×

アプリアドフラウドによる広告主の損失額は世界で年間10億ドル以上の規模 -Forensiq社が調査研究結果を公表-

ForensiQ_Logo

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

アドフラウド(広告詐欺)対策ソリューションを提供する米国Forensiq社が、「モバイルデバイスハイジャック」と呼ばれる新たなアドフラウドに関する調査研究結果を公表した。

このアドフラウド行為はモバイルアプリ上で目に見えない広告を即座に起動し、あたかも人間が行っているように振る舞うことで、伝統的なボットネットを引き起こすものである。アドフラウドの実行者は不正な手法を用いて広告主から収益を回収している。

 

今回同社は、パケットキャプチャと分析ツールにより、不正アプリの動作を確認できるビデオデモも公表している。

 

Forensiq社はこれらのツールによって、実際にはアプリを起動していないにも関わらず、アプリ起動やリブートをするなどの、多くのアプリについて明らかにしている。

 

主な調査結果は以下の通り。

  •  ● 2015年のアプリにおけるアドフラウドはグローバルで10億ドルを超えると予想
  •  ● モバイル広告主は広告費用の13%をモバイルデバイスハイジャックによって失っている
  •  ● 1200万ものモバイルディバイスがアドフラウドを実行しているデバイスであると推測される
  •  ● 1時間で700もの目に見えない広告が1つのハイジャックされたディバイスで稼働している
  •  ● モバイルデバイスハイジャックによって1ディバイスあたり1日2GBものデータが浪費されている
     

この研究に関しての詳細及び全ての詳細レポートについては、こちらからダウンロード可能。

以下、レポートから一部を抜粋し、調査の概要と調査結果のポイントについてご紹介する。

 

■この研究について

Fronsiq社のアドフラウドを検知するプラットフォームにより、5000以上のモバイルアプリからのアドフラウドを検知し、これらの中からいくつかのアプリを実際にスマートフォンやタブレットにインストールし、その不正を記録した。これらのアプリは起動していない時でも目に見えない広告が常時動いていることが確認された。これはユーザーから見た場合、多くのデータが無駄に使われていることを示している。

Fronsiq社は10日間で1200万のアプリを確認、そのうち少なくとも5000のアプリ上での広告詐欺を確認した。これはわれわれが確認対象とした米国のディバイスの1%、ヨーロッパ、アジアのディバイスの2-3%に相当する。

 

またこの実験を行う中で、いくつかの人気アプリにおいて広告は表示されないにもかかわらず、プログラマティックマーケットプレースにおいてIDが表示されたままになっているようなケースも見られた。これらはapp spoofingによるもので、アプリのヘッダーを変更することでおこる詐欺行為である。

 

■調査方法について

研究の第一ステップは、アドフラウドが発生しているアプリの特定である。

同社はアドエクスチェンジからRTBにより、毎日数十億ものインプレッションをリアルタイムに分析するアルゴリズムを確立、これを活用しバックグラウンドで目に見えない起動をしている広告などの不定期なトラフィックパターンを特定することが可能となる。

 

第二ステップでは、AndroidのエミュレータやiOSの実機を使って該当のアプリを1台ずつの機器で稼働させ正しい数値を把握。また、ネットワーク上のトラフィックを検知することでアドフラウドと思わしきアプリを検知し、モバイル機器からの数百ものデータやビデオのパケットをキャプチャーした。

 

また、並行して異なるシナリオによるアプリ上の変化のモニタリングを実施した。それぞれのシナリオにおいて、当社のパケットモニタリングツールを利用し、特定のアプリから生成されるトラフィックの確認を行なった。

 

【1時間のモバイルデバイスハイジャックの状況】
News_Forensiq-1

■アドフラウドの広がり

Fronsiq社の研究ではモバイルの入札前のエコシステムの一部を確認することが出来、その結果から数字を予測することが出来る。今回の実験結果によってモバイルアプリのインベントリーの13.3%の割合、そして対象となったモバイルアプリの14.6%に高い脆弱性が見受けられた。

 

Fronsiq社はGoogle Play及びAppleのApp Store及び3rdパーティーのマーケットプレースで利用可能なアプリから数千もの広告トラフィックの分析を行った。その結果広告詐欺はAndroidとiOSの両方において確認することが出来た。

 

 

30日間の観察期間を経て検知された活動結果は下記の通りである。

 

【30日間に観察されたアプリ プログラマティックトラフィックにおけるアドフラウド】

News_Forensiq-2
■広告主の費用損失について

Fronsiq社が1日162億のアプリ上のインプレッションを確認した結果、うち13.3%が高いリスクにさらされており、これをトラフィック量をベースに換算するとモバイルディバイスのハイジャックによる広告主の2015年の被害は8.57億ドルを超えると予想される。

 

 

【アプリアドフラウドによる損失想定金額】

News_Forensiq-3

米国国内のみで、2015年には200億ドルもの広告費がモバイルアプリ広告に費やされる。モバイルのCPMが増大しており、モバイルトラフィックの需要が高まっていることを鑑みると、2015年の全世界のアプリでの広告詐欺は10億ドルを超えると考えられる

 

同社は、「2016年にモバイル広告費はデスクトップを追い越すと考えられていることから、このアプリアドフラウドは広告主やユーザーにとり新たな脅威となることから、そのトラッキングの必要性を強調、トラッキングにより広告費の浪費が最小化され、安定的な広告システムを構築する鍵となる。」としており、現在IAB, TAG, MRC, ABCやANAなどの業界団体と共同でこの新たなアドフラウドの認知向上に努めている。

 

 

 

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。