×

子供向けデジタルメディア市場はいかに巨大市場に変わっていったのか

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

子供向け広告市場は巨大である一方、議論を必要とするビジネスである。日中にテレビをつければ、「お薦めの」最新の玩具に関しての広告で溢れている。「センタニアル世代(00年以降生まれの子供)」として知られる彼らは、今までで最もデジタルに親しんで育った世代である。そんな彼らにリーチするのに、テレビは最も優れた方法なのだろうか?ExchangeWireはSuperAwesome社のCEOであるDylan Collinsにインタビューを実施し、子供向けのデジタルマーケット市場の概要と、多くのチャレンジがある中でなぜこの市場が重要なのか、インタビューを実施した。

―多くの人々が子供向けデジタルメディアの市場についての知識がありません。どのようにして市場が立ち上がったのでしょうか?

子供向けのメディアといえばテレビに独占されていました。忘れてはならないのは、テレビは今も大きな影響力を持っているという点です。DisneyやCartoon Network、Nickelodeonなどは非常に大きな影響力を持っています。

しかしながら、市場が過去2年で大きく変化をしています。テレビの視聴率は急激に下がる一方で、デジタルにかける予算は年間50%も成長しています。何が起こっているのでしょうか?

まず、視聴の方法が変わり始めました。この変化は好奇心旺盛なセンタニアル世代のコンテンツに対する好みによるものです。今日、90%の子供がタブレットを使用しており、自分向けのタブレットを持つ子供も年間20-30%増えています。これは特に新しい発見ではないのですが、長い期間、ブランド企業はこれらの情報を無視することができていました。しかしながらテレビの衰退が始まってしまいました。Nickelodeon社の視聴者は18ヶ月で30%も落ち込んでいます。Disney社は彼らの加入者の伸びを公開しています。

【家庭及びその他の環境での1週間におけるメディア消費について(年代別、2015年)】

Super-Awesome-1

これらの市場におけるインパクトを理解するためには、下のグラフを見てみると良いと思います。ほどんどのオーディエンスにおいて、テレビとデジタル広告の投資は大凡60/40です。一方で、子供に関しては、数字が95/5になります。数字上でも明らかですが、子供向けデジタル広告市場は多くのお金を生むチャンスとなっています。

【2015年の広告投資について(Mドル)】

Super-Awesome-2

2015 Advertising Spend, USD$ millions

次に、世間が子供を無視しなくなった点が挙げられます。何年もの間、シリコンバレーの標準的なアプローチは13歳未満の子供は誰もインターネットなど使わないという想定に基づいていました。しかしながら、何人かの政治家がリーダーシップを発揮し、子供のインターネット利用に関する個人情報保護法案が通過しました。アメリカ(COPPA)におけるスタンダードとヨーロッパ(GPRD)において通過しようとしている法案では、13歳未満の子供に対して(クッキーや類似のIDを利用した)データ収集を完全に禁止しています。実際、この法案によって、子供と家庭向けマーケットは完全に別々のプラットフォームとなり、デジタルメディアにおいてこれらの要望に全て適応する必要が生じました。よって市場は新たなデジタルのプラットフォームに急速に統合されるのではなく、法律を犯す事なくオペレーションを実行できるようなインフラ投資が必要になったのです。

―子供向け広告に関する法的な対応が必要になる一方で、インフラのサポ―トが欠けている中、SuperAwesome社はこの大きな問題に如何に対応したのでしょうか?

3年前から、私たちはこの嵐のような変化を呼ぶトレンドを予期しており、特に子供向けのデジタルメディア市場においては、安全性及び全ての人へのサステイナビリティの両面において、新たなインフラが必要になるだろうと考えていました。現在、我々のテクノロジーは数百ものブランドやコンテンツオーナーにより利用され、子供に安心な広告、収益サービス、コンテンツ製作、安全なソーシャル上の会話が出来るサービス環境を提供しています。私たちのKidAware証明書のプログラムは世界中の多くの主要メディア企業に利用されています。私たちは、今後市場がどう変化していくのかについて、明確に描けています。

―マーケターやパブリッシャーはなぜこの若いデジタルオーディエンスを意識すべきなのでしょうか?彼らを熱中させるものは何でしょうか?

Dylan-Collins-ExchangeWire

熱中させるものですか?全てのことです。商品のアーリーアダプターとしてであり、テレビに利用されていた多くの費用を割り当てることもそうでしょうし、新たな世代向けのコンテンツの販売権も当てはまります。電機や自動車などの、元々子供と関連の薄かった市場からも多くの関心を得ています。どの位の最新のテスラの予約オーダーにおいて、親が購入ボタンを押す前に子供の目を触れていると思いますか?

この新たな世代の子供たちは、想像するよりも多くの破壊力を有しています。シリコンバレーはようやくそのことに気づきました。GoogleやAmazon、Twitterといった会社が13歳未満の子供向けの戦略を考え始めました。難しいことではありますが、もしあなたのビジネスが(電子メールやソーシャルネットワークなど)子供とは無関係だと考えたとしても、子供を無視して考えるという選択肢は、有りえません。 GoogleはGoogle for Kids戦略(YouTubeはYouTube Kidsを立ち上げ)を発表しました。Amazonは積極的にコンテンツを利用してこの市場に進出しています。TwitterとSnapchatは自社のキッズ版アプリを作ろうとしている。一方で、Facebookがこの分野で競争に参加しない点は目立っているが、これは明らかに正反対のメッセージを示している。

玩具会社は、現状の商品を拡張する形でのデジタルエコシステムの確立に苦労していいますが、買収や提携、試験検証などによりデジタルのDNAを急速に作り上げています。

―今までのようなやり方が通用しないこの市場で、デジタルメディアを使って、どのようにパワフルで影響力の強い子供たちに、戦略を企画し、実行に移すのでしょうか?

メディア企業にとって最も大きなチャレンジはテクノロジーへの投資ではないでしょうか。子供向け市場は別のプラットフォームを必要とする点でよく知られています。行動、要求、標準、テクノロジー全てにおいて異なります。私たちのプラットフォームは全くのゼロから構築されたものです。すべての広告はアプリやサイトのコンテンツに応じて提供され、視聴者のプロフィールにより提供されることはありません。

ブランド企業の観点から言うと、私たちは全てをシームレスに構築しています。しかし、これには巨大な投資が必要になります。私たちの開発の多くは、13歳未満の市場に対して、新たにオンライン広告の形式作りをする点に注がれています。例えばアトリビューションのようなトラッキングに必要な形態を考えたときに、ユニークなIDなしでは大きな困難に直面してしまいます。

ところで、これはテレビの衰退を予言するものではありません。子供向けテレビ市場は引き続き信じられないほどパワフルなメディアであり続けるでしょう。しかしながら、急速な成長を見せるデジタルと比較するとそこまでの勢いはありません。

私たちのミッションはこの市場において安全で効果的なインフラを構築する事です。子供にとって安全で、ブランド企業にとって効果的、コンテンツオーナーにとって持続可能な仕組みです。次の機関車トーマスやペッパピッグはデジタルチャネルから現れるでしょう。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。