:私は2019年8月にIRISの代表に着任し、その前はSI事業会社のインフォコムでM&Aや事業提携など、マネージャーを務めていました。

 

IRISの着任と同時に、合弁会社の出資元にあたるフリークアウト・ホールディングスにも執行役員として入社し、タクシーサイネージのみならず、デジタルサイネージ事業開発担当として、新規事業開発をおこなっております。

 

―2022年4月現在、Tokyo Primeのタクシーサイネージの導入台数は東京が25,000台、東京以外が35,000台で計6万台。月間の延べリーチ数が3,000万人という状況ですが、この規模感や拡大ペースについてはどのように捉えているのでしょうか

眞井氏:IRISの創業当時、TokyoPrimeは都内で100台からスタートしましたが、タクシーサイネージという新たな市場を作り上げるための投資を重ね、今の台数および延べリーチ数にまで拡大させることができました。

 

特に大きな節目となったのが、2020年4月のJapanTaxi社とDeNAのオートモーティブ事業の統合でした。その結果、Tokyo Primeが積み上げてきた3万台にDeNAが運営をしていたタクシーサイネージ「Premium Taxi Vision」を搭載した2万台が統合されることになり、5万台という大きな台数に至りました。

 

また、タクシー配車アプリ市場の盛り上がりも成長のキーポイントになったと認識しています。親会社のMobility Technologiesが提供するタクシー配車アプリ「GO」で呼ばれたタクシーの多くには我々のタクシーサイネージが搭載されています。タクシー配車アプリ市場の成長がタクシーの利用を促進するだけでなく、タクシーの新たなマネタイズ手段の1つである、タクシー広告市場の成長も後押しをしてくれました。

 

また、事業統合のあともタクシーサイネージの設置を推進し、2022年の4月には全国で6万台という台数に到達しました。現在、東京・名古屋・大阪などの主要都市を走るタクシーの約60%にTokyoPrimeのサイネージが設置されているような状況で、ここからの成長ペースは少しずつ緩やかになっていく見込みです。

BtoB・SaaSサービスの広告を意思決定権の人たちにまで届ける

―公式サイトの広告枠の在庫カレンダー(URL)によると、全国対象の枠は2022年9月末までほぼ満稿が続いているような状況です。売上・出稿規模はコロナ禍前の水準まで回復をしているのでしょうか。

眞井氏:2020年、最初の緊急事態宣言では他の広告媒体と同様に大きなダメージを受けましたが、そこから丸2年をかけて、コロナ前を凌ぐ規模に回復、再成長しています。

 

理由は大きく2点あり、1つはコロナ禍においてもクライアントが期待する広告効果を可視化してご報告できているということです。Tokyo Primeは広告単価×(タクシー利用者への)インプレッションがグロスの出稿金額となりますが、広告掲出前にクライアントにお示しした想定インプレッションをしっかりと超える結果を達成しています。

 

2点目として、BtoBのSaaS系サービスを展開されている企業からの出稿が大きく増えていることが挙げられます。コロナ禍を通じて企業のDX化が加速し、その結果としてBtoB・SaaS系のサービスを提供する企業の成長機会が大きくなっています。それらのサービスを導入する見込みのある情報部門の役職者や経営者など、意思決定権を持つ層へのアプローチにタクシーサイネージは非常に相性が良く、出稿のご希望を多くいただく好循環が生まれました。

 

また、広告の価値は東京に集まりがちな一方で、タクシーサイネージから全国に広くあまねくPRしたいというニーズも顕在化しています。その声に応えるべくTokyo Primeは業界で唯一全国に展開し、搭載台数6万台、月間延べリーチ数3,000万人という圧倒的なボリュームを誇ります。この点もご期待をいただいているポイントなのではないでしょうか。

 

広告以外でもタクシーサイネージの価値を生み出す

―2022年以降の展望についてお聞かせください。

眞井氏:タクシーの稼働はコロナ禍前までの水準に戻っていない状態です。これが徐々に戻れば、広告の表示機会(在庫)としては1~2割増しほどが期待されます。サイネージの設置台数の増加は緩やかになっていく一方で、表示機会の伸びしろはまだあると捉えています。

 

また、タクシーの乗車体験をより良いものにしていくことへの追及は今後も積極的に推進してきます。

 

例えば、タクシーサイネージがあるタクシーと無いタクシー、乗客目線での最大の違いは、決済がサイネージ端末上で行えることにあります。これにより、乗車体験の中で煩わしいポイントである支払いのUX改善、DX化という意味で一定の貢献ができていると思っています。

 

一方で、乗客に満足してもらえるコンテンツの提供も重要です。この4月からはBtoCクライアントの新商品を解説付きで届ける新番組や、この春映画化もされた「オッドタクシー」というタクシーを題材にしたアニメとのコラボレーションなど、エンタメ的な要素も増やしています。そのほか、クーポンの提供など、コンテンツ以外でもタクシーサイネージの価値を感じていただき、更にはクライアントにもメリットを感じていただける、いわゆる三方よしの取り組みを推進していきます。

 

特に2022年度に関しては、経営者などの意思決定層だけでなく、タクシー配車アプリを良くご利用いただいている若い女性などの乗車比率も高まってくると想定しています。この点からも引き続き、乗車体験の最大化にフォーカスしていきたいと思っています。

 

サイネージの「バズ」と「ブランディング」の2極化に注目

―デジタルサイネージOEMの第1弾としてヘリコプターサイネージの実証実験を行っていましたが今後の展開は。

【参考】ExchangeWire・ヘリコプターが生み出す新たな広告価値[インタビュー]URL

眞井氏:実証実験は無事に終了しており、現在は商品化に向けて準備をしている段階です。

 

視聴者属性がタクシーに近く、Tokyo Primeのクライアントや広告代理店の皆さまにもイメージしやすいのではないか、という理由からOEM第1弾はヘリコプターとなりました。我々が培ってきたシステムやノウハウの横展開については、モビリティのインフラごとに定められている規制・ルールも注視しながら、今後も幅広く検討したいと思います。

 

宇木氏:タクシーと同じように「サイネージが流れる空間」をイメージしやすい場所も今後のOEM展開においては重要だと考えています。横展開をしていくことによりTokyo Primeを起点として、視聴者属性に合わせた媒体の使い分けのご提案など、広がりを持たせられるようになるのではないかと期待しています。

 

―デジタルサイネージ市場全体の市況感についてお聞かせください。

宇木氏:交通系のデジタルサイネージは外出自粛の影響を受け、全体としては厳しい状況が続いていると聞いていますが、人流の回復に伴って、面の露出を再開したいという需要もあるので、人の集まる場所に設置されているサイネージには広告出稿も戻りつつあるのが実感です。しかし、市場感としては、サイネージの広告が大きく成長していくのはこれから先のフェーズになるのではないかと見ています。

 

合わせて、アナログで看板等を張り替えるコストの問題や、あるいは表現力という部分でサイネージを活用しようという動きが全体的に広がっていて、サイネージが活用される場所自体も少しずつ広がってきています。それらも人が多く滞留し、広告効果が実感できるような場所であれば、広告価値のある媒体として伸びていくのではないでしょうか。

 

また、新宿アルタ前にある3Dサイネージのようにしっかりと目線を奪える、いわゆるインパクトメディアは市場全体が苦しい市況の中でも調子が良いようです。やはりSNSの拡散なども含めて、バズを狙っていくという観点では、インパクトメディアは効果が高いということでトレンドになっています。

 

認知や話題性という部分で何を重視しているかによって、瞬間風速的にバズを狙うものとしてデジタルサイネージを使う場合もありますし、我々のように一定期間出し続けることによって、継続的なブランディングや商品広告に繋げることもあると思います。二極化まではいかなくとも、今後はそういった使い分けがサイネージに出てくるかもしれません。

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当
日本大学芸術学部文芸学科卒業。 在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。