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YouTubeマーケティングでやるべきこと、やらぬべきこと[著者にインタビュー]

近年企業におけるYouTubeを活用したマーケティング活動は急速に広まっており、もはやWebマーケティングにおける定石の一つともなりつつある。
このチャネルを活用し、そのビジネスを拡大させる企業もあれば、多額のコストを費やしても結果につながらないことや、ともすれば炎上してブランドイメージを毀損してしまうような実例も見受けられる。
企業はYouTubeを活用したマーケティングにどのように取り組むべきであろうか。
市場調査レポート「2021年版 企業のYouTubeチャンネル 取り組みと活用方法」の制作において、国内外141企業の事例をとりまとめたシード・プランニング 長野 光研究員が、調査を通して得た気付きを語ってくれた。

 

 

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之)

 

 

-この調査レポートで取り上げた141事例のうち最も印象に残っているものについてお聞かせください

YouTubeを活用する大小企業の141社の取り組みと戦略を取りまとめた調査レポート。

まず国内でいうと南雄太さんという人のYouTubeチャンネルが印象的です。彼の職業は精神カウンセラーなのですが、今精神科医や精神カウンセラーのチャンネルがとても増えています。私は、これはYouTubeのビジネス活用における成功事例であると思っています。結局彼らは喋ることが沢山あります。

ADHDの人、引きこもりの人など色々な心の葛藤を抱えている人たち向けに、あるいはそういう人を家族や友人、恋人に持っていたりして悩んでいる人向けに、相手との接し方や寄り添い方を喋っている内容のものが多いのですが、これらはいずれも再生回数が高いのです。そしてこの南雄太さんは、カウンセラーなのですがそういう動画をいくつも上げており、これらいずれの再生回数も高い。また、この方はコロナ禍においてオンラインカウンセリングをやっていますが、動画を見た方からのカウンセリングの申込が今殺到しているとのことです。

YouTubeチャンネルには、彼自身の生い立ちから何から書いてあり、非常に見ごたえがあり、親しみが持てる内容となっています。これは国内の方がやっているものとして、非常に印象的な事例です。

次に海外の例でいうと、米国のミズーリ州セントルイスに、VAT19という会社の取り組みが挙げられます。この会社は面白ギフトのみを扱っている会社です。箱を空けると変なものが飛び出してくるものや、パーティーグッズなどで変わったものしか扱っていない、ECサイトを運営するお店です。4-5人のスタッフが演技者になり、それらのグッズを使った4-5分の寸劇のようなものを動画で撮影してアップしています。

そもそも面白グッズ自体に人は興味がありますので、人々は興味を持ちます。また、寸劇をやることで、かわいらしいイメージを視聴者に植え付けており、会社の好感度UPにもつながっています。「ああ、こんな会社だったら働いてみたいな」というような非常に無理なく、YouTubeをうまく活用していると感じた事例です。プレゼントに悩んだ米国の人々がここに見に来て商品を購入するというような具合で、おそらく相当商品は売れているのではないでしょうか。

 

【VAT19の動画(一例)】

 

-どのような企業がYouTubeというプラットフォームをうまく活用していますか?また共通点はどのようなことでしょうか?

私の見た感覚では、企業のYouTube活用は、大企業よりも中小企業が圧倒的に成功しています。なぜ中小企業のほうが成功しているのかというと、「速い」、「面白い」、「制約が少ない」、そして「無駄なことをしない」からです。

中小企業の場合リソースの制約もあり、その動画には社員が登場します。そうするとその社員がまず好かれてファンが出来、ビジネスにプラスの効果をもたらします。そして、リクルート活動にも好影響を与えます。また、社員が動画を楽しみながら作ることで、その会社を好きになる要因ともなり得ます。

親しみやすさという点でいうと、「メガネショップアイ 尼崎店」というところがあります。ここはショッピングセンターの中にある小さな眼鏡屋さんなのですが、そこはいろんなメガネを紹介しており、メガネのトリビアを開設している動画をアップしています。この店長にインタビューをすると、「動画を見て広島から会いに来ました」というようなお客さんもいるとのことで、その効果を感じているとのことでした。

 

リクルートに効果があるという話として面白かったのは、孤独死など人が亡くなった後に清掃をする「ブルークリーン」という特殊清掃の会社が東京にあります。この会社は、これまでにあったエピソードをアニメ動画にしてYouTubeにアップしています。これが面白くて例えば誰も住んでいないごみ屋敷のように汚い部屋を掃除していくと拳銃が出てくるという話をはじめ、色々なエピソードを挙げている。このような動画をアップし続けていくうちに、「お宅で働きたいです」という人が来るようになったとのことです。

この会社の方の話によると、普通にリクルートした人は、仕事の特性上、そのキツさから、すぐにやめてしまう人も多いとのことです。YouTubeでこの会社の動画を見続けて入社した人たちは、ある意味この会社の仕事のことを知っているわけです。これから大変な仕事が待っているという心の準備が出来ています。そしてモチベーションも高く、比較的優秀なスタッフが集まってくるとのことです。

 

社員が動画を楽しみながら作りその会社のことを好きになるというケースについては、大手企業においてみられました。ペンタブレットを作っているワコムという会社があります。アニメのクリエイターなどがキャラクターを描くペンを提供しています。ここのYouTubeチャンネルでは有名なクリエイターの方に来てもらって、ワコムのペンを使って絵を描いてもらうのです。

有名なクリエイターがワコムのペンを使って絵を描く一連の流れを紹介した後に、そのクリエイターに対するインタビューもしています。そして、自社の㏋への誘導枠を設けて、そこから商品の販売を促進しています。

 

大企業の取り組みでうまくいかない理由の一つは、無駄にコストをかけているということです。テレビの広告作りと同じ感覚で、YouTubeではユーザーが求めていない、美しいイメージショットのようなものを作るわけです。これをYouTubeで見ている側からすると、「あれはテレビだから仕方なく見るのであって、わざわざ視聴もクリックもしないよ。」ということになります。

また、作り込まれている動画からは、親近感は湧きません。ユーザーから共感を得るには、ラフな動画のほうが逆に良かったりすることもあるのです。

大企業の場合、一つのチャンネルに色々な種類のコンテンツがあり過ぎて、どんなコンセプトのチャンネルであるかが分からないケースが多々見られます。社員が会社の好きなところを語っている動画もあれば、昔からいる古株のスタッフが会社の歴史を語っている動画もある。またその一方で商品のコマーシャル動画があり、その会社のプロダクトが好きだという芸能人が出てきて商品を語る動画があり・・というようなチャンネルの場合、定期的にユーザーが訪れるということは少ないでしょう。また、炎上を恐れて色々な部署や立場の人のフィルターがかかるので、卒がないけれども面白さに欠ける傾向があります。また、動画を出すスピードも遅い場合が多いようです。

 

一方で、もちろんうまくやっているところもあります。分野でいうと、人材系の会社はとても上手くやっています。例えば代表例を挙げるとビズリーチがあります。YouTubeの中で番組を作り、金融業界、広告業界など、業界ごとに複数の企業を呼んで、そこで人を募集するという動画があります。動画ではそれぞれの企業が自分たちの会社の良いところをプレゼンしてもらうのです。そうすると、チャット画面に見ていてその会社に入ろうかと考えている人たちから、質問を投げかけられます。福利厚生や保険、男女比率、残業に対する考え方などの投稿質問を受けて、司会がそれを各社に振っていきます。ビズリーチに限らず人材系の会社はこれをどこもやっていて、非常に見ごたえのあるコンテンツとなっています。

 

あと、「この分野も強いな」と思ったのは、学習塾・予備校です。受験というのはやはりテクニックが相当求められるものです。精神的な自分の感情コントロールも求められますし、日々どのようにうまく勉強をするのかということもあるし、ここはあまり力を入れる必要がない、というような戦略的なこともあります。これらのことを、講師がYouTubeに出てきて説明をする動画が数多くアップされています。今日5分で覚えておくべきポイントであったり、参考書の書評であったり、大学別の攻略方法であったりというようなノウハウを少し教えるような動画は、多くのユーザーを集めています。結果として学習塾・予備校の集客に大きく寄与しているものと思われます。

 

-企業がYouTube動画を活用したマーケティングで成功するにはどのようにすべきですか?

ただ楽しいコンテンツではなく、ためになる、知識が学べる・勉強になる、やってみたくなるという要素が含まれていると、ユーザーに支持を得やすいです。
そして、作る側の人たちが飽きずに続けられること。これもとても大切なことです。自分たちの興味にリンクしていたり、自分たちが学ぶことがあったりすることが重要になって来ます。動画を作っている人たちにインタビューをしていても「結構しんどいです」というコメントがあったりすることもあります。誰かに動画制作を依頼するとき、作る側に、「これだったら飽きずに楽しめる」という要素を盛り込んであげるということを大切にするべきです。

そしてもう一つ重要なことは、「ネタ切れで困ることがない」ということ。先述の通りチャンネルのテーマを絞る必要はありますが、逆に絞ることによりネタが尽きやすくなりますが、尽きてしまうようなものだと困るということです。チャンネルを開設する前の構想段階でこれらのことを織り込んでおく必要があります。

 

また、明確なコンセプトで同じ種類の動画を沢山出すことが必要です。ユーザーが、「あそこのチャンネルに行くとこういう情報が得られる」ということが明確であることが、望ましいです。これを実践している最高の事例の一つは、「日本さばけるプロジェクト」です。これは日本財団がやっている、海産物の尊さとその文化を伝承することを目的としたプロジェクトです。服部栄養専門学校と組んで、魚のさばき方をとてもきれいな動画でひたすらアップしており、人気を博しています。

 

 

【日本さばけるプロジェクトの動画(一例)】

 

動画制作において気を付けるべきは、会社のイメージを毀損しないものであること。面白いものを作ろうとして、頑張り過ぎてしまうと、過激なものになり過ぎます。単に下品やおバカが駄目であるということではありません。下品でもおバカでも人を傷つけないようにやれば、それはまた一つ会社の良いイメージを形成する上での助けにもなります。
好例を挙げると、大阪にあるラムエイという不動産屋の事例があります。ここは面白物件紹介の動画をアップしているのですが、これが面白いのです。声のトーンやスピードを変えるなどしていて、変な感じで紹介をしており思わず笑ってしまうのですが、見ていると徐々に引き込まれてしまいます。これらの動画は多くのユーザーに視聴されており、結果大きな集客効果につながっているとのことです。

 

-動画の炎上リスクに対してどのように対策を講じておくべきでしょうか

まずはどのようなケースで炎上が起こるのかについて、予めパターンを想定しておくこと。そして、炎上したときの対応をする担当者を決めておくことも重要です。単に「炎上したら動画をパッと消せばいいであろう」という考え方は誤りです。すぐに消さないで、寄せられたコメントに対して、丁寧にコメントを返し続けることが望ましいです。
また、動画を消すのであれば消した後に、その動画をなぜ消したのかを説明して謝罪をする動画をアップするというような対応が必要です。

 

動画は、ふつう人が中心となって喋ることが多いのですが、企業動画の場合、コンテンツとしてあまり特定の人に頼りすぎないほうが良いでしょう。そこに出てくる人のトークが面白いから視聴されるというのは、確かにチャンネルの再生回数を増やすことにつながります。ですがもしその人がいなくなってしまうと、そのチャンネルは一気に廃れてしまいます。ですので、企業のチャンネルは数名で回しておくか、顔を出さずに声だけでやっておくというようにした方が、長期的にはよいのです。

コンセプトやコンテンツが面白ければ、極端なところ誰が喋っていてもユーザーにとって魅力的なものになるはずです。企業で動画コンテンツを発信するのであれば、「この人が面白いからこの人に任せよう」ということは、出来るだけ避けたほうが良いと、私は思います。

 

また、何かを批判するコンテンツというのは、自分が回らなくなったときに苦しくなります。ビジネスが非常に絶好調で、その企業のYouTubeチャンネルも絶好調なときは構わないですが、ビジネスがうまく回らなくなったときに動画で偉そうなことを言っていると印象が悪くなりますので、これはリスクとなります。

 

そして、動画制作が担当者の通常業務に支障をきたさないことも大切です。楽しくなりすぎて、のめり込んでしまうことで、そればかりやらないようにすることは気を付けるべきです。

 

また、あまり考えたり調べたりすることなく無難なコンテンツを並べると、非常に寒い場となってしまいます。「あそこがやっているからうちもやろう」ということで始めるのは、あまり望ましくありません。例えば美容室がカットを見せる動画はみんなやっています。これを今からやり始めてもつらいところです。大きなメディアや企業がやっているチャンネルで全然見られていないような動画がありますが、これは単に上からやれと言われたからやっているであるとか、他のところを見てうちもやってみようという感覚で始めたのではないかなと思います。

 

そして当たり前のことではありますが、ステルスマーケティングも気を付けるべきです。批判の声が上がらなくても、見ている人にそういう印象を持たれてしまった時点でイメージダウンにつながります。ステルスマーケティングではなくとも、それっぽいものも気を付けるべきでしょう。

なお、長野光調査研究員は現在シード・プランニングにおいて、書籍の著者を対象にしたYouTubeチャンネル「著者にインタビュー」を主宰・運営しており、国内外の様々な分野の著名や著者にインタビューした結果の動画を継続的にアップしている。

 

【シード・プランニング 「著者にインタビュー」の動画(一例)】

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★ポイント

・YouTubeを活用する大小企業の141社の取り組みと戦略を一挙掲載!

・企業の事例研究から効果的な動画の作り方、YouTubeへのアプローチ方法!

・YouTubeを活用する海外先進企業の成功事例を紹介!

 

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ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。