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CCI調査レポートから見る―2021年下期のインターネット広告市場の動向[インタビュー]

CARTA HOLDINGSのグループ会社であるCARTA COMMUNICATIONS(CCI)は、2021年12月、国内のデジタルマーケティング業界の関係者を対象に、2021年下期インターネット広告市場の動向、およびプライバシー保護への対応がインターネット広告市場に及ぼす影響や今後の課題についての調査を実施した。ExchangeWireでは2022年1月、本調査結果の公表に合わせ、同社経営戦略室の大橋未茄氏に本調査結果の主なポイントを聞いた。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 柏 海)

―本調査の概要は。

本調査は、昨今のインターネット広告市場における具体的な変化を2020年7月から半期ごとに調査をしているもので、今回で4回目のリリース(URL)となります。

 

使用しているデータは大きく2つありまして、1つ目は国内マーケターのアンケート回答結果です。マーケターの業種の内訳は「媒体社、メディア、プラットフォーマー」が35.9%、「広告会社」が31.3%、「メディアレップ」が20.2%含まれており、バランスの良いデータとなっています。

 

もう1つ使用しているデータは、当社の「CCI 360 Programmatic Display Market Analytics」になります。こちらは戦略室内で作成しているツールとなりますが、日本のディスプレイに限定した運用型広告の市場規模について分析が出来るツールとなっております。

 

停滞期を乗り越えて拡大傾向

―2021年の広告費はどのように変わったのでしょうか。

2020年と比較して、キャンペーン費用は128.42%、配信量は108.69%となり、ともに増加する結果となりました。

 

このことから大きなサマリーとしては、マーケットは停滞期を乗り越えて、来年以降も拡大をしていくと推測をしております。

マーケターに伺ったアンケートの結果を見ても、2021年上期と下期を比較した際の広告費の増減については、「やや増加した」「大きく増加した」という回答の割合が半数を超えました。前回調査が49.1%だったことを考えると、アンケート結果からも市場環境が大きく改善していると考えています。

また、取引手法別のアンケートにおいても、若干ではありますが、上期の調査よりも下期の調査のほうが増加したという回答が上回る結果となりました。

 

新しい生活様式に対応した業種からの広告出稿が安定

―業種別のキャンペーン費にはどのような変化がありましたか。

「化粧品・トイレタリー」が最も多く票を集める結果となりました。

 

こちらの回答結果はメディアレップや媒体社から多くの回答をいただきましたが、コロナ対策の規制緩和等が下期にあり、「化粧品・トイレタリー」の広告出稿をする機会が増えたのではないかと推測しています。

―2022年の上期は業種別のキャンペーン費用がどのように変わっていくのでしょうか。

全体の傾向と同様に、市場は改善方向にあると推測しています。実際にアンケート結果を確認しても、2022年上期はインターネットの広告費が増加すると答えた方が47.5%と高いシェアとなりましたので、良い見通しが立っていると思います。

業種別では、特に「ファッション・アクセサリー」「外食・各種サービス」など、2021年を通じて新しい生活様式に対応してきた企業が比較的多い業種については安定して推移すると見ています。一方で、「交通・レジャー」など、コロナの影響が懸念される業種については不安定な状況が続くと見ています。

 

着実に大きくなっているプライバシー保護の影響

―プライバシー保護への対応は広告取引にどのような影響を与えているのでしょうか。

こちらの設問では「ブラウザ、携帯端末によるプライバシー保護規制について、直近での広告取引における影響についてお伺いします」という形で、広告取引への影響の有無を聞いています。

今回の下期の調査では、一番左の「コンバージョンコストが増加した」が7.7%、ピンクの「広告単価、広告収益が下落した」が15.9%となり、それぞれ前回の調査から約3%ずつ増加した形になりました。特に広告単価の減少は出版社や新聞社からの回答が多く見られました。

 

下期の調査で注目をしたいのは水色の「今のところ影響はない」の割合が、前回調査の57.0%から49.7%へ大きく減少したことで、プライバシー保護規制の影響は着実に大きくなっていると考えています。

 

また、こちらはCCI360で「Cookieが有効である広告出稿の数」と「Cookieが無効である広告出稿」の配信量を比較したグラフとなります。

2020年下期から段々と配信量に変化が見られますが、2021年の9月あたりからは、Cookieが「無効である」の数値が「有効である」を上回っており、プライバシー保護規制の影響が着実に進んでいることはデータとしても裏付けが可能かと思います。

 

注目が集まるファーストパーティーデータ

―サードパーティークッキーの代替手段については、どのような回答が集まったのでしょうか。

「ファーストパーティーデータの構築/活用」が最も多く28.1%となりました。また、「データクリーンルームの活用」についても7.1%で前回調査から微増しております。「未定」の回答も3割弱まで減少し、7割強が何らかの対策を検討していることが伺えました。

また、中長期的な取り組みが必要だと考えている施策について伺ったところ「ファーストパーティーデータの構築」が47.0%、次いで「企業戦略含めたビジネスコンサルティング領域」が40.4%、「Eコマース/ソーシャルコマース支援、または自社での展開」が39.4%となりました。

 

特に「企業戦略含めたビジネスコンサルティング領域」は広告会社・広告主からの回答が多く、「ファーストパーティーデータの構築」はメディアやアドテクベンダーからの回答を多く集めました。視点や立ち位置は若干違いながらも、回答の上位にあがった項目は各プレイヤーが課題として取り組んでいるものと推測しています。

サードパーティデータが制限されていくなか、ファーストパーティーデータは唯一使える財産でありアセットなので、まずは自分のクライアントデータをしっかり集めましょうという機運が高まっているのかと思います。一方で、ファーストパーティーデータは使い方を誤ってしまうと企業には大きなリスクとなってしまいますから、データクリーンルームの活用もセットで今後は取り組みが進んでいくものと見ています。

 

2月18日に解説セミナーを開催

CCIは2月18日、2021年下期インターネット広告市場動向レポートの解説を行うセミナーをZoomウェビナーで開催する。

 

セミナーではアンケート結果の分析とマーケットの状況分析の他、引き続きプライバシー保護への対応による影響と期待される取り組みについての解説を行い、本調査レポートの深堀を行う。

 

なお、参加は事前登録制となっている(申込〆切は2月17日(木)まで)。

申し込みは申し込みフォームまで(URL)。

 

そのほかのセミナー概要は次の通り。

 

【タイトル】
2021年下期インターネット広告市場動向 解説セミナー

 

【日時】

2022年2月18日(金)16:00~17:00

 

【会場】
Zoomウェビナー(開催前日までに申込メールアドレス宛に視聴用URLを送付)。

 

【主催】

株式会社CARTA COMMUNICATIONS(CCI)

 

【参加費】
無料

 

【プログラム】
2021年下期インターネット広告市場動向 解説セミナー

第1部:2021年下期 インターネット広告市場の現状

第2部:プライバシー保護への対応による影響と期待される取り組み

第3部:インターネット広告における課題・重視項目・中長期施策

 

【登壇者プロフィール】

 

 

 

 

 

 

 

大橋 未茄(Ohashi Mika)

株式会社CARTA COMMUNICATIONS

経営戦略室

2018年株式会社サイバー・コミュニケーションズ入社。

入社時よりテクノロジー・ディビジョンにてプロダクトマネージャー業務を担当し、BIツールを用いた自社開発ツールのデータ分析業務に携わる。

現在は経営戦略室にて自社の業務効率化やデータ活用ため社内外のデータ収集を行い、全社戦略に従事。

Tableau Desktop Specialist の資格を保持。

 

 

 

 

 

 

 

 

神田 啓史(Kanda Hirofumi)

株式会社CARTA COMMUNICATIONS

経営戦略室 室長

2012年株式会社サイバー・コミュニケーションズ入社。

入社時より、海外企業とのパートナーシップから、海外のマーケティングトレンドやアドテクノロジーに関するコンサルティング、GDPR対応など、主にグローバルビジネスを担当する。

2021年よりCCI及びパートナーセールスSBU事業の経営方針や、戦略の実現や方策、プロセス策定など経営企画業務に従事し現在に至る。

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当 日本大学芸術学部文芸学科卒業。 在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。