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ドラッグストアの店頭に革命を起こす「CROSS BRIDGE(クロスブリッジ)」 デジタルサイネージ広告の魅力と意義とは [インタビュー]

動画広告代理店のCyberBullが、マイクロアドデジタルサイネージと連携し 店頭サイネージと連動した販促向け動画広告「CROSS BRIDGE(クロスブリッジ)」の提供開始をリリースした。リリースの内容やその背景と今後の展開についてお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)

デジタルサイネージは店頭でのコミュニケーションにおける新しいかたち

― 自己紹介をお願いします。

工藤氏 (写真右) マイクロアドデジタルサイネージ(以下MADS)の営業企画部で事業責任者をしています。MicroAd BLADEのリリースの少し前に新卒入社し、3年間はサイバーエージェントのインターネット広告事業本部でMicroAd BLADEを販売していました。2013年にMADS社が立ち上がるタイミングで参画して今に至ります。

宮田氏 (写真左) CyberBullは2015年4月に設立された動画広告のインターネット専業代理店です。ネット上の動画による広告キャンペーンをどう工夫すれば広告主さまに上手に使っていただけるかという1点だけにフォーカスした特殊な広告代理店です。

私はそこで主に宣伝やマーケティングの支援を行い、クライアントさんに直接営業しています。2013年にサイバーエージェントに入社し、本部でインターネット広告のコンサルタルティングをしていましたが、CyberBullの立ち上げ後1か月くらいから出向して現在に至ります。

― 今回のリリース内容についてお聞かせください

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宮田氏 ドラッグストアでシャンプーを買う時に指名買いをする人もいますが、マジョリティは店頭を訪れてからディスプレイやPOP、パッケージ、価格を見て決める人です。参考にするのは店頭の情報が大きいということが調査結果から明らかになっています。店頭にどのようなクリエイティブコミュニケーションを設置するのかは、広告主様が感覚で決めて設置してあとは「売れろ!」で終わりということが多いのです。これはまだまだ改善できるなと思いました。

私たちはインターネットの代理店なので、効果を良くするためにクリエイティブを運用します。たとえばAパターン、Bパターン、Cパターンの3パターン出稿します。「Aはよいけど、Cは全然だめ」など優劣の結果を見て、いちばんよかったものを店頭に反映します。これはMADSさんのデジタルサイネージシステム「MONOLITHS」を使えばできます。ここがうまく連動すれば店頭では常にネット上や世間でいい数字を残したクリエイティブが流れます。

― それぞれの役割分担についてお聞かせください

工藤氏 CyberBullさんが運用される動画広告の中で最適化されたクリエイティブをリアルタイムで放映できるデジタルサイネージシステム「MONOLITHS」を持っていますので、そのシステムの提供と配信先の拡大を行っています。今回のリリースでいえばドラッグストアがそれに当たります。

我々はデジタルサイネージをインターネット広告の一つとして捉えており、ターゲットに合わせて様々なデジタルサイネージをネットワーク化しています。

ドラッグストアでは現在100店舗が接続完了していますが、今後さらなる拡大を目指しています。

宮田氏 CROSS BRIDGEには「いいな」と思っている部分が2つあります。一つは「店頭のデジタルサイネージを用意できたこと」です。これはとてもハードルが高いことです。まず店頭にデジタルサイネージのモニターを設置せねばなりません。紙のPOPだと、結局手を動かすのはアルバイトスタッフなので、実際には設置されていない場合もあり、設置を徹底することが難しいのですが、デジタルサイネージの設置さえできればシステムでクリエイティブを流すだけですから、的確に設置できます。いまは100店舗ですが、これが500店舗、1,000店舗、あるいは数万の規模まで広がっていけばかなり広く店頭でのコミュニケーション設計が実現できます。

もうひとつは金額です。映像でコミュニケーションのクリエイティブを作ると1本1,000万くらいかかります。CyberBullでは一つのメッセージをいろいろな方法で配信するという「マルチクリエイティブ戦略」という考え方を大事にしており、それを実現するための体制あるので、300万円、500万円あればよいものを用意できます。この2つがセットになったのが今回の「CROSS BRIDGE」という商品です。

広告主はメーカーを想定

― リリースされた背景には、広告主のどのようなニーズがあるのでしょうか?

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工藤氏 広告主様にも、ウェブの動画広告を最適化していきたい、あるいはデジタルサイネージでの広告展開を今より面白くしていきたいというニーズがありました。たまたまCyberbullさんとそのニーズについて議論する機会があり、WEBからリアルまで連動して最適化すればベストではないかというアイデアが出たのがそもそもの始まりです。

宮田氏 インターネットのプロモーションとリアルのプロモーションがまったく連動していないケースがたくさんありました。デジタルもマスもリアルも全部が連動して初めてマーケティング活動がうまくいくはずです。しかし実際にはうまくできていなかったので、連動させたいというニーズがあったのです。「MONOLITHS」というシステムがある、マルチクリエイティブを作る体制がある、広告運用をするノウハウがある、この3つをうまく抱き合せればデジタルとリアルが融合していくのではないかと私たちの中で見つけ出したイメージです。

― ターゲットとする広告主は、どのような企業でしょうか?

工藤氏 ターゲットはドラッグストアさんに商品を置いているメーカー様です。現在問い合わせもいただいていますし、前向きに考えていただけています。

宮田氏 500万円くらいでワンショットミニマムというイメージですが、500万円には根拠があります。M1層、F1層をターゲットとして日本全国で展開しているような商品があるとして、3,000万人くらいの人(購買者)がいるとします。その人数で500万円だと少なすぎます。ですから、まず首都圏だけに絞ってしまえばよいのです。そうすれば、ある程度プロモーションの対象人口が狭くなり、500万円の予算を投下すれば、広告の濃さがある程度担保できます。売り上げも正しくレポートできます。

工藤氏 レポートはかなり重要です。デジタルサイネージを置くドラッグストアの店舗、業態にもよりますが、今回の場合だと、POSデータのフィードバックができるので、それをもとに施策をやる前後でどのくらいPOSの数値が変動したのか、あるいは実施している店舗していない店舗での違いはどうかをレポーティングできます。店舗の入り口に42インチの音声付デジタルサイネージを設置して行い、だいたい1か月以上のスパンで放映することにしています。

宮田氏 このアプローチでミスすると認識されないで終わってしまいますので、YouTubeやFacebookでA、 B、Cそれぞれのパターンを流してもっともよいものをデジタルサイネージに展開していくイメージです。どのくらい視聴されているかで判断します。3日もあればウェブでの反応はわかるので、ほぼリアルタイムでできると思います。

クリエイティブは基本的に15秒が中心です。店頭は滞留する場所ではないので、なるべくアイキャッチが採れるもの、動画を再生した時に興味を引くものに依存してきます。ぱっと見てすぐわかるものを作ります。

― ユーザーターゲティングはしないのでしょうか?

工藤氏 屋外型ではないデジタルサイネージについては、あえて「人」でのターゲティングは考えていません。技術的にはカメラを使ってのターゲティングは可能です。しかし、その場所に10代の方と40代の方が来た時に、どちらを優先して広告を出すのかということが問題になり、対象外になったほうをロスしてしまう可能性があります。基本的には来る人全員に接触させます。
全員をターゲットにしている商品の場合は、全員に見せて「ついで買い」を起こさせます。

宮田氏 お店で流すクリエイティブに「こうすればよいですよ」という答えはありません。どちらかといえば取り組みとしては商品の認知やベネフィットを込めたコミュニケーションを作りますがそのまま流しはしません。店頭では15秒にしていますが、インターネット上では30秒、あるいは60秒のものを流すこともできますし、とにかくよく見てもらえるようなクリエイティブの運用をします。しかし、インターネット上で40秒のクリエイティブが好評だったとしても、店頭に反映させるときは15秒に作り直します。店頭を通り過ぎる一瞬をとらえるためには、むしろ5秒のほうがよいかもしれません。こうした工夫や検証は随時やっていきます。

デジタルを起点に、広告全体の最適化を目指す

― 今後の展開のイメージを教えてください。

工藤氏 「MONOLITHS」の拡大先として、小売り流通のネットワーク拡大を目指します。一方で、CROSSBRIDGEの取り組みはドラッグストア以外でも有効なのでネイルサロンや大学、屋外ビジョンなど様々な場所に広げていきたいですね。

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宮田氏 現在のタッチポイントはインターネット広告を見て、店頭の数字に生かすという2点です。しかし、トレインチャンネルやTVCMなど全部の円に連動するのが理想です。インターネット専業代理店として、店頭のレスポンスをもとにインターネットの広告を最適化し、最終的にはテレビのクリエイティブなども、インターネットを基軸に全部最適化されていく世界を作っていきたいと考えています。

宮田氏 「エビングハウスの忘却曲線」というものがあります。ここから「人は忘れる」ということがわかります。

出典:記憶について―実験心理学への貢献 (1978年) - – 古書, 1978/6 望月 衛 (著),‎ ヘルマン・エビングハウス (著),‎ 宇津木 保 (翻訳)

1度見て知ったとしても、翌日7割くらいの人は忘れてしまい、買い物は店頭で見て行います。この二つが紐付けば確かに家やインターネットで接触する広告とセットでリアルと連動したコミュニケーションを行うことが可能になるといえます。このように、デジタルを起点とした広告全体の連動・最適化を進めていきたいと考えています。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。