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紙のチラシからのDX!西鉄ストアの実証実験で見えてきた、LINEチラシとモバイルオーダーの可能性

LINE株式会社は11月18日、「LINE LOCAL DAY LINEで実現する、店舗と顧客の新たなつながり」と題したオンラインイベントを開催した。イベントでは、LINEを活用している様々な企業の、LINE施策導入事例が紹介された。

 

その中のセッションの1つ、「紙のチラシからのDX!西鉄ストアの実証実験で見えてきた、LINEチラシとモバイルオーダーの可能性」では、株式会社西鉄ストア企画本部営業企画課 課長兼DX推進部事務局 坂本大輔氏が登場。モデレーターを務めたLINE株式会社バーティカル事業部マーケットデベロップメント3チームマネージャー 楠木修平氏と共に、西鉄ストアの課題、そしてLINEチラシとLINE公式アカウントを使った施策について語られた。

 

これまでの西鉄ストアが抱えていた課題

北部九州にてスーパーマーケットを中心に事業を展開する西鉄ストア。そんな西鉄ストアのこれまでのマーケティング戦略は特売チラシを利用した、ばらまき型販促が主体になっていた。紙チラシは月に8本、1回当たり60万世帯に折込を実施し、年間で4~5億円程のコストがかかっていたという。そして、広範なエリアに撒ける一方でターゲットが絞りにくいという問題を抱えていた。そこへさらに追い打ちをかけるように、2019年のコロナ感染拡大が打撃となり来店客数にも影響が出た。西鉄ストアはwithコロナ、afterコロナを見据える中で紙チラシから脱却し、既存の販促手法にとらわれない集客方法を模索していた。

 

高コストのばら撒き型販促からLINEチラシ導入へ

LINEチラシには大きく4つの特徴がある。

①月間アクティブユーザー8900万人に対する大規模リーチ

(※LINEアプリ ⽉間アクティブユーザー 2021年9⽉末時点)

②LINE公式アカウントとの連携によるプッシュ型で能動的な情報提供

③チラシの閲覧実績に応じた課金モデルによる低い閲覧コスト

④自社ECサイトなど他サービスとの連携

 

これに対し、「かなりの母数の確保ができるのではと思っている。」と坂本氏は言う。実際に西鉄ストアは、ターゲット配信や広告効果の可視化、低コスト化の観点から2020年4月にLINEチラシを導入。同時にLINE公式アカウントもスタートし、予約販売やイベント告知にも積極的に取り組んでいる。特に課題であったコスト面では、紙チラシの大幅削減により、2019年度の4~5億円から2021年度は1/3、約3億円のコストが圧縮できたという。

 

LINEチラシには各店舗をお気に入りに追加できる機能も備わっている。さらに、店舗をお気に入り追加することで、同時にLINE公式アカウントに友だち追加がされる仕様となっている。西鉄ストアのお気に入りユーザー数は、2021年8月までで1.7万人まで順調に増加しており、LINE公式アカウントへの友だち追加のうち、78%がLINEチラシ経由である。友だち獲得単価は105円を想定しており、LINEチラシをユーザーに届けつつ、友だち登録までの一貫した流れが低コストで実現している。

 

また、西鉄ストアで高い効果を発揮しているLINEチラシだが、チラシを閲覧した顧客は実際にどの程度店舗を訪れているのだろうか。過去、LINEが10数店舗と協力をした計測実績によると、スーパーというカテゴリーでは、平均35%もの顧客がチラシ閲覧から来店にまで至っているという結果が出ている。

 

LINE公式アカウントを活用した予約販売

お買い得商品情報やメーカーのキャンペーンをLINEチラシに掲載している西鉄ストアだが、さらなる取り組みとして、LINE公式アカウントを活用した予約販売にも着手している。2021年6月~7月にかけて、土用の丑の日のうなぎ、お餅、お酒等の予約販売を、紙の申込書とLINE公式アカウントからのオンライン予約を併用する形で実施した。

坂本氏はこの取り組みの大きな成果として申し込みフローの改善を挙げた。従来の紙予約は、受付業務が煩雑で、店舗で予約票の厳密な管理が必要であった。また、細かい受注データが無く、いつ受注したのか、最終的に何がいくつ売れたしか分からないという問題にも悩まされていた。

 

予約販売の結果については、売上と数量は好調に推移し、LINEからの予約の割合は想定していた20%を大きく上回る60%を達成したという。課題であったデータに関しても、いつ、どの時間に注文しているかが可視化できるようになった。

この結果に坂本氏は、「ユーザー様からは簡単に予約が出来て使いやすいという声をいただいている。その利便性の高さが、割合の高さに繋がっているのではないか。また、受注の60%がLINEに移行することで、従来の受付業務も単純に60%減になったことも大きい。」と述べた。

 

さらに土用の丑の日のあとには、LINEからの予約限定でロールケーキの販売も実施した。売り上げは従来の7~8割となったが、坂本氏は、「結果的には売上を落としたが、ここから得られる効果は大きい。紙がないと店舗オペレーションで受付業務が全くなく、工数が圧倒的に減る。今回は実験的に行ったが今後も取り組んでいきたい。」と述べた。

 

友だち数20万人を目指し、広範なユーザーへアプローチ

セッション終盤では西鉄ストアの今後の目標が語られた。

現在、西鉄ストアの友だち数は2万5千人弱だが、これを2022年度中に20万人まで引き上げることが目標だという。

 

さらに坂本氏は、「LINEを導入し、徐々にできることが分かってきた。今後は、キャンペーン告知、クーポン配布、LINE公式アカウントを活用した予約販売の3つの軸で、広範なライトユーザー様へのアプローチを展開していきたい。」と述べた。続けて、「現在、西鉄ストアは高齢のお客様が多く、さらに、自社アプリもあるがインストールしてもらうこと自体のハードルが高い。その中で、既に多くのお客様がLINEを導入しており、それを用いることで若いお客様にもアプローチができると認識している。今後はLINE公式アカウントで30、40代のお客様に情報を届け、タッチポイントとしてさらなる接点を持ってもらうのが目標になる。」と語った。

最後に楠木氏は、「小売業界においても避けることのできないDXの波が押し寄せてきています。様々な試行錯誤をされていると思いますが、今回の内容が皆様のヒントになれば幸いです。」と締めくくり、本セッションは幕を閉じた。

ABOUT 渡辺 龍

渡辺 龍

ExchangeWireJAPAN 編集担当 立教大学社会学部現代文化学科卒業。大学卒業後は物流企業にて海外拠点と連携し、顧客の輸出入サポート業務全般に従事。 その後、2021年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告市場調査などを担当している。