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ショッピング広告の可能性を知る―楽天メーカー向け販促広告-RMP - Sales Expansion-

Eコマース市場の成長とともに、ショッピング広告に対する需要が高まっている。

ショッピング広告とは、ユーザーにモノやサービスを購入してもらうことを目的に、ショッピングサイトで提供される広告である。一般的なインターネット広告とは若干性格を異にし、中にはこれまで一般的なインターネット広告商流には載らず、ショッピングサイト内の閉じられたところで提供され、あまり知られていないものもある。

本シリーズでは、そのような中から注目すべき広告商品を取り上げて紹介をしていく。

まずは、日本を代表するインターネット・ショッピングモールとして、誰もが知る楽天市場で提供されている広告商品を取り上げる。

楽天では2020年秋に、メーカーによる商品販促を目的とした新しい広告商品として、RMP -Sales Expansionの提供を開始した。

メーカーが小売り流通に対して行う販促支援をオンラインで体現した広告商品といえるこの商品について、楽天グループ株式会社 グローバルアドディビジョン コマースカンパニー営業部 ジェネラルマネージャー 石角 裕一(いしずみ ゆういち)氏にお話を伺った。

 

(聞き手:ExchangeWireJAPAN 野下 智之)

 


-自己紹介をお願いします

私は、楽天グループ株式会社の連結子会社で、シンガポールに拠点があるRakuten Asia Pte. Ltd.に勤務しています。
これと兼務して、楽天グループ株式会社 グローバルアドディビジョンのコマースカンパニー営業部で、主に楽天市場への未出店のメーカー様に対して営業を行っております。

楽天への入社は2000年秋頃で、既に20年ほど在籍しております。入社後16~7年ほどは楽天市場で営業、コンテンツマネジメント、新規事業開発などをやってきて、その後シンガポールに赴任し、今に至ります。

今、シンガポールでは主に広告商品開発をやっております。私は営業の立場としては、メーカー様向けの広告の営業としての立場ですが、一方でシンガポール側の立場としては、楽天市場だったり楽天トラベルだったりそのほかのブランド広告主様向けの広告商品をシンガポールで開発しておりますので、そちらの責任者の立場でもあります。

 

市場成長率を大きく上回る楽天の広告ビジネス

-楽天の広告ビジネスの現状をお聞かせください

出典:楽天IR資料

 

楽天市場の概要についてまずご紹介させていただくと、約5万5,000店舗(10月1日時点)が出店し、商品登録数は3億点以上で、年間の国内EC流通総額(※1)は、4.5兆円です。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響でステイホームが浸透する中で、ECが生活基盤のインフラとして定着したことを背景に、楽天市場の利用ユーザーは2020年を通して、新規・復活購入者数(※2)が大きく拡大しています。また、2021年に入ってからもそのトレンドは変わらず、一度利用したユーザーが2回目以降も継続して利用する定着率(※3)は約76%と安定して推移しています。

広告ビジネス全体を振り返ると、2020年度の1年間で国内広告売上は1294億円、前年比約15.7%の成長となりました。

2021年の第一四半期、第二四半期は、それぞれ前年比25%を超える成長率で、それぞれの四半期で約370~380億と去年を圧倒的に上回る勢いで伸長しています。

次に内訳についてですが、楽天では、広告ビジネスを4つの象限に分けて見ています。
まず1番、2番というのが、広告在庫が楽天グループ内のものです。そして3番、4番は楽天ドメイン以外の広告在庫です。

私たちは、広告主様を外部広告主と、内部広告主という言い方で分けています。ここで我々が内部と言っているのは、楽天市場に出店いただいている店舗様や、楽天トラベルに出稿いただいている宿泊施設様などです。

上図4象限のうち1番の領域は、広告在庫は楽天グループ内で、広告主が出店店舗様以外の、例えば大手ブランドなどの企業が中心の領域でとなります。本日ご紹介するのは、この1番の領域における広告商品です。

1番の領域には、元々はRMP - Brand Gateway(ブランドゲートウェイ)という広告商品と、キャンペーンページをブランドが設置できるRMP - Showroomとがあります。
RMP - Brand Gatewayは広告主様との中期契約という形をとっている広告商品です。これを活用される広告主様は、楽天市場の中にブランドサイトへの入り口があり、その中でメーカー様が色々なキャンペーンなどを時と場合に応じてアップデートしていける内容となっています。テレビCMも積極的に出稿するという広告主様のご利用が多いです。

 

(※1)国内EC流通総額:市場、トラベル(宿泊流通)、ブックス、ゴルフ、ファッション、ドリームビジネス、ビューティ、デリバリー、楽天24(ダイレクト)、オートビジネス、ラクマ、Rebates、
楽天西友ネットスーパー等の流通額の合計
(※2)復活購入者数=1年以上購入がなかったユーザーが購入した場合
(※3)定着率=2021年1月~3月で楽天市場を利用したユーザーが、4月~6月で利用した割合

 

楽天市場商流を活用して自社商品を拡販

-貴社RMP - Sales Expansion-についてお聞かせください

RMP - Sales Expansionは、2020年秋に販売を開始した、メーカー商品が楽天市場の商品検索結果の画面に表示される広告です。
RMP - Sales Expansionを提供開始した一番大きな理由は、先ほどの4象限の表における左側の部分ですね、楽天グループ内の広告在庫をもっと有効活用していこうという動きの中の一つでもあります。中でも、楽天市場の検索結果面は、広告メディアとしての価値が非常に高く、広告効果に関してはおそらく追従できるメディアは無いのではないのかと認識しております。

これまで広告主様は、楽天のプラットフォームを使って自分の商品の売り上げを伸ばそうとするには自ら楽天市場に出店するしかありませんでした。

これが、この広告商品を通じて、広告主様は楽天市場への出店をせずにも、出店店舗様と協力をしながら、自社の商品売上を伸ばしていくことが出来るようになりました。

広告主様が広告出稿をすると、楽天市場の検索ページに、商品表示をすることが出来ます。この広告を介したランディングページには、楽天市場においてその商品を取り扱っている出店店舗様者のページにランディングします。すなわち、広告主様の広告費で、その商品を取り扱っている出店店舗様の売上が上がるという、メーカー様と出店店舗様とがウィンウィンの関係となる仕組みなのです。

 

-広告主はRMP - Sales Expansionのランディング先の店舗をどのように選定しているのでしょうか。

広告主様ごとに違っています。出店店舗様の取り扱いリストをもとに自らがオンオフにすることが出来る仕組みになっています。

リアルの世界でもメーカーの小売支援の方法には、いくつかのパターンがありますが、RMP - Sales Expansionは、小売店に対するキャンペーンコストをメーカー様が受け持つという方法に近いでしょう。

 

-RMP - Sales Expansionは、現在どのようなタイプの広告主がどのような目的で出稿していますか?

RMP - Sales Expansionはどちらかというと、ニッチな領域でシェアを持っているような、特定領域の商品に強いメーカー様に出稿していただいている。例えばイヤホンの専業メーカーのような、ニッチだが知名度高いか強いようなメーカー様が出稿されるというイメージです。

動機は主に2つ。1つは、楽天市場のなかでの該当ブランドの流通総額を上げていきたいという目的です。もう1つはブランドリフトを高めたいという目的です。後者については例えば、「化粧水」と検索されたときに結果が3~5つ出てくるわけですが、このときユーザーは、自分の頭のなかで既に結びついているブランドがある場合とそうではない場合とがあります。頭のなかで結びついているブランドがあるユーザーの場合は、メーカーとしてそこに入り込みたいという狙いがあります。もう1つ、化粧水が既存の特定ブランドと結びついていないユーザーの場合は、広告が新たに結びつけやすい。

広告が表示されるのは商品検索の結果ですので、我々は商品を作った当初は、販促効果、購買にダイレクトに結びつく効果が中心であろうと思っていたのですが、調査の結果ブランドリフト効果も認められました。従って最近ではブランドリフト効果を目的としてお申込みいただく広告主様も増えています。とはいえ、直接的な購買に結びつけることを主たる目的とするケースのほうが多いです。

 

膨大なファーストパーティデータに期待!待たれる楽天経済圏データの本格活用

-広告主の商品の購入データは、出店店舗のデータになるかと思いますが、楽天から広告主に対するレポーティングはどのようにしているでしょうか。

JANコードベースでのレポートとなります。まずは当社が広告主様から、JANコードデータを共有いただき、そのJANコードにマッチするものが売れた場合だけ、広告主様へのレポートに反映させるようにしています。個別店舗のデータは出さずに、あくまでもJANコードデータだけを切り取った合計数値をご報告します。店舗ごとの販売データは、当社と出店店舗様と守秘義務契約があるのでお出しできません。

例えば、広告出稿対象のある商品を扱っていて、広告のランディング先の店舗が50店舗あった場合、50店舗でのJANコードに紐づく販売データを抽出し、合計値を広告効果としてご報告します。

 

-仮に、誘導先が一つの店舗だった場合は、特定された店舗の販売データになるかと思うが、その場合にはどうするのでしょうか。
1店舗指定というケースは今までないですが、その場合には、ご相談の上対応することになるでしょう。

例えば、メーカーがある大手のドラッグストアの棚割対策用に何か販売店に支援したいとなったとき、その販売店が楽天市場に店舗を持っていたら、そこに対してRMP - Sales Expansionを使って支援をするというようなことも考えられ得るのではないでしょうか?

そこまでオンラインとオフラインが融合してくると楽しいですね。現状はまだそこまでには至っていないようです。

 

-RMP - Sales Expansionについて、今後の方向性としてお聞きします。楽天が蓄積する膨大なデータと掛け合わせてアップデートしていく構想などはお持ちでしょうか?
はい、それは今後是非取り組んでいきたいことの1つです。

また、今後は広告主様向けにセルフサービングによるご提供の体制を強化していきたいと思っています。広告主様自らで広告運用をすることでPDCAを回していっていただけるようなシステムやデータをご提供していきたいと考えております。

また、現在は商品検索広告のみのご提供ですが、今後はリターゲティング広告や、拡張リターゲティング広告としての配信も検討しています。

 

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。