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市場は次のステップへ-UUUMが見るインフルエンサー市場と事業戦略 [インタビュー]

写真:UUUM 石橋 尚也氏(左)と 市川 義典氏(右)

成長を続けるインフルエンサーマーケティング市場。この市場を圧倒的な強さで独走するのが、数多くのトップ動画クリエイターを擁するUUUMである。

UUUMの市場に対する見解や事業の戦略について、同社取締役 市川 義典氏、執行役員 石橋尚也氏にお話を伺った。

聞き手:ExchangeWireJapan 野下智之

市場は次のステップへ

インフルエンサーマーケティング市場の現状を、どのようにご認識されていますか?

石橋氏 Googleトレンドで、キーワード「インフルエンサーマーケティング」などを見ると引き続き検索トレンドは向上し続けています。マーケッターでないと検索しないワードなので引き続き注目されているという事だと考えております。

現場の観点でも、引き続き案件が増えており、次のステップを見越している状況です。

特にInstagramのオーガニック領域については、直接的な効果のトラッキングができませんが、効果に関する調査を行ったり、間接的な効果指標を明確化していくようにしています。単純に「投稿して終わり」から次の段階に進んできていると考えます。

インフルエンサー経済圏を拡大

インフルエンサーにとってのチャネルとしてのYouTube、Instagram、そのほかのプラットフォームをどのように位置づけておられますか?また今後これらのプラットフォームがどのようになっていくと感じておられますか?

 

石橋氏 プラットフォームによってそれぞれ特性があります。メディアフォーマットや、コミュニティとしての空気感や文脈などです。それらが自社にフィットしているか否かクライアントが見極めて選択できる、選択肢が増えた状態になったと思います。

例えばハウツーが必要な商品を販売しているクライアントの場合、動画解説できるYouTubeを選ぶなど、クライアントが選択肢を持てるようになったと思います。

写真2:市川 義典氏市川氏 私どもは「もっとアソビナカマを」という経営戦略を立てております。具体的にはクリエイター、クライアント、視聴者、社員の大きく4者のアソビナカマ、人脈が増えればインフルエンサー圏も拡大できるという考え方をとっています。

クリエイターは、自分たちの情報を発信する場として適しているかどうかという基準によりプラットフォームを選んで、情報を発信しています。ですのでクリエイターとユーザーがマッチするプラットフォームが出てくれば、そこには踏み込んでいくという戦略になるでしょう。

例えば、女性の動画クリエイターなどは、YouTube上で女性向けの化粧品の紹介を動画でアップしていたものを、何か商品を絞って紹介するときにはInstagramを使い、ファンと密度高くコミュニケーションを取りたいとき、例えば、今どこでこんなことやっているというような情報を発信するのにはTwitterを選びます。あるいは面白可笑しくやってみたことを動画でアップするときにはTikTokを選ぶというように、プラットフォームを使い分けています。インフルエンサーによる使い方と、企業とがマッチングするところで、我々のビジネスと親和性が高ければより一層、プラットフォームの多様化を進ませるような戦略を取ることになるでしょう。

クリエイターのチャネルの多様化に合わせたチャネル戦略を取っているのでしょうか?

いえ、そうではないです。今は、クリエイターの多様性がものすごく加速しています。

2~3年前ならばいわゆるマルチクリエイターと呼ばれるバラエティー的な立ち位置の人、女性をターゲットにしたもの、家族で楽しめるもの、そしていわゆるゲーム実況者。このとうな4ジャンルにほぼ集約されていました。しかし今はその枠にはまりきらなくなりました。音楽だけ、釣りだけ、ゴルフだけなど様々です。そしてその領域ごとに人が集まるインフルエンサーのチャネルで私たちがサポートすることが出来ること、あるいは経済圏を拡大できることは何か、ということを考えながら、次の戦略を立てていくというやり方をしています。クリエイターがどうというよりも、時代になるべく合わせて戦略を構築しています。

インフルエンサー自身の価値向上に注力

動画クリエイター市場では、圧倒的なNo.1です。なぜクリエイターは皆、UUUMに集うのでしょうか?

市川氏 理由は何点かあります。まずはこれまでのNo1事業者として蓄積された実績があるということ。あとはクリエイターの方のインフルエンサーとしての価値を高めていただくお手伝いをしています。例えば、コンプライアンス研修は年に2回以上実施しています。インフルエンサーとしての立ち振る舞いやトラブルに巻き込まれた事例の共有なども行っております。

UUUMに、レモネード(石橋さん)が加わったのは、どのような背景があったのでしょうか?また、ジョインしたことで、どのような事業シナジーが得られましたか、あるいは今後期待されますか?

市川氏 インフルエンサーがやることの多様性が増える中で、インフルエンサーマーケティングの市場を大きくしていくことをも私たちのミッションの一つだと感じ、他のプラットフォームでの新たな収益源を獲得するためのチャレンジをしていきたいと考えていました。そしてレモネードが取り組んでいるInstagramクリエイターのプラットフォームビジネスは、これまで私たちがクリエイターをサポートしてきたこととも親和性もありました。

一緒になることが出来たのは、見ている方向が同じだったということです。

インフルエンサーの価値を上げていくことについて、石橋さんは同じ考え方をお持ちでした。

クリエイターの価値を上げていきたい、という考え方が一緒だったからだということにつきます。値引きや、嫌がることを無理やり頼むということも目に入ったり耳にしたりしますが、クリエイターが嫌がることは無理にやらせたくありません。そういったことをしても、結局はエンゲージメントが高まらず、クライアントメリットにもつながらないです。ステマなどをやればレッテルを貼られて価値が下がって、インフルエンサー人生が終わってしまいます。

そういうことをしてしまったインフルエンサーはものすごく苦労されてしまうので、彼らに対しても価値を向上する機会を提供していきたいという点が一致しました。

レモネード(石橋さん)の視点としてはいかがですか?なぜUUUMにジョインすることを決意されたのでしょうか?

写真3:石橋 尚也氏

石橋氏 ものすごくシナジーがあると感じました。UUUMは動画クリエイターの領域で圧倒的なNo.1です。そして私はInstagram領域を一気に伸ばしていこうというところでした。この二つの勢いが交わると、両方のプラットフォームを押さえることが出来ます。

また、当時レモネードは様々な企業と業務提携していましたがNo.1の企業と取引したかったという点もあります。出版、印刷、広告などの業種における、その道のNo.1の企業と事業提携をしてきました。引き続きNo.1企業と提携をしていきたいと思いUUUMを訪問し、ご縁があって参画することとなりました。

圧倒的NO.1であるこの会社が、レモネードのサービスをさらに伸ばすのに適していると思ったのです。

UUUMに参画したことで、レモネードにどのような事業シナジーがもたらされましたか?

石橋氏 まずは圧倒的にリソースが潤沢になったことによってサービスのグロースがもたらされました。UUUMに参画する前は、少人数で色々な対応をしていたので、なかなかスケールがしずらかったのですが、今は400名以上の仲間がいます。ですので、たくさんの案件を獲得できますし、開発スピードも格段に上がりました。

YouTube、Instagramクリエイターを活用したインフルエンサーマーケティングのトレンドや注目すべき動向などがあればお聞かせください。

石橋氏 注目すべき点として挙げられるのはInstagramでブランドコンテンツ広告というメニューが出来たことです。今年6月からユーザーのオーガニックポストをそのまま広告化して、クリエイターのアカウントから直接配信することが出来るようになりました。クリエイティブがインフルエンサーの投稿になる。これにより、PR投稿のみならず、広告の分野においても、インフルエンサーのコンテンツが重宝されるようになりつつあります。

現在UUUMはインフルエンサーの領域において圧倒的NO.1だと自負しております。つまりは市場のトレンドを作り出す立ち位置にいるわけですが、その観点からマーケティングメソッドを確立していきたいと考えています。特にインフルエンサー・リレーションシップ・マネジメントという考え方を市場のスタンダートにしていきたいと考えています。これまでは投稿して終了でしたが、案件を通じてインフルエンサーにどれだけブランドのことを好きになってもらえたかを可視化していく。CRMの概念を用いてインフルエンサーと企業の関係構築およびその維持を行っていく考え方になります。

動画クリエイターついてはいかがでしょうか。

市川氏 YouTubeだけ、というクリエイターは減少してきており、その活動は複数のプラットフォームにまたがるようになってきました。

1つのプラットフォームから出て行って、企業のイベントに参加したり、グッズのコラボレーションだったり。

クリエイターの良さをより活かせるような試みを企業の皆様がより理解しようとしてくださっています。

単にYouTube動画でタイアップだけするのではなく、イベントに出演して一緒に集客したり、新商品の紹介をしながらファンとコミュニケーションを図るなど、動画だけではないところのお仕事が増えてきています。

今までいわゆる認知施策として他の媒体でやっていたような施策も、インフルエンサ―を活用できる時代が来たということが、何よりの変化であろうと思っております。

マス媒体とも連携を

動画クリエイターがテレビ出演したりと、垣根がなくなってきていますがその現象をどう見られていますか。

市川氏 予想していた世界が来たと思っています。垣根がなくなれば、インフルエンサーの経済圏の拡大という意味では個人がメディアになっていく。ずっと我々が言っていたことが実現されてきたと思っています。そもそも、インフルエンサーの定義がなんであるのかというところの話にもなりますが、影響力がある人を、インフルエンサーというならば、スポーツ戦選手も俳優も女優もインフルエンサーなので、マッチしてクリエイターの価値が上がるならば一緒に取り組んでいきたいですね。

石橋氏 私は、どのメディアを起点としたインフルエンサーなのかという見方をしています。モデル系の方は雑誌の専属モデルになり、その後テレビなどに出てブレイクしていきます。動画の方はYouTubeを起点として、その後他のメディアにも出ていく。既存のタレントと違うことは、タレントをやりつつ自分もクリエイターであることは大きな違いですが、何かしらのメディアを起点として露出し、他のメディアへステップアップしてく点では、他と同じです。

その時に動画クリエイターはテレビとマッチしやすい。一方で例えばInstagramのクリエイターは、例えばインテリアに強い方などは動画より雑誌やブログがマッチすることなどもあります。余談ですがInstagramのクリエイターに、Instagram以外で何を使っているかとヒアリングすると、ブログを使っているという回答が多いです。

貴社の現状の収益モデルについてお聞かせください。収益全体に占めるAdsense比率が過半数を超えている現状については、どう解釈されていますか?

市川氏 これも想定どおりで、WEB動画を見る世代も幅広くなり、より多くの人に見られるプラットフォームになっています。その分いろいろな広告主が出稿しており、広告単価も上がってくるので業績としては想定通りです。

今後はクリエイターインフルエンサーの経済圏拡大がミッションなので、プラットフォームや、別の商品、ブランドも柱に据えていくつもりです。その部分で、プラットフォームとのレベニューシェアよりはクリエイターのいろいろな活動をサポートする企業として成長していきたいと思います。

台湾への出資を皮切りに海外進出も加速

海外市場については、どのように見ておられますか?

市川氏 日に日に件数としては伸びてきています。いわゆる海外企業のインバウンド、日本でブランチが立ち上がる際や、台湾で活躍する企業CAPSULEのインフルエンサー育成サポートなども手掛けています。CUPSULEには二年前に出資もしております。また、先日は宮崎オフィスを立ち上げて、地方活性にも力を入れていきたいと思っております。

石橋氏 海外市場は当社調べにはなりますが、同じようなビジネスモデルで上場しているのが、英国のブレイブバイソン(Brave Bison)と中国企業と当社の3社だけです。海外のインフルエンサーマーケティングと日本は商習慣が異なりますが、グローバルで見ても、市場のリーダーという立場だと自負しています。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。