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CMerTVが見据える次世代の動画広告とメディアの理想的な関係 [インタビュー]

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大手ナショナルクライアント向けのスマホ動画アドネットワークとしてお馴染みのCMerTVは、スマホ向け動画広告Perfect View™ラインダンスという新しい広告フォーマットをリリースした

スマホのプレミアムサイトの画面上部に設置された動画ディスプレイ上で、複数の動画クリエイティブをユーザー自身による操作で簡単かつ自由に視聴することが出来るというものである。

5G到来に向けた次世代型動画CMフォーマットと位置付けるこのユニークなプロダクトに込めた想いについて、同社代表取締役社長五十嵐 彰氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)

うっとおしさは、素晴らしいクリエイティブも残念なものに

― ラインダンスというプロダクトの由来についてお聞かせください。名前はどなたが考えたのでしょうか?

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出典:同社プレスリリース

このプロダクト名は、私が今から7年前、CMerTVを設立した当時に考え付きました。

関連する特許の出願も2011年に行っております。私はこのプロダクトの構想に大変な思い入れがありましたが、当時は周囲からは笑われました。「動画を並べて配信するってどういうことなの?笑」と。笑

テレビCMのように、画面をすべて覆い隠してユーザーに広告を見せるというのは、ユーザーが今見たいと思っているコンテンツの視聴を妨げるわけです。そこに広告が入ってくるということは、うっとおしい、早く消えてほしいと思わせます。スキップボタンがあるインストリーム広告であれば、連打されるでしょう。

ユーザーから消えてほしいと思われてしまっている段階で、どんなに良いクリエイティブであっても、残念な広告であると思われてしまう。これはもったいないことです。

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ラインダンスは、ユーザーのコンテンツ視聴を妨げることがないだけではなく、複数の動画クリエイティブをいくつも並べてユーザーに見せることが出来ます。

同じ動画クリエイティブでも、並べてみせることによりストーリー性が生まれ、ユーザーを惹きつけることが出来るのです。

例えばAIDMAの法則にならって、最初にAttentionを取るためのインパクトのあるクリエイティブを流し、次にInterest、興味関心を持ってもらうために使い方の解説をするクリエイティブを、そしてDemand、ユーザーの生活シーンでどういうような効果があるのかを訴求するクリエイティブ、Memory、効果効能、Action、どこでこの商品は購入できるのか、をそれぞれ解説するようなストーリーを作り、そのクリエイティブを用意して配信することも出来ます。

あるいは、起承転結でストーリー立てて配信をすることも出来ます。テレビCMでは、大手携帯キャリアや大手飲料メーカーなどがストーリー型のCMを放送していますが、ラインダンスではそのストーリーを一気にご覧頂くことが可能になります。

また、シリーズ動画クリエイティブ5本のうち、2本目までを見てくれた人、5本目まで見てくれた人等、動画の視聴行動に応じて、それ以降見せる広告を出し分けるような使い方も可能になるのです。

目指すのはプレミアムメディアの価値向上

― 動画広告への課金はどの時点でされるのでしょうか?

1本目の動画広告が1秒以上In― View再生された段階で課金されます。現在提供しているメニューにおいては、それ以降再生される複数の動画広告の配信に対しては課金されません。

ユーザーの遷移ですが、1本目の動画が100万impであったとすると2本目の動画への遷移率は50%、2本目から3本目、3本目から4本目への遷移率も50%というような状況です。

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出典:同社プレスリリース

現在の課金形態はあくまで実験段階です。どのくらいの実質再生単価、再生率になるかのデータを取り、値付けを決めていこうと思っております。その後、動画1本当たりの単価を設計し、最終的な商品にしていきたいと考えています。

最終的にこの商品が目指すのは、プレミアムメディアの価値を高めるということです。

私たちはプレミアムメディアの1PVの価値を高めたいと考えています。同じPVでも、しっかりとコストをかけて取材をした内容に基づいて書かれた記事と、どこかのサイトからコピペをした記事の1PVは同じであるはずはありません。

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現在のメディアは、PVに応じて広告収益が配分されていますが、私たちは滞在時間に応じてこれをメディアに還元していきたいと考えております。それにより、より1PV当たりの滞在時間が長いプレミアムメディアにより多くの広告収益を還元したいと考えています。

例えば、夏の行楽特集を組んで、複数のスポンサーを募り、ラインダンスでこれらの複数の動画広告を配信する。そうすると、滞在時間が長ければ長いほど、多くの動画が流れ、それぞれの動画に対して課金をするということを予定しています。新聞の連合広告のようなイメージですね。

特定のテーマを決めて、厳選された広告主の広告クリエイティブを流すことによって、広告を価値ある情報として提供する、これがラインダンスの目指すべき方向性です。

様々な工夫でうっとおしさを抑制

― 動画がスマホ画面上部にずっと表示され続けるオーバーレイタイプの広告はうっとおしいと思うユーザーもいると思いますが、何か対応をされていますか?

実際にそのようなユーザーはいると思います。ですので、広告の脇に非表示のための×ボタンを設けています。あとは、フリークエンシーやリーセンシーのコントロールをすることで、同じユーザーに何回も見せたり、短い間隔で複数回見せたりしないように制御しています。

動画ディスプレイの画面占有率は全体の30%以下になるように配慮しています。

また、記事と広告との関連性を大切にしており、関連性が薄い記事には広告を表示しないなど細かな対応も行っております。

また、オーバーレイに懸念を持つクライアントに対しては、1st viewのみを指定しオーバーレイを解除する配信を提供しています。

インストリーム動画広告のように、画面をいきなり占拠してしまうものよりも、はるかにユーザーフレンドリーではないか、と思います。

― 5Gを見据えたと謳っていますが、5Gになることで動画広告に大きな影響が及ぶのでしょうか。

ものすごく影響します。5Gになることで配信速度が桁違いに上がります。今よりも高画質で大容量の動画広告をスピーディーに配信することが出来るようになります。、消費者にとっても記事の中の動画広告がより身近な存在になると思います。

スマホ時代には、活字メディアがテレビを超える?!

私は、スマホの時代になったら、活字メディアがテレビを超えると思っています。

日本人はやはり識字率が高いので、ニュースなどでも動画を見るのではなく、読むのです。

やはり日本のように識字率の高い国では、動画広告はインストリームよりもアウトストリームのほうが適しているのではないかと思うのです。

記事の中で動画が流れる市場も相当な可能性があるのではないか、そのように思います。

スマホ文化になった時点で、活字メディアはテレビよりも優位性があると思っています。そのような未来を見据えて、商品開発を今後も進めてまいります。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。