「マーケティングは、自身の生活に変化を起こすことにも応用できるはず」- 第1回「MCA道場」が開催

写真1:富永氏

 

一般社団法人マーケターキャリア協会(MCA)は8月6日、都内にて、マーケターのキャリア育成を目的とした「MCA道場」の第1回講座を開催した。

マーケターのキャリア構築支援の場

写真2:中村全信氏

7カ月にわたって全7回の講座を行う本プログラムは、①MCA理事による講義、②講義の内容を踏まえたワークショップ、③ネットワーキング、の三部で構成。受講価格に定価はなく、参加を希望する会員が自主設定するという独自の仕組みとなっている。開講記念講演が行われた第1回には、抽選で選ばれた100名が無料招待された。

写真3:小野進一氏

事務局の中村全信氏は冒頭で、本プログラムはマーケティングそのものを学ぶ場ではなく、あくまでもマーケターのキャリア構築支援を目的としたものであると強調。また小野進一代表理事(株式会社ホールハート代表取締役CEO)は、これまで同氏が主なキャリア支援の対象としてきたクリエイターとは対照的に、マーケターという職種は企業から独立した形式でのキャリア構築を描くことが難しいとの現状を踏まえた上で、企業外活動としての支援を行う本プログラムならではの意義を伝えた。

この日の講義を担当した富永朋信理事(株式会社Preferred Networks 執行役員最高マーケティング責任者、株式会社イトーヨーカ堂顧問、株式会社セルム顧問)は、幼少時から現在に至るまでの半生記を披露。途中でも質問を受け付けるなどして参加者の関心の度合いなどを時折計りながら、1時間に及ぶ講演を行った。

「マーケターとしての幸せの原体験」とは

証券会社のセールスマンを父に持つ富永氏は、早稲田大学法学部を卒業後にコダック社に入社。当時の上司から消費者の購買決定プロセスを説明するモデルの1つである「AIDMA」を紹介されて感銘を受けたこと、憧れて転職した日本コカ・コーラ社で新規マーケティング施策を実施した際に「仮説を何とか形にした結果、商品を実際に見たり使ったりした消費者が反応を返してくれた」ことが「マーケターとしての幸せの原体験」となったこと、CMOを務めた西友在籍時には業界誌の執筆や講演といった社外の活動を通じて励みを得ていたことなどを語った。

またコカ・コーラに勤務している間に、自動販売機、コンビニエンスストア、スーパーマーケットではそれぞれ購買体験が異なることから、「流通こそが商品に様々な価値を与えている」ことに気付き、当初は目標として掲げていた同社のブランドマネージャーという役職は「購買体験全体を統括できていない」と見なすようになったと述懐。その見解さえもその後のキャリアを通じて見直すことになったものの、当時は「どんな商品を、どんな場所で、いくらで販売し、どのようなコミュニケーション戦略を取るかをすべて決定することできる」小売業界に魅力を感じ、転職を決意するようになったと振り返った。

写真4:富永氏

やがて西友のマーケターとしての経験値を高めて同僚から信頼を集めるようになると、狭義のマーケティング業務だけではなく、それまで店舗開発部が手掛けていた店舗の内装や商品開発部の職掌であったプライベートブランド開発などにも携わるようにと声がかかるようになったという。

組織作りやリーダーシップのあり方にも言及

講演では、さらに「ステークホルダーとなるような社内における既存の別組織の構造を真似ることで主要な要望に対応しやすい体制を作る」「部下が客よりも上司を喜ばすことを優先しないように気を付ける」といった、組織作りやリーダーシップのあり方についても言及した。とりわけ組織作りにおいては、自身が現場の事情を一切把握せずに大規模な組織改編を図ったがために関連部署からの反発に遭い、仕事がしにくくなったとの経験を振り返りながら、「あらゆる組織は本来的に対立しやすい」と主張。一例として、「事業会社は広告代理店を無責任であると見なし、広告代理店は広告主の存在を軽視する」といった傾向を指摘した。加えて、組織が対立しがちであるという傾向に眼を背けるのではなく、部門をまたいだリーダーが公正な判断を下したり、または目的志向となるような社風を築き上げるなど建設的な対応策が求められるとの考えを示した。

その他にも、「競合企業の動きは、真似をするためではなく、むしろ同一化しないために注視する」「昨年度の実績は今年度も同様に成功することを約束するものではなく、むしろ初めてだったからこそ上手くいった可能性があることに留意すべき」といった、マーケティング業務経験者であれば誰しも経験したことがある一般的な課題についての見解を多数披露。これらの発言に対しては、深く頷きを示す参加者の姿が多く見られた。

ワークショップを通じて考える「マーケターの幸せ」

プログラムの後半には、下記の4点をテーマにグループごとの議論を行うワークショップを実施した。

(1)キャリアを振り返り「幸せだった瞬間はいつか」
(2)幸せをドライブしたものは何か?
(3)自分のマーケターとしての弱みはどこか?
(4)これからマーケターとしてどんな行動をとるべきか?

写真5:富永氏

グループごとの議論の発表に対しては、富永氏が私生活を含めたごく個人的なエピソードと絡めて感想を述べたり、新たに質問を投げかけたりなどしながら進行した。

「キャリアを振り返り『幸せだった瞬間はいつか」』という設問に対しては、グループの一つから、事業会社はユーザーに、広告代理店は広告主にという具合にいずれも「向き合っている人に認められる」ことが広く該当するのではないかとの意見が出た。この意見に対して富永氏は深く同意を示した上で、「向き合っている人の期待値と実際の成果物の関係性をマーケティング的にシステム設計することは可能」であるとし、「消費者に態度変容を促すことを目的としたマーケティングという概念は、自身の身の回りの生活に変化を起こすことにも応用できるはず」と述べた。

また「自分のマーケターとしての弱みはどこか?」という問いに対して、英語力などの具体的なスキルの有無について話が及ぶと、外資系企業への勤務経験を多く持つことから期待はされるものの、自身も十分な英語力を有しているわけではないと吐露。それでもマーケティングに関する知識や日本語での説明能力といった強みをより一層高めることで、英語という弱点を補ってきたと伝えた。

 

なお、今回参加した受講者からは、「自分の価値基準がどこにあるのかを改めて考えられた。また、横の繋がりを作れたのも価値はあると思います。」、「普段考えないようなことを考えるきっかけを頂けてとても有意義な時間でした。」、「キャリアとマーケティングに、幸せというトピックを掛け合わせてディスカッションしていくことが新鮮だった。それらについて自分の価値観を言葉にして考える良い機会だった。」、「マーケティングのいろはではなく、マーケターとしてのあり方を同志と学ぶことができ、アウトプットの機会が持てるのでとても満足しました。」というような感想が寄せられた。

 

第2回以降のMCA道場への応募は、下記サイトより受付。先着100名が参加資格を得られる。9月13日に開催される次回道場には、MCA理事の鈴木健氏(株式会社ニューバランスジャパンDTC&マーケティングディレクター)が講義を担当する。

受講価格は、受講者が自分で申告して決めるというユニークな方式を取っている。

MCA道場: 第2回‐第7回の募集要項と申し込みはこちらから

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長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。