ブランドマーケターが振り返るデジタル広告業界の2018年-第1回:ブランドセーフティを実現するために重要なこと- [インタビュー]

インタビュー写真


ブランドマーケターは、2018年のデジタル広告業界をどのように振り返り、そして2019年にどのような取り組みを考えているのか。

3つのトピックスについて、日本を代表するブランドマーケターの一人、ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングメディアダイレクターの山縣亜己氏と、アサツーディ・ケイインタラクティブメディア本部 本部長 清家直裕氏にお話を伺った。

第1回目の今回は、ブランドセーフティについて。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之)

大手広告プラットフォームの取り組みが進展

ブランドセーフティについて、2017年から2018年にかけて環境の変化はありましたか?

清家氏 昨年のATS Tokyoで、私たちの講演のテーマが「ブランドセーフティを考え直す」というものでしたね。

山縣氏 ブランドセーフティの取り組みについては、なかなか他の広告主企業がどのようなことを取組んでいるのかは、聞こえてこないとこですよね。実際にその対策を取っているのかも分からないですね。

私自身あの講演でお話をした後のこととして感じているのは、メディア側の方々が意識を持って取り組んでくれているなということです。

昨年の今頃は、当社としても「これからホワイトリスト・ブラックリスト作る」と言っていましたが、その後大手広告プラットフォームがアルゴリズム自体を変更するなど、対策を考えてくれています。

私たち広告主側の投資によりマネタイズをさせてしまうべきではないコンテンツ制作者にお金が行ってしまうことが問題だと思っていましたが、そのような人たちがアカウントを持ちずらくするというように、仕組みを工夫してくれています。

清家氏 GoogleやTwitterのようなグローバルプラットフォームの対応は、昨年と比べて進展しましたね。もちろんADKとしても、ブラックリストによる対策はしていて、ユニリーバさんの厳しい基準を加えて強化しています。各種アドベリフィケーションツールを使用した計測や改善もお手伝いしています。

写真2

山縣氏 反社会的な団体が、広告を通してお金を徴収するような仕組みが前より難しくなってきているのではないでしょうか。やはり、大手企業が率先して対策を取ってくれると業界全体への影響が大きく、このような問題はなくなっていくはずです。そういう意味では、広告主側の意識がどうであるかということは置いといて、状況は少しずつ良い方向に変わりつつある気がします。私たちも勿論ホワイトリストやブラックリストを作ったりして対応を取ってきましたが、それも随分と簡単になってきました。

システムによる自動化が進んだということでしょうか?

山縣氏 それもそうなのですが、広告プラットフォーム側が最初から排除してくれるようになっているので、土台そのものがクリーンになってきています。

清家氏 私たちの方では、日本語対策、日本文化にそぐわないところに関しては色々対策を取らせていただいています。日本ローカルの対策として、山縣さんにご相談させていただきながら進めているところです。

予想もしないようなことが起こりますので、チューニングをしながら対策を取っています。

サプライサイドに求められる対応

ブランドセーフティという文脈においては、2018年は2017年よりもヒヤっとすることは減ったということですね。

山縣氏 ヒヤっとすることは、突然起こるものなのですが、今のところ今年はなかったという状況ですね。笑

写真3

清家氏 最近ネット広告の不正に関してテレビの報道で問題視されていますが、どちらかというとサプライサイドの話がクローズアップされています。

そこに関しても、ヤフーが自ら対策の強化を打ち出しました。ヤフーのような大きな企業が動くと業界への影響力は大きいです。

山縣氏 2017年の業界課題の論点は、ブランドセーフティという意味で、ブランドの毀損、不適切なコンテンツと一緒に私たち広告主ブランドのコンテンツが出てしまうということと、そもそも広告費として投資したお金が不適切な場所、私たちが投資をしたいと思っていない場所に流れてしまう。そこが一番の論点でした。この点においては、少しずつ改善がみられます。

ただ、依然として不透明なお金がある。そして、そのお金が不適切なところに流れてしまうことは、ブランドセーフティ云々の観点だけでなく、業界の健全な広告流通の観点で是正をしていかなければならないということです。

そもそも優良なコンテンツを作った人に対して、しっかりとその分の対価を払うことが出来ないような状況が続けば業界自体が衰退してしまいます。良いものがネットからなくなると、ユーザーもネットでモノを探さなくなります。ちゃんと作ったコンテンツに対して、きちっとお金が払われる。そういうシンプルに正しいところにお金が払われる仕組みづくりが業界発展のためには必要なことです。

清家氏 当社もユニリーバさんと一緒に取り組みをさせていただき、色々なソリューションを使ったり、日々PDCA回したりする中で、デマンドサイドはある程度の水準で透明性を保てるようになってきたと感じていただけるのではないかと思っております。

山縣氏 引き続き業界の皆さんが言うのが、SSP側がまだ見えていないということです。

SSPの配信先が、ブラックボックスになっているところがありますが、そういうところがさらに情報を開示してくれると、より透明性が高まります。

デマンド側からすると、恐らくはお金を払い過ぎてしまっているところもあります。広告の売り手と買い手との間に、色々な人達が介在してしまっているので、中間のコミッションがかかり過ぎています。

その結果、コンテンツを作った人にお金回らない。ですので、そこはシンプルにして、やはり、ちゃんとコンテンツを作った人に対価が払われるようにしていかないと、と思うのです。

DSP、SSP、SSP・・・。ここでぐるぐるお金が吸い取られてしまうこともあり、結局私たちは何のためにお金を支払っているのかが分からなくなってくるのですよね。

清家氏 デマンド側から手が離れたところから先において、透明性を改善できる余地があるのではないかと思いますね。

山縣氏 そうですね、そこがよりクリーンになることを期待したいですね。

清家氏 その点においては、デマンドからサプライに移ったときも、どのような事業者にどのくらいのお金が支払われているのかを、ブロックチェーンを活用して1インプレッションごとの取引を記録することで、透明かつ公平な取引を実現できる仕組みも出てきています。今後そのようなソリューション使うことで、取引がどれだけ透明性を担保しているのかを見てみる必要があるのかなと思います。

山縣さんが強く主張されている、コンテンツを作った人にしっかりとお金が回る仕組みを作るには、誰がどのような行動をすべきなのでしょうか?広告主、広告会社、ベンダー、媒体社のそれぞれがどうすべきであるとお考えですか?

山縣氏 やはり、皆で意識をするようにしないと変わらないとは思いますよね。どこかの誰かだけではダメだと思いますが、やはりSSP側が、透明化をしてくれるということ。このことを広告主側がもっと要求をしていくべきだと思うし、ブラックボックスでも大丈夫というような現状に疑問を持つことが大切です。

配信先がブラックボックスになっていて私たちからは見えないということは、広告費を二重に支払っているのかもしれないし、いくつものSSPを通してバイイングをしている可能性もあるかなとも思うし。そういうことが見えないですよね。どういう経緯で誰にどうお金払われたのがもっとクリアになるべきだと思っています。

配信先を把握するという意味では、PMPのような仕組みもありますよね。

山縣氏 はい。私たちも使っています。ただ、今の仕組みのままだとPMPはあまり効率がよくないというか、もっと改良の余地があるかと思います。SSPが信じられないからPMPにしましょうってなるなら、通常のオープンオークションの配信に対してもSSPがしっかりと対応をしてくれれば、それほど必要がないかなとも思います。

自分のブランドは自分たちで守るという意識が必要

ブランドセーフティに関してメッセージや言いたいことは。

写真4

清家氏 ユニリーバのグローバルCMOであるKeith Weed氏なども参加する、WFA (世界広告主連盟) という団体は、デジタル広告の直面している諸課題に対して、広告主やプラットフォーマーが守るべき原則 (WFA Global Media Charter) を発表しています。日本では山縣さんが様々なカンファレンスやイベントで講演を通して啓蒙活動をしていますね。

山縣氏 広告主企業が意識を持って取り組んでほしいですね。じゃないと、なくならないと思いますので。自分のブランドは他の誰でもない、自分たちでしか守れませんからね。

タグ

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長

外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。