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WireColumn: DMPによるデータ活用法

(コラムニスト:株式会社オムニバス  山本 章悟)

今年注目のDMP(Data Management Platform)。このDMPを活用した広告運用の実績豊富なオムニバスの山本社長による『DMP』をテーマにしたコラム第1弾です。

 

2013年に入り、デジタルマーケティングやアドテクノロジー関連のトピックで盛り上がりを見せる “DMP”。このDMPとは、どのようなもので、どんな可能性を持ち、どう活用すれば良いのか?その導入から実践まで、幅広い方に活用できるようDMPについて解説していきます。

 

 

 

 

 

 

DMPとは・・

はじめに、DMPとはデーターマネジメントプラットフォームの略称で、簡単に言うとwebサイトにアクセスしたユーザーに関する様々なデータをマーケティングデーターとしてマネジメントする事のできるシステムです。現在このDMPが注目されている訳は、単純なwebサイトのデーターマネジメントの枠を超えてマーケティングのあり方に様々な可能性を示し始めているからです。まずは、今まさに起りつつあるDMPの可能性をお伝えしたいと思います。

 

ポイントは“蓄積”“解析”“共有”“連携”

DMPは主にwebサイトにユーザーが訪れた際のクッキー情報を使用してデーターをマネジメントすることができます。そう言うとこれまで多く使用されてきた、Google Analyticsやsite catalyst, アドプラン, アドエビス等と同様のシステムのように聞こえますが、そこには明確な違いがあります。それはDMPはデーターの蓄積や解析以外に外部のプラットフォームと連携し、その蓄積したデーターを容易共有する事ができるという点です。DMPの成り立ちは、データーを広告配信やその他のデーターとの連携を想定されて作られています。DMPに蓄積されたデーターはアクション(広告配信等)を行うアドサーバーなどのシステムに連携する事ができます。また、後に触れる外部のデーター(3rd party data)との連携も行う事ができます。これらの機能は、これまでの解析システムには実装されておらず、広告主、媒体問わずマーケティング活動の中心を担うシステムとして高い注目を浴びています。

 

蓄積出来るデーターと解析アクション

DMPを使用して蓄積できるデーターは大きく分けて、アクセスデーター、検索データー、属性データー(ログイン情報との紐付けが必要)にカテゴライズする事ができます。

 

<DMPで蓄積できるデータ>

▼ アクセスデーター

・アクセスのあった地域情報

・アクセスをしている頻度

・アクセスしているコンテンツ

・ページ内での遷移

 

▼検索データー

・webサイトに訪れた際の検索クエリ

・webサイト内での検索クエリ

 

▼ 属性データ

・性別、年齢等(ログイン機能がありユーザーの情報が取得できる状態が必須)

 

DMPを活用すると、これらのデーターを高度な解析に使用する事もできます。例えば、検索クエリ別のサイト内での行動解析や、属性情報別にサイト内での行動を解析し、サイト流入経路別にユーザーをカテゴライズする事などが可能になります。これにより、頻繁にコンバージョンするユーザーのサイト内での行動を分析してみるなど、アイデア次第で様々な解析や仮説設計の可能性が広がります。そしてそれらのデーターをDSP、アドエクスチェンジをはじめとする広告配信プラットフォームに連携させることで、広告配信などのアクションを起こす事ができます。これまでは、蓄積したデータの解析で終わってしまっていたPDCAプロセスを、DMPを活用する事でシームレスにアクションにまでつなげるようになったのがDMPがもたらした大きな変革のポイントです。

 

3rd party データーとの連携

このように蓄積→解析→アクションのプロセスをよりシームレスにする事を成功させたDMPですが、外部のデーターと連結させる事でさらにマーケティングの可能性を広げる事ができるようになります。それは3rd party データーとの連携です。3rd party dataとは何かというと、DMPを導入しているサイト側のデーターではなく他の様々なサイトで蓄積された外部が保有するデーターの事を指します。DMPにはそれら外部データーと連携することの出来る機能が備わっており、自社のみでは取得出来ないデーターを3rd party データーを使用することで補完する事ができます。海外ではBlueKai, Exelate, lotam等が外部のプラットフォームにデーターの提供をおこなっています。国内では弊社オムニバスやその他一部のアドテクノロジー企業が外部プラットフォームへのデーター提供を開始しています。では3rd party Dataと連携させる事でどのような事が可能になってくるのでしょうか。主な使い方は2点。自社のユーザデーターをより深く知る事と、自社のデーターを基軸としたデーターの拡張が挙げられます。

 

3rd party データーを用いた自社データーの解析

自社データーと3rd party データーとの相関関係を統計的に解析する事で、自社データだけの解析よりも自社サイトにアクセスしているユーザーの関心を深く知る事ができます。例えば家電ECサイトのPCカテゴリーからセグメントを作成した場合、アクセス情報しか取れていないので、どんなデモグラフィック情報を持ったユーザーがアクセスをしてきているかを知る事ができません。それに3rd partyのデーターアグリゲーターが持っている、デモグラッフィク情報と照らし合わせ、その親和性を解析する事でPCカテゴリーのセグメンテーションが持つ属性を類推する事ができるようになります。また、デモグラッフィク情報以外にも行動履歴との親和性を解析する事でどんな事に関心をもっているユーザーがPC関連ページにアクセスしてきているかを多面的に解析する事ができるようになります。例えば、自社のPCカテゴリーセグメントではノートPCに興味があるという部分まではわかりますが、デモグラフィックや行動履歴等の外部データを組み合わせるとで “ファッションにも関心が高くスタイリッシュさを求める男性ビジネスマン”というような類推ができるようになります。この解析方法は“Look a like Modeling” と言い、弊社でも多数の解析をサポートしてきました。この機能を利用することによって、多くのマーケティング担当者が、自社で設定したターゲット像に誤りを感じ、あらたなペルソナの発見とキャンペーンの見直しが行われています。

 

自社データーの拡張

もう1つの3rd partyデーターを活用する事の利点として、先ほど自社データの拡張を挙げました。これは、先ほど例示したEC サイトの例であれば、広告配信の際にPCカテゴリーという単純に自社サイトに合いそうなカテゴリーを指定して配信するのもよいですが、Look a like Modelingにより親和性が高い属性や行動履歴を知り、そのマッチ度が高いセグメントを使用して広告配信を行う事が出来るようになります。自社サイトに訪れているユーザーに対するターゲティングは非常にセグメンテートされているため効率的にマーケティングアプローチをする事ができますが、非常に限られた数のセグメントになってしまう事が多く、新規のユーザーにアプローチする事ができません。そこで自社のアクセスするユーザーと親和性の高いセグメントにデーターを拡張する事により、自社で保有していない多くの新規ユーザーに対して効率的に広告アプローチが出来るようになるのです。

 

 

以上の内容で、DMPには大きく分けてデーター蓄積機能、シェアリング機能、解析、3rd partyデーターとの連携という大きく4つの機能を持っている事をお分かり頂けたと思います。自社サイトのアクセスデーターという貴重なデーターを柔軟にマネジメントする事ができるDMPは、今後必ずおさえなければいけないアドテクノロジーと言えるでしょう。また配信プラットフォームやオプティマイゼーションロジックには、これまで流行り廃りが多分にありました。しかし、このデーター領域についてはマーケティングを考えるうえでの基礎であり揺るぎない領域となるのではと予測しています。広告主、媒体社問わず、今後はDMPの効率的・効果的な活用方法を研究・模索をしていく事が求められるのではないでしょうか?。次回以降は実践的な事例を交えたDMPの活用方法についてご紹介します。

 

 

ABOUT 山本 章悟

山本 章悟

株式会社オムニバス 代表取締役CEO                           2004年バリュークリックジャパン入社、アドネットワーク型インターネット広告メディアのセールスを担当。2006年クラリアジャパン入社、日本で初めての行動ターゲティング型インターネット広告メディアのセールス、マーケティングを手掛ける。2008年8月株式会社オムニバスを設立。アドエクスチェンジ、オーディエンスターゲティング等、最先端のアドテクノロジーを使ったサービスを展開。2013年2月にVideoDSPを展開するTubeMogul Inc の日本法人であるTubeMogul Japanとの業務資本提携を行い国内でのオンラインビデオ広告市場を牽引。デジタル環境の進化によって変化したユーザーに対する、企業の新たなコミュニケーション戦略の構築を手掛けている。