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オープンインターネットの可能性を再定義する―PubMatic 堀 武雄氏が語る、透明で持続可能な広告エコシステムの未来[インタビュー]

オープンインターネットの価値はまだ最大化されていない。データと透明性を軸に広告主・代理店・パブリッシャーの三者にとって持続可能な成長を実現するには何が必要か。デマンドの知見を生かして市場構造の再定義に挑む、PubMatic 堀 武雄氏に聞いた。

(Sponsored by PubMatic)

 

サプライとデマンドのデータと知見を活用するプラットフォーム

 

―自己紹介をお願いします。

 

PubMaticの日本法人となるパブマティック株式会社で、2025年8月よりアドバタイザーソリューション シニアディレクターに就任した堀武雄と申します。

 

サイバー・コミュニケーションズでデジタル広告業界でのキャリアを開始し、同社でクリックやCPAといった短期的な指標だけでなく、価値のある広告在庫を適正な価格で販売するという考え方を得ました。転職先となったMicrosoftでは、リッチアドのソリューションを活用しながら、代理店各社のプラニングツールへの統合業務などを担当し、次のIndex Exchangeではプログラマティック取引やパフォーマンス型戦略についての理解を深め、さらにTeadsではオープンインターネットにおけるターゲティング、クリエイティブ制作、ブランドリフト調査といったブランディングソリューションのパッケージングを学びました。

 

こうした経験を通じて、広告主に対して成果を出す視点と、メディアの長期的な価値を高める視点の両方を得ることができました。

 

PubMaticではこの両軸を掛け合わせ、広告主が成果を最大化できる仕組みを提供すると同時に、パブリッシャーの持続的な収益成長を支援しています。 今後は、日本の広告主・代理店の皆さまと連携し、PubMaticが強みとする透明性・データドリブンな取引環境を広げることで、エコシステム全体の発展に貢献していきたいと考えています。

 

―改めて貴社の自己紹介をお願いします。

 

PubMaticは、広告主とパブリッシャーの双方を支援する統合型の広告プラットフォームとして、「インターネット上のコンテンツクリエイターの可能性を最大限に引き出すこと」をミッションに掲げ、グローバルで展開しています。

 

オープンインターネットに加え、コネクテッドテレビ(CTV)、リテールメディア、モバイルウェブ、アプリなど、あらゆるデジタル環境でメディアの収益化を支援しています。さらに、デマンド側のプロダクトも保有し、広告主や代理店と直接関係を築いてきました。これにより、パブリッシャーの在庫価値を最大化しつつ、広告主にとっても透明性が高く効率的な取引を実現しています。

 

これらの機能を単独ではなくひとつの統合プラットフォームとして運用することで、広告主・代理店・パブリッシャーのすべてにとって、効率的で持続的な価値を創出しています。 データ活用、オーディエンスターゲティング、サプライパス最適化(SPO)、CTV、コマースメディアなどを組み合わせ、透明性とパフォーマンスの両立を実現しています。

 

来年で創業20周年を迎える同社は、これまでに培ったグローバルな信頼関係と技術力を基盤に、日本市場でも三者が持続的に成長できる健全なエコシステムの構築を目指しています。

 

―ウォールドガーデンによる寡占化に対して、オープンインターネットはどのように対抗していくべきでしょうか。

 

広告エコシステムは長年ウォールドガーデンが主導してきましたが、市場の持続的な成長のためには、より透明で健全な構造へ進化させることが不可欠です。

 

パブリッシャーのサイトを自ら訪れるユーザーは、信頼できる高品質なコンテンツを求めています。彼らの注意と信頼こそが本来の広告価値であり、その価値は正当に評価されるべきです。PubMaticは、プレミアムパブリッシャーの価値を可視化し、その在庫が公正かつ透明な価格で取引される環境を整えることを使命としています。

 

―なぜプレミアム媒体は差別化が難しいのでしょうか。

 

現在のオープンマーケットプレイスでは、すべての在庫が同列に扱われており、プレミアムな動画コンテンツであっても、低品質なUGCや質の低い配信環境と同じ基準で比較されてしまいます。その結果、CPMの期待値が歪み、プレミアムコンテンツ本来の価値が見えづらくなっています。

 

ウォールドガーデンでは、不透明な価格設定や最適化ロジックにより、プラットフォーム側にとって収益性の高い選択肢が優先される場合があり、広告主がチャネルを公正に比較することが難しくなっています。

 

PubMaticでは、プレミアムパブリッシャーへのよりクリーンで直接的な接続を構築することで、この課題に取り組んでいます。これにより、透明性やコントロールが高まり、ブランド成果を生み出す環境が明確になります。広告主は、歪んだベンチマークではなく、実際の効果に基づいて判断できるようになります。

 

―なぜ日本は動きが遅かったのでしょうか。

 

日本の広告業界では、人事異動によって担当領域が変わることが多く、各企業がデジタル広告に関する知見を長期的に蓄積することが難しいと言われています。 そのため、運用や検証を外部のパートナーに委ねるケースが増え、結果として、明確な指標で成果を把握しやすい手法が広く浸透していきました。

 

こうした積み重ねにより、データや即時性を活用するプラットフォームの利用が進み、市場全体として効率性を重視する傾向が強まっていきました。

 

このような背景の中で、豊富なデータを保有するウォールドガーデンが優位性を確立し、透明性や公正性よりも効率性が優先される流れが強まっていきました。

 

しかし近年、総務省やIAB Japan(JIAA、日本インタラクティブ広告協会)などによるオープンな計測と公正な競争を促進する取り組みが進みつつあり、ようやく業界全体で変化の兆しが見え始めています。PubMaticとしても、業界団体やパートナー企業との協働を通じて、プレミアム媒体を正しく評価するための共通指標の策定支援を進めています。

 

オープンインターネットが健全に発展していくためには、業界全体が足並みを揃えて取り組むことが重要であり、PubMaticとしてもその軸となる存在を目指しています。

 

コネクテッドテレビ広告を突破口に

 

―ブランド広告における新たな測定基準の需要が高まっているようですね。

 

パフォーマンス領域では、豊富なデータを持つウォールドガーデンが依然として強みを発揮しています。一方で多くの広告主そして広告代理店がミッドファネルに関する指標やノウハウはまだ不十分であると感じています。

 

この領域において、世界第2位 *となる規模のコネクテッドテレビ広告在庫を保有する当社が果たすべき役割があります。 PubMatic Japanでは、かつて電通にてデジタル及びテレビ事業などのチームを率いてきたカントリーマネージャーの粟飯原の下でコネクテッドTV広告戦略を推進し、オープンインターネットのエコシステム全体で放送局および広告主との連携を強化しています。

 

*出典: Jounce Media, Monthly Supply Path Benchmarking Report April 2025

 

―コネクテッドテレビ広告は各社が注力しています。

 

各社がIPベースでのデータの取得などを始めていますが、当社は加えてコンテンツのジャンルやデマンド側のデータの収集そして外部提供を進めています。業界関係者でもあまりご理解いただいていないのですが、パブリッシャーと直接的に提携するSSPだからこそ取得できるデータが多くあります。こうしたデータの可視化及び価値化にも取り組んでいきたいです。

 

また当社は日本テレビ放送網が提供するテレビCMの運用型広告プラットフォームであるスグリーとも提携しています。この枠組みを通じて、グローバル企業の広告主を誘致し、コネクテッドテレビ広告における収益確保に課題を抱える国内放送局を全面的に支援していきたいと考えています。

 

今後も日本市場の特性を踏まえながら、グローバルで培った知見を生かし、オープンで持続可能な広告エコシステムの実現をリードしていきたいと考えています。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 共同編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。ExchangeWire主催の大型イベントであるATS Tokyoのモデレーターも務めている。