広告主と媒体社、テクノロジーの懸け橋に-ExchangeWire ATS Tokyo 2024、総合司会に日本アドバタイザーズ協会の林博史(ひろし)氏が就任[ニュース]
ExchangeWireがお届けするグローバルイベントATS Tokyo 2024。日本のプログラマティック・マーケティング及び広告業界のトレンドと、日本と海外における将来的な市場動向を取り上げるAd Trading Summit(ATS)が、昨年に続き東京で開催されます。 この度、林博史氏が、11月22日(金)に開催されるATS Tokyo2024の総合司会を務めることに、決定いたしました。 林氏は、出版社、システム開発会社、そして少しのモラトリアムを経て、日本アドバタイザーズ協会に参画。公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会で事務局オフィスマネージャー職の任を務めており、デジタルを活用したマーケティング・コミュニケーション担当者向けの「場」の運営、及び、セミナーの企画をされています。 そしてまた、日本を代表する数多くの広告主企業のマーケティング担当者と幅広い交流があります。 「大手プラットフォーマーによる市場の囲い込みが引き起こしている透明性の欠如もさることながら、オープンインターネットでも同じことが起こっていると、多くの広告主は感じている。広告主が10を投資したら、媒体社に残るのは3程度しかないというような話も、聞き及びます。一次コンテンツを作っている媒体社にしっかりと収益が還元されなければ、オープンインターネットは死んでしまう。中間で誰がどれだけの役割を果たし、どのくらいの取り分があるのかを、示す必要があるのではないかと思う。」と現状の課題を訴えています。 そして、「日本の広告主は大手プラットフォーマーに対する広告予算を偏重し過ぎている。みんな1つや2つ、大手SNS以外にいつも見ているWebサイトやアプリといったメディアがあるのではないでしょうか?そのメディアを救える優れたソリューションが世界そして、日本にはたくさん登場しています。自社ブランド、商品、サービスの本当のファンを増やすためには様々なアプローチがまだまだあると思っています。このATS Tokyo 2024で自分がプログラマティック・マーケティングソリューションと皆さまを繋ぐ架け橋に少しでもなれればうれしいです。」 これを受けて、ATS Tokyo 2024を主催する英国ExchangeWire社および、これを支援するExchangeWireJAPAN編集部(株式会社デジタルインファクト)は、本年のイベントのアジェンダ全体における共通のバックテーマとして、かねてからの業界課題である広告主から見た広告投資のトレーサビリティ、より広くは広告の透明性・公平性を改めて掲げることを目指して、広告主、媒体社、広告会社、ソリューションベンダーが一堂に会し闊達な議論をし、交流するきっかけとなるコンテンツ作りを目指してまいります。
日本のDMP両雄が本音で対談! 〜クッキーレス時代に描くデジタル広告の未来〜
初夏の風 語り合う中に 和みかな(作者不詳) 洋の東西を問わず古より受け継がれているサクセスストーリーでは、最初はいがみ合っていた両雄が、その後力を合わせて大きな敵に立ち向かい世の平和を取り戻したり、より大きな者をつかみ取ったりするというストーリー設定がなされている。キャプテン翼の翼くんと日向くん、ドラゴンボールZの悟空とベジータ、アベンジャーズのアイアンマンとキャプテン・アメリカ。進撃の巨人のエレンとリヴァイ兵長もまたしかり。 今日お届けする話もまた、ある意味それに似たような構図である。 国内広告市場における古よりの両雄である大手総合広告会社グループで、DMP事業を展開する両社の責任者が向き合い戦ってきたマーケットについて、また今後取り組むべきことについて、議論を重ねた。 対談者 株式会社Hakuhodo DY ONE 上席執行役員 小林 武帥氏 株式会社DataCurrent 代表取締役社長 多田 哲郎氏 モデレーター 株式会社Leave it to me 代表取締役 池田 寛 氏 池田氏:こんにちは。Leave it to meの池田 寛です。本日は『日本のDMP両雄が本音で対談! 〜クッキーレス時代に描くデジタル広告の未来〜』と題しまして、電通グループの連結子会社であるCARTA HOLDINGSのグループ会社「DataCurrent」と、博報堂DYグループの「Hakuhodo DY ONE」でDMP事業に携わるお二人、多田哲郎さんと小林武帥さんにお話を伺いたいと思います。 まずは多田さんから自己紹介をお願いします。 多田氏:株式会社DataCurrent 代表取締役社長 多田 哲郎です。 「DataCurrent」は元々CCI(現CARTA COMMUNICATIONS)という会社で、ずっとDMP事業を行っていました。2021年に事業承継という形で、DataCurrent に引き継がれ、今に至ります。 DMP事業はCCI時代から10年以上パブリッシャーと向き合ってきた歴史があります。現在、DataCurrentは、コンサルティング会社という立ち位置で業務を行っており、顧客のデータ活用における戦略設計、基盤構築、施策実行支援を一気通貫で行っています。また、我々が「データエクスチェンジ」と呼んでいるDMPプラットフォーム事業を通して、広告配信への活用、データを用いた顧客の分析・利活用を行っています。 このようにコンサルティングの側面と、DMPプラットフォーマーという側面の両方を持つのが、弊社の特徴です。 池田氏:ガッツリした自己紹介をありがとうございます。続きまして小林さんお願いします。 小林氏:株式会社Hakuhodo DY ONE 上席執行役員の小林 武帥です。僕の現在の役割は、DMPと関連しない部門も含めて5つの本部をみています。 1つ目は、パブリッシャー向けのコンサル 部門で、今期からデータビジネス戦略のチームを持ってきてDMP「AudienceOne®」のビジネス開発も行なっています。 2つ目は、「AudienceOne®」を販売する営業部門です。基本的にデータコンサルを中心にビジネスを展開する部門で、パブリッシャー向きと広告会社向きのチームがいます。データだけでなく、BPOのようなサービスもやっており、ケースバイケースで 様々な提案ができる組織です。その他に、広告会社向けの広告営業部門、テレビCMとデジタル広告の統合プランニングのビジネスを展開する部門、また、データビジネスの推進や外部ツールの実装を支援する部門を担当しています。 池田:小林さん、こちらもガッツリとありがとうございます。自己紹介からもライバル関係が伺えてワクワクします。やっぱり仲が悪いんですか?(笑) やっぱり仲が悪いんですか? 小林氏:いえいえ以前から仲は良いですよ。 トップ同士などはもっと仲が良かったりします。プラットフォーマー戦略はお互い協調して進めないとバランスが 悪くなりますし、むしろもっと近づけと言われているくらいです。 多田氏:私は勝手に仲が良いと思ってますよ(笑)。この対談も私 から小林さんにお声がけしていますし。協調領域と競争領域があると思っていて、協調領域でいうと、ちゃんと市場を作っていく部分は力を合わせるべきだと思っています。 池田氏:これでは全然面白くないですね(笑)。みんな仲が悪いと思っていますので、お互いスゴイ仲が悪いというスタンスで話してもらわないと、読者的には盛り上がらないじゃないですか。ま、両社が今後どのような部分で協調領域があるのかなどは、後ほど深堀りさせてください。 ピンチはチャンス!?クッキーレスって本当に困るんですか? 池田氏:では、そもそもですが、クッキーレスは本当に困るんですか? 読者の中にはクッキーがなくなるとDMP事業自体がなくなってしまうのでは?と思っている方もいるかもしれません。それに、広告主目線で言うと、大手プラットフォーマーを使っておけばそれでOKっていうことにはならないのでしょうか。 小林氏:ユーザーへリーチするという観点において、広告配信は大手プラットフォーマーである程度はカバーできるかもしれませんが、やはり分析のところは横断してできなくなることは痛手です。広告会社側はかなり危機意識を感じています。 池田氏:それはメディアを跨いだ横断的な分析ができなくなることで、分析範囲が狭まることに対する危機感なのですか?広告主に対して今まではもっと精度が高くて詳しいフィードバックができたのに、それができなくなることで広告プランニングなどに影響がでるという意味でしょうか。 小林氏:そうです。広告会社側はテレビCMなどを含めたフルファネル、横断という強みを持っているので、その範囲が狭まることは彼らとしては痛手だという認識が強いです。しかし、一番困るのは広告収益をベースに運営しているパブリッシャーではないでしょうか。 池田氏:多田さんはいかがですか? 多田氏:ほぼ同じです 。ただ、私は広告主と会話することが多いのですが、広告主はその危機意識をあまり持っていないと感じています。広告会社側や事業者側は危機意識が高いので、様々なソリューション含めて検討し、広告主に対してクッキーレス対策に関する情報提供をしているからかもしれません。きっと何とかなるだろう、と。そして、私も小林さんと同じくパブリッシャーが一番困るのではと思っています。 池田氏:結局、お二人は困るのですか? 小林氏:困るには困るのですが、言い方が難しいですけど、、、もっと困って欲しいとも思うポジションにも僕らはいるのです(キラッ)。ポジティブに考えると、仕事のチャンスを作るキッカケにもなると思っています。 多田氏:僕らもそうです(キラッ)。 池田氏:いいですね〜(笑)。ぜひ、詳しく教えて下さい。 小林氏:例えば、インプレッショントラッキング はGoogleをベースにやっていたのですが、Googleのキャンペーンマネジャー(CM360)はクッキーレスの影響で注力できない状況になっていると思うのです。 我々は共通IDや独自IDを使ってそこを補完することを考えているので、 顧客に対して力になれる余地ができたと思っています。 池田氏:むしろピンチはチャンスだということですか?鋼のメンタルですね。安心しました(笑)。多田さんは? 多田氏:はい。特に我々はコンサル事業としては完全にチャンスだと思っています。事前に準備してきたのですが 、注目している技術、ソリューションについて少し語っても良いですか? 池田氏:いきなりですね。まあ、いいでしょう。盛大に語ってください。 多田氏:今、私 が注目しているのは「連合学習」という考え方です。いわゆるそのデータそのものじゃなくて、データモデルを共有することでデータ連携を図るという技術になります。個人情報に該当するようなデータで連携するわけではなく、AIを活用してセキュアにデータ利用が高度化できるので、プライバシーも保護できます。 既に実証実験を始めている会社もあります。この考え方は これからのクッキーレスのビジネスを変革していくのには使えそうだなって思っています。これまではクッキーがあったので比較的容易にデータ連携ができました。しかしこれからは、そういかなくなる。共通IDや ファーストパーティデータの活用に加えて、このようなユーザー識別子自体を必要としない学習モデルといったところに注目が集まると思っています。クッキーレス時代において今までと違う形でデータを利用できるという意味でも、我々の価値や希少性っていうものは、より高まると考えています。 なので、我々は困りません! 池田氏:高度過ぎて全然 理解ができませんが、なんだか強そうですね(笑)。 データクリーンルーム(DCR)同士をセキュアにつなげるようなソリューションが [...]
DoubleVerify2024年版グローバルインサイトレポート、 デジタル広告の新たな指標として、アテンション指標の重要性がより高まる
デジタルメディア測定、データおよび分析における先進的なソフトウェアプラットフォーム企業のDoubleVerify(本社:ニューヨーク、CEO:Mark Zagorski、以下DV)は、世界の100市場における2,000以上のブランドの1兆インプレッション以上のデータを分析した『2024年版グローバルインサイトレポート』の調査を実施した。本調査結果から、サードパーティクッキー廃止などの規制の動きに合わせて透明性のある指標が求められる中、広告におけるアテンション(注目度)ベースの測定の重要性が高まっていることが顕在化した。 2023年以降、広告主はアテンション指標の重要性を再認識するようになった。続く2024年には、メディアバイヤーの47%がアテンション指標をデジタル広告戦略に組み込むことを計画するに至っている。DV独自のアテンション・ソリューションであるDV Authentic Attention®の普及率は、過去1年間で3倍へと成長した。 DV Authentic AttentionⓇは、エクスポージャー(露出)とエンゲージメントの2つの主要なアテンションを評価し、クッキーに頼ることなくリアルタイムで50以上のデータポイントを分析することができる。エクスポージャー(露出)指標は、広告のプレゼンテーション全体を考慮し、ビューアビリティ(可視性)時間、画面占有率、動画表示、可聴性を通して、デジタル広告の集中度と目立ち度合いを測定する。エンゲージメント指標は、タッチ、画面の向き、ビデオ再生、オーディオコントロールなど、ユーザーによる広告とのインタラクションをトラッキングする。DVのアテンション指標は、これらの側面を統合し、基準スコア100に対するパフォーマンスをベンチマークとしている。 2024年版グローバルインサイトレポートでは、リテール・メディア・ネットワーク(Retail Media Networks:RMN)とMFA(Made for Advertising)の事例を紹介している。RMNのサイトやアプリではビューアビリティ(可視性)が低いにもかかわらず、より広範なアテンション指標がエンゲージメントにより大きな効果をもたらしていることが明らかになった。一方で、MFAサイトはビューアビリティ(可視性)が高くなるものの、アテンションスコアが低くなっている。また、エンゲージメントにおいてはニュアンスの異なる分析が必要であることを示している。これらの例は、アテンションの認知・理解を促進し、メディアバイイング戦略を最適化する上で、アテンション指標の重要性を強調している。 さらに本調査では、様々なメディアタイプやプラットフォームにおける、幅広いアテンションに関する傾向をまとめている。デバイス、広告サイズ、メディア環境などの要因がアテンションレベルに大きく影響していることを明らかにするとともに、各プラットフォームの特性に合わせた広告のカスタマイズの必要性を示唆している。 【調査概要】 本調査では、DVのテクノロジーを駆使して約100カ国、2,000以上のブランドによって生成された1兆回を超えるインプレッションをプレビット(入札前)とポストビット(入札後)の両方において分析し、北米、中南米、EMEA、APACの市場ごとの詳細な分析結果を提供している。調査対象期間を2023年1月から2023年12月とし、デバイスはデスクトップ、モバイルWeb、モバイルアプリ、コネクテッドTV(CTV)の動画およびディスプレイインプレッションを対象としている。本調査には、調査会社Sapioが北米、中南米、EMEA、APACの広告主1,000人を対象に実施したグローバル調査の結果も含まれている。 詳細レポートは後日、下記サイトに掲載する予定だ。 https://doubleverify.com/japan/ DVのブランドセーフティ&スータビリティ(適合性)ソリューションやその他DVのソリューションについてのお問い合わせは、こちらから行うことができる。 japan@doubleverify.com DoubleVerify Japan Facebookページ https://www.facebook.com/doubleverify.jp 【報道関係者からのお問合せ先】 DoubleVerify PR Office(旭エージェンシー) 担当:桑村、マートライ DoubleVerify@asahi-ag.co.jp [...]
Teads、2024 年パブリッシャーCookieless 調査発表 クッキーレス移⾏準備、⽇本はグローバルと並ぶ 32% 前回調査より 7 ポイント Up
Teads は⽇本を含むグローバルパブリッシャーを対象とした 2024 年度 Cookieless(クッキーレス)調査の結果を発表した。 Teads は 2018 年より Cookieless の技術開発を進めており、Cookieless 時代への備えや現状を把握するため、2020 年より調査を開始した。今年度は Teads とパブリッシャーパートナーシップを組むグローバルの 555 社が、Cookieless 対応への計画や状況、業界の代替技術採⽤について回答している。 Teads の SSP(サプライサイドプラットフォーム)では、現在、グローバル全体でのトラフィックの 45%が Cookieless であり、パブリッシャーや広告主は潮流の変化を迎えている。 この変局が、パブリッシャーと広告主にとって徐々に影響をもたらしていることが、Teads の最新調査で明らかとなった。 以下の調査結果は Cookieless への懸念を⽰唆しており、多くのパブリッシャーがサードパーティーCookie の取り組みについて、Google のプライバシーサンドボックス開発遅延のニュースなどにより 間伸び状態が続いていることもあり、開発準備への腐⼼が⾒受けらる。 クッキーレス移⾏への懸念点: ・「Cookieless 時代に向けて、代替案テストなどを実施し積極的に備えている」と回答したパブリッシャーは、グローバル・⽇本ともに 32%で、⽇本の結果は 2022 年度調査より 7 ポイント増え、全体的に Cookieless 時代に向けた準備が進んでいることが分かる。 *前回 2022 年度調査ではグローバル 15%、⽇本 25% ・「Cookieless ソリューションの多さに⼾惑っている」と回答したパブリッシャーは、グローバル全体で [...]
Zefr×Meta対談:短尺動画にもブランドセーフティが求められる時代がやってきた[インタビュー]
これまでYouTube広告のブランドセーフティ計測機能などを提供してきた米国テクノロジー企業のZefrが、Metaプラットフォームと事業提携を締結し、日本市場においてもサービスを開始することになった。リールと呼ばれる短尺動画を含む大量のコンテンツが生成される同プラットフォーム上で配信面の品質管理を行うことなど可能なのか。両社それぞれの見解を聞いた。 (Sponsored by Legoliss) Meta社とのデータ連携が必須である理由 ―自己紹介をお願いします。 ラドン氏:Zefrの共同創業者兼共同最高経営責任者を務めるリッチ・ラドンと申します。広告主や広告代理店向けに大手広告プラットフォーム上でブランドセーフティとブランド適合性を担保するためのソリューションを提供しています。 坂下様:Facebook Japanの執行役員 営業本部長を務める坂下洋孝です。広告代理店様を始めとするパートナー企業様に向けた営業活動とブランドセーフティやブランド適合性などに関する取り組みのタスクフォースをリードしております。 Metaは世界の38億人とつながるアプリ・プラットフォームであり、中でもInstagramが日本市場では急成長を遂げています。広告プロダクトに関しては、サードパーティCookieを活用せずにコンバージョン計測ができるコンバージョンAPI(CAPI)、広告クリエイティブをセットするとウェブコンバージョンの最大化に向けて最適なユーザーと配信面に対して自動配信を行うADVANTAGE+ショッピングキャンペーン(ASC)、そして縦型のショート動画であるリール広告に対する需要が高まっています。 なお、リール動画はInstagramを費やす時間の20%を占めており、音声付き再生率は93%です。よって広告効果が高く、利用者の53%はリール広告視聴後に表示された商品またはサービスを購入したことがあり、また他のプラットフォームと比較してブランドリフトが139%向上したとの調査結果も出ています。認知施策にも獲得施策にも有効な広告プロダクトです。 ―Meta社とZefr社の事業提携についてお聞かせください。 ラドン氏:Metaプラットフォーム上の広告に隣接するコンテンツに対して、Zefrがブランドセーフティとブランド適合性を計測するツールを提供しています。一年ほど前よりまずは北米や欧州市場を中心として取り組みを始め、インストリーム広告からリール広告へと計測対象を拡大し、この度、アジア太平洋地区でもサービス提供を開始しました。 ―ブランドセーフティとブランド適合性の定義を改めてお聞かせください。 ラドン氏:ブランドセーフティに関しては、世界広告主連盟(World Federation of Advertisers, WFA)の後援を受けて設立されたGlobal Alliance for Responsible Media(GARM)が12種類のカテゴリを設定し、各カテゴリで、低リスク、中リスク、高リスクそしてフロア違反といった4段階の区別を行っています。 そして危険度が最も高いフロア違反に該当するコンテンツ上または付近で広告が表示されるとブランドセーフティが毀損されたと見なされます。フロア違反はすべての広告主にとって排除すべきコンテンツであるため、当社ソリューションでは自動的に排除しています。 一方のブランド適合性は、残りの低リスク、中リスク、高リスクに該当するコンテンツを排除または有効活用するために必要となる指標です。あるブランド企業にとっては高リスクだが、別のブランドには最適なコンテンツである場合があり得ます。 ―ブランドセーフティやブランド適合性を計測する仕組みはどのようになっているのでしょうか。 ラドン氏:広告表示と隣接するコンテンツに関して、MetaプラットフォームとZefrがデータ連携を行っています。つまり、テキスト、画像、ロゴ、音声、いいね!、コメントなど、Metaプラットフォーム上にアップロードされたありとあらゆる情報を当社が受け取っているのです。ただしオーディエンスデータは取得しません。 これらのデータを当社が開発した識別系AIが分析し、さらには人間の目による確認作業を行うことで、各コンテンツをGARM指定のカテゴリごとに分類します。透明性を確保するために各コンテンツに付けたインデックスの公開も行っています。 坂下氏:Instagramだけに限定しても、コンテンツ最適化のために500種類以上のシグナルを取得しています。これらのデータの情報処理をリアルタイムで行う仕組みを開発するのは大変だったと想像します。 ラドン氏:Metaプラットフォーム上には膨大な情報が溢れており、これらをすべてスクレイピングすることは不可能です。だからこそMeta社とのデータ連携が必須でした。データ連携さえ行うことができれば、当社のAI技術が威力を発揮します。 両社のブランドセーフティ機能はいかに異なるのか ―Meta社独自でもブランドセーフティに関する取り組みを行っていますね。 坂下氏:最新のレポートによると、Metaプラットフォーム上に表示されたいじめや嫌がらせに関するコンテンツの割合はわずか0.07%です。つまり99.3%はユーザーからのレポーティングより先に事前検知して排除しています。 また広告主様向けには、「ブランドの権利保護」という仕組みがあり、広告主様が事前に登録したキーワードやロゴが不適切な利用された場合にはアラートが出され、Metaに対して該当するコンテンツを除去するためのリクエストを出すことができます。 さらにインベントリーフィルターと呼ばれる機能を使用すると、フィード広告のそばに表示されるコンテンツや、コンテンツ内広告が表示されるコンテンツの健全度を管理することができます。同機能と並行して、Zefrの仕組みをサードパーティツールとして導入し、日本語にも対応しました。 ―Meta社独自のブランドセーフティ機能に加えてZefrの仕組みを導入したのはなぜですか。 ラドン氏: Meta社が自社で管理する機能だけでなく、当社のようなサードパーティ事業者が独立した立場から計測することは重要だと思います。 坂下氏:さらにZefr社のツールであれば、ブランドセーフティに留まらず、ブランド適合性についてより深い設定を行うことができます。例えば広告主様によっては、ブランドセーフティは確保されていたとしても、ニュース記事の間に挟まれる形で広告が表示されるのは避けたいといった独自の基準を持っている場合があり得ます。 さらにZefrであれば、他のプラットフォームにおけるブランドセーフティ計測を行うことができるので、媒体間での比較ができます。グローバル企業が複数のプラットフォームで複数の言語を用いながら広告運用を行う際などに強みを発揮するのではないでしょうか。 ラドン氏:なお、Meta、YouTube、TikTokといったZefrとデータ連携するすべてのプラットフォームからのインサイトを得る仕組みを今年中にリリースする予定です。 獲得型広告でもブランドセーフティは必要? ―Metaのリール動画広告は、獲得型キャンペーンでも多用されているとのことですが、ブランドセーフティに対する需要はあるのでしょうか。 ラドン氏:仰るように、従来は獲得型マーケティングを行う広告主は売上やダウンロード数といった広告効果が最大の関心事であり、広告と隣接するコンテンツの品質にはそれほど注意を払ってきませんでした。 ところが、Meta社は先手を打ってリール動画広告においてもブランドセーフティを高めるための取り組みを開始しました。今後はブランドセーフティという概念が適用される対象が拡大していくことを見越しての動きだと捉えています。 生成AIの登場によって大量のコンテンツを容易に生産できるようになった現代においては、誤った情報や不適切なコンテンツの量も桁違いに増えます。ブランドセーフティの重要性も格段に高まっていくはずです。 坂下氏:最近では日本市場においてもブランドセーフティに対する意識が高まってきました。デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)が「アドフラウドを含む無効トラフィックの除外」と「広告掲載先品質に伴うブランドセーフティの確保」に関する業務プロセスの監査基準を制定しており、基準に準拠して業務を適切に行う広告業の事業者として100社以上が認証を受けるなど機運は確実に高まっています。 ―リール動画広告の広告効果を高めるためのコツをお聞かせいただけますか。 坂下氏:音声付きの再生率が非常に高いことを念頭に、UGC的な広告クリエイティブを作成するのが効果的です。またブランドのロゴが、上下に表示される別のコンテンツに隠れてしまわないように、セーフティゾーンと呼ばれる位置に配置することも重要です。 さらにMetaのAI技術を最大限に活用するために、できる限り多くの配信面に対してできるだけ多くの広告フォーマットを表示させることを推奨しています。 ―ブランドセーフティに関して今後の目標などについてお聞かせください。 坂下氏:グローバルプラットフォームでは日本語対応が遅れるケースもありますが、ブランドセーフティに関してMetaとZefrがそれぞれ提供するツールの日本語機能がほぼ同時にリリースできたことをうれしく思います。日本の広告主様に対してより多くの選択肢をご用意することができました。日本市場におけるブランドセーフティ及びブランド適合性に関する取り組みを一層強化していきたいと思います。 ラドン氏:MetaのようなSNSプラットフォームが生まれたことでより多くの人々とつながり、世界の出来事をより身近に感じることができるようになりました。広告主様は世界で起きている様々な事象とSNSの影響力を十分に把握する必要があります。 AIという革新的な技術は、世界をより良い環境にするために有効活用するべきです。ZefrはAI企業として、広告主様にとってより良い世界の構築を目指していきたいと考えています。 <お問い合わせ先> Zefr https://www.zefr.jp/ E-mail: zefr@legoliss.co.jp ※本インタビュー記事で紹介している機能の概要やデータなどは本記事執筆当時に把握した内容を記しています。
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