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ユーザーをクロスデバイスでマッチングし、最適な広告を届ける技術とは? Criteoの新CROをインタビュー

今夏、CriteoのCRO(最高売上責任者)に着任したモリー・スピルマン氏が来日した。プレスリリースで発表されたクロスデバイス対応のソリューションやその目的などについて、お話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan編集長
大山忍)

 


 

 

日本では既に88%のリーチ率を達成

 

 

--まず、スピルマンさんのご経歴と責任範囲を教えてください。

 

スピルマン:アメリカで、紙媒体や放送関連などの仕事をした後、98年からデジタル広告の分野に身を置いています。Yahoo!やAOL、Advertising.comなどで働き、Videology、Millennial Mediaといったスタートアップでも仕事をしてきました。

CriteoにCROとして参画したのは、2014年8月で、グローバルセールスとオペレーションの責任者です。

 

 

--今回の来日目的を教えてください。

 

criteo_1スピルマン:今回の主目的は、日本の広告主やパブリッシャー、そしてアジア太平洋地域(APAC)のヘッドクオーターでもある東京オフィスに在籍する80名のCriteo社員と直接、会うことです。日本の社員とは全社会議で顔を合わせ、またビデオカンファレンスを使用して日本国外(韓国、オーストラリア、シンガポール、中国)にいるAPAC社員40名ともミーティングを開催しました。2015年に向けて、Criteoアジア太平洋地域では大きくアグレッシブな目標を立てています。

 

 

--大手のYahoo!や、トレンドになりつつある動画、モバイルといった様々な企業で経歴を積まれています。今回、次の舞台にCriteoを選んだ理由を教えてください。

 

スピルマン:広告主にパフォーマンスを提供するCriteoが気に入りました。Criteoは一人ひとりの興味・関心と関連性の高いパーソナライズされた広告を生成・配信することで、非常に高いパフォーマンスベースのプラットフォームを広告主に提供しています。ROI(投資利益率)の透明性を確保し、測定を容易にする上、PCだけでなくスマートフォンやタブレットなど、あらゆるデバイスにおいて、広告主はオンライン上の顧客・潜在顧客とエンゲージメントを高め、コンバージョンの最大化を実現することができます。これは他社にはない手法だと思っています。

 

 

--海外市場のプログラマテックに関するトレンドについて伺います。今、グローバルの広告主さんの関心が高いもの、また主な課題は何でしょうか。

 

スピルマン:最大のチャンスであり、同時に課題でもあるのは、モバイルです。モバイルデバイスの存在によって、消費者の購買行動における変化の速度が早まっています。特にアジアは欧米に比べ、タブレットではなくスマートフォンによってもたらされるコンバージョンが大きい。スマートフォンはメディアデバイスでもあり、ショッピング用デバイスでもあり、また支払いのためのデバイスでもあるのです。消費者にリーチするためには、このスマートフォンに適切なメッセージを適切なタイミングで送ることが重要です。

 

 

--他国よりサービス開始が遅かったのにも関わらず、日本におけるリーチは88%と最も高いと聞きました。なぜでしょうか?

 

スピルマン:リーチが88%ということは、つまり、デジタルユーザーの10人中9人にリーチ出来ていることを意味します。これには2つ理由があります。1つは、リーダーシップです。アジア太平洋地域を統括すると共に日本法人の代表取締役に、上野正博氏というデジタル業界で非常に長い経験を持つリーダーを据えており、素晴らしいチームが形成されています。それが、広告主やパブリッシャー、エージェンシーの好意的な反響に繋がっています。もう1つは、2012年からYahoo! JAPANと戦略的パートナーシップを締結したことが挙げられます。

 

 

 

モバイルでも完全一致可能なクロスデバイスソリューション

 

 

--新たに発表したクロスデバイス広告ソリューションについて伺います。まず、パフォーマンス広告では、なぜクロスデバイスが重要なのでしょうか。

 

スピルマン:広告主が成果を得るためには、ターゲットとする消費者に対して、最適な商品・サービスのオファーを、最良のタイミングで提供する必要があります。また、ROIを達成する上では、どの画面・デバイスで見せるかということも大切です。

例えば、ランチタイムに会社のPCで広告主サイトにアクセスし、商品をみた消費者が、同日の夜にスマホでその商品を購入できるように促すことが可能になります。

 

 

--モバイルでも完全一致を可能とするユーザマッチング手法とのことですが、Cookie以外にどのようなテクノロジーを活用しているのか、具体的に教えてください。

 

スピルマン:広告主から提供されるユニークな匿名識別子(ID)をベースにしたテクノロジーによって、クロスデバイスでのユーザマッチングを実現しています。Criteoの広範なリーチや購買意欲が反映されたデータなど、Criteoのプロダクトやソリューションと関わる豊富なデータに加え、完全一致を可能とするユーザマッチング手法とCriteoエンジンを組み合わせることで、「このスマホを使っている人は、このPCを使っている人と同一である」といった判定が可能になります。Criteoエンジンに追加されるこれらの情報は、時間の経過ともに増え、より消費者の購買意欲にマッチした“アクショナブルデータ”となり、クロスデバイスでよりパフォーマンスの高い広告の生成・配信が可能になります。

 

 

--GoogleやFacebookはログインデータを元に個人を認識していますが、Criteoの場合は広告配信で集めたユーザーの行動データを元にしてIDを識別しているということでしょうか。

 

スピルマン:行動データをベースにIDを識別しているのではなく、Criteoのクロスデバイスソリューションでは、マッチングの鍵として、広告主から提供されるユーザの匿名識別子(ID)を活用しています。

 

Mollie-interview_CeossDe図を 拡大して見る

 

--モバイルデバイスのアプリとWeb、両方のトラッキングが出来るのでしょうか。今回はPC、スマートフォン、タブレットがターゲットということですが、将来的にはテレビやSTB((ケーブルTV などの)セットトップボックス)も対象になりますか。

 

スピルマン:クロスデバイスには、モバイルのWebとアプリが含まれています。
将来的な展開としては、スマートTVや店舗内にあるオフラインのスクリーンを対象にすることも考えています。将来のCriteoエンジンは、これらスクリーン全てからデータを収集することになるでしょう。それによって、ユーザーが家でスマートTVを見ていようが、スーパーでスマホを見ていようが、同じメッセージの提供を実現します。

 

 

--リテールや広告主から、スマートTVやオフラインのスクリーンに対するニーズはあるのでしょうか。

 

スピルマン:まだ、それは未来に向けた話であることをクライアントの方々も理解してくださっているので、現在のところ、具体的なニーズとしては聞こえてきません。でも、Criteoでは、今後これらのサービスを開発していくことを考えていますし、提供できるタイミングがくれば、積極的に導入していただける自信があります。

 

 

 

広告主と消費者のWin-Winの環境を日本でも

 

 

 

--今回のクロスデバイスでのトラッキングは、プライバシーを最優先にして開発したと聞いています。具体的には、ユーザーのプライバシーをどのように尊重しているのでしょうか。
criteo_2スピルマン: Criteoは、非常に厳格なプライバシー、オプトアウトのポリシーを持っています。匿名の情報さえも提供したくない場合には、このオプトアウトを使っていただければ、データは収集されません。

Criteoはユーザーをマッチングして一番意味のあるメッセージを伝える一方で、プロダクトやソリューションはプライバシーを最優先して開発しています。

言うまでもなく、マーケティング担当者は、自社の広告について消費者が抱く期待のみならず、懸念をしっかりと理解する必要があります。広告主は、顧客や見込み客に対して、企業の広告キャンペーンに使われるデータがどのようなもので、その利用目的が何かを知らせるべきです。Criteoは、クロスデバイス広告ソリューションの展開に際し、透明性、説明責任、および選択性などを十分に配慮しています。

 

 

--日本では、リッチなモバイルの広告がまだ浸透していません。Cookie以外のトラッキングへの信頼性がない、また効果測定の手法が不明瞭であるという話も聞きます。

今回の新しいテクノロジー、クロスデバイスソリューションが日本で浸透するには何が必要だと思われますか。

 

スピルマン:Criteoの手法では、クロスデバイス、クロススクリーンのベネフィットを広告主が直接確認することが出来ます。広告主は、結果に対して支払いをするだけですので、完全にパフォーマンスベースのビジネスが出来ます。アジアのクライアントには、2桁台でパフォーマンスが伸びている企業もあるほど結果を出していますし、日本の広告主からの関心も高いと捉えています。

 

 

--ユーザーは、モバイルでコンバージョンするのでしょうか。それとも、モバイルで広告を見て、後からPCでコンバージョンするのでしょうか。何か傾向があれば教えてください。
スピルマン:アジアでは、フューチャーフォンやスマホで実際に購入する率が高いですね。アメリカでもコンバージョンは見られますが、広告をモバイルのWebやアプリで見て、PCに戻って購入するというケースがまだ多いです。モバイルで購入まで至るケースも増えていますが、その割合はアジアの方が高く、旅行関連の広告などもモバイルでクリックされています。

 

 

--最後に、日本のマーケッターの方へのメッセージをお願いします。

 

criteo_3スピルマン:全てのスクリーンにわたり一環したメッセージを送ることができるクロスデバイスソリューションは、類を見ない技術です。Criteoの技術とプロダクトがもたらす結果は、皆様のビジネスに確実にインパクトを及ぼすと思います。

 

 

--ありがとうございました。

 

 

 

 

(編集:三橋 ゆか里)

ABOUT 大山 忍

大山 忍

ExchangeWire Japan 編集長 米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。 2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。