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SSPの役割は「実行」から「意思決定」へーIndex Exchangeが語る「セルサイドデシジョン」とは[インタビュー]

プログラマティック広告における意思決定が、バイサイドからセルサイドへと広がり始めている。クラウドインフラや処理技術の進化を背景に、SSPが取引のより早い段階でデータやシグナルを活用する「セルサイドデシジョン」への注目が高まる。
Index ExchangeのStuart Gregory氏に、その仕組みやメリット、日本市場における可能性について聞いた。

(Sponsored by Index Exchange)

 

―自己紹介をお願いします。

 

Index Exchangeでシニアバイヤー・ディベロップメントディレクターを務めるStuart Gregoryです。デジタル広告業界での経験は10年以上になります。 MediaMath Japanでは、ビジネスデベロップメントおよびカスタマーサクセスのバイスプレジデントとして、またGoogle Japanではプロダクトスペシャリストを務めてきました。

Index Exchangeでは、広告業界における代理店との関係構築を担当しており、カスタムパートナーシップの推進、キュレーテッドディールの作成、そしてプラットフォームエンゲージメントを通じて、透明性が高く、価値の高い取引の実現をサポートしています。

 

広告取引の「意思決定」がセルサイドへ

 

―近年の広告取引の動向をどう見ていますか。

 

過去15年間、プログラマティック広告における価値創出の大半は、バイサイドで行われてきました。データアクティベーション、最適化、ブランドセーフティといった要素はすべてDSP 側で担われており、セルサイドは付加価値の低い役割にとどまり、戦略よりもインフラや実行を担う立場に置かれてきたといえます。

 

その結果、効率の悪さによりコストが増加する、偏ったエコシステムが生まれました。パブリッシャーは、なぜ一部のインプレッションが落札され、他が落札されないのかを把握できず、サプライサイドでのイノベーションも停滞し、市場全体の可能性を狭めていました。
しかし今、クラウドインフラ、並列処理、エッジコンピューティングの進化により、セルサイドでもよりスマートなリアルタイムの決断が可能となり、入札が送られる前に、より広範なインターネット上のシグナルを活用できるようになっています。
こうした技術の進歩は、これまで不可能だったことを、わずかな時間の中で実現します。オークションのより早い段階でサプライサイドにインテリジェンスを適用できるようになったことで、セルサイドにおけるイノベーションの新たな可能性が開かれます。

 

―Index Exchangeではセルサイドにおける新しい考え方「セルサイドデシジョン」を提唱されています。説明いただけますか。

 

セルサイドデシジョンとは、バイサイドで一般的に用いられてきたロジックやターゲティングパラメータ、最適化の手法をセルサイドにも適用するという考え方です。DSPを代替するものではなく、バイヤーは引き続きDSPを介して取引を行います。むしろ、より質の高いシグナルやスケール、精度を取引の早期段階から提供することで、 DSPがより的確な判断を下せるよう支援します。これは、広告エコシステム全体にメリットをもたらします。

 

 

―これまでセルサイドには「キュレーション」という考え方がありました。キュレーションとセルサイドデシジョンの違いは何でしょうか。

 

キュレーションは以前、懐疑的に見られることが多くありました。マージンを搾取する手段だと思われたり、DSP内で決められた条件に沿って機械的に選定するだけの取引に過ぎないと捉えられることがありました。しかし今では、キュレーションはデータや在庫、インサイトを組み合わせて成果につながるソリューションを作る、戦略的な取り組みとして位置づけられています。

 

ここで理解していただきたいのは、キュレーションとセルサイドデシジョンは別々のものではなく、サプライサイドのデータやシグナルを活用する代表的な活用方法の一つであることです。セルサイドデシジョンとは、インプレッションに近い、より早い段階でインテリジェンスを適用する、大きな変化そのものを指します。キュレーションは、セルサイドデシジョンを実践する方法の一つにすぎません。

 

―広告主や広告代理店がセルサイドデシジョンを活用するメリットは何ですか。

 

最大のメリットは、セルサイドデシジョンによってインプレッションが発生するタイミングに近い段階でインテリジェンスが適用されるため、最も正確なシグナルを基に判断できることです。

 

―パブリッシャー側にはどのようなメリットがありますか。

 

パブリッシャーにとってのメリットは、可視性とコントロールにあります。これまでは把握できなかった、自社の在庫がどのように扱われているかだけでなく、自社のオーディエンスがどのように評価されているかも把握できるようになります。

そのため、その評価に応じて適切な対応ができるようになります。また、新たなマネタイズの機会も生まれます。プライバシー上の制約により、これまで活用が難しかったファーストパーティデータを、単体のアセットとして販売し、収益化できるようになるのです。

 

―実際にセルサイドデシジョンによって成果が改善した例はありますか。

 

具体的な事例の一つとして、効率性とパフォーマンスを改善した国内大手小売り企業が挙げられます。Index Marketplacesを通じてセルサイドデシジョンを導入した結果、CPMを20%削減しながら、クリック数を620%増加させることに成功しました。

多くの企業と同様に、この企業もこれまでバイサイドの最適化のみを利用しており、どの入札リクエストが質の高いエンゲージメントにつながりやすいかを示す、セルサイドのシグナルを活用できていませんでした。これは、バイサイドだけにとどまらず視野を広げることで、どのような機会が存在するかを示す好例だと言えます。

 

拡大するSSPの役割、日本市場でも実装へ

 

―セルサイドでの意思決定により、DSPとSSPの役割は変化するのでしょうか。

 

これは、誰かの立場に取って代わるものではありません。DSPは引き続き、キャンペーン戦略、最適化、予算配分において重要な役割を担います。セルサイドは、あらゆる入札リクエストを取引の早い段階から最適化し、すべての関係者により高い価値を提供します。とはいえ、セルサイドの役割は確実に拡大しています。

SSPが一部の判断を取引のより早いタイミングで担うことで、DSPはキャンペーン戦略と最適化に注力でき、無駄のないプロセスが実現します。役割の変化というよりは、進化といえます。

 

―海外と比較して、日本でのセルサイドデシジョンへの関心はいかがでしょうか。

 

キュレーションは、この1年で日本の業界で注目を集めるキーワードです。アドレッサビリティやMFAサイトへの懸念、また、確実に適切なオーディエンスにリーチする必要性の高まりと密に関わっています。注目すべきは、これが単なる話題にとどまらず、新たな企業との連携やセルサイドデシジョンを活用した取り組みの実施につながっているという点です。

広告主に対して、安全で適切な在庫を提供するために、自社で配信面を選定したいという広告代理店からのニーズは、日本国内でも強く、Index Exchangeはそうしたニーズに応えるために、Index Marketplacesを提供しています。そのため、日本は遅れているというよりも、グローバル市場としっかり足並みを揃えていると言えるでしょう。

ただ現時点では、セルサイドデシジョンの中でもキュレーションの領域が先行しており、広告代理店やデータプロバイダーがその流れをリードしています。セルサイドデシジョンが持つ本来の可能性をより広く活用していくことが、今後の課題だと考えます。

 

―セルサイドデシジョンは新しい考え方といえます。今後どのような形で定着していくと考えられますか。

 

これは一過性のトレンドではなく、本質的な変化だと捉えています。SSPのインフラや処理能力がようやく今日のデジタルメディア環境の複雑さに追いつき、わずかな時間内でインテリジェンスを適用できるようになりました。

日本のような市場は、今後の展開を示す良い指標だと思います。日本では、キュレーションが単なるバズワードから、わずか1年ほどで実働に移行し、広告代理店やデータプロバイダーがその先陣を切りました。同じパターンが、他の市場でも繰り返されていくと考えています。私の見解では、セルサイドデシジョンが「新しい考え方」であり続ける期間は長くないと思います。ヘッダービディングやリアルタイムビディングがかつてそうであったように、いずれは、プログラマティック取引で当たり前の存在になっていくと考えています。

 

ABOUT 角田 知香

角田 知香

ExchangeWireJAPAN 編集担当。イギリス・キングストン大学院にて音楽学の分野で修士号を取得。学校・自治体文化講座等にてアート講座講師として活動後、2024年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。