クックパッドのデジタルマーケティング支援―本当に価値のある広告効果とは

写真1:齋藤 貴生氏

料理レシピの投稿・検索サービス「クックパッド」では、約314万種類のレシピが掲載され、月間5,500万ユーザーが利用している。法人向けには、同サービスサイトの検索・アクセスログデータが確認できるビッグデータツール「たべみる」も提供し、食品メーカー等と共にマーケティング課題の解決へタッグを組んで取り組んでいる。

クックパッドのマーケティング支援業務や今後の展望などについて、クックパッド マーケティングサポート事業部 部長齋藤貴生氏にお話を伺った。

クリック数が低くても広告効果は生まれている

支援業務の一つとして、マクロミルのセミナーでは、「デジタル広告のクリック率を上げることが、本当に購買率の上昇へ繋がるのか」という点で検証をされた話があがりましたが、クリック率と購買率の関係については、どのような傾向がみられるのでしょうか。

ExchangeWire・PDCAの拡大で活用が広がるデジタル広告

齋藤氏 やはり、という形にはなりますが、バナーをクリックした先に知りたい情報がありそうなクリエイティブであれば、クリック率は高くなります。しかし、クリック率が低くても、購買率には結びついているケースもありました。

「この調味料を使ったレシピを知りたい方はバナーをクリック」として誘導すればクリック率は高くなりますし、購買率も高くなります。ただし、「新商品が出ました。詳細はこちらのバナーをクリック」と伝えると、クリック先の情報はユーザーにとって必要のないもののことが多いので、クリック率は低くなりますが、一方で購買率はしっかりと高くなるという傾向が見られます。

一見、後者の広告は、クリック率が低かったのでクリエイティブ等が悪かったのではないか、と思えても、購買率に結び付けた検証をしっかりとしていくことで、本当の効果を確かめることができます。

デジタル領域において、クリック率が重視されてきた理由にはどのような点が考えられますか。

齋藤氏 テレビCMの広告効果を見るための分かりやすい数字に、GRP(延べ視聴率)などが使われてきて、それをそのままデジタルに置き換えた結果、似たように分かりやすい数字として、クリック率が重視されるようになったのだと思います。

実際に、お付き合いのある食品メーカーからも「どうしたらクリック率を高められるか」という問い合わせは非常に多いです。ただ、そこで敢えて我々から「本当にクリック率を高めることが課題解決に繋がっているのですか?」と話を投げかけると、改めて一考をされる方も多いですね。

また、私自身の視点の持ち方としては、良いとされてきたことに対して、「それは本当に良いのか」。悪いとされてきたことに対して「何が悪くて、良い点は本当になかったのか」。という点を意識するようにしています。

メーカーとは他にどのような取り組みを行いましたか。

齋藤氏 大手の調味料メーカーとの取り組みです。そのメーカーは簡便調味料を提供されていますが、彼ら(調味料メーカー)からすれば、クックパッドは競合会社だろうという話が以前はありました。

例えば、テレビCMで商品を宣伝して需要を喚起させても、お店に商品を買いに行く前に、自宅からまずはクックパッドで検索してレシピを見つけて、お店には行かず終わってしまう。要は、せっかくメーカーが広告を出しても、クックパッドに顧客が拾われてしまっているのでは、ということです。

ただ、本当のところはどうなのだろうかという視点も含めて、調査や広告のトライ&エラーを進めていくと、実は一番広告効果が高くなるのは、奪われたと考えられていたユーザーに広告を当てる事だったのです。CMを見て食べたいモチベーションが上がり、クックパッドでレシピを検索している人にその商品を当てることが一番購買の効果がありました。

CMでみたレシピを検索したユーザーをクックパッドがそのまま拾ってしまう、という仮説からすれば、反対の結果だと思いますが、何故、広告効果があったのでしょうか。

齋藤氏 CMで見たレシピを食べたいと思った人がどのような検索を辿っていくのか履歴を調べていくと、そのレシピには専用の調味料が使われているケースが多く、それらが家にはなく、かといって1回作るためだけに専用調味料を買うのは勿体ないと思ってしまう。また、家にあった代替できそうな調味料を使って作ってみたら今一つだった、というケースもありました。

そこで、「メーカーの商品を使えば簡単に美味しいく作れますよ」という切り口でレシピを検索しにきたユーザーへ広告をあてると、大きな態度変容が起きて、購入にも結びつくようにもなりました。

デジタルプロモーションを検証できる仕組みを提供

マーケティング支援に使われている「たべみる」とは、どのようなツールですか。

齋藤氏 クックパッドのユーザーがサイトを日々利用するにあたり、レシピ名や食材の名前などで検索を行い、ページ内を移動しています。その検索履歴等をビッグデータとしてまとめたのが、「たべみる」というツールで、法人向けサービスとして提供をしています。

使われている法人約200社の属性は、食品メーカーが主で、食品・調味料等が多いですが、近年では調理家電メーカーや日用消費財メーカーの利用もあります。

クライアントからはどのような需要があるのでしょうか。

齋藤氏 我々も食品メーカーとの付き合いはとても多いですが、コミュニケーションの軸はまだまだテレビが中心です。従って、デジタルをうまく使ったマーケティング活動を確立されていない場合がほとんどです。

そこに対しクックパッドは、たべみるをはじめとしたビックデータの活用や、店頭での購買を含めた効果検証の仕組みがあるので、ユーザーの反応を見て様々な取組をさせていただいています。

ユーザーインサイトからトレンドを探る

たべみるで見えてきた近年のトレンドや傾向は何かありますか。

齋藤氏 ここ数年は「時短・簡便」と「健康・ヘルシー」が強いですね。調理家電メーカーでクックパッドのサービス利用が増えたのも、炊飯器調理や電子レンジを使った簡単レシピという切り口から製品をアプローチしたいという理由が多いです。

あとはテレビやSNSを発信源として、急激に検索数が伸びることもあります。

数年前ですが、クックパッド内で「豚キムチうどん」のレシピ検索数が予兆もなく、異常値として急激に上がった瞬間があり、一体何が原因だと探したら、将棋の藤井聡太さんが勝負飯として豚キムチうどんのことをインタビューで答えたのがきっかけだったということもありました。

たべみるは約200社からの利用があるとのことですが、①たべみるのツールだけの利用②クックパッドと一緒にマーケティングも考えていく、という2つのパターンの割合はどうなっていますか。

齋藤氏 ツールだけを使われるケースがまだまだ多いですね。深い接点を持ちながらクックパッドがマーケティング支援の活動をしているのは、50社程度になります。

ツールのみの場合の利用方法として、例えば食品メーカーならば、商品開発やマーケティングに携わっている方々は、今のトレンドやユーザーニーズやインサイトを掴むため、営業ラインの方々でしたら、旬食材の検索動向や新しい食べ方のトレンドを小売バイヤーに向けて商談で使われるケースが多いようです。

特に、アンケートやインタビューに基づくデータではなく、食に結びついたユーザーインサイト=無意識のビッグデータが無尽蔵にあるというのは、クックパッドならではの強みであると認識しています。

クックパッドとしても、今後はもっと関係を密としたやり取りをして行く方針なのでしょうか。

齋藤氏 クックパッドを広告として使っていただきながら、メーカーが自分たちの商品をユーザーに伝えていくときに欠かせないパートナーにならないと、我々も残っていけないと思っています。私は2017年から現職についていますが、2016年時点で、マーケティング支援を行っていたのは、2~3社ほどでした。50社ほどを対象として、関係を密にしたマーケティング支援をできるようになったのも最近の話です。

ミニマムに検証ができることがデジタルの良さ

改めて、クックパッドとしてのメッセージをお願いします。

写真2:齋藤 貴生氏

齋藤氏 特に最近、デジタルマーケティングにおいては、機能や手法の話がマーケティング活動のメインになってしまっている傾向があると感じています。本来は、SNSをどう使うか、何故広告が必要なのか、この広告で何をしたいかを考えていくことが大事です。

当然、これは我々自身も気をつけていかなければなりません。

メーカーやメディアの皆さんには是非、ユーザーを意識し、トライ&エラーを行う場所としてデジタルを使って欲しいと考えています。

余り予算を前提として、デジタルでバナーを配信したり、SNSのタイムラインに広告を出したりという方法も当然ありますが、それよりも、何がユーザーにとって価値があって、どうすればそれが伝わるかを検証する場所としてデジタルを使って欲しい。

複数の検証からユーザーの反応を見て、その結果、反応の良かったものを踏まえてマスで大きく展開すれば効果は最大化されるので、クックパッドでも推奨をしています。

テレビはテレビ、デジタルはデジタルの良さがあり、それぞれどのようにすれば良い効果を生むのか、パズルのように組み合わせるのが重要ではないでしょうか。

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柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当
日本大学芸術学部文芸学科卒業。 在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。