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広告枠最適化の時代に突入-Browsiと神戸新聞社が取り組むビューアビリティ保証とは[インタビュー]

アドテク技術の発展に伴い、配信面、入札価格、クリエイティブといった広告に関わるあらゆる要素が自動最適化されてきた。次なる最適化対象は、広告枠そのもの。イスラエル発のテクノロジー企業であるBrowsiが開発したソリューションを用いて、広告枠設置の自動化やビューアビリティ保証といった先進的な取り組みを行う神戸新聞社に話を聞いた。(Sponsored by Browsi)

 

全社的なDXに取り組む新聞社

 

―自己紹介をお願いします。

 

神戸新聞社デジタル推進局WEBマーケティング部に所属する初瀬川文範と申します。主に当社が運営する「神戸新聞NEXT」「デイリースポーツオンライン」「まいどなニュース」「よろず~ニュース」の4媒体の広告運用を担当しています。また神戸新聞社としてはDX戦略本部を立ち上げ、全社的にDXに取り組んでいる真っ最中です。

 

―会社全体としてデジタル化に取り組んでいるのですね。

 

当社では記事の外部提供をかなり早い段階から開始するなど、とりわけデジタルコンテンツの収益化には積極的に取り組んできました。国内で実績のない新規ソリューションを率先して試す企業文化もあり、「レガシーメディア」と呼ばれることもある新聞媒体としては稀有な存在だと自負しています。

 

コンテンツ特性の違う4サイトを運営しておりますので、最適と思われるサイトで検証を行い、良い効果が出れば他媒体にも横展開するという方式で新しい施策を試すことが多いです。

 

―ウェブサイトの収益化全般に関わる課題意識についてお聞かせください。

 

大きくは「いかに多くのアクセスを集めるか」と「いかに広告単価を上げるか」の2点に尽きます。いずれかの視点が欠ければ、収益を最大化させることはできません。「どのようにトラフィックを集めて、そのトラフィックをいかにマネタイズするか」と言い換えてもいいかもしれません。指標としては、RPM(広告表示1,000回あたりの収益見積り)を最重視しています。

 

また今年8月に薬機法が改正されて、虚偽・誇大広告に対する取り締まりが厳重化されました。その影響の如何を注視しつつ、コロナ禍での一度下がった広告単価をいかに引き戻すかを直近の課題として受け止めています。

 

―普段はどのような業務に従事しているのでしょうか。

 

まず「いかに多くのアクセスを集めるか」という点については、編集部、技術部と定例の会議を開き様々な施策を検討しています。編集部も非常に協力的で、負荷が大きい作業であっても前向きに話し合いが出来ています。

 

一方の「いかに広告単価を上げるか」については主にWEBマーケティング部の業務領域となります。広告枠の位置やフォーマットの変更、ヘッダービディングやレイジーロード(ページ全体の表示を速めるために広告など一部のコンテンツを遅延読み込みする技術)の導入といった作業の設計、実装、検証をすべて自社内で賄っています。

 

広告枠の位置変更を繰り返す日々の果てに

 

―日常的な業務においてはどんな点に最も苦労されていますか。

 

私どものWEBマーケティング部でオペレーションに従事しているのは私を含めて4人です。つい最近まで事実上2名で4サイトの収益化を担当していました。この少数体制で取り組むべき優先事項を整理することが常に求められています。

 

最近までとりわけ苦労していたのは広告枠の位置やフォーマットの調整です。100以上ある広告ユニットを管理しておりますので、毎日のように仮説を立てて変更を行ってはGoogle Ad Manager(GAM)を通じて細かくレポーティングを引っ張ってきて、収益が上がった/下がったかを検証し、また次の仮説の検証という作業を繰り返していました。また大きな変更を行う際には編集部の了解をその都度得る必要もあったので、その打ち合わせなども含めると相当な時間を割いていたと思います。

 

何よりも、こうした試行錯誤を繰り返したことで思いつく限りの調整はある程度までやり尽くし、既存の広告枠を通じた運用が頭打ちになりつつあるのではないかとの危機感を覚えるようになりました。

 

―その状況をいかに打開したのでしょうか。

 

結論から言うと、Browsiという広告最適化ソリューションを導入するに至りました。各ユーザーのビューアビリティの予測値に基づき、ページ内にリアルタイムで最適な広告枠を挿入するこのソリューションによって、先に述べた課題の多くは解決するのではないかと考えたからです。

 

ただ本ソリューションではユーザーごとに広告枠の最適化を行うので、Aさんには広告が一つしか表示されないけれど、Bさんには5個も表示されるということがあり得るわけです(最大個数は任意の値に制御可能)。収益化の観点だけでなく、ユーザービリティにどのような影響があるかを含めて実際に試してみないと分からない点があったので、まずはトライアルを行いました。

 

―大きな変更を加える際には編集部の了解を得る必要があるとのことでしたが、その編集部は広告最適化ソリューションの導入に賛成したのですか。

 

魂を込めて書き上げた記事の中に広告が自動的に挿入される様子を見た編集部員からは懐疑的な意見が多くありました。管理画面を通じて記事中に広告枠を入れないという設定を行うこともできるのですが、ともかく従来の固定観念を覆す可能性もあったので、まずは一つのカテゴリに絞ってトライアルを実施することにしたのです。

 

具体的には、「デイリースポーツ」のコラムカテゴリは記事の文字数が多く、検証に適していると判断し、まずはこのコラムカテゴリでの実証実験を始めました。

 

Browsiの管理画面。記事内に挿入する広告枠の数や位置を設定することができる

 

RPMが120%向上

 

―その結果についてお聞かせください。

 

導入後すぐに大きな成果が出ましたので、コラムカテゴリ以外のページを含めより多くのトラフィックを当てて検証を続けました。

 

本格導入後はRPMが120%上昇。PrebidやTransparent Ad Marketplace(TAM)といったヘッダービディングに対応できている点も大きかったと思います。この結果を受けて、今では「神戸新聞NEXT」「デイリースポーツオンライン」「まいどなニュース」の3媒体の全ページに適用しています。

 

―広告枠の設置作業が自動化されたことで、作業の手間を削減できましたか。

 

既存の広告枠は残したままで、それ以外のスペースに対してBrowsiを適用しているので、従来の広告枠は今でも人力での調整を行っています。ただ新規広告枠を設置する度にGAMを通じてレポーティングを引っ張ってきて検証することはなくなりました。

 

そもそもユーザーごとに広告枠の数や位置が異なるので、新規広告枠ごとの検証を行うことが非現実的です。現在はBrowsiの管理画面を通じて、新規広告枠の全体的な成果を把握するようにしています。

 

―新規ソリューション導入によるユーザービリティの影響はありましたか。

 

まず、ブラウザを対象としたあらゆる新規ソリューションの導入時に課題となるレイテンシーは発生しませんでした。正確に言うと、当社ではヘッダービディングを導入したことによる広告のレイテンシーについてはまだ解決に向けて取り組んでいる最中なのですが、Browsi導入によって顕著になったということはありません。

 

またBrowsiが挿入する広告枠はオープンオークションに流しているのですが、現在に至るまで、ユーザーの嫌悪感を催すような内容の広告は表示されたこともありません。本ソリューション導入と関連した問い合わせやクレームも届いておりませんので、ユーザービリティに対する影響は軽微であったと判断しています。

 

ビューアビリティ保証広告商品ができるまで

 

―Browsi導入による変化や影響は他にありましたか。

 

広告枠の自動挿入機能とは別に、ビューアビリティ予測機能を活用しています。Browsiが挿入した広告枠におけるビューアビリティの予測値が、Key Value(媒体社独自の条件を定義する項目)としてGAMに入ってくる仕組みです。

 

レポート内容を確認すると、予測値と実測値に乖離がない。むしろ70%の予測値に対して実際には80%が計測されたといった具合に控えめな予測値が出ることの方が多いようです。

 

そこでこの機能を最大限に活用すべく、当社ではビューアビリティ保証の純広告商品を開発しました。

 

―ビューアビリティはデジタル広告運用に精通した広告主が注視する指標であり、媒体社側が前面に押し出す例はまだ少ないのではないかと想像します。

 

それは媒体社が今まで技術的にビューアビリティを保証することができなかったからです。「この枠は過去の平均値としてビューアビリティが80%の実績を残しています」という案内はできます。しかしながら実際に蓋を開けてみれば、大きく上振れまたは下振れするということが往々にして起き得るわけです。

 

ただBrowsiのソリューションを用いれば、リアルタイムの精緻な予測に基づき、「80%以上のビューアビリティを確保できる広告枠にだけ広告を配信するという作業の自動化」が可能です。広告主が求めているのは将来の確実な見通し。実績をベースにした見込みの商品よりも、正確な予測値に基づくビューアビリティ保証商品の方が需要はあると考えました。

 

―広告主の反応はいかがですか。

 

今年の春先にお試しいただいた広告主様から秋も続けて受注するなどの評価はいただいています。一方で「ビューアビリティって一体何ですか」と質問される機会も珍しくありません。

 

ただ「広告がどのように見られているのか」「リーチしたい層に届いているのか」といったことに関心を示す広告主は多く、そうした懸念を取り込みながら今後はビューアビリティへの意識が各段に高まっていくはずです。当社としては早い段階で対応できる環境を整備することで有利な立場を築き、広告主様にはビューアビリティ保証の有無による広告効果の差を実感していただけたらと思っています。

 

―将来を見越した取り組みという位置付けですね。

 

私どもパブリッシャーの間では、ビューアビリティの重要性はかなり早い段階から指摘されてきました。それでもいまだに課題視され続けているのは、ビューアビリティを高める努力をしても、その努力を広告商品として生かす方法が無かったからと考えています。ビューアビリティ保証広告を普及させれば、デジタル広告業界全体に好作用を及ぼすことになると信じています。

 

また将来を待たずとも、例えばAdsenseのようなCPC広告をビューアビリティの高い枠に流すことで、有効なクリックを増やすということは今すぐにでも実施できる施策だと思います。

 

―今後はどのような展開を考えていますか。

 

ビューアビリティの予測値に基づくアドエクスチェンジの最適化を図る予定です。またレイジーロードは内製のJavascriptを用いてきましたが、Browsi独自のレイジーロード機能もあるので、当社の仕組みを乗せることでの効率化も検討したいと思います。

 

さらにはBrowsiを導入したメディアをまとめ上げたPMPを作りたいとの相談をSSPから受けて詳細について現在協議中です。今後はSSP経由でも高単価のビューアビリティ保証広告商品を販売できるようになるでしょう。

 

Browsiについての問い合わせや詳細はこちらから

 

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。