約9500万のオーディエンスデータを活用したDSPのデータ活用と今後の方向性 [インタビュー]

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国内最大手のEC事業者楽天が持つオーディエンスデータを活用して広告配信をすることが出来る広告プラットフォーム、楽天DSP。
同社はデータをどのように位置づけてDSPを展開していこうとしているのか。またそれに向けて裏側でどのような取り組みをしているのか。

日本であまりにも有名なEC事業者の、まだあまり知られていない広告プロダクトの裏側の仕組みや、データ×広告ビジネスの考え方などについて、同社アドソリューション事業部 プロダクトプロモーション課 楽天DSPグループ マネージャー 繁山 俊夫氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之)

※取材協力:DatoramaJapan株式会社

ブランディング広告のPDCAを回す

― 貴社広告ビジネスにおける楽天DSPの位置づけや、DSPとしての特徴についてお聞かせください。

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楽天において現在注力しているデータを活用した広告ビジネスにおける一プロダクトとして位置づけられています。2013年10月に提供を開始しました。
今までは、タイアップ案件やメール広告などが楽天の広告商品の柱でしたが、データを使ったマーケティングが主流になっていく中で、当社はグループ全体として広告ビジネスに注力をしていこうとしています。今後は、DSPをはじめとして、データを使った広告商品を推し進めていこうという動きをしています。

楽天DSPの特徴は、約9500万IDに及ぶ規模の楽天のデータを活用することが出来るということです。DSPというと、業界では獲得系広告、リターゲティング広告配信のためのものと認識されていますが、私たちの場合は楽天のデータを使ってPDCAを回していただくことが出来ます。
現在ブランディングで使われている、純広告から運用型広告に流れてきている予算を取り込んでいきたいと考えています。

― 実際に今広告主が使っているのはブランドディング目的の方が多いのでしょうか?

はい、そうです。いわゆるナショナルクライアントが使っていただくケースが多いです。使い方としては、例えば化粧品・トイレタリーメーカーが、楽天市場で「美容コスメ」のジャンルに興味があるセグメントに対して、シャンプーの広告を出す、というような使い方です。
一方で、継続的に出稿されるケースが多いダイレクトレスポンスのお客様にも使っていただきたいという想いもあります。

データのより高い価値提供に向けて

― ご認識されているDSPのビジネス環境と楽天DSPビジネスの現状についてお聞かせください。

DSPのビジネスは、今勝負の時であると思っています。色々なDSPがありますが、どこも活用できるデータや配信面の特徴を訴求しています。
2013年にサービスを提供開始して以来、楽天のデータを使うことが出来るということで、多くの広告主様にご利用いただいています。
競合からも色々なサービスが出てきている中で、どうやって今後も楽天DSPを選んでいただき、ビジネスとしての成長を加速させることが出来るかということを、考えています。

楽天データを使えるということを訴求するだけではなく、そのデータにはどのような価値があるのかということを、お客様にどのように伝えていくのかということも含め、今後の方向性を模索しています。

DSPという名のトレーディングのスペシャリスト

― DSPサービスのシステム構造についてお聞かせください。

表向きは「楽天データを使って色々な配信面にアプローチが出来ます」というような広告商品としてご紹介しています。その裏側では配信する面ごとに複数の広告プラットフォーム(DSP)を使い分けています。例えばYouTubeに配信する場合には、DoubleCLick BidManagerを使っていますし、スマホ面への配信を強化する場合には、ScaleOut DSP、LINE面への配信にはFreakOutのRedを使うというように、使い分けをしています。
楽天DSPは、広告配信システムとしてのDSPということではなく、これらの総称なのです。

― そうすると、トレーディングデスクのような立ち位置とも言えますね。

その通りです。広告主から予算をいただいて、楽天側で運用をすることになります。したがって、トレーディングデスクサービスも含めた広告商品ということになります。

楽天DSPが取り扱う二種類のデータ

― 楽天DSPが取り扱っているデータには、どのようなものがありますか?

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楽天DSPの事業全体で管理しているデータというのは、大きく分けて二つあると言えます。一つは、広告配信に活用する楽天のビッグデータ。これは楽天社内のDMPであり、ここで色々なセグメントを作ったりもしており、しっかりと管理しています。これを色々な広告プラットフォームに接続して、広告配信をします。
もう一つは、広告配信をした後に各広告プラットフォームから上がってくる配信結果などレポーティングのデータです。

分断されたレポーティングデータはダッシュボードで一元管理

― 複数の広告プラットフォームを使っていると、データが分断されますね。

はい。例えば運用者が三つの広告プラットフォームを使う場合には、それぞれの管理画面にログインをして、データをダウンロードして、それぞれのデータをエクセルで集計して統合しなければならないなど、管理が大変です。自社のシステムと各広告プラットフォームとをAPI接続でデータ連携をするという方法もありますが、開発工数がかかってしまいます。そうすると、どの広告プラットフォームを使うかを検討する上でも、開発工数を加味しながら優先度を付けざるを得なくなります。
また、現在楽天DSPでは、配信面を更に広げていくために、色々な広告プラットフォームを使っていこうという構想を持っていますが、これを実現するための柔軟性がなくなり、スピードという観点でも課題が生じます。

2017年の秋から、楽天DSPのレポーティング向けにDatoramaを導入して使っています。複数のDSPのデータが統合された形でみられるということが、最初の活用フェーズです。

Datoramaを導入したことで、他の広告プラットフォームとレポートUIを繋ぐための開発は必要なくなりましたので、今後は各DSPとは開発工数を気にすることなく、より柔軟に連携を図ることが可能になりました。また、合わせて管理工数についても大きく削減することが出来るようになり、営業戦略も立てやすくなりましたし、データの社内共有も非常に便利になりました。
また、Datoramaのようなシステムを使うことで、営業にも有効活用出来ると思っています。楽天から、クライアントさんに伝えたいことも、途中で広告会社などの第三者を通してしまうと、伝わりきらないこともあります。例えばこれを、同じURLで皆さんがデータを共有することが出来るようになれば、このような情報の揺らぎも起こらなくなります。

差別化のポイントは、良くも悪くもデータ

― 今後DSPのビジネスにおける差別化のポイントについてお聞かせください

良くも悪くもデータに尽きます。それをいかにうまく利用していけるかということを考えています。
楽天は沢山のデータを持っているので、こういうセグメントで切りたいというようなお話を戴くことがあるのですが、それゆえにセグメントが細かくなっていき、逆にボリュームが取れなくなるようなことが起こります。そこを少し変えていきたいです。例えば楽天の中でのユーザー行動をもとに、オーディエンス拡張をしてボリュームを担保出来るようにしていけるというような取り組みはしたいです。また、これを使って広告配信をしたときのレポーティングにおいても楽天データをうまく活用していきたいです。
一度ご利用いただいたら、例えばDatoramaのUIをクライアント側と共有してPDCAを回していけるようなサービスの世界観が実現できればいいなと思っております。

楽天は日本最大規模のIDを持っています。本当に使い方次第で何でもできます。クライアントとうまくデータをどう使えるかをディスカッションしながら使っていただけるプラットフォームを目指していきたいと考えています。データのマーケティングへの使い方は色々とあるはずです。
一度ご利用いただいたら、クライアント様のPDCAサイクルを継続的にうまく回し続けていけていけるような、広告プラットフォームを目指していきたいです。

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ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長

外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。