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2021年のMadTech(マーテク+アドテク)業界を大胆予測(前編)

我々(ExchangeWire)は、例年なら今頃、「ATS London」に参加するため、会場のBFIサウスバンクを目指していた。MadTech(マーテク+アドテク)コンテンツに丸一日浸るイベントだ。その翌日、参加者の大半は、飛行機に飛び乗ってケルンに向かい、今度は「DMEXCO(Digital Marketing Expo & Conference)」で、48時間に及ぶネットワーキングと交流を楽しむのが恒例だった。

 

残念ながら今年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、アドテク界の2大祭典である「ATS London」と「DMEXCO(Digital Marketing Expo & Conference)」はどちらも中止された(後者はオンラインのみで開催)。

そこで今回は、親愛なる読者のみなさんがこのイベント欠乏期の苦痛を和らげることができるよう、9つの予測をお届けしたい。これらはきっと、今後のZoom会議で格好の話題になるはずだ。

ちなみに、筆者(Ciaran O’Kane) がこうした予測記事を書くのは今年で4年目だ。これまでの的中率はかなりひどいものだった。ただし、それは筆者の予測能力のなさを示すのではなく、予測する時期が悪いからだと釈明したい。ともあれ、MadTechに関する今後1年の予測を9件示していこう。

 

1.Googleは、サードパーティーのアドテク資産を分離する

Googleは、2021年早々にアドテクの第三者提供市場から手を引くだろう(これは2019年の大きな予測の1つに挙げていたので、今回は特に強調したい)。

Googleは現在、多数の独占禁止法違反訴訟の当事者になっている。こうした訴訟の多くが問題にしているのは主に、デジタル広告業界におけるGoogleの優位性。そして、DoubleClick、Applied Semantics(現AdSense)、Admeld、Invite Mediaなどの買収を利用し、アドテクとディスプレイ広告において強固な独占的地位を築いた方法だ。

こうしたサードパーティーディスプレイビジネスは、長年にわたり、Googleにとって手堅い収益源となってきた。だが、独占禁止法に照らした調査やプライバシー規制、利益率低下といった課題があり、Googleは、親会社Alphabetの事業全体におけるポジションの再考を迫られる可能性がある。

規制当局の追及をかわすため、Googleは、アドテクの第三者提供とディスプレイ広告事業をスケープゴートとして差し出し、高収益と高成長を誇る戦略ユニット(Google検索、YouTube、Android、Google Cloud、Chrome)の強制的な分割を回避しようとするのではないか。

同社は、プライベートエクイティとの間で、何らかの収益保証を組み込んだ取引を行う可能性がある。これは、独立系のアドテク企業にとっては宝くじに当たるような幸運だろうが、若干のデメリットもある。

 

メリット:

・フリーミアムモデルの広告配信がなくなり、配信事業において50億~100億USドルの世界市場が開かれる可能性がある。

・Googleがアドテク市場から手を引くことで、より多くのイノベーションが実現する可能性がある。

・Googleのアドテク事業が分離し、本体との統合が薄れると、その技術を他のソリューションへ提供しなくなるかもしれない。

・Googleからこうしたアドテク層が分離することで、AdWordsの支出が他社へ流れる可能性がある。

 

デメリット:

・Googleは、測定、ターゲティング、プライバシーに関する業界の取り組みに対し積極的に支持をしなくなるかもしれない。

・W3Cは、プライバシーの権限をすべてブラウザベンダーに押しつけるようになる。

 

Googleがサードパーティーのアドテクから撤退する確率:5/5

 

 

2.欧州の連合体がXandrを買収し、Googleの空白に対抗

Googleがアドテクから手を引くことは、独立系アドテク企業にとって絶好のチャンスになるだろう。ただし、アドテク分野には、Googleのような大規模ソリューションはほとんど存在しない。Xandrは、世界規模で競争し得るプラットフォームの1つだ。

Xandrの技術資産の買収に関心を寄せる米国企業が続々と報じられている。だが、Xandrの事業が米国外(特に欧州)でより堅調であることから、筆者の予想では、買い手は、欧州の(Axel Springerのような)メディア企業とプライベートエクイティで構成される連合体になるだろう。

欧州の主要パブリッシャーの多くが自社のプライマリーアドサーバーとして利用している点や、比較的スリムな構成である点、ポーランドに新たな本拠を置くエンジニアリングチームの存在などを考えると、新生Xandrは、Googleのアドテクの空白を容易に埋められるだろう。2024年には、欧州のアドテク企業の大型IPOが実現するだろうと見込んでいる。

 

Xandrが欧州の企業になる確率:4/5

 

 

3.ID分野にM&Aの波

筆者は最近、欧州のIDベンダー企業群の台頭を詳述する記事を書いたが、その中で、サードパーティーCookieの非推奨化によって生じたID、測定、ターゲティングの混乱を解決しようとするアドテク企業を多数紹介した。「Cookie危機」がレガシーな広告ビジネスに影響を与えるなかで、その企業の多くは今後18か月のうちに買収されることになるだろう。以下に、筆者がM&Aの標的になると予想する3社と、各社の買い手になる可能性のある企業をリストアップする。

 

- Zeotap

Zeotapは、欧州の優秀なデータオンボーダーであり、当初からプライバシーのコンプライアンスを念頭に置いて構築された。同社は現在、独自のユニバーサルIDソリューション「ID+」を業界に売り込んでおり、ターゲティングと測定の強化に役立つIDソリューション群の一翼を担う可能性がある。決算報告では順調な成長を明らかにしている。Zeotapは、大規模マーケティング・クラウドプラットフォームの買収対象になる可能性が高い。SAPは、マーケター向けクラウドビジネスの始動を支援するため、Zeotapを買収する可能性がある。

 

- InfoSum

InfoSumは、1510万USドル(約15億9350万円)のシリーズA資金調達ラウンドを発表。このラウンドには多くのテレビ会社が参加している。同社はまた、かつてXandrでCEOを務めたBrian Lesser氏をエグゼクティブ・チェアマンとして招聘した。InfoSumは、コネクテッドTV市場への攻勢を準備しているように見えるが、同社は、ターゲティングよりも測定に注力すべきだ。私見では、これはInfoSumがコネクテッドTVの測定レイヤーとなる真のチャンスとなり得る。Nielsenは、早急にInfoSumを買収するのが賢明だろう。InfoSum CEOのNick Halstead氏とチームには壮大な野望があるからだ。筆者の読みでは、同社独自のIPOの可能性は低いとみている。InfoSumがコネクテッドTV測定市場を制覇できればなおさらだ。

 

- Permutive

IDベンダー群の中でも輝かしい業績を誇るPermutiveは、パブリッシャー向けにCookie不要の強力なターゲティングソリューションを構築している。すでに欧州の大手パブリッシャーと提携し、現在は米国へ本格的に進出中だ。筆者の予想では、MagniteかThe Trade Deskが、1年以内にPermutiveを買収するだろう。

 

IDベンダー企業群が買収される確率:4/5

 

 

4.細分化が大規模に進む

ユニバーサルIDの不在で起きること――それは細分化だ。それに伴い、新たな勝者と新たな犠牲者が出る。私見では、Cookieベースのアドテクは今後、サードパーティーのCookieを利用する複数のプログラマティックパイプにまたがる測定や大規模なターゲティングが困難になり、統合されていくだろう。これから起きるのは、バーティカルなオーディエンスとアドテクのポイントソリューションを中心に構築された、新たな独立系ビジネスの爆発的な増加だ。エージェンシー各社がオーディエンスを獲得する新たなソリューションとより良いブランド環境を求め、雑多なユーザー生成コンテンツ(UGC)がひしめくウォールドガーデンを超えようとするなかで、ユニバーサルIDを失うことは、試練のようだが将来的には恩恵をもたらすだろう。

 

バーティカルなアドネットワークが台頭する確率:4/5

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにサイバー・コミュニケーションズが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社サイバー・コミュニケーションズ(CCI)
日本のインターネット広告誕生の1996年に設立。以来、電通グループのデジタル広告関連事業者として、デジタルマーケティング全般のサービスを展開、数百の媒体社・広告会社との取引と共に、業界を牽引し、最先端のマーケティングサービスを通じて、クライアントと ユーザーのコミュニケーションを実現している。