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マーケター志望の学生向けプログラムなどを追加―MCAが第2期を始動

一般社団法人マーケターキャリア協会(MCA)は7月7日、会員総会と新プログラム発表会を行った。Facebook LIVEを通じて配信された本イベントでは、創立1周年の報告とともに、第2期のプログラムの概要を発表。約100人の視聴者を集めた。

 

第2期は新規プログラムを多数追加

MCAは2019年3月に発足。「マーケターの価値を明らかにする」ことを目的として、MCA理事による講義とワークショップを合わせた「MCA道場」、マーケティングに関わる様々なテーマについてのパネルディスカッションとワークショップを実施する「MCA Meet Up」、著名マーケターとの1対1の対話を通じたキャリア支援を行う「MCAメンターシッププログラム」などの各プログラムを提供してきた。

 

 

MCA代表理事を務める小野進一氏(株式会社ホールハート 代表取締役CEO)は、これらのプログラムの参加者たちの中から、既にキャリアアップを実現した例が多く出ていると報告した。同事務局によると、7月7日時点で会員数は901名。会員の所属企業の内訳は、事業会社が54%、広告会社が14%、マーケティング関連会社が13%だという。

 

今年度は加えて、将来マーケターを目指す学生を対象とした「MCA学生道場」、社会人と学生の対話を促す「MCA DIALOGUE」、2019年に開催された第1期の上位概念となる「MCA道場マスタークラス」、新卒マーケター支援プログラムとなる「幸せな就活」などの新規プログラムを追加。また法人・団体向けにMCAのプログラム共同開発などを呼びかける「MCAサポーターズ」という枠組みを用意した。

 

 

学生向けの採用支援プログラムを用意

このうち目玉の一つとなるのが、2022年の大学及び大学院卒業予定の学生向けに提供される「幸せな就活」という新規プログラム。マーケティングに特化した学生向けの課題作成や評価をイトーヨーカ堂、パナソニック、ポーラ、Mizkan、横河電機といった企業が担当する。優秀な成績を収めた者には、これらの企業におけるマーケティング関連職でのインターンや採用面接の機会が用意される予定。

 

本プログラムのアドバイザーを務める早稲田大学の守口剛教授は、マーケティングや広告についての研究を行うゼミを履修する大学生が多数いる一方で、いわゆるジョブ型採用を行う企業が極めて少ない日本社会においては、それらの学生が実際にマーケターとしての職を得るまでの過程が明確ではないと指摘。マーケティングの現場の知識に触れられることに加えて、マーケターとして就職するまでの道筋を分かりやすく示した本プログラムを高く評価している。

 

今求められている人材とは

その後、「幸せな就活」の参画企業の担当者が一堂にそろっての記念講演を開催。株式会社ポーラ代表取締役社長の及川美紀氏は、コロナ禍で消費者の考え方や社会の枠組みが大きく変化したため、今後はそれら消費者が新たに抱えた課題を発見する方法としてマーケティングの重要性が一層高まると指摘。またテレワークへの移行を受けて、自主的に課題を発見そして解決法を提案する姿勢と能力がこれまで以上に求められるとの見解を示した。

 

横河電機株式会社常務執行役員及びマーケティング本部本部長(CMO)の阿部剛士氏は、創業105年の同社が今まさに戦略的転換期を迎えていると説明。「マーケティングの力で横河電機を改革する」ことを使命として業務に取り組んでいると伝えた。

 

一方で、米国における収益ランキングの上位500社の62%がCMO職を用意しているのに対して、日本の企業価値トップ300社の同割合は0.3%に過ぎないと指摘。日本におけるマーケティングの地位が低いとの現状を伝えた。

 

株式会社イトーヨーカ堂取締役執行役員及び営業本部長の河田靖彦氏は、カリスマ経営者と呼ばれた同社の鈴木敏文代表取締役会長の退任に伴い、新体制で自ら率先して提案を行うことができる人材を必要としていると説明。自主性を高めるため、希望部署を募る立候補制度などを既に用意しているが、今後は新規採用にもこの制度を適用していきたいとの希望を述べた。

 

株式会社Mizkan Holdingsの執行役員兼株式会社Mizkan取締役MD本部長の佐藤武氏は、マーケティング業務に携わる前にその他の様々な部署を経験することを慣例としている現行の人事制度は利点も多くある一方で、企業独自の思考の癖が身についてしまい、消費者ではなく取引先ファーストとなる可能性を生み出すとの弊害を認識。生活者としての感覚を維持した仲間を探すという目的の下で本取り組みに参画したと伝えた。

 

パナソニック株式会社コネクティッドソリューションズ社常務及びエンタープライズマーケティング本部本部長の山口有希子氏は、日本と海外ではマーケティングのレベルが全く異なり、それが競争力にも開きをもたらしていると指摘。またマーケティングは年々より複雑かつ難しくなっているため、新たな知識を学習した上で実践できる人材が求められていると述べた。

 

各プログラムの日程などの詳細については、MCAのウェブサイト及びFacebookの公式ページを通じて今後随時発表される予定となっている。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。