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HAKUHODO×DoubleVerify 共催フォーラム イベントレポート-ブランドを守り、成果を伸ばす。攻めと守りのデジタル広告戦略とは

株式会社博報堂とDoubleVerifyは2025年11月5日、東京エディション虎ノ門(東京都港区)で共催フォーラムを開催した。「ブランドを守り、成果を伸ばす。攻めと守りのデジタル広告戦略」というテーマを掲げた本イベントでは、JICDAQ(デジタル広告品質認証機構)事務局長を招いてブランドセーフティ最前線についての解説や、サントリーホールディングス・シャークニンジャ合同会社といった広告主企業による「AaaS with DV」の導入・活用事例の報告が行われた。

 

広告掲載の課題とアドベリフィケーションの重要性

 

オープニングセッションでは、JICDAQ(デジタル広告品質認証機構)事務局長である小出誠氏、博報堂 AaaSビジネス戦略局局長の飯塚隆博氏、DoubleVerify Japanヘッドオブセールスの粟津原玲氏の3名が登壇し、デジタル広告の品質向上と管理の重要性について議論が行われた。
 

本セッションは、2025年6月に総務省が発表した「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス」についての紹介から始まり、このガイダンスが「広告内容」ではなく「広告掲載」の問題に対して、広告主・広告会社に向けてあくまでもBtoB的課題の解決に向けたものであることが強調された。アドフラウドやブランドセーフティ以外にも、違法な広告掲載により報酬を得るサイトや媒体の犯罪に加担しないために、広告主企業の経営層が課題を把握していることが求められている。
 

さらにアドフラウド防止やブランドセーフティのためのアドベリフィケーション導入にあたっては、導入費用がネガティブにとらえられることが多いが、実際にその費用は防御策を取らない場合に失うであろう広告費よりも断然少ない、とJICDAQの小出氏は述べる。一方で博報堂・飯塚氏によると、昨年ごろからブランドセーフティへの関心の高まりを感じており、ブランドセーフティを意識しなければネガティブなブランドイメージにつながってしまうことを危惧する広告主が増えているとのこと。
DoubleVerify・粟津原氏は、メディア品質を重視するマーケターが8割を超える中で24%のマーケターが何も対策を講じていないという調査レポートを引用しつつ、「企業の経営戦略のひとつとしてメディア品質の向上をとらえてほしい」と経営層に対して訴えた。

 

量と質を最大化するマーケティング

 

博報堂DYグループが提唱する、広告メディアビジネスの次世代型モデル「AaaS」とDoubleVerifyのソリューションを組み合わせた「AaaS with DV」の導入事例紹介では、サントリーホールディングスの野口光太氏が登壇し、本ソリューションの導入により高品質な広告と広告単価を抑えた配信の両方を実現できたとする事例を発表した。

 

野口氏は、ブランドの世界観や「ファンになってもらう」ことを重視するサントリーでは、お客様にとっての良い広告体験、良い出会いを作ることを意識してメディアプランニングを進めているという。リーチの量と広告の高品質を両立させることを目標に、「AaaS with DV」の特色となる①AIのアルゴリズムにより配信単価を抑制する機能、②プレビット(広告入札前にサイトやページの品質を評価する)機能を段階的に導入し、その結果を踏まえたうえで最終的に2つの機能を掛け合わせる、という検証が行われた。
 

結果として、5案件の実施のうち4案件において、広告認知度で高いスコアをだしつつも、CPMは通常配信と大きく変わらないという良好な結果を出すことに成功した。YouTubeを媒体として行った本検証について、野口氏は「もともと出稿比率の高いYouTubeで結果がでたので、ROI改善の大きな手ごたえを感じている」とし、さらに博報堂の質の高い分析と生活者目線でのアドバイスが大きな助けになったと述べた。
本検証はブランドを守りながらも広告効果を上げることができる「AaaS with DV」の代表例となり、今後はYouTubeのみならず他メディアにも拡大していきたいと博報堂・ビジネスプロデューサーの瀬川氏は展望を語った。

 

KPI達成に向けた売上貢献

 

 

2つ目の事例紹介には、キッチン家電やコードレス掃除機を展開するアメリカ発家電メーカーのシャークニンジャ合同会社よりデジタルマネージャー・堀端勲氏が登壇し、ブランド・製品認知を目指して「AaaS with DV」を導入した事例を報告した。
日本で販売を始めてまだ8年目だというシャークニンジャ合同会社では、「5つ星の製品を展開する」ことを基本理念としてビジネス展開を進めている。デジタル広告戦略では「ブランド名・製品を認知してもらう」ことにフォーカスし、インプレッションをグローバルKPIとして掲げている。大手プラットフォーマーでの広告展開を進める中で、もう1段階成果を上げたいというところで頭打ちを感じたという堀端氏は、「魅力的かつ誠実で嘘のない広告を、効率よく露出を高めていきたい」という思いのもと「AaaS with DV」を導入した。
 

スモールスタートとしてまずYouTubeでのトライアルを実施し、YouTube経由でのコンバージョンをトラッキングしたところ、CPMにおいてマイナス49%まで達成することができた。導入して1,2か月でマーケティングファネルのアッパー・ファネルではCPM・CPC、ミドル・ローワー・ファネルではCPAにおいて結果が出たことに、堀端氏は大きく驚いたとのこと。また、「5つ星の製品」を掲げるシャークニンジャではクリエイティブに強いこだわりを持っており、プレビット機能によりクリーンな広告面への配信が実現できたことも「AaaS with DV」への高評価へとつながっている。
 

最後にDoubleVerify・粟津原氏は、今後はYouTube以外のプラットフォームでの「AaaS with DV」運用も目指しており、「より上質なインプレッション、より良い環境での消費者と広告の接触を実現していきたい」と意気込みを語った。

ABOUT 角田 知香

角田 知香

ExchangeWireJAPAN 編集担当。イギリス・キングストン大学院にて音楽学の分野で修士号を取得。学校・自治体文化講座等にてアート講座講師として活動後、2024年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。