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投資家を桁違いに魅了するアジアのアドテク企業、AdAsiaHoldingsのこれまでとこれから [インタビュー]

AdAsiaHoldings(アドアジアホールディングス)が、ジャフコアジアより1200万米ドル(約13.6億円)シリーズAラウンドの資金調達を実施したことを公表した。

2016年4月の設立からわずか1年、アジア全域で急速な展開を進める同社CEO十河宏輔氏に、足元の事業展開や今回の資金調達、今後の見通しなどを伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下智之)

― 直近の事業展開の進捗について、全体及び地域・国別にお聞かせください。

写真1

2016年4月にシンガポールで事業開始以降、バンコク、ジャカルタ、ホーチミン、台北、ハノイ、プノンペンの順に現地オフィスを構えて、事業を拡大しています。

現在グローバルで90名の社員がいますが、特に市場の伸びているタイ、インドネシア、ベトナムで積極的に採用をしている状況です。

現在、タイは40名、インドネシア・ベトナムは15名ずつという状況で年内に3ヶ国とも2倍以上にスタッフを増やす予定です。

この3つの国では、ローカルクライアントが非常に多くの広告予算をデジタルに使っています。新しいビデオ広告のソリューションとして、当社のAdAsia Video Networkは特にご好評頂いている状況です。

― 東南アジアデジタル広告市場の各国ごとの状況をお聞かせください。

インドネシア、タイ、ベトナムは現地語が使われているということでローカルのメディアやアドネットワークが強い傾向にあります。またこれら3か国は成長率も非常に高く、今後も伸びが期待出来る状況です。

特にビデオ広告が好まれる状況で、YouTubeやFacebookへのビデオ広告への投資が大きいです。その中で、新たな広告フォーマットのAdAsiaVideo Networkにクライアント様も大きな期待を寄せていただいています。

シンガポールや台湾に関しては他国と比べると成熟したマーケットです。特に、いわゆる獲得型の広告で、コンバージョン数や申込数といったKPIが非常に厳しく求められる傾向があります。また、モバイル広告市場は拡大しており、広告主もモバイル広告への予算を増やす傾向です。

― 今回のジャフコアジアからの資金調達額は、アドテク会社のシリーズAとしては、過去最大になると聞いております。どのような点が評価されたのでしょうか。

写真2

マルチナショナル経営を初年度からここまで出来ている会社を見たことがないという評価を頂きました。

また、東南アジアで利益を出せているスタートアップが少ない中、しっかりと初年度から利益を出している点や商売上手なマネージメントチームのことも評価頂きました。

さらに、圧倒的なスピードを持つユニークな独自プロダクト開発と顧客サポート、2016年は独自のビデオ広告フォーマットであるAdAsiaVideo NetworkやインフルエンサーマーケティングのプラットフォームであるCastingAsiaなど、1年で合計6つのプロダクトをローンチした点も、評価頂きました。

図:AdAsia_Digital-Platform

― 東南アジアは成長しているとはいえども、デジタル広告市場は全て足し合わせても数千億円規模かと思われます。また、FacebookやGoogleのシェアも高く日本より寡占化が進み、また欧米や中華圏の同業者による今後の草刈り場ともなっています。そのような中でどのようなポジションで事業を成長させていくとお考えでしょうか。

現地にオフィスを構えて、地に足を着けてローカルマーケットを攻めている海外のプレイヤーはまだまだ少ない状況です。当社のようなローカルマーケットに強いプレイヤーは必要かと思います。

GoogleやFacebookのマーケットシェアは高いですが、常にクライアント・マーケッターは新しく効果的な広告プロダクトを求めています。その点、当社のローカルのプレミアムパブリッシャーにフォーカスしたVideoのアドネットワークは他社との差別出来ており、マーケットからの反響も良い状況です。

データを活用したインフルエンサーマーケティングのプラットフォームであるCastingAsiaも、非常にユニークだとご好評頂いております。今後、更にシェアを拡大すべく、採用及びプロダクトの強化を推進してまいります。

図:CastingAsia

― 東アジア展開の今後のスケジュール感についてお聞かせください。各市場をどのようにみておられますか?(中国・香港・日本)

中国、日本では今年4月中旬より、香港では7月を目処に本格的に事業を開始します。
マレーシア及びフィリピンは第3-4四半期中に事業を開始する予定です。

各国にて、新しい広告プロダクトを順次ローンチしてまいります。例えばAIを使ったマーケティングプラットフォームは既に開発中で近い将来ローンチする予定です。

また、当社の各海外拠点のネットワークを活かして、香港から中国、中国から日本、日本から海外、海外から日本へのクロスボーダーでのマーケティング支援を積極的にやっていきたいと考えております。

― 日本においては、貴社は何が強みとなるでしょうか。

圧倒的なスピードをもって展開するユニークな独自プロダクトと、クロスボーダーでのマーケティングが支援できるところです。

アジアのほぼ全てに拠点を持ち、独自プロダクトを持ち、幅広くデジタルマーケティングを展開できている会社は数少ないと考えております。

― 今年の成長目標を、いくつかの側面からお聞かせください。

日本、中国、香港、フィリピン、マレーシア市場への進出及び社員数は年内に200名体制まで増やしてまいります。

顧客数は現在の300社から1,000社へと、更に売上は毎年倍々で伸ばしていきたいと考えております。そして、現在準備中のホーチミンでのプロダクト開発拠点をしっかりと機能させ、AIを活用した広告プロダクトの開発を加速してまいります。

また、2019年までに予定しているIPOに向けてしっかりと足場を固めていきたいと思います!

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。