×

パフォーマンスよりもレリバンシー:プログラマティックモバイルキャンペーンで成功するための秘訣

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

IABによる今年初頭の調査によると、調査に回答した50%のマーケッターがスマートフォンのインベントリーバイイングのためにプログラマティックを利用している。しかしながら、モバイルでのプログラマティック広告は、モバイル関連の話題の中でも最も理解が進んでいないトピックで、44%の回答者が全く、またはほとんど知識がないと回答している。Widespace社のプログラマティック部門のビジネスエリアマネージャーであるJosefine Vinberg氏が、適切なキャンペーンにおける目的設定を行うことが、ROIを最大化するために正しいアプローチである点を説明してくれた。 

プログラマティックの人気向上にもかかわらず、その活用に関する知識が欠如している点は、問題点となっています。特に世界的にモバイル広告への投資が、今年前半で56.1%も伸びていることからも問題は顕在化しています。現在、モバイル広告はディスプレイ広告の51%を占めており、多くの予想よりも早い段階で、デスクトップでの広告予算を上回りました。

この点を念頭に、プログラマティックでのモバイルキャンペーンにおいて成功を収めたい人々が留意すべき3つの点について述べたいと思います。

1. モバイルをデスクトップの延長として考えないこと

Photo: Josefine Vinberg氏,Widespace社

Josefine Vinberg氏、Widespace社
Programmatic部門ビジネスエリア マネージャー

デスクトップ広告は2014年にピークを迎え、それ以来縮小しています。対照的に、モバイルは急成長を遂げています。しかしながら、モバイルは全く異なる環境で、マーケッターはスマートセンサーやタッチスクリーン、ジャイロ、VRフォーマットなど様々なスマートフォンのユニークな機能を生かして機会を拡大することができます。この点の解釈を誤ってしまうと、静的で退屈な広告フォーマットを利用し、デスクトップキャンペーンと同じような戦略に依存してしまいます。

モバイルが、朝起きてから夜寝るまで一日中常時使われている唯一のメディアチャネルであることを認識することも重要です。この点から、クロスデバイスでのコンバージョンよりもスマートモバイルソリューションに注力することにつながるかもしれません。というのは、クロスデバイスターゲティングのテクノロジーには未だに欠陥があり、モバイルに注力する方が賢明かもしれません。

2. ターゲットグループを広げることでリーチを向上

今日のプログラマティックの世界においては、データは一層重要になってきています。私たちは、垂直統合的に広告をバイイングしたり、サイトターゲティングを行ったりといったことはもう行わず、あるオーディエンスセグメントに対しての購入を行います。しかしながら、モバイル広告の世界においては、デスクトップよりもより細分化が進んでおり、それぞれのモバイル環境がウォールドガーデンのようになっています。それゆえ、データが収集された同じ環境においてのみオーディエンスのターゲティングが可能です。

このようなことから、低いマッチング率によってデリバリーが伸びず、リーチが低くなり、結果として予算がデスクトップにシフトされていきます。それ故、キャンペーンは通常、ユーザーレリバンシーの面から苦戦します。この理由は、マーケッターが所有しているデータに合致することがないからです。モバイルプログラマティックへの投資は、アンドロイドのモバイルウェブかネイティブアプリにより集中します。これは、トラックがし易く、ユニークなユーザーを捉えやすい点によります。皮肉なことに、iOSのモバイルトラフィックは、それほど混雑しておらず、よりターゲットグループが潤沢にいます。それ故、無視するべきではありません。

このような状態に対応するために、特定のデモグラフィックやコンスーマーグループへのフォーカスを緩め、代わりに、個別の広告関心に眼を配ることが重要です。キャンペーンを、所有しているデータのユーザやターゲットグループであるユーザに配信し、その行動やメッセージへのリアクションについてのインサイトを収集してください。そして、これらのインサイトを利用して、類似した行動パターンの他の人々を探してください。こうすることでリーチを高めるだけでなく、新たな顧客セグメントを見出すことができるかもしれません。

3. ブランドを最適化し、クリックよりも適正を重視する

マーケッターがモバイルをより重要なブランドツールとして捉えるにつれて、キャンペーンの最適化や測定方法における変化が求められます。ブランド確立においてはクリックを促進するよりも、ユーザにリーチし、エンゲージメントを高めることが重要です。

キャンペーンにおいてCTRを最適化し、高クリックフリクエンシーで広告が配信される場合においても、4%に満たないものすごくユーザクリック率に留まることを私たちは既に理解しています。

それでは、どのようにターゲットオーディエンスにリーチするのでしょうか?

重要なのはパフォーマンスよりもレリバンシーで、マーケッターがデータと分析を介して、カスタマージャーニーの工程を理解することです。レリバンシーや関心に応じてブランドキャンペーンを最適化するためには、パブリッシャーを直接プラットフォームに統合しているプログラマティックのパートナーと協業することが必要です。

モバイル環境間でユーザをフォローでき、十分なデータからパターン化ができ、あなたのメッセージに関心を示しそうなユーザを見出せるようなパートナー探しが重要となります。

ブランド重視のキャンペーンにおいて、クリックを最適化したり、パフォーマンスをベースとしたKPIで評価をしないことが重要です。その代わりに、キャンペーンのゴールを設定し、別のKPIを設定してください。もしキャンペーンの目的が、新たな商品の関心や認知を高めることであれば、それが計測方法となり、評価基準となります。これは例えば、どのくらいの長さでユーザが広告を見ていたか、キャンペーンがターゲットグループの行動や認知に変化を与えたのかといった分析を行うことで明らかになります。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。