鉄道の乗客をターゲットに-広がる広告の位置情報活用- [インタビュー]

写真1:野口 航氏

ジオロジックは、位置情報を活用した新しい鉄道ターゲティング広告の提供を開始した。
その概要や背景について、同社代表取締役社長 野口 航氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之)


図:鉄道ターゲティング

出典:同社プレスリリース

今回の鉄道ターゲティングリニューアルについて、その背景をお聞かせください。

元々はお客様の方から出てきた夢を我々が実現したものです。広告主の方から、電車に乗っている人をターゲティングしたいという希望はかねてからありましたし、何よりも電車の中の交通広告を販売している代理店さんからも強い要望がありました。

電車に乗っている人の多くはスマホを見ています。窓の上や中吊りなどではないところを見ている時間が長いです。そのような状況下で、広告主は、ユーザーが社内でどこを見ていてもアプローチできる環境を求めています。デジタル広告は、中吊り広告などの車内広告を駆逐するのではなく、両方一緒に展開することで効果が最大化することを目的として考えられるケースが多いですね。

このタイミングでリリースした技術的な背景はありますか?

写真2:野口 航氏

位置情報のデータ量が増えてきたことは背景の一つとしてあります。これまでも技術的には出来ましたが、リアルタイムに電車に乗っている十分なユーザーデータを確保することが出来ませんでした。提携アプリから得られるリアルタイムな位置情報が十分な量に達したので、今回正式に提供を開始できました。

今回リリースした鉄道ターゲティングは三つのターゲティングで構成されています。駅ターゲティング、乗客ターゲティング、生活路線ターゲティングです。

一つめは、今駅にいるユーザーや過去駅にいたことがあるユーザーをターゲティングするもので、これは以前から存在します。

そして残りの二つ、今回リリースした乗客ターゲティングや生活路線ターゲティングは、技術的には容易なものではありません。乗客ターゲティングは、今電車に乗っているスマホに広告を出すというもの。これはその路線の線上にいる人の位置情報を把握して広告配信するわけですが、これを実現するシステムは簡単に作ることは出来ません。かつリアルタイムな位置情報データが十分にあるからこそ、今その線上にいる人々にだけ広告を出すことができるわけです。

生活路線ターゲティングは、人を軸としたターゲティングです。当たり前ですが、人々が通勤や通学で使う路線に乗る回数は、他の路線よりも圧倒的に多いわけです。ユーザーの行動履歴から、より高頻度で乗車している路線を生活路線として推定するのです。

どのように活用されるケースが多いのでしょうか?

駅ターゲティングは、やはり駅前や駅周辺の店舗へ誘導する広告が多いです。一方で、乗客ターゲティングの場合には、交通広告と一緒に展開することでユーザーの目(シェア・オブ・ボイス)をジャックする展開が多くなります。生活路線ターゲティングの場合は、ターミナル駅にある店舗などで、その路線を普段から使う利用者全員をターゲティングしたい店舗へ誘導する施策は多くあります。

今、最も引き合いが多いのはどれでしょうか?

乗客ターゲティングです。他社で実現できるという話は聞いたことがないため、お問い合わせが殺到しています。

乗客ターゲティングに広告予算を多く割いているクライアントは、単一路線で使うケースが多いのですか?

特定の一路線というよりは、関東圏の主要路線を複数ターゲティングしてご使用いただくといったケースが多いです。中吊り広告は、鉄道会社横断で掲載されるというメニューが売れ筋なのですが、これと同様に、ネット広告も関東圏全体というような展開がされるのです。

一方で、生活路線ターゲティングの場合には、百貨店などお店の立地に依存するので、その店舗付近を通る路線すべてからお客様を寄せるような活用がされます。

最近の位置情報活用広告周辺の動向についてお聞かせください。

グラフ:店舗集客型デジタル広告 市場規模推計・予測[2018-2024年]

2019年には位置情報活用広告は当たり前のものとして浸透し、その市場は完全に独り立ちしたという印象です。近い領域では、例えばサイバーエージェントとデジタルインファクトによる共同調査によると、店舗集客型デジタル広告市場の規模は2018年で205億円、2019年の今年は約2倍の405億円に達すると予想されています。

市場の成長スピード以上に当社の売上も伸びていますし、広告主数も増え続けています。広告主の業種は、元々当社では学習塾に代表される教育、不動産などの比率が高かったのですが、現在はより多様化が進んでいます。広告主数はついに1,000社を突破しました。

競合環境でいうと、来店計測などにビジネスの主軸を移した事業者が見受けられ、当社のような位置情報広告を引き続き主軸にする事業者との二極化が進んだと認識しています。技術的なところでは、直近で大きなブレイクスルーがあったということはないですね。屋内計測の技術に関しては引き続き発展途上です。

今後プロダクトをどのようにアップデートする予定ですか?

一つはフォーマットについてです。今はバナー広告、動画広告、インフィード広告に対応していますが、位置情報と相性の良いまったく新しいフォーマットをもうすぐリリース予定です。

もう一つは、「未来」をキーワードとした商品の開発を進めています。

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野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長

外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。