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OpenX Japan、パートナーサービス担当ディレクター山内諭氏に聞く、プログラマティックの将来像 [インタビュー]

アドエクスチェンジグローバル大手のOpenXの日本法人、OpenX Japanに、元AdRoll執行役員の 山内 諭氏が参画した。
国内のプログラマティック取引における課題、同社の今後の取り組みについて、お話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)

― 先日、パートナーサービス担当ディレクターとしてOpenXに入社されましたが、OpenXを選択された理由についてお聞かせください。

業界最高品質を誇り、パブリッシャーにとって最も信頼できるテクノロジーパートナーになる、というOpenXの明確なコミットメントに最も惹かれたからです。さらに、世界規模、特にAPAC地域での目覚ましい業績にも魅力を感じました。つい先日、OpenX Japanはより大きなオフィスに移りこれまで以上のビジスネスとサービスを展開する為にアカウントチームとテクノロジーチームを拡充しました。

私の役割は、ブランド企業、代理店、パブリッシャーとの提携を強化することです。当社の専門知識を共有し、プログラマティックの既存ユーザーがパフォーマンスと品質を向上させ、キャンペーンを最適化できるよう支援することです。プログラマティックがパートナーにもたらす効果と、パートナーが当社のテクノロジーを活用し成功を収められることは、とても喜ばしいことです。

― ヘッダービッディングが日本市場に旋風を巻き起こしていますが、このテクノロジーの将来像についてお聞かせください。

ヘッダービッディングはデジタル広告業界を大きく変革させています。これにより、バイヤーはプログラマティックパイプを介してパブリッシャーの在庫にアクセスし、最終的には望ましいオーディエンスに前例のないアクセスを可能にしています。もちろん、これはバイヤーにとって大きなニュースですが、興味深いことに、日本ではパブリッシャーがプログラマティックの採用をリードしています。この理由はパブリッシャーが多様なバイヤーに在庫を提供し、需要を増やし、収益機会を最大化する潜在性を認識しているためです。

APACにおいて、ヘッダービッディングは前途有望であり、ディスプレイ広告を急速に凌駕しつつあります。特に、この地域ではモバイルフォーマットやビデオフォーマットへの急速な成長と拡大が見られ、モバイルユーザーに大きな利益がもたらされていますが、それは当然のことと言えるでしょう。現に昨年の日本では、モバイル広告に対する投資額は8,010億円を上回りました。これはデスクトップ広告に対する投資額の2倍以上となります。

― 2018年度、OpenX Japanの純収益は52%増加しました。OpenX Japanをさらなる成功に導く計画についてお聞かせください。

OpenXにとって、モバイルがAPACにおけるイノベーションの重点分野の1つです。2017年、日本において7,500万人ものモバイルユーザーがインターネットにアクセスしました。その数は、2022年には7,700万人に増加すると予測されています。また、アジアの他の地域でもさらに増加します。

この巨大な潜在力を根拠として、OpenXはモバイルビジネスの拡大に過去2年間にわたって多額の投資を行い、業界のモバイル展開を支援してきました。そして、これらの投資は成果を上げています。日本では、消費者の関心と広告主の消費が引き続きモバイルに集まっているため、何百万人もの消費者を最も信頼できる価値あるブランドと結び付ける世界最大のモバイル市場が形成されています。前四半期において、OpenXのモバイル在庫は倍増し、4月にはモバイル収益が初めてデスクトップを上回りました。これにより、OpenXの地位は真のモバイルファースト企業として確固たるものとなりました。

また、OpenXはモバイルとビデオの両分野で卓越した実績と経験を兼ね備えた業界有識者を製品開発のリーダーとして迎え入れ、OpenX Mobile App SDKやオプトイン・モバイルビデオエクスチェンジなど、主なモバイルソリューションのリリースを加速させました。日本でのこれらのソリューションの市場展開は、今年後半を予定しています。

― 日本において、広告主やパブリッシャーが直面している主な課題についてお聞かせください。

プログラマティックはその関連パートナーに巨大な潜在力を提供し、2020年までに日本のメディア市場は、1,700億ドル規模までに成長するとされています。ただし、成功は収益によってのみ測定されるものではありません。新しいテクノロジーの進化と同様に、この市場の成長曲線に便乗しようとする悪徳業者が常に存在し、不正クリック、ドメインスプーフィング、広告スタッキングなどの許しがたい問題を引き起こす事も忘れてはなりません。

当社においては業界のリーダーとして、パートナーのプログラマティックによる収益向上を支援することこそが重要なミッションとして位置付けています。これは広告詐欺などの問題に取り組むことを意味し、Juniper Researchによると、今年だけで推定190億ドルの損害を広告主に与えるとされています。OpenXは品質基準を例外なく引き上げるために、2,500万ドルの投資を行い、専門家チームを構築し品質におけるイニシアチブを強く推進しています。当社は、これらの問題に精力的に取り組むことによって今後も事業発展を継続し、業界全体の長期的な持続可能性を維持していきます。

― 不正を一掃するには、業界全体としてどのようなステップが必要になるか、また、ブランド企業、代理店、パブリッシャーがより良い判断を下すには、どのようなガイドラインに頼ることができるかお聞かせください。

危険を回避しながらプログラマティックのメリットを享受するには、ブランド企業、代理店、パブリッシャーは第三者認証を取得している組織と提携する必要があります。グローバルに展開する独立組織の一例として、Interactive Advertising Bureau、American Association of Advertising Agencies、Association of National Advertisersによって設立されたTrustworthy Accountability Group(TAG)があります。TAGは業界をリードし、特定の厳格な基準を満たすパートナーのみを認証することで信頼関係の問題を解決しています。

また、ads.txt導入に対する理解を深めることも価値があります。このads.txtのプロジェクトは、パブリッシャーとエコシステムのサプライサイドの人々が、デジタル在庫の販売権を所有していることを公に宣言することで、プログラマティック広告の透明性向上を目指しています。これは、どのプレイヤーが取引に付加価値を与えるのかを判断できるだけでなく、一方でドメインスプーフィング(悪徳業者が低品質の在庫を使用し、プレミアムパブリッシャーのコンテンツを模倣して、広告主に販売の真価を反映しない高額請求を行う悪質な行為)の被害からの回避を判別できる簡単な方法もであります。

― 品質も最優先事項ですが、テクノロジー企業は、エコシステムの品質向上に何ができるかお聞かせください。

データドリブン型広告では、オーディエンスのオンラインマーケティングをパーソナライズすることです。そうすることで、消費者とブランド企業との関係はより密接にそして強化され、製品やサービスの販売力の向上や最適化の機会がもたらされます。オンラインマーケティングの効果を持続させるには、ユーザーエクスペリエンスを優先させる必要があります。これは、押し付けがましい広告、ウィルスなどを含んだ危険な広告、表示速度が遅い広告を表示しないことを意味します。

当社では、広告フィルターの効果を高めるための取り組みを常に実施しています。これにより、パブリッシャーは例えば 『出会い系広告: なし」などの条件を含んだルールや例外を取り入れたり、信頼できるブランドの例外を許可したりすることができます。また、パブリッシャーはウェブサイト上の多言語で区分けされた、特定のドメインにリンクする広告をブロックし、オーディエンスに関連性の高い広告のみが表示されるようにすることもできます。

当社の洗練された広告品質スキャナーは、システムを通過するすべてのクリエイティブを確認し、マルウェア、リダイレクト、その他の有害な手口を検出します。これにより、パブリッシャーは迷惑な広告に対して心配することなく、エコシステム全体をクリーンに保つことができます。オンライン広告に関して言えば、品質はすべての人が負う義務であり、不正を一掃すれば長期的な成長が確かなものとなります。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。