デジタル広告によるO2O施策、来店計測の現状と今後 [インタビュー]

サイバーエージェントは、2023年までの国内O2O広告の市場規模予測を公表した。

調査結果の背景にある市場の現状動向や今後の可能性について、同社O2O戦略局 局長の高橋篤氏に、お話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)

O2O広告市場、2023年には2018年比12倍の1,616億円規模に到達予測

― 国内O2O広告市場の現状についてお聞かせください。

図1

当社では2016年から位置情報に特化した専門組織を立ち上げ、企業のO2O領域のマーケティング支援を行い、2年ほどが経ちました。当時はまだ「位置情報って何?」というようなレベルで、お客様、とくに小売業者の皆さまも「聞いたことがあるような…ないような…」という状況でした。ですがこの2年で、プラットフォーマーであるGoogleを中心にO2O市場の話題が多くなり、関連するプロダクトについての話を聞く機会が増えてきたこと等により、広告主の皆さまも活用方法や予算の使い方などを考えるようになってきていると思います。

― 足元での市場の伸びは感じておられますか?

写真2

恐らくは2023年まで今後5年くらいをかけて、市場が伸びていくと思いますが、現時点では予算的に大きいというイメージは持っておらず、企業側も販促予算の数%をインターネットにシフトしてみようか、という状況です。

ただ、ケースによっては20~30%当ててもよいのでは、という流れが始まり、今がちょうど需要拡大の入口で、今後加速していくのであろうという印象を受けています。

― 貴社での取り扱い媒体の状況についてお聞かせください。媒体側のO2O広告への取り組みは今後どのように広がっていくと見ておられますか?

一方で、プラットフォーマー以外の、シナラシステムズ、フリークアウト、AIRTRACKなどプロダクトを持つカテゴリベンダー、いわゆる位置情報系プレイヤーも増えてきており、異なる計測方法が併存している状況です。国内の広告プラットフォーマーに関しては、各社それぞれの動きが見受けられますが、特にGoogle、Facebook、LINEを中心に流れは加速しています。

実店舗をもつ業種に最適

― 広告主側の動向をお聞かせください。やはり小売業の動きが大きいのでしょうか。不動産や旅行、飲食業界などはいかがでしょうか。

不動産業や旅行業は従来からインターネット広告を活用している業界です。対して、コンビニやスーパー、ドラッグストア等の店舗を保有する企業はインターネット活用がそれほど進んでいませんでした。従来は、テレビCMやチラシを打つことで、消費者に情報が届いていましたが、近年のスマートフォンの普及やwifi環境の変化などにより消費者行動が大きく変化してきていることによって、テレビCMやチラシの情報が消費者に届きづらくなっています。

写真3それらに広告宣伝予算を投下してきた小売企業は、インターネットから店舗来店および店舗売上を向上させる手法である、O2Oマーケティングに注目しているのではないかと感じています。

不動産業や旅行業が小売業と決定的に違うのは、オンライン上での申し込みを挟むか否かいう部分にあります。不動産でいえば、マンション見学にふらっと出かけるのではなく、事前の資料請求や電話予約などのアクションが発生するので、来店コンバージョンが取れなくても、資料請求するという中間KPIが可視化されます。旅行業も同様に、多くの場合は事前に予約をし、生命保険業やエステ業においても来店前になにかしらアクションをとるので、効果測定はWeb上で計ることができます。

しかし、スーパー、コンビニ、衣料店舗、ドラッグストアなどの小売業においては、Web上での事前予約や問い合わせなく、来店します。そのような消費者の行動導線に対して、例えば、Googleの来店計測である「Store Visit」を用いた場合、来店人数を可視化できるようになったことはひとつの大きな変化です。

ファミリーレストランやファーストフードなどの飲食業界も同様ですね。

“データ”と“テクノロジー”で、インターネットから実店舗に“人を動かす”クリエイティブを

― O2O市場全体の課題として、何が大きいと認識されていますか?

まず課題の1つに「クリエイティブ」が挙げられます。テレビCM、紙のチラシ、スマートフォン各々で消費者の視聴態度が異なるため、広告クリエイティブの考え方がまったく異なります。

ECでも購入できるこの時代に、「わざわざ店舗に足を運ぶ動機」をしっかりと広告クリエイティブ上で伝えることが必要になります。そのため、各媒体の特性を理解したうえで、体験価値が伝わる表現を考え抜かなければなりません。

当社でも、販促領域に特化したクリエイティブの専門組織「Local Technology Creative Center(ローカル テクノロジー クリエイティブ センター)」を立ち上げており、インターネットから実店舗に「人を動かす」広告表現の研究、開発、クリエイティブ制作を行っています。

写真4

もう1つの課題は、「広告効果の可視化」です。広告を配信した際に、来店の可視化はできるようになったものの、実店舗の売上や来店者数の純粋な伸びの相関は検証段階です。また、購買情報とのデータ紐付けができているケースは少なく、オフラインのデータ活用の課題も大きいでしょう。

さらに、ケーススタディや事例がまだまだ世の中に広がっていません。業界での共通言語の会話が広がるよう、もっと情報をオープンにしていき、O2Oマーケティングがより一般化するような空気を作っていきたいと思っています。

市場の背後にある限りない伸びしろ

― O2O広告市場の今後の見通しについてお聞かせください。

まだまだ本当に入口ですね。売り場として、「店舗」と「EC」を持つ小売業界において、EC化は進んできているように思えますが、まだECからの購入ボリュームは6.9%にすぎません。約93%の購買は店舗で行われているというのが事実です。

また、店舗の売上向上のための手法として、デジタルを活用した送客についても課題はまだあります。O2O市場は、プラットフォーマーの変化や新たなデバイスの出現、テクノロジーの進化など、伸びしろは限りなく大きいと捉えています。

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野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長

外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。