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有識者が予想する、2018年のエージェンシー

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

過去数年にわたってエージェンシーのビジネスモデルは変化し始めており、2017年にはパフォーマンスが最も重要な点となってきた。今までと同様、2018年に業界で起こりうることを予想するため、ExchangeWireは業界の100名以上の有識者と意見交換を行い、エージェンシーモデルが2018年にどのように進化するのかについて話を聞いた。

エージェンシーは顧客に対する価値を変えていかなくてはならない

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「業界の変化のスピードは驚異的です。 AIを軸としたメディアバイイング、クリエイティブチームに影響を与えるコンサルティング、FacebookとGoogleの事実上のエージェンシー化、大量のデータ、多数のアドテク・マーケティングツール、ブランド企業のエージェンシー業務のインハウス化、透明性に対する要求の拡大などの変化が見られます。このため、エージェンシーのモデルは、分析、アカウンタビリティ、アジリティの3つの重要な要素に変化していきます。成功を収めるエージェンシーは、キャンペーンのトラッキング、分析、最適化に関して質の高いサービス提供が求められ、高い責任を伴います。 広告予算の半分がどのように使われているかわからないような時代は既に過去のものです。世界中で毎日2.5兆バイトのデータが生成される現在、エージェンシーは迅速な分析、活動、学習機能が求められます。計画のためのサイクルは、毎日、毎時、リアルタイムの決定に変化しています。究極的にはビジネスの要素はパフォーマンスの科学に変化していきます。エージェンシーはデータを消費し、解釈し、考え、行動し、結果を投資に結びつける必要があります。結果達成のために顧客にとっての価値を高める努力を続ける必要があります」

DWA Media社、アメリカプレシデント、Roland Deal

データを活用できるエージェンシーが勝利を得る

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「進化は決して段階的なプロセスではありません。むしろ適合をすることで進化は始まります。過去数年間にテクノロジーとデータの専門性を進化させてきたメディアエージェンシーは、ダーウィンの述べる勝者と敗者のような形で健全な進化を遂げようとしています。第4次産業革命の話は至る所でなされ、AIの活用を通じて人間が最良な合理的決定を行えるような研究は多くのエージェンシーでなされています。データはイノベーションの副産物ではなく、イノベーション自身であり、データを活用するエージェンシーが最も大きな成功を収めることになるでしょう。顧客の側から考えると、より複雑なコミュニケーション環境への適用のためには、今までよりも更にエージェンシーに依存する必要があり、事実や数字以外の真実のインサイトを求めるようになるでしょう。思慮に長け、知覚的で、スマートなエージェンシーからのアドバイスは今までよりも更に重視されるようになります。」

Publicis Media社アソシエイトリサーチディレクターHeather Dansie氏

メディアエージェンシーモデルの崩壊を目の当たりに

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「現在のメディアエージェンシーのモデルは成立しなくなっており、生き残るために進化する必要があります。エージェンシーは様々な挑戦に直面しています。例えばFMCGのビジネスでは、2017年の投資は予想を下回り、これは2018年も継続することが予想されます。 一方、Brexit関連の混乱や、顧客からの再提案や実質マージンゼロの圧力なども加わってきています。これからの1年間で、大規模なグローバルコンサルティングファームによる買収を少なくとも1度は目の当たりにし、エコシステムは非常に異なったものになるでしょう。株価が低調な現状、市場に参入しようとしているアクセンチュアのような会社が、かなり安い価格で、必要なテクノロジー資産を持つ企業を買収することは論理的なアプローチです。」

MaxPoint社ヨーロッパジェネラルマネージャーPaul Maraviglia氏

エージェンシーにはよりコンサルティングが求められる

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「企業がインハウスのプログラマティックに関する専門性を高め、コンサルティング業界の巨人が市場に参入すると、エージェンシーの役割は疑問視されるようになります。しかし、アドエージェンシーが専門的な能力と規模の経済に長けていれば、数名の専門家が指摘するような、メディアエージェンシーが地位を失うということはありません。実際、2018年には多くのエージェンシーがより重要な役割を占めるようになるでしょう。デジタル広告は、ブランド全体にとって重要性が急速に増し 、企業の興味と専門性が高まるにつれて透明性についての要求が高まり、エージェンシーとの関係性はサービスからパートナーへと変化していきます。2018年は、エージェンシーが引き続きコンサルティングの知識を確立し、協調的で総合的な専門性を提供するようになるでしょう。より多くのコンサルタント性の高い仕事を行うことで、大規模なコンサルティング企業に対抗するようになるでしょう。」

The Trade Desk社、EMEAマネージングディレクター、Sacha Berlik氏

エージェンシーはエコシステムの利点を生かしたスキルとツールの提供が必要

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「2018年は、エージェンシーがオンラインチャネルとソーシャルチャネルのすべての問題点や懸念に対して専門性を高めることを重視する年となるでしょう。 彼らは、さまざまなデジタルマーケティングツールや戦略を検討し、適応する必要があります。ソーシャル・動画マーケティング、店舗内でのモバイルサービス、コンテンツマーケティング、実験的かつ一時的なマーケティングフォーマットなどにより、2018年の市場は変化する可能性を秘めています。スキルの高い チームとテクノロジーパートナーを十分に活用することで、現在のデジタルエコシステムが保証され、顧客の成功へとつながっていきます。」

Wyng社ファウンダーWendell Lansford氏

エージェンシーはメディア支出に縛られず、適応性をもった対応が必要

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「広告主がアドエージェンシーに期待するオペレーションモデルは2018年に変わることは間違いありません。広告主が広告において1つのエージェンシーまたはエージェンシーグループのみを使用することはめったにありません。データ分析、ブランド戦略、テクノロジー検討、プログラマティックのアクティベーションなど多くはインハウスでの作業がなされており、エージェンシーは高い適応能力が必要とされ、メディア支出に紐づいたビジネスモデルは問題となります。 マーケットがますます民主化され、多くの利益相反の問題が起こることに加えて、主要な持株会社の業績を鑑みると、今年の支出予測がどのように変化し、現状のモデルが持続可能でないかを知ることができます。 将来的には、広告主は様々な分野でサービスを組み合わせたいと考えており、従来のパートナーに限らず最良のパートナーを求めています。これにより、小規模および大規模なコンサルタントが誕生するでしょう。」

The Programmatic Advisory社、ファウンダー兼CEO、Wayne Blodwell氏

エージェンシーはビジネスモデルを進化させる必要あり

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「エージェンシーには、より柔軟なサービスモデルが必要になり、顧客とのシームレスな連携が必要になります。現在の環境は、メディア、ソーシャル、管理アセットが高度に統合されたネズミの巣のような状態になっていますが、更にアプリケーション、店頭サービス、顧客サービスなども絡み合っています。エージェンシーは1つのサイロだけで効果を最大化することはできません。彼らはブランド全体の顧客に関する全体の事象に関して、高度なユーザーエクスペリエンスを理解し、それをサポートする必要があります。多くの人は、メディアの購入、特にプログラマティックにおいては他人の介在なしにサービスが盛んになっていくと考えています。しかし、最良の結果は、社会の変化、製品リリース、顧客反応に対して、リアルタイムに反応し調整を行うことで達成されます。購買されたメディアであっても、他のビジネス分野におけるポジティブな反応を鑑みて調整が加えられる必要があります。複雑なビッグデータ分析と高速な機械学習を活用して、短期的に機会が得られる異常値を突き止める必要があります。エージェンシーがそれをするためには、ビジネスモデルの進化が必要です。エージェンシーはより柔軟なスタッフ配置、時には顧客のチームと自社チームを組み込むことで、全ての企業のタッチポイントにおいて起こりうる複雑な顧客の変化や、あらゆる場所からの顧客からのフィードバックに対して、高い指揮能力を発揮し生物の神経反応のような素早く的確な動きを見せる必要があります。

Valtech社Global CMO、Paul Lewis氏

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。