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2022年予測:DOOHとOOH

ExchangeWireの2022年予測シリーズ第2回は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中、特に厳しい課題に直面してきたOOH(屋外広告)、DOOH(デジタル屋外広告)分野の2022年予測を業界関係者に語ってもらった。

 

クリエイティブ、コンテクスト、測定における技術革新

大手DSPがこれまで細分化されていたサプライを自社のプラットフォームに統合しようと努力した結果、DOOHは真に実行可能なプログラマティックチャネルへと飛躍しました。このようなサプライの集約は、マーケターがオムニチャネル戦略を実行するチャンスを生み出すだけでなく、独立系のOOH事業者が競争に参入する道を開いてくれました。サプライ側の競争が激化したことで、イノベーションが生み出されたのです。

 

デジタルに関しては、一周して元の場所に戻ったような気がします。かつては、ほとんどのメディアがコンテキストによって購入されていましたが、データを活用したターゲティングが導入されたことで流れが変わりました。しかし、それは一時的なものだったのです。Cookieの終焉が迫るのに伴い、「コンテキストが重要」という立場に戻ることが急務となっています。

 

それを念頭に置くと、コンテキストと連動したOOHのクリエイティブは、真の創造性が開花していない最後のフロンティアです。そして今、データシグナルとデジタルバイイングによって、ダイナミックに変化するキャンペーンも可能となりました。このリアルタイムのコンテキストと魅力的なクリエイティブの組み合わせは、私たちにとって、とてもエキサイティングなキャンペーンを生み出すチャンスです。

 

従来型のOOHは、パフォーマンスの観点からは正当化することが困難でした。それを説明するための用語を持ち合わせていなかったのです。しかし、DOOHのプログラマティック配信が登場し、私たちは突然、広範なメディアアプローチの一環として効果を証明するための測定フレームワークを構築できるようになりました。特に、モバイル端末で、OOHスクリーンとの距離を追跡することによりブランドエンゲージメントの測定が可能になっただけでなく、その後、実店舗に足を運んだかまでが測定できるようになったのです。

 

ザ・セブン・スターズ プログラマティック責任者、パディー・シェパード(Paddy Shepherd)氏

 

ESGの意識によって、パンデミック前の売り上げに回帰する

2022年には、パンデミック前の売り上げに戻れると予想しています。スマート技術がより効果的なOOHの利用を促進することで、投入されるデジタル広告費は増え続けるでしょう。顧客のために成果を測定する能力の強化は、成長軌道への復帰において重要な役割を果たすことになります。

 

また、ESG(環境、社会、企業統治)が、広告主が考慮すべき主要な課題の一つになると思われます。マーケターは、メディアパートナーに対し、この分野に対する明確なコミットメントを期待するでしょう。

 

OOH業界は以前からこの問題に真剣に取り組んでいます。野生生物や生物多様性を保全するために、バス停の屋根を緑化しているメディアオーナーやバス停にソーラーパネルを設置しているメディアオーナーなど、いくつもの事例を紹介できることは、とても心強いことです。

 

タロン・アウトドア 英国法人CEO、ジェームズ・コプリー(James Copley)氏

 

 

ロックダウンが繰り返される世界では、アジリティが重要

2021年は、OOHがパンデミックの嵐を乗り切った年であると同時に、OOH事業者がプログラマティックの未来に向けて本格的に動き始めた年でもありました。2022年には、DOOHの分野に非常に大きな成果がもたらされるでしょう。

 

今後もロックダウンが繰り返されると予想される世界では、マーケターはかつてないほど、オーディエンスプランニングと配信に、アジリティ(機敏性)とリアルタイムの対応が求められます。

 

年に1度、2週間だけの集中的なアクティベーションではなく、常時オンに近いDOOHアクティベーションへと移行し、リアルタイムのデータトリガーを用いて、その「瞬間」に合わせた広告を配信するようになるでしょう。そのトリガーとなるのは、天候の変化、交通量、花粉量、スポーツの試合結果などが考えられます。

 

プログラマティックDOOHのデータやソフトウェアへの信頼性が高まり、スクリーンよりもオーディエンスへの理解が深まることで、OOHはすべてのメディアチャネルと同列に扱われるようになるでしょう。

 

DOOHエコシステムはこれからも進化を続け、ヘッダー入札、サプライパス最適化、アドサーバーなど、より「オンライン」的な製品やサービスが導入されていくでしょう。スクリーンは6つの広告を一定の間隔でスクロール表示するだけではなく、何百もの広告主の広告を配信できるようになるはずです。

 

ハイブスタック グローバルCRO、ナイジェル・クラークソン(Nigel Clarkson)氏

 

DOOHは成長し、より身近な存在に

屋外広告=OOHと聞くと、少し古くさく感じるかもしれません。しかし、ロックダウンと渡航制限が2年近く続いているにもかかわらず、デジタル屋外広告=DOOHは増加しています。マーケットウォッチによれば、世界のDOOH市場は2020年の43億ドル(約4910億円)規模から2026年には56億ドル(約6390億円)規模にまで成長する見込みだといいます。

 

米国ではこの4年間に、デジタルビルボード、タクシー広告、施設内スベース広告等の件数が40%以上も増加しています。

ようやく、セルフサービスの広告販売が拡大したことにより、あらゆる規模の広告主がOOHにアクセスしやすくなり、DOOHの成長に拍車が掛かっています。

 

DanAds CMO、リーセン・ゼトリアス(Lisen Zethraeus)氏

 

プログラマティック機能がOOHのさらなる推進力に

メディアプランにDOOHを組み込むブランドは増える一方であり、2022年の投資額は前年比で36%以上増加すると予測されています。例えばブーツ(Boots)は、オムニチャネルのクリスマスキャンペーン「バッグズ・オブ・ジョイ」の一環として、集客促進にジオターゲティングを使うなど、DOOHをフル活用しています。

 

このような投資の増加は、フレキシブルで合理的なメディアバイイングと精度の高いターゲティングを求めるマーケターによって促進され、プログラマティックDOOH(pDOOH)のさらなる導入につながっています。

 

pDOOHが提供する質の高いカスタマーインサイトがあれば、マーケターは非常に効果的なメディアプランニングを行うことができ、適切な時間に適切な場所でオーディエンスにリーチし、キャンペーンとの関連性を最大化することで、ビジネス成果につなげられます。そのうえ、メディアオーナーが1時間単位で広告枠をマネタイズできるプログラマティックの機能によって、広告主は予算の規模に依らず、pDOOHが利用しやすくなり、さらに成長が加速するでしょう。

 

プログラマティックの、多岐にわたるメリットとインパクトのあるマーケティングメディアが融合することで、pDOOHは2022年、消費者の注目とメディア予算の両方を集めることになるでしょう。

 

ザクシス 製品担当ディレクター、トビー・レット(Toby Lett)氏

 

エキサイティングな成長とマルチチャンネルへの参加

OOH業界にとってエキサイティングな時代が到来しました。特に英国では、DOOH広告費が2021年末までに5割近く(43.7%)増加すると予想されています

 

pDOOHは、2020年以前から世界的に人気が高まっていましたが、パンデミックによってそれがいっそう加速されました。ブランドがメッセージを発信するにあたって、これまで以上に素早い反応を求められるようになったためです。

 

私たちが「State of the Nation」というレポートで報告した調査結果では、pDOOHを他のプログラマティックデジタルチャネルと同時にプランニングし、購入するという、本物の変化が始まっていることが示唆されています。

 

英国では、経営幹部の10人中9人近く(89%)が、マルチチャネルキャンペーンにpDOOHをより密接に統合するつもりだと回答しています。この統合は、チャネルの枠を超えたマーケティングコミュニケーションの強化を支援し、戦略的なメディアプランニング、メディアバイイングを容易にします。このようなpDOOHのマルチチャネルキャンペーンへの統合は、英国と世界の両方でpDOOHが広く採用されるための重要な推進力になるでしょう。私は、これが2022年の注目トレンドになると予想しています。

 

VIOOH  CMO、ヘレン・マイオール(Helen Miall)氏

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。