データは「ファーストパーティー」でも「サードパーティー」でもなく「質」が重要

Mr.Kevin Tan _Eyeota.

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

ファーストパーティ・データとサードパーティ・データの優位性について、業界の意見はしばしば分かれることがある。EyeotaCEOであるKevin Tan氏によると、 これらの異なるデータタイプはそれぞれ独自の価値を提供するものであり、業界は優位性の議論ではなく、データの「質」と「透明性」の向上に労力を注ぐべきだという。今週のコラムで同氏は、APAC地域におけるオーディエンスデータ消費量の増加と、ブランドがデータプロバイダーに問うべきことについて述べている。

 

最大限のROIを実現するために連携すべき2種類のデータ

業界ではサードパーティ・データより、ファーストパーティ・データが優れているというのが通説である。しかし結局のところ、それらは同じデータであるということに気づいている人は少ない。重要なのはデータの出所ではなく、データの質と透明性である。

 

実際、我々は地域全体でサードパーティーによるオーディエンスデータが飛躍的な増加をしているのを目の当たりにしている。Eyeota指標によると、2014年第4半期に東南アジア各地でオーディエンスデータの消費量が523%もの成長を遂げた事が明らかになっている。これは、サードパーティ・データがいかに効果的なのかを証明するものである。

 

ファーストパーティ・データはそのデータソースの会社にのみに属し、関係者間でやり取りされてもデータそのものに変更はない。一方サードパーティ・データとは、要するに他人のファーストパーティ・データをそう呼んでいるだけである。新車の価値が工場から販売店に移動する過程で変わらないのと同様、データの持つ価値も当事者間で受け渡しされていく過程で変わる事はないのである。

ブランドが独自のファーストパーティ・データを持っていたとしても、その可能性を最大限に活用できる広告主は少ない。原因は、これらのデータセットにサードパーティ・データと同様の規模や深さがあるとは限らないからである。ファーストパーティ・データはブランド独自のウェブサイトから得たユーザー情報でしかなく、そのウェブサイトの範疇を超えたユーザーの自然な行動について明らかにすることはできない。

 

一方、サードパーティ・データは規模と深さを提供できる。高品質なデータプロバイダーを選択した広告主は、タイムリーで明確なサードパーティ・データを取得できる。さらにファーストパーティ・データと併用することにより、最高品質のサードパーティ・データはブランドが持つ対象顧客像をより完璧な形に浮かび上がらせることができる。

 

データの種類による優位性の分析に時間をかけるのをやめ、高品質なデータの収集に労力を注ぐことが業界全体にとって有益である。最大限のROIを実現するためには、これら2種類のデータを連携させることが望ましい。

 

プログラマティックの世界では、ターゲットオーディエンスがすべてである。したがって、持っているデータは多ければ多いほど良い。ただし、データの品質も重視すべきである。データの品質には差があり、量と同じくらい質も重要である。

 

APAC地域の独自性について

APAC地域はブランド、メディア購買者、又はパブリッシャーが事業に取り組む上で独特の特徴を持っている。ターゲット視聴者像の多様性や地域毎に違う言語や文化など、この地域で市場シェアを確保しようとするブランドや、大規模で高品質なデータを収集しようとするデータプロバイダーにとって数々の課題をはらんでいる。特に東南アジアでは、地域特有のオーディエンスデータの欠如がターゲットキャンペーン計画の妨げになっていた。少なくとも近年までは。

 

 

広告主やメディア購買者は対象オーディエンスデータを活用し、より正確に的を絞ることに長けてきている。先週リリースされたEyeota指標によると、東南アジアはより注目すべき地域になってきていると言える。現在は成長の初期段階であるが、第4半期のオーディエンスデータ消費量が前4半期に比べ523%増加している。さらに、この地域におけるオーディエンスデータの93%はシンガポールで消費されていたのである。

オーディエンスデータがデジタル広告キャンペーンにもたらす効果を企業が認識していくことにより、この傾向はこれからも続く可能性が高い。

 

このオーディエンスデータの増加傾向は、メディア購買者の季節的な活動を反映している可能性がある。APAC地域におけるオーディエンスデータ消費で最も成長を見せたカテゴリーはスポーツで、その平均成長率は28.3倍だった。これは成長率8.5倍で2位の電子機器・ コンピューター、成長率8.1倍で3位の食品・飲料と比べても格段に高かった。スポーツ部門内では、主にシーズン終盤にかけてのサッカー等のイベントによってスポーツ広告主の増加に拍車がかかった。

 

B2Bデータを求める企業の消費者離れ

この地域で見られたもう1 つの傾向は、金融部門と電子機器・コンピューター部門がB2Bデータの最大の消費者として出現したことである。

東南アジアにおけるこれら2つの部門は主にB2Bデータと関心セグメントを求めており、特に電子機器・コンピューター部門がオーディエンスデータ市場へ新しく参入するようになった。その中でも、全体消費量ではソフトウェア業界が最大となり、金融部門は第4半期、3倍以上の成長を果たした。

 

我々は、ブランドのB2Bデータに対する需要は今後も継続すると予測している。APAC地域のB2Bオーディエンスデータ消費は第4半期、世界的なB2Bオーディエンスデータの需要増加と共に、94%の急上昇を遂げた。この急上昇はAPAC地域におけるデジタル広告市場の重大なシフトを表しており、今後B2B広告主が広告費のより多くをデジタル広告に割り当てる可能性が高いことを示している。

 

B2B広告主は以前のように消費者であるブランドとインターネット上の視聴者探しで争うことなく、特定のターゲット視聴者を対象に綿密なターゲティング技術を使用することができるようになった。

B2Bデータは、産業内や部門内における人々の仕事、肩書、年功序列、給料、そして各々の団体での決裁権の有無などの情報を提供する。例えば、個人預金の顧客を取得しようとしている銀行は、B2Bデータを使用して直接ターゲット顧客と接触することができる。

この地域で見られたもう1つの傾向は、食品・飲料部門のオーディエンスデータに対する需要の増加である。この傾向は第4半期、年末の外食に関するキャンペーンに関する消費者の行動に関心を持つ広告主による季節的な動きを反映している可能性がある。しかし、それはまた経済的豊かさの上昇と消費欲の増加を示しており、広告主はこのターゲットオーディエンス獲得のため競争していくことに努力を惜しまないであろう。

2014年のユーロモニターによる報告によれば、2012年の加工食品と飲料の原材料の消費量において、APAC地域は世界の消費量の35% を占めていた。このような食品・飲料部門での大規模な成長を背景に、より大きな市場シェアと、より多くのターゲットオーディエンスを獲得するため、ブランドはオーディエンスデータ収集に投資する動きを加速させている。

 

質と範囲拡大を目指せ

ほとんどの地域では、オーディエンスデータを活用するにあたり、マーケティング担当者が直面する主要な課題がある。まず、データプロバイダーがどのようにデータを収集しているかを見極めることが必須である。

オーディエンスデータの質と幅は、キャンペーンにおいて重要な成功要因の1つであるため、プロバイダーがどこからデータを採取したのか突き止めなければならない。パブリッシャーのウェブサイトから収集されたのか? 申告された登録データか? 市場研究の調査結果からモデル化された、ごく一部のサンプルを基に全体を予測したデータなのか?これらの質問はキャンペーンに対するデータの関連性を判断し、データの持つ制約を明確にするために重要である。

第2に、ブランドはその地域の言語、文化、消費傾向などを加味したオーディエンスデータを使用する必要がある。これらの多様性は、データプロバイダーによっては考慮されない場合があるからである。特にAPACのような独特で細分化された市場ごとに特定のニーズを持つような地域では、これらの多様性を考慮しない一辺倒なやり方は通用しない。

これらの要素を考慮したオーディエンスデータは、独自のブランド主張を築くのに多いに役立つ。必ず事前に、データプロバイダーがデータの整合性と特定の地域との関連性について証言できることを確認するべきである。現地サイトからのデータは、現地の顧客の行動や好みを反映している。

前述のとおり、現在多くのブランドは独自のCRMデータベースを介して独自のファーストパーティ・データを蓄積している。このデータの持つ単体での価値は高いが、広告主はそれらの本当の価値を活用することはできない。なぜなら、そのデータは企業のウェブサイトの範疇を超えた、ユーザーの自然な行動について教えてくれないからである。

広告主とメディア購買者がオーディエンスデータを基にデジタル広告キャンペーンを推進していくことが一般的になるにつれて、より多くのブランドがサードパーティ・データを使用して独自のファーストパーティ・データを補いオーディエンスデータを進化させていくと、我々は予測している。

例えば、外食利用者がレストランのウェブサイトを訪れ、その後で小売り業や旅行会社のサイトに続けて訪れた場合、サードパーティ・データはこのユーザーの一連の行動を追うことができる。これにより、食品や飲料のブランドは、関連する小売業者や旅行会社との提携を通じてより効果的に顧客層を絞ることができる。

すべての広告主にとっての最大の目標は、より多くを求める顧客が何度も戻ってきてくれることである。異なる階層から得たオーディエンスデータを基にした情報を武器にすることで、ブランドは初めて適切な戦略を持ち、適切なタイミングで適切なユーザーに接触する事を計画できるのである。

(編集:三橋 ゆか里)

 

 

 

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野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長

外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。