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デジタル時代の新たなコミュニケーション戦略とは-オプトがセミナーを開催

6月4日、都内にて、デジタルマーケティング事業を展開するオプト主催の「デジタル時代のコミュニケーション戦略セミナー」が開催された。

冒頭の挨拶を行った同社の代表取締役社長CEO金澤大輔氏は、取引企業におけるデジタルコミュニケーション戦略の変化を説明。かつては担当者任せの傾向が強かったが、近年では全体的なマーケティング施策の一環として経営者自らがデジタルマーケティングについての構想や課題意識を語ることが増えたという。こうした関心の高まりを受けて、同社ではコミュニケーション戦略から広告運用、CRMまでサポートするセクションに100人規模の人材を配備している。

写真2:榎本佳代氏同社執行役員の榎本佳代氏は、市場全体における変化を解説。今や従来のデジタル広告に留らず、「マス広告でのプログラマティック取引導入」や「決済システムや人間センサーを通じたリアル店舗における様々な情報取得」を通じて、「デジタル広告、マス広告、リアル店舗を跨いだ行動ベースのデータの統合」が可能になっている。その結果、それらのデータを集約及び統合する大手プラットフォーマーの勢力がますます拡大したとの見方を示した。

加えて榎本氏が注目すべき事象として取り上げたのが、広告ブロック機能の進化や欧米主導のプライバシー保護推進を通じたユーザーの権利の拡大。大手プラットフォーマーがウェブブラウザ上でのユーザー追跡機能を制限したり、API連携サービスの停止を発表したりしたことで、サードパーティーデータの取得は困難になりつつある。

そこで、これらのプラットフォーマーを通じてではなく、消費者からファーストパーティーデータを取得することを意図したD2C(仲介業者を通さず、消費者に対して直接的に商品を販売する仕組み)が成長。「無人コンビニエンスストア」と表現されるAmazon Goの例に見られるように、より良い顧客体験を提供することで、消費者が喜んでデータ提供し、そのデータの活用を通じてさらに顧客体験を高めるという好循環を生み出す仕組みが求められていると論じた。

写真3:花王 辻本 光貴氏花王株式会社メディア企画部3室の辻本光貴氏は、同社のアイマスク「めぐりズム」や飲料ブランド「ヘルシア」におけるブランドコミュニケーションの実例を紹介した。同社では、「マス市場よりは小さいが、一定の規模を持つ市場」を「スモールマス」と定義。対象が狭まった分だけ、売上確保のためにはより深い理解が求められるこのスモールマスを取り込むために、デジタルコミュニケーションを活用している。

例えば、ダイエットに関心を持つユーザーがいたとしても、「美しいくびれをつくりたい」のか、「腹筋を割りたい」のかではその実体は大きく異なり、それらの詳細次第で、必要とする商品やサービスも、レシピ本から24時間経営のジムまで変わる。そこでソーシャルリスニングや購買データを通じて深い洞察を得た上で、その洞察をコンテンツ化し、ユーザーに届けるための様々な工夫を行っていると述べた。

写真4:ネスレ日本 出牛 誠氏ネスレ日本株式会社マーケティング&コミュニケーションズ本部デジタルマーケティング部部長の出牛誠氏は、同社オウンドメディアの「ネスレアミューズ」や、Web映画館の「ネスレシアター」を紹介。ユーザーが「わざわざ閲覧するために訪れる」ことを企図したこれらのプラットフォームを通じて、各種データを自社に蓄積している。

パネル調査によると、これらのサイト訪問者は購入金額が未訪問者に比べて高く、また訪問後に購入実績はさらに向上。現在では動画コンテンツをYouTubeやSNSに加えて、AbemaTVやantennaといったネットメディアにも配信し、海外配信を通じてインバウンド施策にも役立てている。

写真5:進藤 圭太氏株式会社オプトのコミュニケーションデザイン部に所属する進藤圭太氏は、語学学校のマーケティングを一例に上げ、「体験レッスンの申し込みなどのウェブコンバージョンが、必ずしも入会申し込みなどの最終コンバージョンにつながらない」という課題からマルチターゲットコミュニケーションの必要性を感じたという。

最終コンバージョン率を向上させるには、ニーズが発生する以前の認知段階まで遡って分析し、異なる目的を持つユーザーに対して、それぞれ異なるメッセージを発信する必要があると仮説立てた。またそうしたマルチターゲットコミュニケーションにおいては、メディアごとの特性と制作ポイントを踏まえたクリエイティブ制作に秀でた同社の強みが最も生かし得る領域であるとの考えを示した。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。