fluctが語る「アプリにもたらされた新しい収益可能性、動画リワード」 [インタビュー]

SSP最大手のfluctは、動画リワード広告市場に参入した。

その市場動向や参入の背景、ビジネスへの取り組みなどについて、同社アプリソリューション本部 本部長の重崎 竜一氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)

※本インタビューは、4月19日に実施されたNext Marketing Summit 2018 fluct社セッションにおいて実施されたものです。

― 貴社が動画リワードビジネスに参入を決めたのはいつ頃でしょうか?

当社が参入を決めたのは2017年の6月か7月頃です。ゲームなどのアプリが、課金モデルでビジネスをしながらも、広告を入れやすい面がずいぶん増えてくということを当社としてヴィヴィッドに感じていました。であれば攻めていこう! ということでこの領域に参入を決めました。

― Webの領域とアプリの領域とで、メディアマネタイズ事情が大きく異なる点はどのようなところだと感じていますか?

Webは、JavaScriptのタグを設置すれば結構広告タグの入れ替えも物理的には早くできることが特徴ですが、アプリはSDKが実装に必要で、入れ替えにおいてもアプリストアを通してのアプリのアップデートが必要です。そういった実装面の違いも含め、ヘッダービディングの捉え方も異なります。そもそもヘッダーという概念では、アプリであれば上からタグを読み込んでいく方法ですが、それともまた違った「メディエーション」とよばれる振り分けがされています。

こうした実装方法と広告業者の呼び出し方に置いて、Webとアプリとは似て非なるマネタイズモデルがあると思っております。また、Webのアウトストリームの動画は、メディアさんも導入に慎重であり、在庫確保をしづらいという印象があります。一方でアプリデベロッパーさんの動画広告への許容度は大きいと感じており動画広告枠の確保がしやすいと感じています。

― それ以外にも違いはありますか?

動画リワードのフォーマットに限った話にはなりますが、アプリのユーザー体験についても、ゲーム内で使えるポイントやガチャ券は、ユーザビリティを考慮した設計をしています。Webの場合、オーバーレイで視聴させられていたり、「×」ボタンで消せたりできても「見せられた感」が出てしまうことが起こり得ます。動画リワードであれば任意で視聴でき、かつインセンティブも付与されるところが大きく異なります。

― Webとアプリとを比較して、広告マネタイズのしやすさの違いなどはありますか?

難しい質問ですね。ただアプリについてはApp Annie社もレポートを出していますが、課ユーザーの課金単価が日本はとても高く、そもそも広告である手前のビジネスモデルのところで「課金サブスクリプション」ないしは「アプリ内課金」という土台を大きく作っているのがWebとは大きく異なっていると考えます。

その他の点でいえば、動画広告リワードフォーマットのような展開が、アプリではしやすいのではないかと思います。

― 広告の機動性はいかがでしょうか?

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WebサイトだとJavaScriptのタグを展開するだけ、というところがあるので、機動力が高い傾向にあります。アプリの方はストアのアップデートをしなくてはならないため、なかなかPDCAのサイクルを早く回せないという問題があります。しかし、最近では対策を打つ方法も出てきています。

例えば、GoogleのFirebaseを実装しておいて、マーケターがクライアント側でPDCAを回せる、ストアにアップデートしなくてもABテストなり、仕込んでおいた施策の切り替えを手元の管理画面で行えるという機能があります。これをうまく使えば広告事業者のスイッチングや、コンテンツのABテストをストアにアップデートしなくても実現できので、そういう業者さんが徐々に増えてきていると感じます。

― 動画リワードビジネスへの参入に関してお聞きします。既に多くのプレイヤーがいますが、その中でどのように特徴を出していこうと考えていますか?

大きくは二つあります。一つは「RTB」の部分です。当社としては、Web領域のSSP事業で培ってきたことを、アプリにおいても強みとして生かしてメディアの皆様に高い収益を還元していきたいと考えています。もう一つはGoogleのデマンドサイドを上手に活用させていただくということです。

当社はGCPP (Google Certified Publishing Partner)というGoogleの認定パートナーであり、Googleさんとの協業を長くおこなっております。

Googleのバイサイドの動画在庫を上手に受け取ってメディアの皆さまに高い収益を分配できる仕組みを作っていくつもりです。

― 「ここは一番うまく動画リワードを活用している」と感じておられる導入事例があれば、お聞かせください。

手前味噌で恐縮ですが、当社グループ会社のVOYAGE GAMES社がInfraware Inc.と協業で配信している箱庭系の『ポケットタウン』というゲームがあります。このゲームでは、ユーザーが導線上にうまく動画リワードが設置されています。ユーザーが日々行うべきミッションを見にいくと、そこに動画リワードへの導線があり、ユーザーにわざわざ動画を見させるために特別なアクションを求めるのではなく、ユーザーがゲームを楽しむ課程において動画も楽しんでいただける設計になっています。

― リワードの導入を提案されたとき、提案を受ける側から多く受ける質問はありますか?またそれに対してどのような回答をされていますか? 課金率とか、ユーザー継続率についての悪影響を心配する声はきかれないのでしょうか?

おっしゃる通り、課金率やユーザー継続率への悪影響についてご質問いただくことが多いです。私としても動画リワードは諸刃の剣だと思っており、パブリッシャーの皆さまのアプリの課金率や継続率を広告会社としてしっかりとキャッチアップし、どの動線であれば、マイナスの影響を与えずに動画リワードを実装いただけるかを提案していく。そうした提案力が問われると考えています。

― 動画リワードと相性のいいアプリやゲームなど、ビジネスモデル的に好ましいと思うものはどういうものでしょうか?

コミックアプリは相性がよいと思っています。ただ、ゲームに関していえば、DAUが多いけれどもARPUが高くないタイトルが動画リワードを導入されるケースが多いです。一般的に90%以上ともいわれる無課金ユーザーをマネタイズするために汎用性があると考えています。

― 動画リワードについてよく聞かれる質問内容はどのようなものでしょうか?

通信に関してもユーザーの負荷を減らすような、独自のロジックを今後つくっていければと思っており、サービスを磨いていきたいと考えています。当社がSSPですので、複数のSDKをスイッチングすることによるクラッシュのリスクや、ユーザーにかかる通信不可の部分がご質問としては多いですね。ここはSSP事業者側の努力の幅があるところでもありますが、クラッシュのリスクに関しては、ドキュメントを整備するなど、起きてしまった時に、事業者として特定しやすい状況を作っていくことに取り組んでいきたいと考えています。例えば当社でいえば、ユーザーのIDをしっかりとアプリに送っていただくことができれば、fluctとしてユーザーIDにアドネットワークログをとっています。ですから、何かあった時にユーザーIDベースでお問い合わせをいただければ、突合せを行って、事業者特定を速やかに行えます。

また、課金率のダウンサイドや継続率のダウンサイドなど、これまでとはアプリ内の実相を変えることによるKPIの変化を気にされるアプリデベロッパーさんは多いですね。ですが、他社さんも言われているように、動画リワードを導入してみた結果、細心の注意をはらえば悪いほうにふれるということはなさそうです。入れる際に「導線を壊さない」、「課金ビジネスに影響させない」という二つの点においてしっかりと対策をとり、何かあった時に聞ける体制を作っておきます。たとえば実装の切り替えをクライアントの処理で行っておく、アップデートを仕込んでおいて切りやすくしておく、などといったことです。これらのリスクヘッジとっておけば、そこまで大きなダウンサイドを起こさずに課金ユーザーのマネタイズや、メリットを享受できると考えています。

― アプリのマネタイズにおいて、動画リワード以外にもインタースティシャルやネイティブみたいなものもアプリの種類によってはあると思いますが、併用などはされるのでしょうか?

海外においてはカジュアルゲームのデベロッパーが大きいので、全画面の広告など、在庫がつくりやすい環境にあります。しかし、いまの日本では動画リワードに一番ポテンシャルがあると考えています。

カジュアルゲームのトラフィックが、インタースティシャルが強みを発揮できるトラフィック水準に達しているものが限定的であるという認識です。したがって、インタースティシャルよりも、ネイティブのほうが今後より増えてくると予想しています。

アドネットワーク側でも代替として発表するところが徐々に出てきていますので、アドネットワークが市場を盛り上げ、SSPが接続強化し、最終的にアプリへの導入が進むという形で、動画のネイティブ広告も進んでいくのではないでしょうか。

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野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長

外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。