ビーコントップランナーが作る、プラットフォームビジネスの仕組みと位置情報広告市場の未来 [インタビュー]

あらゆるビーコンをシェア・相互利用するオープンプラットフォーム「Beacon Bank®」を提供するunerry(ウネリー)は、電通、アドウェイズなど大手広告会社との資本業務提携を果たした。同社代表取締役社長 内山英俊氏に、その背景や位置情報活用広告の未来についてお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)

無駄な情報を減らしたい

― まず、どのような事業を展開されているのかをお聞かせください。

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当社は、屋外にGPS、屋内にビーコンの配信拠点を持っており、ビーコンについては現在71万拠点の登録があります。日本全国を網羅し、それをもとにクーポンや情報などを配信する「Beacon Bank®」というプラットフォームを展開しています。

ある時、自分をサンプルにして1日に見る広告を数えてみました。すると、オンライン、オフラインを含めて2,332回にも上ったのです。これはなかなかの数ですよね。この数は、1970年代には500に過ぎなかったそうです。情報過多の世界が来ており、2030年にはさらに増えることが容易に予想されます。チラシ、DM、屋外広告、ネットのバナー広告も今以上にどんどん増えるでしょう。

私たちがunerryという会社を立ち上げた背景には、皆さまの行動情報を参考にして、一人あたりが受け取る情報量を効率よく減らせないかという考えがあります。
それは広告だけではなく、生活者が受け取る情報そのものを減らすことを想定しています。広告が増えて個々のニーズに合わない情報が氾濫していますが、個々の人間の行動特性がわかれば、それに沿った必要なコンテンツが自動的に届く世界に変わっていければいいのではないかと考えています。

「Beacon Bank®」は現時点で計1,700万DLのアプリを利用した生活者の行動ビッグデータと屋外にGPS、屋内にビーコンの配信拠点を持つプラットフォームです。我々の仕組みが注目されてきた段階で電通様、アドウェイズ様に出資いただくことになりました。これにより直近でアプリから取得可能なデータ数はかなり増えてきました。

71万台の巨大ビーコンネットワークに成長

― プラットフォームをどのように大きくされてきたのですか?またそれが出来た理由をお聞かせください。

当社のプラットフォームは三面の事業になっています。一面がモバイルアプリ事業者様、二面が店舗等の拠点を数多く持ちビーコン等を設置している事業者様、三面が広告主様です。

私たちはまず、ビーコン拠点数の拡大に注力しました。一番良かったのは、自動販売機のように電源が供給されており、かつビーコンを設置する可能性の高い事業者様との連携です。コカ・コーラ ボトラーズジャパン様が自動販売機にビーコンを設置してスマホ連動する取り組みを行っていますが、その価値を高めていくための資本業務提携をさせていただくことが出来ました。これは弊社にとってはプラットフォームを大きくするという点でも、またプラットフォームに参画していただくことによりビーコン設置の価値をより向上をさせることができたという点でも、非常に大きな意味をもつことでした。

その取り組みを見た多くの会社様からビーコンのご登録を行っていただけるようになり、数も増えて現在では71万台になりました。こ2017年中頃よりアプリ事業者にも積極的に営業を始めたところ、「そんなにビーコンがあるなら使ってみたい」と好評を戴き、続々とアプリ事業者様にお集まりいただけるようになったのです。

― アプリ事業者にとって、ビーコンネットワークのメリットとはどのような点ですか?

1つ目のメリットは、アプリユーザーの行動を屋外から屋内までシームレスに把握することができることです。これまではGPSのみで補足していたため屋内や地下のユーザーを把握することができず、特に都心ではユーザーの行動が一部しか把握できなかったというデメリットがありました。しかしこれだけビーコンがあり、それを拠点として活用する成功企業も出てきており、かつGPSも使えるということでお声がけをいただくことが増えてきました。

2つ目のメリットは、アプリ事業者様がビーコンを使ってかなりピンポイントで情報配信をすることが可能になる点です。一般的な広告よりも、送客率が高い広告による収入を得られるようになることは、大きなメリットです。

3つ目は、来店計測が出来るようになることです。何らかの情報を配信したことによる、来店の有無を計測することはGPSでは難しいことですが、ビーコンを使えば容易になります。

また、私たちは、メディア事業者様と一緒にビーコンから得られる位置情報やプラットフォームの持つビッグデータを活用した広告商品を共同で作ることで、アプリメディアの収益性向上をご支援することもあります。例えば1件につき5円の収益が得られた場合、アプリ事業者様、ビーコンを保有する事業者様、そして当社によるレベニューシェアのモデルです。

― 電通、アドウェイズとの資本業務提携の背景についてお聞かせください。

当社と広告主様との間に電通様、アドウェイズ様などの広告会社様に入っていただいています。独自のサービスメニュー、広告商品を電通様、アドウェイズ様と一緒に構築し、展開させていただいています。これが提携の主軸です。

電通様はナショナルクライアント様が中心、アドウェイズ様はゲームアプリや、その他ダイレクトレスポンス系のクライアント基盤があります。共同商品の提供は業務提携の直後から始まりました。

どう進む?ビーコンの普及とプラットフォームの未来

― どんなプロダクトなのか、構成を教えてください。

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大きく分けて2種類の使われ方があり、1つは「Beacon Bank®」のセールスプロモーションへの利用、もう1つは「Beacon Bank®」をCRM目的で利用するというものです。

セールスプロモーションでの利用は、クライアント様がアプリを持っていなくてもすぐに活用いただけます。当社が持つ約1,700万DLベースのアプリネットワークを使って情報配信し、来店計測します。情報配信の方法はプッシュ通知のほか、FacebookやInstagramへのSNS配信など、いくつかの方法があります。
Beacon Bankに連携したアプリが一つあればどういう行動をしたのかを把握できますので、モバイル広告IDで連携してFacebook/Instagram/LINE/Twitterで広告配信が可能になります。また弊社は先日、店頭用小型デジタルサイネージNo.1のメディアフラッグ様と業務提携をさせていただき、Beacon Bankと連携するIoTデジタルサイネージを手がけています。Beacon Bank連携アプリを持つユーザーがデジタルサイネージの前を通ると、サイネージの動画がユーザーの行動や言語に合わせて切り替わるというのが特徴です。

CRMについては、アプリを持っているクライアント様に活用いただけます。
クライアント様アプリにSDKを入れていただくことで、Beacon Bankに自動的に反応するようになります。そこでアプリユーザーの位置情報を補足して来店を促すことが出来ます。

また紙(チラシ)の効果のほうが高い地域があることがわかれば、ユーザーへのアプローチをデジタルから紙へと切り替えるなど、販促の新しい形を模索しています。最適な方法がわかればコストの無駄が省け、ユーザーが本当に必要なものだけが届くのでそれを目指してやっています。

― 今後はどのようなところに設置されているビーコンと連携しようと考えていますか?

内山氏 今後は飲食や物販店舗、さらに一部始めていますが、交通系に取り組んでいこうと考えています。電車やバスの中などへのビーコン設置は進んでいくと考えていますし、屋外広告ともどんどん連携していきたいと考えています。

ユーザー数は主要アプリとの連携で増やしていこうと思いますが、ある程度ボリュームの観点でインパクトが得られる数千万ユーザーまでは、のばしていく予定です。

― 例えば郵便ポストなど電源がないところでもビーコンを設置できますか?

ビーコンはそもそもネットとはつながっておらず、スマホに反応する能力しかないデバイスですので、どこでも設置可能です。さらにスマホ側が通信するので、電力が少なく、維持費が0円であることが特徴です。郵便ポストだけでなく、電柱やビルの自動ドア、火災報知器などの電源が供給されているところも設置場所として考えられ、様々なインフラがターゲットになります。

デジタル化ではなく、最適化が大切

― ターゲットとするクライアントについてお聞かせください。

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まずは小売業、そしてその次が小売業に商品を提供しているメーカーです。商品棚の段階までビーコンを仕込んでユーザーの来棚計測が可能です。店舗にビーコンを置くことは嫌がられることが多いので、ビーコンを仕込んだデジタルサイネージを置いてもらうことが多いです。メーカーが負担して、店舗に置いてもらうことが多いようです。

― 位置情報を活用した広告市場の今後についてどのようなイメージをお持ちですか?

広告市場が6兆円のうち、エリアプロモーションの市場規模は2兆円です。そのうちの10%、2千億円くらいがデジタル化されると読んでいます。

紙のものをデジタルにという業界の流れがありますが、私はそれは行き過ぎであるとも感じています。店舗からすれば紙もやる必要があるでしょう。どのようなポートフォリオが最適な集客を実現できるものなのかを考えることが大切です。
それを知ることは、現時点では簡単ではありませんが、例えば紙の量を調整しながら、配信のパターン別の効果を見て判断していきます。

位置情報広告の未来は、単にデジタルへとシフトするのか否かということではなく、いかに最適化するかということが求められています。私たちはそれを実現することを目指すプレイヤーになりたいと思っています。

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ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長

外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。