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オファーウォールの進化論―Tapjoyがオファーウォール広告にこだわり続ける理由

アプリの広告マネタイズ手法の一つであるオファーウォール広告は、直近 3年間で大きな進化を遂げ、北米や欧州などでは定番手法となった。日本でも採用が拡大し、今やゲームやマンガアプリに必須の広告フォーマットとなりつつある。この分野で先進的な取り組みを行ってきたTapjoyに、これまでの経緯や今後の進化などについて聞いた。
(聞き手:ExchangeWire Japan長野雅俊)

 

海外デマンドとカスタマーサポートに強み

 

―自己紹介をお願いします。

 

Tapjoyの日本法人であるタップジョイ・ジャパン株式会社の代表取締役を務める村上雅一と申します。NTTドコモ、ノキア、ファーウェイといったモバイル企業を渡り歩き、2012年に1人目の社員としてタップジョイ・ジャパンに入社。4年前からアジア地域のメディア担当責任者を、そして1年前から日本法人の代表を兼任しています。

 

―貴社の事業紹介をお願いします。

 

2007年にアドネットワークとして米国のサンフランシスコで創業した当社は、リワード広告の一種であるオファーウォール広告に最大の強みを持っています。アプリストアのランキングをゆがめるなどの理由でリワード広告に対して批判的な見方が示された時期もありましたが、当社はこの課題と真摯に向き合い、GoogleやApple社のポリシーにきちんと準拠した仕組みを整備。当社ほどオファーウォール広告への注力姿勢を鮮明にしたアドネットワークは他にないと自負しています。

 

今でも毎年20%前後の成長を続けており、事業規模は日本法人の立ち上げ時の20倍にまで拡大しました。グローバル全体では社員が約200名、日本法人には10名が勤務しています。

 

―オファーウォール広告商品を持つアドネットワークは他にも存在します。どのように差別化を図っていますか。

 

オファーウォール広告の販売や導入支援においては国内事業者と競合することが多いのですが、このような市場環境においては、当社がグローバル企業であるということが大きな差別化要因となります。

 

とりわけ近年では、日本市場向けに広告を出稿する海外のアプリデベロッパーが急増中です。つまり日本の媒体社にとっては、海外の広告主にどれだけアクセスできるかが広告収益拡大の鍵です。海外デマンドを豊富に有する当社のアドネットワークに日本の媒体社が多数連携することで広告のパフォーマンスが高くなり、さらに多くの広告主が集まるという好循環を生み出すことができています。

 

―それでは、グローバル展開を行うアドネットワークとしての差別化はどのように図っていますか。

 

やはりオファーウォール広告に関する知見の深さと豊富さでは群を抜いていると思います。競合他社でも取り扱っているオファーウォール広告商品は一見同じように見えるかもしれませんが、広告主や媒体主にとってのパフォーマンスを上げるための、ユーザーからは目に見えないプロダクト機能がTapjoyのオファーウォールの強さを生み出しています。どの広告をどのユーザーにどのような順位で掲載するかを判断するアルゴリズムや、ターゲティング機能などがその一例です。

 

また、オファーウォール広告を運営する上では、カスタマーサポート体制の整備が重要です。リワードの提供に際して苦情やトラブルが発生した際に、迅速で適切な対応が取れるか否かがユーザーの満足度を左右します。

 

当社ではこのカスタマーサポート体制の拡充のために過去数年間で相当な投資をしました。日本ではあまり認知されていない制度ではありますが、カスタマーサポート満足度を格付けするBetter Business Bureauという機関の評価では最高点となるA+を取得しています。

 

業界初のマルチリワードCPE広告とは

 

―貴社では業界初となるマルチリワードCPE広告を提供しています。その概要をご説明いただけますか。

 

アプリ広告市場の黎明期は主にインストール数が広告の成果を評価するKPIとして用いられていましたが、市場が成熟するにつれて広告投資回収率(ROAS)が重視されるようになりました。この動きに伴い、インストール課金型のCPI広告ではなく、チュートリアルをクリアするといった一定のエンゲージメントが確認された時点で広告費が発生するCPE広告の普及が進みました。

 

そして近年では、「チュートリアル終了」といった浅いレベルではなく、「レベル30到達」といったかなり深いレベルでのエンゲージメントと連動したCPE広告が求められるようになりました。ただし、実際にはレベル30に到達する前に多くのユーザーは離脱してしまいます。また広告主も媒体社もレベル30に到達するまで広告費や広告収益が発生しないので、事業の見通しが立てづらいなどの課題がありました。

 

そこで当社では、レベル30に到達するまでのいくつかの段階で小刻みにリワードを還元するマルチリワードCPEという広告商品を開発したのです。この仕組みを実現するためには、AdjustやAppsFlyerといったモバイル測定パートナー(MMP)と連携した上でデータを駆使する必要があり、グローバル展開を通じてこれらMMPと接続済みの当社の優位性を発揮できる広告商品となっています。

 

―オファーウォール広告市場の概況についてのご見解をお聞かせください。

 

アプリのライフサイクルが伸びてきたことに伴い、どのアプリデベロッパーも新たな収益源と収益向上策を常に追い求めています。この動きの一環として、アプリ内課金モデルを採用するアプリが、課金以外のマネタイズ手法として広告収益モデルを併用する例が増えてきました。アプリ市場自体は既にかなり成熟してきた感がありますが、アプリ広告市場は今後もまだまだ拡大していく見通しです。

 

広告枠を新設する場合、動画広告やバナー広告をとりあえず試すということが多いように見受けられますが、オファーウォール広告はユーザー体験の向上にも寄与する唯一無二の広告プロダクトです。そして、オファーウォール広告を提供する事業者が比較的少なく、プロダクト開発や研鑽に多大な投資を行う事業者はさらに少ない。現時点ではアプリ広告市場の拡大と当社の業績拡大が密接に連動していると認識しています。

 

またこれはオファーウォール広告の話ではないのですが、当社では約2年前から動画広告においてアプリ内ビディングへの対応を開始しました。日本市場では1年ほど前からビディング対応するデベロッパーやメディエーションプラットフォームが増えており、この動きは今後1年でさらに加速していくと思います。

 

日中の成長スピードの違い

 

―グローバル市場と日本市場ではどのような違いがあると感じていますか。

 

正直なところ、日本とそれ以外の市場でそれほど大きな違いがあるとは思いません。あえて言うと、広告予算の取り方に違いが出るときがあります。例えば中国の一般的な広告主は、広告投資回収率(ROAS)が合う限りは、上限なくユーザー獲得予算を投じます。一方で日本の広告主は月なり期ごとに予め一定の広告予算が決まっていて、広告のパフォーマンスがどれほど良くても、予算を消化してしまったら次の月なり期まで待たなければ追加の予算申請ができない。その結果、前者と後者では事業の成長スピードに大きな開きが出てしまうという例が見られます。

 

―アプリ広告市場ではIDFA取得に際してのオプトイン義務付けが話題を集めています。貴社事業に対してはどのような影響があると見込んでいますか。

 

ユーザーIDデータを最大限に活用するパフォーマンス型広告には悪影響が出ると予測されています。ただ当社のオファーウォール広告は、iOSに関しては以前からAppleのポリシーへの準拠を目的としていわゆるアプリ広告を扱っていません。大きな収益源はウェブ上のコンバージョンに対して課金するCPA広告であり、広告IDがなくても広告トラッキングをすることが可能です。よってIDFA取得に際してのオプトイン義務付けによる当社事業への影響は極めて限定的になると見込んでいます。

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長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。