サイバーエージェントが臨む、2026年の動画広告市場─縦型動画、CTV、生成AIで変わる、広告市場の構造-[インタビュー]
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サイバーエージェントは、デジタルインファクトと共同で、12回目となる2025年国内動画広告の市場調査を実施し、その結果を公表した。
動画広告市場は拡大を続ける一方で、その成長の中身は大きく変化している。サイバーエージェント 執行役員 インターネット広告事業本部 統括 中田 大樹氏に、2025年の動画広告市場の成長ポイントを総括していただき、また同社の今後の戦略や組織体制についてもお話を伺った。
(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之)

縦型動画、CTVが市場成長を大きくけん引
-2025年の動画広告市場全体について、総括をお願いします。
2025年の動画広告市場は縦型動画と動画広告の二つの側面から成長を遂げました。規模の大きさでは、縦型動画がOTT/CTVを上回っています。また縦型動画の領域では、規模と成長率の観点では、Metaの存在感が際立っておりました。
縦型動画は、ユーザーの視聴時間、広告主からの投資ともに拡大が続いており、動画広告の中心的なフォーマットになりつつあります。

-縦型動画がここまで成長している背景をお聞かせ下さい。
最も大きな理由は、ユーザーの日常における縦型動画視聴が完全に定着したことです。若年層に限らず、より幅広い世代で縦型動画を見ることが日常となりました。また広告主が、「縦型動画は成果が出るフォーマットである」という実感を持ち始めたという点も大きな理由です。
縦型動画は、運用型広告と非常に相性が良く、短期間で効果を検証しやすい。これにより広告主からの投資を呼び込むことが出来ています。ネット広告で成果を出すためには、ターゲットや媒体特性に合わせたクリエイティブを大量に用意し、短期間で良し悪しを判断することが重要です。縦型動画は、この運用モデルに最も適したフォーマットです。
MetaやTikTokでは、アルゴリズム上、多数のクリエイティブを投入することで成果が最大化されます。縦型動画が市場を牽引している背景には、この構造的な相性があります。

-OTT/CTV市場ではどのような変化がありましたか。
OTT/CTVについては、テレビ広告予算のデジタルシフトが本格化した一年でした。かつ、YouTubeはもとより、ABEMA、TVerに加えて、NetflixやAmazon Prime Videoといった有力なプレイヤーが広告市場に本格参入したことで、広告主にとっての選択肢が一気に広がり、市場全体の成長につながっています。
強みの運用力で、テレビ“も“最適に取引する

-運用型テレビ広告が始まりましたが、これについてどう捉えられていますか?
運用型テレビCMのAdReach Maxに関しては、我々としても非常に注目している取り組みのひとつつであり、テレビ広告を「ネット広告のように運用できる」世界観を実現したいという想いがあります。
今のテレビ広告の取引は買い切り型で、事前に決めた枠に出稿して終わりという形態が中心である一方、ネット広告は、配信結果を見ながら改善し、運用によって効果を高めていくことが当たり前です。広告主の広告効果を最大化するという観点では、後者の方が合理的であることは明らかです。
テレビ広告が持つコンテンツの価値やリーチ力は、今後も一定以上残り続けると考えています。ただし、その価値を最大化するための「買い方」や「運用の仕方」は、今の形が最適であるとは言えません。
AdReach Maxは、テレビ広告をより柔軟に、より運用型に近い形で扱える可能性を持っている点で、他のOTTプラットフォームと同じように大きな意味があるとみています。
広告効果が可視化され、改善できる仕組みを取り入れた方が成果が出る、という流れは、いずれ避けられないものだと考えています。その意味で、AdReach Maxはテレビ広告の次のあるべき姿を考える上で、非常に重要なチャレンジだと思っています。
AIが市場にもたらすインパクト、サイバーエージェントの強み
-AIは動画広告市場にどのような影響を与えていますか。
AIによる最大のインパクトは、制作コストの劇的な低下です。動画広告はCPMが高いという課題がありましたが、制作コストが限りなくゼロに近づくことで、このハードルが下がっています。特に運用型広告の動画制作では、AIの活用が前提になりつつあります。
クリエイティブ制作のPDCAが飛躍的に高速化しており、これまで人手では回しきれなかった量を、5倍、10倍のスピードで回せるようになります。結果として広告効果が向上し、動画広告市場全体を押し上げる要因になります。特に縦型動画では、その影響が顕著に出ると考えています。
-今現在貴社では、AIを活用してどのような価値を生み出すことに注力されていますか。
広告プラットフォーマーがカバーできない部分に対して、媒体横断での最適化やブランド要件を踏まえた高度な運用をAIで実現できることが、当社が提供できる価値です。
広告プラットフォームごとに運用の自動化が進んでいるものの、GoogleやMetaなど複数をまたいで、最も効果の高い形で広告運用を最適化したい、という広告主のニーズがあります。このような領域にこそ、サイバーエージェントが発揮できる価値があり、AIを活用することでこの課題を解決できると考えています。

-AIの領域において、サイバーエージェントの広告事業における強みはどこにありますか。
大きくは二つあります。
一つは、かなり早期の段階からAIの研究開発を自社で行ってきた点です。サイバーエージェントは、単なる広告代理店ではなく、自社でエンジニアを抱え、AIの研究やプロダクト開発を継続してきました。この蓄積は、今になって大きな差として表れていると感じています。
二つ目は、データです。我々はリテール、金融、交通、エンターテインメントなど、さまざまな業界の企業と協業し事業やプロダクトを作ってきました。その中で、多様な業界データに触れてきた経験があります。AIはデータ量と質が非常に重要なため、今後さらに効いてくると考えています。
開発ができ、サービスを作り、実際の運用現場で使い続けてきた。AIでこれら全てを同時にやってきた会社は、決して多くありません。AIを活用した広告ソリューションを本気で作っていく上で、このポジションは大きな強みになると考えています。
AIによってさまざまな業界がリスクを感じている側面もある一方で、サイバーエージェントとしては、AIによって課題解決できることが増え、ビジネスチャンスがむしろ広がっているという認識を持っています。広告運用の実務知見とAIを組み合わせることで、独自のポジションを築いていけると考えています。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。




