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「パブリッシャーに寄り添い続け、どこにも負けない会社に」-UZOUとドワンゴが語るレコメンドのあるべき姿 [インタビュー]

「広告主向けのアドテク技術と比して、パブリッシャー向けの技術革新は乏しい」。オンライン・メディアの収益化に取り組む人々からは、そんな嘆きが聞こえてくる。パブリッシャーは今どんなアドテクを必要としているのか。レコメンドウィジェットのUZOUを提供するSpeee社と国内有数のWEBサービス企業であるドワンゴ社のニュース・メディア担当者に語ってもらった。

(Sponsored by Speee)

レコメンド導入のきっかけはサイトのリニューアル

自己紹介をお願いします。

永山氏(ドワンゴ) 株式会社ドワンゴの永山隆浩です。主要ブランドである「niconico」の広告事業部門において、プログラマティック広告、広告商品企画、イベントを含むタイアップ広告企画などの立案を行うチームのマネージャーを務めています。

「niconico」と聞くと「ニコニコ動画」を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、その他にも、ライブ・ストリーミングの「ニコニコ生放送」、幕張メッセで毎年開催しているリアルイベントの「ニコニコ超会議」、そしてニュースサイトの「ニコニコニュース」など、複数のサービスを合わせて展開しています。

大石氏(ドワンゴ) 大石優造と申します。永山と同じく広告事業部門において、プログラマティック広告運用を担当しています。様々なネットワーク広告事業者と折衝を行い、各種テクノロジーを活用しながら広告単価を少しでも高くするというのが私の仕事です。

古木氏(ドワンゴ) 古木亮太朗と申します。私はメディア本部のシステム企画部にて「ニコニコニュース」の企画開発を担当しており、広告の導入に際してサービス・ディレクターの立場で広告運用に携わっています。

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藤田氏(Speee) 株式会社Speeeのデジタルコンサルティング事業部に所属する藤田理です。現在は当社が開発したレコメンドウィジェットであるUZOUのメディア向けの営業を担当しています。ニコニコニュースのサイト・リニューアルに伴い、昨年11月にUZOUを導入していただきました。

今やニュース・メディアの大多数がレコメンドウィジェットを導入済みとの印象があります。ニコニコニュースがこれまで導入してこなかった理由は何ですか。

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永山氏(ドワンゴ) 明確な意思を持って導入してこなかったわけではなく、きっかけがなかっただけです。レコメンドウィジェットが登場したばかりのころに数社からご提案をいただきましたが、当時は黎明期ということもあり決め手に欠けていました。また、レコメンドウィジェットの実装作業にはエンジニアの開発工数がかかるということもあり、そのまま踏ん切りがつかず、月日が流れたというのが実情です。

しかし、この度サイトのリニューアルが決定したことで、エンジニアに作業をお願いしやすい環境が整いました。システムの更新に加えて、広告収益の向上がリニューアルの目的の一つとなっていたので、レコメンドウィジェット導入に向けての検討を再開したという次第です。

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UZOUを導入した結果、実際に広告収益は改善したのでしょうか。

大石氏(ドワンゴ) 昨年11月のリニューアル後、広告収益は全体的に向上したのですが、中でもUZOUの上がり幅が一番良かったです。例えばリニューアル以前に同じく記事下に設置していたレクタングル・バナーと比べると、eCPMは3~4倍になっています。

Speee社のコンサルティングの強みはSEO事業に由来

日本国内だけでもレコメンドウィジェット事業者は多数存在しますが、その中であえてSpeee社のUZOUを選んだのはなぜですか。

永山氏(ドワンゴ) これはすごく単純な理由で、レコメンドウィジェット導入を検討していた時期に、タイミング良くご提案をいただいたので、これもご縁だなということでお願いしました。またアドテクというと、テクノロジーの性能ばかりに関心を向けがちですが、そのテクノロジーを扱う人間の対応もやはり大事です。担当の藤田さんが本当に誠実かつ迅速に対応してくれたというのが非常に大きいです。

藤田氏(Speee) そう仰っていただきうれしいです。当社はそもそもSEO事業を由来としているのですが、SEOとは、結局のところ、コンサルティング・サービス。顧客の信頼を得ることができなければ何も始まりません。当社社員の間ではその意識を徹底しています。

レコメンドウィジェットを導入する際にドワンゴ社から課した条件はありますか。

永山氏(ドワンゴ) 広告案件の精査はしっかり行うようお願いしました。当社では純広告の販売も行っており、当然ながら広告審査があります。その審査において適用する広告掲載基準と齟齬があれば、トラブルが起きてしまいます。

藤田氏(Speee) 広告案件を精査する際の方法は主に3つあります。一つは当社が予め設定した基準で、いわゆるアダルト・コンテンツや薬機法に抵触する内容をNGとするもの。2つ目は、例えば「この広告は閲覧している記事の読了体験を阻害するので表示しないでほしい」「競合社に相当するA社の広告は表示しないでほしい」といった各メディアの個別の要望に応じたカテゴリー・ブロックやブラックリスト。3つ目はホワイトリスト配信です。ニコニコニュース様に関しては、一つ目の当社基準で対応できている状況です。

レコメンドウィジェットの役割には、広告収益改善に加えて内部回遊の促進もあると思います。UZOU導入によって、内部回遊は促進されましたか。

永山氏(ドワンゴ) CTRも大分改善しました。実は今年1月まではウィジェットを現在の位置よりも下部に配置していたのですが、CTRが非常に良かったので、その後、枠をやや上部へと移動しています。もともとはレクタングル・バナーがあった位置と交換した形です。

パブリッシャー側の技術革新が滞っている

レコメンドウィジェットを導入する以前は、ページ下部の広告収益改善のために何をしていましたか。

大石氏(ドワンゴ) フロア・プライス(広告配信における最低落札額)を変えたり、フィラー(埋め合わせ広告)用のアドネットワークを変えたり。ページ下部に配置していたのはレクタングル・バナーだけだったので、基礎的な運用を地道に繰り返していました。

永山氏(ドワンゴ) ニコニコニュースは外部流入が多いので、トップ・ページよりも個々の記事ページの方がアクセスは多いのです。記事ページで広告収益を上げようとすると、PVを増やし、インプレッションを増やし、その上でCTRを高めるということになるのですが、そもそもPVを増やすこと自体が簡単ではない。

それならばと広告枠を増やす、または目に付きやすい場所に設置することもできますが、すると今度は記事コンテンツが減る、または目に付きにくくなってしまい、ユーザー体験に悪影響を及ぼすことになります。

残る道は広告単価を上げることですが、ヘッダービディングの活用以外に大した施策はない。以前に比べて、パブリッシャー側のテクノロジーの革新が滞っているような気がします。そうした状況において、レコメンドウィジェットは、広告領域でもサービス領域でもパブリッシャーが恩恵を得られるという意味で有用と判断しました。

内部回遊を促進する施策には他にどのようなものがありますか。

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古木氏(ドワンゴ) 内部回遊ももちろんなのですが、ニコニコニュースでは「記事に対してコメントができる」ということをこれまで大きな売りとしてきたので、ユーザーがコメントしやすいような仕組み作りは常に考えてきました。そのため、コメント新着リストやコメント・ランキングといった、ユーザーのコメントを軸とした回遊導線を設置しております。今回のレコメンドウィジェットの導入では、シミラリティを基本とした、コメントとは異なる価値軸でユーザーへのコンテンツ提供ができるようになりました。

ユーザーのためにならないサービスは成り立たない

先ほど「広告収益を上げようとすると、ユーザー体験が阻害されかねない」というアドテク全般に関わる課題についての言及がありました。この課題について、アドテク事業者の立場からはどう考えますか。

藤田氏(Speee) 極端なことを言えば、グラビア水着写真のような目を引く画像をサムネイルに利用したものをどのページでものべつ幕無しに出していけば、クリック率は上がります。ただし、当社ではそうした形でのクリックの最適化は行っていません。グラビア関連の話題に関心を持っている人にグラビア水着の写真が使われたコンテンツを紹介することは問題ないですが、例えば社会的なニュースをじっくりと読み込んでいる人に対して、クリック率が良いからという理由でグラビア写真を出すことが本当に良いのか。引きの強い見出しの記事を濫用するケースでも同じことが言えます。

結局のところ、ユーザーのためにならないサービスは成り立ちません。必要とする人がたくさんいるから生業になる、というのがサービスの本質でしょう。それなのにユーザーの事情を無視して、短期的な収益ばかりにとらわれてしまうということがこの業界では往々にしてあります。この課題から眼を背けることなく、中長期的な視点も持ち合わせた上でパブリッシャーに寄り添い続けていけば、Speeeはどこにも負けない会社になると信じています。

ただ一方で、ドワンゴ社も広告収益の改善を主な目的の一つとしてレコメンドウィジェットを導入しました。広告収益を確保するというのも大切な要素ですよね。

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藤田氏(Speee) 正直なところ、そのバランスを取るのは非常に難しいです。例えば美容・健康食品関連の広告コンテンツは収益性が高い。一方で、いわゆるストーリー性のあるブランディング広告は、多くのユーザーへの認知を目的としているため、CPC単価が比較的低く入札されています。

そうしたバランスを取るのが難しいからこそ、安定した収益を生み出す仕組み作りが何よりも重要であると考えています。安定的な収益があれば、長期的な視点でのメディア運営が行いやすくなりますから。

UZOUが配信する広告の品質についてはどのような印象を持っていますか。

大石氏(ドワンゴ) 弊社側で止めてほしいなと感じる広告案件を見かけることがほとんどありませんね。大体どのアドネットワーク事業者とも「この案件は止めてください」というやり取りを少なくとも1回は行うのですが、Speee社とはまだ一度もありません。配信案件のクオリティーをしっかり担保いただいています。

レコメンドウィジェット事業は、広告事業に留まらず、メディア支援全般に及ぶと思います。ドワンゴ社としては、今後どのようなパートナーシップを構築したいと考えていますか。

永山氏(ドワンゴ) 当社が保有するファーストパーティ・データの活用を一緒に進めていきたいです。当社は今年から一部サービスが会員登録無しでも利用できるようになりましたが、基本は会員サービスなので、デモグラフィック情報や、ページや動画の閲覧履歴を基にしたオーディエンス・データを取得できます。こうしたデータを活用することで、ユーザー単位での広告案件の最適化や、レコメンド・エンジンの精度向上などを行う余地があると考えています。

レコメンドウィジェットで悩んだときに考えるべきこと

レコメンドウィジェットの比較検討を行うパブリッシャーは、どのような点を考慮すべきでしょうか。

藤田氏(Speee) 3つありまして、一つ目はレコメンドウィジェット事業者の担当者が顧客となるパブリッシャーの事業内容をきちんと理解していることが大前提になると思います。どんな状況なのか、課題が何なのかが分かっていないのは論外です。

二つ目は、自社のレコメンドウィジェットについてその担当者が十分に理解しているかどうか。分かっていない人も意外と多いです。なぜ広告の収益性が高いのか、またはなぜ収益が落ちているのかが分からない。SSPと接続して、いくつものアドエクスチェンジを通過させた結果、自社配信の広告を適切にコントロールできない。すると、「この広告の配信を止めてください」と依頼して、「止めました」との回答を得たにも関わらず、配信が止まっていないという事態が生じます。

三つ目はパブリッシャー側が、どうなりたいのかという姿を思い描いておくこと。今はまだ無理だが将来はこんなことができるようになるといいな、という程度でもいいので、未来のビジネス・パートナーとあるべき姿を共有しておくことが大事だと思います。

それでは最後に、Speee社の「あるべき姿」をお聞かせください。

藤田氏(Speee) 一言で言うと、「パブリッシャーに安心・安全を提供し続けて、長くお付き合いいただくこと」です。「安心・安全を提供し続ける」ための重要な要素として、「安定した収益の確保」があると思います。収益を安定させるには、広告在庫とどんな広告が流れているのかを把握しておく必要があるのですが、当社は広告主様向けのトレーディング事業を自社運営しており、また代理店様と良好な関係を構築しているので全く問題ありません。

また不適切な広告や不正広告によって、メディアのブランド毀損をしてしまえば、ユーザーや広告主側から距離を置かれてしまいます。当社は他のプロダクトとの接続を一切行っていない独立したアドネットワークなので、広告のコントロールが可能です。こうした取り組みをきちんと続けていくことで、パブリッシャーに安心・安全を提供し続けていくことができたらと考えています。

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ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。