PDCAの拡大で活用が広がるデジタル広告

写真1:ボルボ・カー・ジャパン 関口氏

ExchangeWireJAPANは、マクロミルと共同で、6月7日、「ブランドにおけるデジタル広告の役割と指標設計を考える」と題されたセミナーを開催した。
セミナーには、食品、化粧品・トイレタリー業種をはじめとする大手消費財メーカーをはじめ、60数名の広告主企業のマーケターが参加した。

冒頭、ExchangeWireJAPANの長野雅俊が登壇し、セミナーのテーマに関連して「デジタル広告の本当の効果と、計測されている指標が示す効果とが、必ずしも一致していない」という課題感を共有した。

写真2:ExchangeWire Japan 長野氏

また、日欧の広告主に対する「本来設定したいKPIと、実際に設定しているKPI」それぞれに関する調査結果について紹介。

日欧共通して、広告主がデジタル広告を出稿する目的と、現状可視化されているデジタル広告の機能との間にギャップがあるとし「デジタル広告が得意としている機能と、実際に広告主が使いたい目的とのギャップをどう埋めるのか。機能の方に目的を合せるのか、あるいは目的に合わせて機能を使いこなしていくのかという思考錯誤がなされてきた」

と、これまでの広告主とデジタル広告の指標との間の関係を振り返った。

クリック率は何を語っているのか

続いて、第一部の講師としてクックパッドマーケティングサポート事業部 部長齋藤 貴生氏が登壇。スマホの普及とともに50代~60代のユーザーが急増するなどもあり、ユーザー数は2013年時点から約2倍になったという。

クックパッドが持つ、アプリにおける16億回にも及ぶ膨大なレシピ検索データは、ツールとして食品メーカーに提供されているが、これは同社を通して行われる様々なプロモーション施策の結果を見るときに活用している。

また、デジタル施策におけるKPI設定に関連するメーカーとの事例を紹介し「一般的にはPVやimp、クリックなどをKPIにしているケースが多いと思われるが、我々は広告のクリエイティブを見たユーザーにどのような態度変容が起こっているのか、あるいは実際に売り上げにつながっているのかどうかを見ている。」とした。

写真3:クックパッド 齋藤 貴生氏

齋藤氏は、「クリック率の高さは、態度変容をはじめその後の行動との相関関係があるととらえられがちである。だが実はそうとは限らない。」とし、ある大手トイレタリーメーカーのキャンペーン事例について触れ、同時に配信したうち、クリック率が2倍ほど高かった広告クリエイティブに接触したユーザーの態度変容や実購買率が、他方の広告クリエイティブに接触したユーザーよりも高くなかったという出来事を紹介した。

マスプレミアムブランドにおけるデジタルの役割

写真4:ボルボ・カー・ジャパン 関口憲義氏

続いてボルボ・カー・ジャパンマーケティング部ディレクター関口憲義氏が登壇。同社のメディア戦略は、関口氏の参画後大きく変わった。それまで出稿をしていた紙媒体を止め、テレビとデジタルに集約。テレビはブランドの醸成、デジタル広告はリードジェネレーションと、それぞれの役割に特化させているという。

ブランディングをテレビに絞っている理由として、「当社のマスプレミアムというポジショニングにあっては、デジタル広告はブランディングに向いていないと思っている。」と、デジタル広告をブランディング目的で活用していないと語った。

「デジタル広告はデモグラフィックや行動ターゲティングが出来る、安価で効率的であり、結果がすぐにわかるのでPDCAが回しやすい」というようなメリットを理解していることを示しつつ、「デジタルがプレミアムカーのブランディング活動に対してワークするかというと必ずしもそうではない」と述べ、「我々はプレミアムではあるが、マスにアピールする必要がある。デジタルはターゲットを絞り込みすぎてしまい、ターゲット以外にリーチしない。買う気のない普段の無意識の刷り込みには向いていない。またで面が計算できないときもある。」と、デジタルに関する見解を述べた。

「VOLVOのオーナーの平均年齢は53歳、平均世帯年収は800万円以上。先日発売した新シリーズの初期ユーザーについては、30代以下は1割を下回るというような商品特性を考慮すると、やはりテレビとの親和性が高くなる。」とした。

デジタルに関して今後は、同社のセントラルデータベースやプライベートDMPに蓄積されたデータを活用し、「クルマを買ってくれそうなユーザー」や「買ってくれそうな行動をしているユーザー」という自社セグメントを作成。これをパブリックDMPと掛け合わせてデジタルによる拡張ターゲティングをすることを考えているとのことである。

PDCAが広げるデジタル広告の役割

写真5:マクロミル 齋藤 司氏

両氏のプレゼンに引き続き、マクロミル 齋藤 司氏をモデレータ―に交えたパネルディスカッションでは、関口氏は「デジタルはPDCAが回っている範囲内において、リード獲得の目的として使っている。」と現状のデジタルの活用方法を改めて述べる一方で、「現在分断されているオフラインとオンラインとがつながりそこでPDCAが回ればデジタル広告の活用方法はさらに広がると期待している」と同社の立場を披露。

一方クックパッド齋藤氏は、「デジタルの良さは色々なことが分かりPDCAが回すことが出来るという点。デジタルのいい使い方が何であるのかということを追求していくことが大事なのではないかと思う。そう考えたときに、自分たちのどのターゲットが、どのような反応をしてくれるのかを実験する場としてデジタルは向いていると思っている。」とした。また、「今後デジタルとID-POSとがつながり購買データが取れるようになれば、デジタルの活用の幅は劇的に変わっていくのではないか。」と述べた。

写真6:パネリスト

マクロミル齋藤 司氏は、「ある大手外資メーカーは、当社のパネルが持つ購買データも活用し、オンラインとオフラインのデータを紐解いて、プランニングや統合指標を作る取り組みから始めている。」と、調査会社の現場の肌感覚としてもデジタルの活用の幅はますます広がっていることを述べた。

広告主、媒体社、調査会社3社それぞれの視点で見たデジタル広告、現状デジタル広告の指標とその活用範囲に関する考え方はそれぞれであるが、PDCAを回せることがデジタルの強みであり、その進化とともにPDCAを回せる範囲が増えており、同時に活用の幅が広がり続けているという点においては全く異論の余地はみられなかった。

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ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長

外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。