機会損失を減らして広告収益最適化を図るPubMatic、そのサービス概要と日本における展開
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on 2014年5月01日 in(ライター:柏木 恵子)
ソネット・メディア・ネットワークスは、5月14日から日本国内におけるPubMaticの提供を開始する。両者は4月23日に同サービスについての媒体社向けセミナーを開催し、サービス概要と日本での展開について、PubMatic社のChief Revenue OfficerであるRob Jonas氏と、ソネット・メディア・ネットワークス メディア部 部長の加藤秀明氏が講演を行った。PubMaticサービスは、システムをPubMatic社が、運用をソネット・メディア・ネットワークスが提供する、システムと運用の一体化サービスである。
価値のあるSSP導入を実現するには
媒体社が掲載枠の収益を最適化するには、自社販売、アドネットワーク、SSPといった方法がある。世界的に見て珍しいことだが、日本では枠単位で複数のSSPを導入している場合がある。ソネット・メディア・ネットワークスとPubMaticの提携に当たっては、そうした日本マーケットの特異性を説明するところから始める必要があったという。掲載枠の収益最適化や運用効率向上のためには、枠ごとに複数あるSSPをひとつに統合するのが最初のステップとなる。最終的には、サイト全体でひとつのSSPにしぼることが理想的だ。
収益を向上させるためのSSP導入だが、鍵となるのはシステム導入後の運用だ。季節要因や単価・掲載条件の変更、新しい配信先の追加など、1年を通じて必ず状況が変化していくからだ。つまり、SSPには「システム」と「運用」という2つの側面があると言える。
収益を増やす方法は、「新たな機会を増やす」または「失っている機会を減らす」の2通りある。新たな機会を増やすのは比較的簡単で、配信先を増やせばいい。一方で、機会損失を減らすのはそれほど単純ではない。まず、現状を把握し、機会損失の発生具合を確認する必要がある。そのためには、データを確認できる環境、さらにはデータを基に下した判断を反映させるための環境も必要だ。
データ確認と、それに基づいた設定変更が必要となると、「結局、管理工数が増えてしまうのでは」といった懸念が生まれる。そこで、SSPのシステムと、それを利用した運用を一元化して提供するのが、PubMaticサービスなのだ。データを可視化できるシステムを導入し、その適切な運用コストを上回る機会損失の軽減による収益増が得られれば、価値のあるSSP導入いうことになる。
サービスの全体像と4つの導入ステップ
ここで「SSP」という言葉について確認しておこう。通常、媒体社が広告枠に表示される広告を最適化するための管理基盤という意味で「Supply Side Platform」という言葉を使う。そのため、枠ごとに異なるSSPを導入しているケースがあるのだ。しかし、PubMaticではサイトの広告枠全体を管理し、最適化できる管理基盤としてSSPを位置づけている。さらに、さまざまな販路の一括管理を理想とし、それを最適化することをプログラマティックな広告枠販売と呼んでいる。
PubMatic社は2006年に米国シリコンバレーで設立された。同社が提供するSSP「PubMatic」は、世界6か国(米国、英国、ドイツ、フランス、豪州、インド)でサービス展開しており、世界3大SSPのひとつとも言われている。同社では広告枠を単にRTBで販売するのではなく、プログラマティックに販売することで収益を最大化することを目標としている。
PubMaticサービスは、収益を最大化するというSSP本来の目的のためだけでなく、中長期的に必要になると考えられる先進的な機能を実装している。導入は4つのステップで考えるとよい。
【第1のステップ】
「Yield Optimization」によってデータを可視化し、収益を最適化する。
【第2のステップ】
Yield Optimizationのデータを基に、「Private Marketplace」でプライベートオークションを実現する。
【第3のステップ】
DMPと連係する「Audience Direct」で、さらに枠の価値を上げる。
【第4のステップ】
「Unified Optimization」による、自社直接販売在庫との統合管理を行う。
これらのステップを踏んでいくことにより、枠の価値向上と、さらには媒体全体の価値向上を実現することができる。
日本市場に向けたクリエイティブ単位の事前確認機能
グローバル展開するサービスの成功の鍵を握るのは、適切なローカライゼーションだ。PubMaticでは日本市場向けの機能を開発しており、そのひとつが、Creative Review Processである。日本の媒体社は、事前のクリエイティブ審査を重視するが、通常、RTB配信の広告の事前チェックは困難だ。従来からURLブロックやカテゴリブロックの機能を実装していたが、それに加えて、日本向けにクリエイティブ単位での事前確認の機能を開発した。
他にも、日本円表示や、日本円によるビッド対応、日本時間のレポート閲覧やキャンペーン設定などを行っている。また、データセンターも日本国内に設置済みで、高速処理が求められるRTBのビッディングにも対応している。
サービス体制は、システムをPubMaticが、運用をソネットが提供する三社間契約で提供する。グローバルでPubMaticが接続対応しているDSP、アドネットワークはrocket fuel(米国)、Criteo(フランス)など図のとおりで、日本のアドネットワークやASPが順次追加されていく予定だ。運用は国内で実績のあるソネット・メディア・ネットワークスが行う。
PubMatic市場展開イメージ
デマンドパートナー
PubMaticサービスのその他の機能概要
その他、PubMaticの機能としては以下のようなものがある。
●Yield Optimization
RTBとアドネットワークを統合してオークションする「Unified Auction」という仕組みがあり、アドネットワークがレベニューシェアのように価格が決まってない場合は、過去の配信実績から入札価格予想を採用する。アドネットワークやSSPを複数導入して個別管理が必要になっているケースでは、PabMaticを導入することでそれらを統合することが可能になる。
●Insight
複数の視点によるレポートを確認できる機能で、RTB Insight、Demand Insight、Platform Insightの機能がある。RTB Insightでは、Ad Tag、SDP、Advertisrt、Lost Bidsなど、さまざまな視点でのレポートを確認できる。また、データをグラフで表示するビジュアル化やダウンロード、データのスケジュール送信機能がある。
運用画面
●Brand Control
FirefoxとChrome向けのアドオン機能で、PubMaticにより配信される広告を分析し、1クリックで詳細を表示する。また掲載状況によって、掲載不可を依頼したい個別の広告枠を指定し、キャプチャーやURLをワンクリックするだけでサポートセンターへ連絡する広告監視ツール「Inspector」も利用できる。
Inspector画面
●Private Marketplace
プレミアム在庫(付加価値の高い広告枠)を、広告主と広告媒体社が1対1で取引する機能で、通常のRTB取引とは別の環境で取引相手を指定するため、広告枠の価値を維持することが可能となる。さらに、指定した広告主から申請されるクリエイティブのみ審査するため、配信までに発生する広告クリエイティブ掲載審査が短縮され、運用負荷を軽減できる。
●Unified Optimization
純広告を含めた複数広告枠の広告在庫を統合し、最適化する機能。広告配信サーバーと接続することで、これまでの掲載実績を基にした価格重視の広告枠配分調整や、指定条件を重視した広告枠配分がリアルタイムに設定管理できる。
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海外では、ニュースメディア、TV局など、いわゆるプレミアムと呼ばれる媒体社がプログラマテックな広告取引に対応し、プライベートマーケットプレイスの導入により、ブランド広告主の予算のデジタルへのシフトを牽引している。Pubmatic社の、媒体社側が抱えるブランドセーフティの課題を解決する機能が提供されることで、日本の大手媒体社による活用の広まりが期待できるかもしれない。
(編集:三橋 ゆか里)
ABOUT 大山 忍
ExchangeWire Japan 編集長 米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。 2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。