楽天IDを基軸に、オン・オフ統合マーケティングに向けた一歩 [インタビュー]

楽天と楽天データマーケティングは、位置情報を活用した広告配信によりオフラインでのユーザー行動を効果測定することができるO2Oマーケティングソリューション「RMP – Go! Spot」の提供を開始した。

楽天データマーケティング執行役員 事業統括推進本部 本部長 盧誠錫氏に、サービスの詳細と、今後の取り組みについて伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)

IDこそが大きな資産

― サービス提供の背景についてお聞かせください。

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出典:同社プレスリリース

シンプルに言いますと、楽天でやれることをひとつのサービスの形にした、ということになります。

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「楽天を活用したマーケティングソリューション」、と言われて多くの方がイメージされるのは、やはり「楽天市場」を活用した広告やマーケティング施策だと思います。Eコマースの対策や販促のために「楽天市場」を活用してマーケティングを展開する、という流れが一般的には最もイメージし易く、理解されやすいのではないでしょうか。

しかし、楽天が提供できるマーケティングの可能性は実は既にそれ以上の領域に広がっています。例えば、「楽天ペイ」という決済サービスだったり、「楽天スーパーポイント」が使える実店舗も増えていたりするなど、オフラインでも楽天の会員サービスを軸としたユーザー接点がどんどん広がっているためです。もちろん「楽天市場」が有力な会員サービスである事に変わりは無いのですが、楽天が提供するマーケティングソリューションは、それも含めた楽天の会員サービスを機軸としたものであって、それは必ずしもオンラインにとどまらないのです。

また、デジタルマーケティングの業界全体で見ても、単純なバナー枠の取引から、テクノロジーとプラットフォームの進化と共に、クッキーベースのターゲティングが当たり前の時代へと変遷してきた事実があります。この先、世の中で更にIoTやデジタル化が進むことを思えば、近い将来に、オンライン・オフラインを統合した、IDを基点にしたきめ細やかなターゲティングが主流となる時代がくるのではないかと考えています。

その前提に立った場合、オンライン・オフラインを問わず、ひとつの楽天IDであらゆる会員サービスを提供している楽天は、その新しい時代のID基点のデジタルマーケティングソリューションとして、これまでに無かったようなサービスを提供できる大きなポテンシャルを持っていると考えています。そんな中で、まず今すぐにサービスとして提供可能なものを実現したのが今回の「RMP – Go! Spot」になります。

楽天が展開する各サービスのアプリの中には、ユーザーからジオロケーションデータのマーケティング活用に対する利用許諾をいただいているものもあります。根本的な発想は、その情報を利用して、ある特定の場所にいるユーザーに、その場所に居るからこそのお得な情報や有意義な情報をお伝えするというユーザーサービスとしての側面と、一方で特定の場所にいるユーザーに告知をして特定の場所に誘引したいという広告主側のニーズをマッチさせたマーケティングソリューションを提供しようというものです。

現段階では、「Super Point Screen」のアプリを通じて利用許諾を得ているジオロケーションデータをメインに活用しサービス提供いたします。

―「Super Point Screen」のユーザー規模はどのくらいでしょうか?

アプリは100万DLを超えています。また、活用するジオロケーションデータは「Super Point Screen」を通じて利用許諾を得ているものがメインになりますが、来店計測においては、「楽天チェック」をメインで利用します。GPSのジオロケーションデータでも来店を推計することはできますが、「楽天チェック」ではビーコンで計測することが可能なため、より正確に来店を計測できます。設定は超音波発信機に電源をつなぐだけで簡単に導入できます。

オフライン計測も可能

― オフラインで計測できるデータは具体的にどのようなものですか?

今回の「RMP – Go! Spot」として計測するオフラインのデータは、来店の有無が基本となります。ですが、来店を計測する「楽天チェック」アプリでは、ビーコンを検知したタイミングでスマホ画面に告知を表示することが可能ですので、お店側でのオペレーションと連携する必要はありますが、その機能を活用して特定の取引の有無まで計測することも可能です。

また、「楽天スーパーポイント」に加盟されているお店への集客であれば、楽天のポイント加盟店の担当部門と連携して、より詳細なデータ計測や分析が可能です。

―「RMP – Go! Spot」のサービスの料金体系や、広告の課金形態について教えていただけますか。

基本の課金形態は「エンゲージメント」を採用しています。エンゲージメントとはコンバージョンのようなもので、ユーザーがスマホ広告に接触してエントリーをしたり、キャンペーンに参加する意思表示をしたりといったことをカウントしています。ユーザーが来店する一歩手前のところで、クーポンを入手するなどの段階のことです。

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広告を露出させるのは「Super Point Screen」のアプリで、それをもとにどのくらいのユーザーがアクションを起こしたかということが課金の基準となります。ジオロケーションを全国規模でやるのか、地域を限定してやるのかなどによっても価格が変動するため、案件に応じてお見積もりをさせていただきます。1エンゲージメントあたりの単価がだいたい200円というイメージです。

― ダスキンの事例についてお聞かせください。

ダスキンさんの場合は、「RMP – Go! Spot」を利用して、ミスタードーナツの店舗への来店促進企画を実施しました。ダスキンさんは「楽天スーパーポイント」加盟店でもありますので、楽天の担当部門と連携することで、来店したユーザーさんの購買データまでを含めた統合的な結果報告をすることができました。

また、別の飲食店様の事例ですが、ある特定の店舗の半径250メートル以内にいるユーザーにある特定商品のキャンペーンの告知をしました。その結果、広告をタップして詳細を見たユーザーが35%、その後キャンペーンの商品を購入されたユーザーが1.1%でした。

まだ公開できる事例が少ないので相対的な比較はできませんが、お店の半径250メートル以内にいるユーザーさんに無作為に広告を露出して、35%のユーザーさんに興味を持っていただいて、結果として100人のうち1人買ってくださったことになりますので、イメージとしてはチラシを道行く人に100枚配ったら35人の方にチラシをちゃんと見ていただいて、その内1人はそのまま直ぐに買ってくれたという感じですね。この事例の商品についていえば、かなり高い数値なのではないかと思っています。

組み合わせて多様なニーズに対応

― その他、想定されている活用方法などありますか?

このサービスは、単独の店頭送客ソリューションとしても使えますが、その他の楽天のRMPソリューションを活用した広告企画との組み合わせのニーズが大きいと考えています。

例えば、メーカー系のクライアント様向けとしては、まず「楽天市場」を活用した新商品の告知とプロモーション企画を行い、そのページへ来訪したユーザーが、実際にその商品を販売している店舗に訪れた際に改めて告知を出す、といったリターゲティング広告のようなことも可能です。

また、不動産会社様であれば、モデルルームのご案内をターゲティングDMで送付し、反応のあったユーザーのうち、実際にモデルルームの近くに来たユーザーに、あらためてリマインドして来訪を促進する、といったことも可能です。

やはり、楽天IDとつながったソリューションであることがポイントなので、IDベースのターゲティングと、ジオロケーションデータを組み合わせる事で実現できる企画の形が最も有効だと考えています。

オンライン・オフラインの統合へ

― サービスを広めていかれるにあたり課題と認識されていることはありますか?

現時点ではまだ、今すぐにできることをサービス化したという段階なので、楽天のポテンシャルを考えると、まだまだ道半ばという認識です。

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例えば、IDベースのターゲティングという事で言えば、「楽天市場」の購買分析データとジオロケーションの組み合わせで、「特定の商品を買ったことがある層の中で、今特定の場所に居る」というターゲティングは可能ですが、更にそこにテレビCMの接触情報を組み合わせて、「特定の商品を買ったことがある層の中で、今特定の場所に居て、かつ特定のCMに何回以上接触している層」と行ったところまではまだ十分に対応できません。楽天としては、こういった事がきちんと実現できる、ユーザーと広告主の双方にメリットがあるようなサービス提供基盤を整えるべく取組みを行っていますが、まだまだこれからです。

― GPSの精度やボリュームの問題で改善したい点などはありますか?

ボリュームに関してはもちろん大きければ大きいほどよいですね。ボリュームの広げ方に関して、現状は「Super Point Screen」がメインになっていますが、楽天グループのアプリのサービス全体でいえば10倍以上の規模のユーザーさんがいらっしゃいます。それらのアプリを利用されているユーザーさんのジオロケーションデータも今後活用させていただけるかどうかを含めて、諸々準備を整えています。

主導的に業界の変化を推進

― 今後のサービスの方向性や目標についてのお考えをお聞かせください。

先ほども申し上げましたが、今後、オンライン・オフラインを統合したID基点のマーケティングがデジタルマーケティングの主流になるという前提に立って考える場合、そのようなID基点のマーケティング基盤を単独で提供でき得る可能性を持つ事業者は他にあまりいません。また、ID基点のマーケティングによる効率化は、ユーザーにとっても広告主にとってもメリットの大きいものだと思っています。

そういう意味では、楽天は主導的にこの領域を推し進めていく責任もあると考えています。その流れの中で今回の「RMP – Go! Spot」はあくまで出発点という認識で、今後もこの流れを推進するようなサービスをどんどんリリースしていきたいです。

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ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長

外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。