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番組制作から広告配信まで"ワンストップ"で ─ ohpner 土井 健氏が仕掛ける「BizPot」は、BtoB認知広告の構造を変えるか[インタビュー]

タクシー広告の販売高で国内3位(※)にまで上り詰めたohpner(オープナー)が、新たな一手を打った。

2026年5月、ビジネス対談番組「BizPot(ビズポット)」のサービスを本格始動。

YouTube番組の制作から地上波ラジオでの放送、さらにはタクシーやエレベーターなどオフライン媒体への二次利用までを一気通貫で提供するという、これまでにないモデルだ。

同社代表取締役の土井健氏に、BizPot誕生の背景と、その先に見据えるビジョンを聞いた。

(聞き手:ExchangeWireJAPAN  野下 智之)

 

タクシー広告の"その先"に見えた課題

ohpnerは2024年、土井氏がテレシー代表取締役を退任後に設立したオフライン広告の専門企業だ。タクシー広告、モビリティ広告(旧アドトラック)、エレベーター広告など多岐にわたるオフライン媒体を扱い、創業からわずか1年半足らずでタクシー広告の販売高は国内3位にまで成長した。

その急成長の過程で見えてきたのが、タクシー広告の「コンテンツ枠」の可能性と、そこに横たわる構造的な課題だった。

タクシーサイネージには従来型のCM枠とは別に、第三者が発信する番組形式の動画を流す「コンテンツ枠」が存在する。CM枠がタレントを起用して強烈な認知を獲得するのに対し、コンテンツ枠は「こんなサービスがあるのか」という興味・関心、つまりファネルの中層まで届きうるフォーマットとして注目されている。

しかし、このコンテンツ枠を活用しようとする広告主の前には、大きなハードルがあった。

 

「まず一般的なweb番組にお願いすると、動画制作費が高額になりがちであることに加え、その素材をタクシーに流す場合、エレベーターに流す場合と、媒体ごとに別途使用料がかかる。しかも使用期限が限られている。高い制作費をかけてコンテンツを作っても、二次利用のたびに追加コストが積み上がり、使用期限も短い。せっかく良いものができたのに、広く届けづらい構造になっていたんです」(土井氏)

 

 

「明朗な料金設計」という革新

BizPotは、この構造的な課題に対する土井氏の回答だ。

まず番組制作においては、各業界のトッププレイヤーや専門家をゲストに迎えた40分のビジネス対談をYouTube向けに制作する。加えて、2025年にohpnerが出資したラジオ大阪の地上波枠(毎週金曜18時〜)で20分の番組としても放送する。YouTube番組の前編・後編を2週にわたってラジオで流すという設計だ。

制作費は業界における同種サービスの相場と比較して大幅に抑えた水準に設定した。そして最大の差別化ポイントとなるのが、二次利用の料金体系だ。

 

「従来は媒体ごとに使用料が発生し、そのたびにコストが積み上がっていく構造でした。BizPotでは、定額の二次利用料をお支払いいただければ、1年間、タクシーでもエレベーターでも、喫煙所サイネージでもタワーマンションのサイネージでも、どの媒体でも自由にお使いいただけます」(土井氏)

 

制作費の圧縮に加え、媒体をまたいだ二次利用を定額で解放する。土井氏はこれを「明朗な料金設計」と表現する。実際に正式ローンチ前の段階で複数社の受注を獲得しており、広告主が抱えていた課題の深さを物語っている。

 

「やっぱりみんな、同じ課題を持っていたんです。番組制作そのものに興味はあるけれど、それを各媒体に展開しようとするたびに追加費用がかかる。その構造に対する不満はすごく大きかった」(土井氏)

 

地上波の「信用」を、デジタル時代の武器に

BizPotのもう一つの独自性が、地上波ラジオとの連動だ。ohpnerがラジオ大阪に出資した背景について、土井氏はこう説明する。

 

「地上波ラジオとの連動は、コンテンツとしての信頼性を高める上で大きな意味があります。YouTube発の番組でありながら地上波にも乗るという事実が、広告主にとっても、タクシーサイネージなどの媒体社にとっても、安心感につながっていると感じています」(土井氏)

 

実際にBizPotは、タクシーサイネージ「TOKYO PRIME」のコンテンツタイアップパートナーとしての参画も決定している。コンテンツの質を担保しつつ、タクシーサイネージとの公式連携のパイプを持つ──この両輪が、広告主にとってのスムーズな出稿体験につながる。

 

 

メディア会社でも、代理店でもない「トータルサポート」

土井氏が最も強調するのは、ohpnerの「トータルサポート力」だ。

 

「メディア会社はメディアを作ることには長けていますが、その先の広告配信の設計には必ずしも精通していません。逆に広告代理店は媒体の買い付けや配信には強いけれど、番組制作の解像度は高くない。ohpnerは、番組制作からタクシー広告・モビリティ広告・エレベーター広告といった各種オフライン媒体への配信設計まで、すべて高い解像度でカバーできます。これができる会社は、正直ほぼないと思っています」(土井氏)

 

この強みの背景には、土井氏がSSP「fluct」やテレシーで広告プラットフォームの事業を牽引してきた経験がある。メディア運営と広告主支援の両方を手がけてきたからこそ、コンテンツ制作と配信設計の双方に高い解像度を持てるのだろう。

 

 

映像クオリティへのこだわり

番組制作は同社にとって初めてのチャレンジだったが、土井氏は妥協しなかった。

 

「最初の番組では制作会社を4社に同時発注し、同じ条件で映像を作ってもらって、一番クオリティの高いところを選びました。タクシーの中で流れても見劣りしないものにしたかった。ジャーナリズム性を追求するわけではありませんが、映像として美しく、きちんと視聴に耐えうるものにする。それが最低条件だと考えました」(土井氏)

 

複数回の制作を経てノウハウを蓄積し、現在はスタジオの美術セットもすべて自社で整えている。ローンチ直前の撮影では複数社のクライアントの収録を実施し、さらなる受注も見込まれているという。

 

 

「認知」の先にある「理解」を、もっとフレンドリーに

BizPotが解決しようとしている広告主のニーズは、大きく2つに集約される。

 

一つは、単なる認知獲得ではなく、サービスへの「理解」や「興味・関心」までを促進するコンテンツへの需要。タレントを起用したCMは強い認知を生むが、サービスの内容を深く伝えるには限界がある。対談形式の番組コンテンツは、そのギャップを埋めるフォーマットとして機能する。

もう一つは、コスト面の課題だ。タレントキャスティングによるCM制作は高額になりがちで、一方で安価なフォーマットでは視聴者の関心を引けない。BizPotは、その中間の「スイートスポット」に位置するサービスとして設計されている。

 

「タクシー広告をやりたいと思った時に、いきなり大きな予算をかけてタレントをキャスティングするのは難しい。でも安っぽいものを作っても誰にも見てもらえない。その間で悩んでいる広告主に対して、僕らはすべての課題を解消できるパッケージを用意しました」(土井氏)

 

 

少数精鋭で、次のフェーズへ

ohpnerは少数精鋭の体制を貫いている。「いかに人を増やさないか」をコンセプトに掲げ、一人あたりの生産性を最大化する方針だ。

タクシー広告の販売高で国内トップ3に入りながらも、メディア事業に参入し、コンテンツ制作からオフライン広告配信までのバリューチェーンを自社で構築する。BizPotは、オフライン広告における新しいエコシステムの入り口となるかもしれない。

 

「本質的な競合がいないんですよ、このトータルサポートには」──土井氏の言葉は、BtoB広告における新しい選択肢の登場を静かに告げている。

 

 

 

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。