エンゲージメントメディアを東洋経済新報社が持つ意味。四季報とストックボイスのシナジー[インタビュー]
by on 2025年8月29日 in ニュース
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2025年6月13日、東洋経済新報社(以降「東洋経済」と記載)がストックボイスの全株式を取得するというセンセーショナルなニュースが届いた。株情報のライブ動画配信で個人投資家から長年支持されるストックボイスの創業者である倉澤良一氏が代表取締役を退任し、7月1日より新体制になった。
今回の再編で新たに代表取締役に就任した山本直樹氏(写真:左)と東洋経済で長きにわたりデジタル広告に携わり、ストックボイスの取締役に就任した佐藤朋裕氏(写真:右)にお話を伺った。
(聞き手:ExchangeWireJAPAN 編集部 野下 智之 / 書き手:同 加納 奈穂)
ストックボイスの「これまで」と「これから」
―お二人の自己紹介をお願いいたします。
山本氏:代表取締役の山本直樹と申します。東洋経済で長く編集記者をしておりました。元々は東京証券取引所の中にある兜倶楽部(かぶとくらぶ)で時事通信社の記者として株式市場を担当しておりました。その後いくつかの会社を経て東洋経済へ入社し、現在は休刊している『オール投資』いう個人投資家向けのコアな隔週刊雑誌を担当しました。『会社四季報』の編集部にも10年ほど在籍し、企業やマーケットの記事の執筆や編集をしておりました。
佐藤氏:佐藤朋裕と申します。12年前に東洋経済へ入社し、一貫して「東洋経済オンライン」を中心としたデジタル広告に携ってまいりました。ストックボイスでは営業を担当いたします。
―ストックボイスのサービスやビジネスモデルについてお聞かせください。
山本氏:ストックボイスは倉澤良一氏と岩本秀雄氏がインターネットラジオ放送局「ストックボイス・マーケット」として創業しました。2004年10月にオフィス内のスタジオでスタートし、その後2006年に東京証券取引所のスタジオからインターネットで動画生配信を開始しました。
その後地上波の地方局・東京メトロポリタンテレビジョン(以降「TOKYO MX」と記載)、三重テレビ放送(以降「三重テレビ」と記載」)、サンテレビジョン(以降「サンテレビ」と記載」)の3局でインターネット放送と同じものをライブ配信しています。これらの番組の制作・配信に加えて、番組内で流すCMを自社で販売しています。
最近ではイベントも行っており、ストックボイスのファンミーティングという意味合いの強い「ストボフォーラム」、上場企業にIRの機会を提供する「IRカンファレンス」、「資産形成フェスタ」を開催しています。
佐藤氏:「ストボフォーラム」は東京、神戸、名古屋で1500名を超える視聴者にご来場いただき、出演者と視聴者との交流の場となっています。「IRカンファレンス」や「資産形成フェスタ」といったイベントは、キャスターによるインタビューを通じて上場企業の経営者が個人投資家に直接語りかける場として好評です。「IRカンファレンス」は東京、大阪、名古屋、札幌の4都市で開催、「資産形成フェスタ」は東京証券取引所から2月の土・日の二日間、インターネット放送で生配信をしています。
山本氏:創業者の倉澤良一氏がラジオNIKKEIの出身で「ラジオのようなテレビ」を掲げており、台本があり原稿を読むのではなく、株式市場の動きに基づいて解説していく、音だけ聞くとラジオに近いスタイルになっています。
―ストックボイスのスポンサーについてお聞かせください。
佐藤氏:ストックボイスは個人投資家に向けた番組を配信しているため、証券会社が主なスポンサーになっています。前場は8時30分から11時40分まで、後場は12時29分から15時50分までの放送で、全ての東京証券取引所の取引時間をカバーしています。番組中に放送しているCMについてはストックボイスのインターネット放送(stockvoice.tv)でも同じものを流しています。
個人投資家がターゲット、2つのメディアの融合
―今回の買収の経緯や背景についてお聞かせください。
山本氏:東洋経済は今年創立130周年を迎え、『会社四季報』を出して89年になる会社です。個人投資家向けの記事をお届けするということが一つの柱だと考えておりますが、ストックボイスの視聴者も個人投資家で狙う層が同じです。
東洋経済では雑誌・書籍・オンラインメディアといったテキストでのコンテンツ提供を中心に行ってまいりましたが、近年は動画コンテンツにも力を入れています。東洋経済が動画に力を入れるとなると個人投資家向けのメディアも拡充したい、その流れでストックボイスとの協業が始まりました。
広告ビジネスの現状と今後の展開
―東洋経済のグループ全体における広告ビジネスの現状についてお聞かせください。
佐藤氏:東洋経済には12年前に入社しましたが、その間「東洋経済オンライン」が広告ビジネスをリードしてきました。ネットを取り巻く環境が激変する中、いかに広告主に価値を届け続けていくのか。今後の柱の一つに動画が位置付けられることは間違いないでしょう。その意味でストックボイスをグループに迎え入れたことは大きな意味があると思います。
ストックボイスは個人投資家からのエンゲージメントが非常に高いメディアです。毎日数十万人の個人投資家がテレビ放送やネットを通じて、我々の番組を視聴していただいている。ファンミーティングにも多くの熱心な視聴者が足を運んでくださる。発売の度に行なっている「会社四季報」の視聴者プレゼントにも毎回200倍を超える応募があります。こういう動画メディアはそうそうありません。
東洋経済ではメディア広告ビジネスを、セミナーや研修といったイベントやカスタム事業(カスタム出版や会報誌の制作、オウンドメディアへのコンテンツ提供等)へと発展させてきました。個人投資家向けの生配信メディアであるストックボイスがこれらに加わることで動きが加わり、これまで以上に色々な組み合わせで提案することができるようになるはずです。
山本氏:コンテンツに関する今後の連携を考えていくと、最も親和性があるのは「会社四季報オンライン」だと考えています。東洋経済には『会社四季報』を執筆している記者が約150人おり、3,900以上の上場企業全社をウォッチしています。彼らが集めた生きた情報を番組やイベントで活用するところから始めようとしています。
―広告業界の方に伝えたいことをお聞かせください。
佐藤氏:ネットメディアの隆盛の一方で、メディアとオーディエンスの距離が広がってしまった部分があると思います。それとは対照的に、視聴者に寄り添ってきたのがストックボイスです。IRを強化したいとお考えの上場企業のサポートをされている広告業界の皆様には、テレビ放送(TOKYO MX、三重テレビ、サンテレビ)やインターネット放送(stockvoice.tv)を通じて、「東京マーケットワイド」をまずはご覧いただけると嬉しいです。そして、ご興味をお持ちいただけましたら、東京証券取引所にあるスタジオをご案内しながら、お取組についてお話ができればと思います。
―取材を終えて
ラジオ配信の創業時からライブ動画の配信に変化する中でも「音だけ聞いていてもわかる・伝わる」ことを大切にし、個人投資家向けの株情報メディアとして成長を遂げたストックボイスが「投資家のバイブル」とも呼ばれる『会社四季報』を出版する東洋経済の傘下に入ることにより、それぞれの強みが融合され、投資関連のより優良なコンテンツが数多く生み出されることは確実。広告領域での取り組みにもより一層注目していきたい。
ABOUT 加納 奈穂
ExchangeWireJAPAN 編集担当
武蔵野美術大学卒業後、出版社に入社。WEBサイトや広告の運営に従事。その後コスメ情報サイトのコンテンツマネージャーを経て出版社での通販事業において販売促進業務を担当する。通販会社にてSNS運用に携わったのち、2022年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。現職に至る。






